2004年1月

1日(初夢)●賭博場

とてつもなく大きな賭博場。海外なのか日本なのかは不明。ギャンブルで大勝ちに勝った私。笑っている自分の声を聞きながら目が醒めた。
【解説】 一体どんな種類のギャンブルだったのか思い出せないのだが、夢の中でも、夢から醒めたあとも、非常に楽しい気分が持続した。


2日●水のないプール
外国人だらけのプール。泳ごうとするが、水はわずかに底のほうにあるだけ。(ああ、泳ぎたい!)と切実に思う。すぐ近くには娘と息子。胸元には見覚えのないダイヤのネックレス。
【解説】 私は宝石全般にまるで関心がなく、宝石の夢を見ること自体が稀だ。夢で見たダイヤモンドは、形はシンプルだが非常に透明感があった。


3日●リフォームショップ
東南アジア、あるいは私の知らない東京なのか、怪しげに入り組んだ猥雑な町。登場人物は全員日本人。アオザイの襟元を和風にリフォームしてくれる店があり、私は娘(あるいはイラストレーターの篁カノンさん)と店に入る。目の前に、長い髪を右側で束ねた綺麗な女性。日野てる子(※昭和40年に「夏の日の思い出」で大ヒットを飛ばしたハワイアン歌手)に似ていると思う。彼女は妹的な女性をひとり伴っている。室内には、男性店主のほか姿の見えない人が2〜3人いるらしい。店主がオカマっぽい声で「アオザイの衿を和風に直してあげるから、持っていらっしゃい」と皆に言っている。日野てる子似の女性が地味な藍色のアオザイを着ているのを見た私は、(今度、オレンジ色か黄色のカラーコンタクトレンズを入れてみようかな)と唐突に思う。日野てる子似は、昨年の2月1日に結婚10周年を迎えたらしい。「私ね、結婚式の日取りはルーレットで決めたのよ」と得意げに言ったあと、彼女は急に私のほうを向いて「それでアナタは旦那様からいくらお小遣いを貰っているの?」と問う。「夫からお小遣いなんて貰っていません。私、自分の収入がありますから。それでヒマラヤの子どもたちに色々買ってあげているんです」と答えると、居合わせた全員が驚いたように静かになってしまった。

【解説】 目が醒めた瞬間、(私にとって藍色は「過去」、オレンジ色や黄色は「未来」を表わす色なのではないか)と、ふと思った。


4日●テロの起こる日
海外の小さなデパート。見た目はギャラリー風の円形の建物で、商品は少なく閑散としている。吹き抜け部分から下の階を覗き見ると、何故かそこはNHKの支局だった。今日はテロが起こるらしい。私は、よく知っている女性(顔は見えない)と、よく知らない女性(白人)と一緒にいる。周囲は田園地帯。腰の丈ほどに延びた草の中に、大勢の白人兵士(全員男性)がいる。場面変わって、長野市の実家。父、弟、私の3人。母は買い物に出ている。テロが起こると言うのに、心配だ。母は藍色の小袋を持って出かけたと言う。母を捜しに行こうとしたところで目が醒めた。
【解説】 夢から醒めたとき、(「よく知っている女性」は過去の私自身、「よく知らない女性」は未来の私自身かも知れない)と漠然と感じた。


5日●H美ちゃんの早稲田合格

よちよち歩きの息子(※現実世界では中学生)の手を引いて田んぼの畦道を歩いていると、向こうから娘の友達のH美ちゃんが弟の手を引いてやって来た。H美ちゃんは推薦で早稲田大学への進学が決まったそうだ。その顔を見て、私まで嬉しくなる。「何か美味しいものをご馳走するから、夕方遊びにいらっしゃいよ」と言うと、「はい、必ず伺います」という元気な返事。夕食の準備をしながら、H美ちゃんの着ていた赤いギンガムチェックのシャツを思い出して、(赤も未来の色なのだな)と思った。
【解説】 H美ちゃんは実際に早稲田大学法学部に合格した。そのことを私は娘から1月4日に聞かされて知っていたので、これは予知夢ではない。


6日●丸、三角、四角
長方形の小さな白い物体が、円形の物干しに干してある。その長方形は、拡げると巨大な正方形になるらしい。紙のようにも布のようにも陶器のようにも見える不思議な物質だ。そこへ外務省のTさん(実在の人物)がやって来て、「取材旅費が出ましたので」と言いながら、一辺が30センチほどの正方形の熨斗袋を差し出した。受け取って表面を見ると、相田みつを風の丸文字で「戦争や兵器のない世界を想像してみましょう」などと日本語が書かれている。(これってジョン・レノンの「イマジン」? ずいぶん下手な訳詞だこと)と思っていると、「この熨斗袋の中には、ありとあらゆる物が三角形で出来た三角形の世界が入っているらしい」と誰かが言う。その世界の住人は全員が女性で、彼女たちの名前は45%が「さちこ」、43%が「さくら」で、残りの12%も「さ」で始まるものばかりだそうだ。そこへ取材に行くためには、私も「さ」で始まる名前に改名しなければならないという。(「さ」は音として弱いから、後半に「い行」の音を入れて強くしよう。インドの民族衣装と魔法使いの両方にあやかって、「サリー」という名前が良いかも知れない)と思ったところで目覚し時計が鳴ってしまい、熨斗袋の中の世界は見ることが出来なかった。
【解説】 円も三角も四角も、歪みのないきれいな形。すべてがきちんと整理されている感じだった。
【後日談】 夢から数えて10日後の1月16日、Tさんから転勤の報せが届いた。驚いたことに、Tさんの新しい勤務先(部署)の名称は、熨斗袋の上に丸文字で書いてあった日本語(の一部)とまったく同じ言葉だった。


7日●男の死
理由はわからないが、気分が沈んでいる。誰か知り合いの男性が死んだらしい。一体誰が死んだのか、一生懸命思い出そうとするが思い出せない。思い出そうとしている内に長い時間が経ってしまった。同じ頃、地味ながら着実な業務内容で知られる中小企業(業種は不明)が、新聞で社長を公募した。その結果、日本女性が新社長に選ばれ、彼女の顔写真が小さく報道された。平凡過ぎるほど平凡な顔立ちの女性で、特に目に魅力がない。嫌いなタイプの顔だと思う。彼女と結婚したがっている外国人男性(ドイツ人らしい)がおり、彼女と結婚すれば、10年後、彼は確実に死ぬ運命だと言う。「その男が死んでも平気です」と言い放つ姿を見て、私はますます彼女を嫌いになった。
【解説】 夢から醒めた瞬間、(ドイツ人の顔をした男性は、実は日本人なのかも知れない)と思った。


8日●落語家
目の前に、見たこともない男性落語家が立っている。背が低く丸顔で、特長のない目鼻立ち。年齢は30代後半から40代前半ぐらいだろうか(短く刈った髪に白いものが混じっていたから、もう少し上なのかも知れない)。柳家○○(または古今亭○○?)を名乗っていたようだが、私の知らない名前。彼から招待券の入った封筒を渡される。しかし私は何らかの理由で寄席に行くことが出来ない。
【解説】 この人の顔には本当に特徴がなかった。もし道ですれ違ったとしても、それが夢で見た彼であることを、私は思い出せないだろう。


9日●復活
見たことのない大きな湖の回りをオープンカーでドライブしている私。同乗者は父と母。両親とも今より20歳は若返り、心から楽しそうに笑っている。ふたりとも復活したのだ。途中、木造の古いカフェのような場所に立ち寄った。すぐそばに、大柄な白人のお爺さんが腰に手を当てて立っている。笑ってはいるが眼光が鋭い。この人も、実年齢に比べて肉体年齢が20歳は若い。街の雰囲気はヨーロッパの田舎のようでもあり、ヒマラヤのようでもある。チベット料理を食べたような気もする。テレビを見るとニュースの時間で、オリンピックを目指して合宿中の日本人選手(男性)がインタビューされていた。私にはわかる。今は元気そうに見える彼だが、もうじき頚椎の故障が発見されるのだ。それは、常識で考えればスポーツマンとしての彼の死を意味するほどの、致命的な故障だ。だが彼は医師の予言も世間の思い込みも裏切り、奇跡的に復活するだろう。私は、そのことを知っている。
【解説】 カフェで見た白人の老人は、誰かに似ているような気がする。過去にどこかで見たことのある顔。しかしそれが誰なのか、思い出すことが出来ない。過去に逢ったとき、彼が老人だったのか若者だったのか、男だったのか女だったのか、白人だったのか黒人だったのか日本人だったのか、そんなことさえ思い出せない。ただ、あの鋭い眼光を、私は過去にも間違いなく目にしているのだ。


10日●花吹雪
薄桃色の桜の花びらが天から降ってくる。足元は、見渡す限りの花びらの絨毯。まるで1000年前の日本、あるいは能舞台の上のような、非現実的な幽玄の世界だ。懐かしく、穏やかな気持ち。花びらの絨毯の上に着物で正座し、三味線で「松の緑」を弾いていると、編集者の芝田暁さんがやって来て、一の糸の音色を聞かせて欲しいと言う。請われるままに一の糸を弾くと、自分でも思いがけないほど良い音色が出た。そのあいだも、花びらはますます激しく降りしきっている。
【解説】 現実世界ではまだ習いたての三味線だというのに、夢の中では「松の緑」を驚くほど上手に弾くことが出来た。後味の良い夢。


11日●愛のない家
黄昏のせまる室内。そこは、どこかの出版社の社長宅なのだそうだ。家具調度品は立派だが、すべてが寒々として、熱い血が通っていない。主人である社長はほとんど家に寄り付かず、妻、息子、娘の3人が暮らしている。主人は真実の愛を見つけ、この家を出たという。妻は不平と愚痴にまみれて生きている。多額の慰謝料を取ることが出来れば離婚したいと常々口にしているが、本当は自分でもどうして良いかわからないようだ。彼女は、自分には特別な才能と美貌があると信じているが、実は中身は空っぽで、見た目もひどく平凡だ。息子と娘は大学生または高校生で、一見淡々と日々を過ごしているが、内心は母親の態度に辟易としている。彼らは「さわらぬ神に祟りなし」とばかり、母親の存在そのものを避けたがっているようだ。
【解説】 この夢には「私」が登場しない。私はあくまでも傍観者であり、観客である。夢日記を付け始めてから11日目になるが、「私」が登場しない夢は今回が初めてである。


12日●ディベートの練習
昭和40年代の小学校を髣髴させる、すすけて茶色い木造の建物。達磨ストーブが置いてあるらしく、心地良く暖かな室内。20代と思しき人々が3〜4人、椅子を寄せて車座になっている。皆、朴訥そうで地味な顔立ち。男性なのか女性なのかはわからない。彼らはディベートまたはスピーチの練習をしているのだが、いかんせんテーマの選び方にも話し方にも華がない。私は彼らに、人の心をつかむ話し方を一から教えようとしている。
【解説】 この日は成人式で、着飾った新成人をたくさん見かけた。それが夢の世界にも影響しているのかも知れない。


13日●手に入らないオーデコロン
海外のドラッグストア。珍しい商品が並んでいる中に、気に入った香りのオーデコロンを見つけた。レモン系のさっぱりした香りで、嫌味がない。大きな白い円筒形の容器に入っている。それを買いたいのだが、棚に置いてあるものは見本で、それをレジのところまで持って行くと倉庫から新品を出してくれるシステムらしい。近くに10人ほどの主婦の団体(おそらく日本人。あるいは韓国人かも知れない)がおり、そのうちのひとりがオーデコロンの見本を掴んだまま、いつ果てるとも知れないお喋りに興じている(彼女は、1月7日の夢に登場した“嫌な女”と同一人物かもしれない)。「申し訳ありませんが、私もその商品を買いたいので見本を貸していただけますか?」と頼むと、無愛想に容器をよこした。ようやく商品を買って店から外に出ると、先ほどの主婦の団体もあとから出てきて、今度は歩道に陣取ってくだらないお喋りを続けている。ここで急に夢から醒めてしまい、オーデコロンを買えたことは夢だったのかと落胆していると、夫が現われて「そのオーデコロンを売っている店を知っているから、買って来てあげるよ」と言う。ようやくオーデコロンが手に入るかと喜んだ瞬間、今度こそ本当に夢から醒めてしまった。
【解説】 直感だが、この女性はこの世のどこかに実在するような気がする。もちろん私はその人に逢ったことはないし、それが誰なのかわからないが、彼女のほうでは私に興味を持ち逢いたがっているのではないか。夢から醒めたとき、ふとそんなことを思った。


14日●家族団欒
実家の和室に、両親、私と私の家族、弟と弟の家族が全員集合している。弟が、一部屋を使って即席の「びっくりハウス」のような「ふざけた迷路」のような物を作り、他の皆はそこを歩いて、さまざまな仕掛けを見ては笑っている。和やかで楽しい雰囲気。最後に弟から私へ、シンプルな木製の椅子がプレゼントされた。一見、何の変哲もない椅子のようだが、どこかが普通とは違っている。椅子の背に、何か文字が書かれているような気がして、それを読もうとしたところで夢は終わった。
【解説】 実家の和室は、しばしば家族団欒の象徴として私の夢に登場する。以前、現実の世界で私が歯痛で苦しんでいる時に、弟がこの部屋でおかしなジョークを言って大いに笑わせてくれたことがある。その結果、鎮痛剤さえ効かなかった歯の痛みがすっかり和らいでしまった。「実家の和室」+「弟のジョーク」=「癒しのイメージ」ということだろう。


15日●エネルギー
どうしたことか、右脚の膝下を怪我でもしたらしい。痛みは全くないが、赤いものが見えたので血液が流れ出るのかと思い見ていると、流れ出るどころか逆に盛り上がって綺麗な球形を形づくり、体の中を動いている。エネルギーがどんどん増幅して行く感じ。場面が変わって、どこか大きな会場のステージの上。私はアーティストの日比野克彦さんと一緒にいる。日比野さんから激励され、非常に強いプラスのエネルギーを貰っている。再び場面は変わり、どこか未知の海外に旅に出ている私。そこは、こじんまりとしたホテルらしい。色々な人がおり、色々な事件が起こるのだが、私はそこでも自分のエネルギーが増幅していると感じる。
【解説】 珍しく、夢の細部が思い出せない。ただ、一貫して自分の中に強いエネルギーを感じ、また周囲からもエネルギーを与えられていると感じた。なお、日比野さんが私の夢に登場したのは、記憶している限りこれが生まれて初めて。
【後日談】 夢を見た翌朝、日比野さんから某レセプションへの招待状が届いた。


16日●白い部屋
正方形の白い部屋。そこは役所のようでもあり、UFOの内部のようでもあり、寺院のようでもある。温かく神聖な感じ。部屋の中央には、やはり正方形の四角いローテーブル。私は着物で正座をし、200〜300枚ほど山積みになった葉書の宛名書きをしている。そこへ佐賀県知事の古川康さん(※昨年、全国最年少の44歳で知事に就任した人物)から葉書が届いた。「貴女の次の御本はいつ読めるのですか」という内容。「次の本の出版予定については、3日後にお返事できます」と返事を書いたところ、彼から再び葉書が届き、「わかりました。3日後を楽しみにしています」と書かれていた。
【解説】 古川さんと私は、現実の世界でも15年来の友達。


17日●小さな子
小さな子どもの手を引いて、道を歩いている私。
【解説】 夢の全体を思い出すことが出来ない。唯一、断片的に思い出すのは、2〜3歳の小さな子どもの手を引いて道を歩いている自分。不安・喜びといった、特別な感情は感じられない。子どもの顔も見えないので、それが自分の子なのか、子ども時代の自分なのか、他人の子なのかは不明。ただ、右手で子どもの手を引いて歩いている場面だけが、何度か繰り返された。


18日●黄色い花束
茶道の荒井宗羅先生から大きな黄色い花束を贈られる。次に、風水のマスターらしき人がやって来て、「この名前は最高に縁起が良いから、息子さんの名前は“太(ふとし)”にしなさい」と勧められる。次の日、私は3日間の“ご褒美旅行”に出かけた。そこはオーストラリアだというのだが、実際には全く知らない場所。人口密度は低く、田舎っぽさを多分に残した地方都市という感じ。すぐ近くに、とても感じの好い白人男性がいる。背が高く笑顔の優しい人で、何かにつけて親切にしてくれる。ほかに、顔は見えないが女性(国籍不明)も2人ほどいるようだ。旅の2日目、私たちは海の近くのショッピングセンターに行った。遊園地らしき場所も見え、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。ハッキリとは覚えていないが、ここでも黄色い花を見たような気がする。明日(旅の3日目)さえクリアできれば、私は何かに合格するらしい。
【解説】 夢の全編に黄色い花を感じた。ほんわり暖かく、幸せな気分の続く夢。
【後日談】 この夢を見た13日後の1月31日、三味線の稽古からの帰りに花屋の前を通りかかった。ふと思い立って、鉢植えの黄色い花を購入。それを食卓のテーブルの上に置いたところ、思った以上に家族からの受けが良い。小さな黄色い花があるだけで、あたりが明るく引き立つようだ。夢が何らかのヒントを与えているのかも知れないので、これからは身近なところに常に黄色い花を置くことにしようと思う。



19日●引越し
見たことのない建物。どうやらインドらしい。私は現実よりも少し小さな息子と一緒にいる。引越しをすることになったため、明日までに全ての荷物を運び出さなければならないという。建物は少なくとも3階建てで、それぞれの部屋はかなり大きい。クローゼットの中にはたくさんの荷物が収納されており、これらを明日までに運び出すことは到底不可能だ。建物の中には、初老のインド人男性とインド人の男の子がひとりいて、黙ってこちらを見ている。私は大半の荷物を諦め、両手に持てる量の一番大事な荷物だけを家から持ち出すことにした。
【解説】 これは現実世界におけるインドの引越し状況を、よく表わしているように思う。インドでは合計3回引越しをしたが、いつも急遽引越しが決まるため、十分な時間的余裕があった試しがない。また、引越し中に業者やサーバントによって盗まれた物も少なくない。そのためインドでは、多くの「モノ」を諦めなければならなかった。そういう経験を経て、今では「色々なモノへの執着をきれいさっぱり諦める」ことを覚えたような気がする。この夢を見ているあいだも、夢の中で私は「執着を断つ」ということについて想いを巡らしていた。


20日●初恋の人
静かな山の喫茶店のような場所。初恋の人と向かい合って座っている。これまでの人生を褒められ、未来を激励されて嬉し泣きしている私。
【解説】 初恋の人=高校時代の片想いの相手=『夜明けの晩に』の鳥居さんの顔モデル。会話の詳細は思い出せないが、「よく初志貫徹したね」という意味のことを褒めてもらったようだ。目が醒めたあとも晴れ晴れとした気分だった。


21日●……
【解説】 間違いなく夢は見たのだが、その内容を思い出せない。


22日●野球観戦記を書く少年
中学生ぐらいの少年が野球場に来ている。彼は野球観戦記を書こうとしているのだ。建物の裏側に、関係者だけが入れる静かなエリアがあって、そこで彼は原稿を書き始めた。どうしたら野球の醍醐味をストレートに読者に伝えることができるか、暫く悩んだ後に、少年は「あまり美辞麗句を並べず、素直に状況描写したほうがいい」ことに気づく。
【解説】 この夢を見る前日、実際に中学2年生の少年2人から「自分たちが書いた小説を論評してください」と頼まれ、意見を述べたばかりだったので、そのことが夢になって現われたのだと思われる。現実世界の少年たちが書いていたものは、野球観戦記ではなく死神が登場するファンタジーだったが。


23日●森の中
何かを探すため、私は車(おそらくはオープンカー)を運転して森に出かけた。森と言っても、山奥の鬱蒼と茂った森ではなく、ところどころに小さな家や商店がひっそりと軒を並べ、わずかながら住人もいるようだ。九十九(つづら)折れの緩い坂が続いている。同じ車の後部座席には数人の人が乗っているらしいが、その顔は見えない。彼らからは悪意も感じない代わり、特別な愛情や友情も感じられない。森のどこかに、何かが埋めてあるらしい。それは私が埋めた物かも知れず、或いは他の誰かが埋めた物かも知れない。埋められているのは誰かの死体、或いはパソコンらしい。私たちは同じ場所を、少なくとも2回は走り回ったようだ。しかし結局、何も見つけることは出来なかった。
【解説】 あまりストーリーらしいストーリーのない、どちらかと言えば雰囲気だけがクローズアップされた夢。何かを探しているという割には、焦燥感・悲しみ・諦めなどの負の感情はなく、淡々としている感じ。
【後日談】 夢から醒めた朝、家に置いてある5台のパソコンのうち1台が故障してしまった。昨日までは何の問題もなく機能していたのだが…。さらに夕刻になって、残る4台のうち1台も起動しなくなったではないか。夢の中で埋められていたパソコン(或いは死体)は、現実におけるパソコンの故障を予知していたのだろうか?


24日●靴を選ぶ
雪が降ったあとの美しい銀世界。私は山小屋のような場所にいる。息子がスノーブーツを欲しいというので、靴屋に連れて行く。目の前にズラリと並んでいるのは、青いスノーブーツとグレーのスノーブーツ。横から複数の人が「もちろん青いほうを選ぶだろう」などと言っている。しかし息子はグレーのスノーブーツのほうを選んだ。息子がグレーのブーツを選ぶだろうと思っていた私は(ああ、やっぱり)と思う。
【解説】 現実世界でも息子のスキーウェアを買う予定でいるので、そのことが夢に現われたらしい。


25日●あり得ない光景
夢が映写機のようになって、次々に「あり得ない光景」を映し出している。私はそれを見ている観客のひとり。スリム美人で知られるタレントのKSさんが、60〜65キロの“普通のデブなおばさん”になっており、地味な着物を着て肝っ玉母さんのように笑いながらインタビューに答えている。その、あり得ない二重顎を見た誰かが、「彼女のダンナさまのKって、意外に太目の女性が好きだったのねぇ」と驚いている。
【解説】 何故、夢の中にKSさんが現れたのかは不明。このほかにも、たくさんのあり得ない光景を見たような気がするが、それらが具体的にどんな内容だったかは思い出せない。


26日●家紋
ごく小さな文房具店。私のほかには、店番らしきおばさんがいるだけ。彼女はネームプレートなど付けていなかったが、その太った狐のような顔を見た瞬間、おばさんの名前は「田中」であると私は直感した。目の前のガラスケースの中には印鑑が並べてある。それは苗字ではなく家紋の印鑑で、某大手メーカーが最近発売したばかりなのだと言う。おばさん曰く、「こんなの作っても売れないと思うけどねえ」。私はそれには答えず、ただ微笑みながら、紫色のインクが出る家紋印鑑を探している。
【解説】 この夢の前後にも長いストーリーがあったような気がするのだが、思い出せない。
【後日談】 この夢を見た数時間後、通学途中の娘からメールが届いた。その内容が「うちの家紋の名前を度忘れしちゃったので教えてください」となっていて驚愕した。ちなみに、最近娘との間で家紋の話題が出たことはない。彼女が何故唐突に家紋の話を始めたのかは不明。


27日●父
ヨーロッパの片田舎のようにも、自分が生まれ育った町のようにも見える、どこか懐かしい匂いのする場所。両親と私、それから時々娘の姿も見える。ほかには誰もいない。父は体調が良いらしい。一緒に御飯を食べに行こうと言う。皆で小さなレストランに出向く。そこにも人の姿は見えないが、私たちは食事をし、楽しく語り合っている。父も少しだけお酒を飲んだようだ。2軒目の店では中華料理を食べ、紹興酒を飲んだ。ここでも父は一口紹興酒を口にし、楽しそうに笑っている。父が「もう一軒行こう」と言うので、次の店に移動しようと立ち上がると、母が心配そうな顔で「お父さん、具合が悪いんじゃない?」と言う。外に出ると、ひと気のない小さな公園が見える。使う人のいなくなったブランコやジャングルジムを見るうちに、物悲しい気持ちが込み上げてきた。
【解説】 このところよく両親の夢を見るのは、数年前から父の体調が芳しくないことと、父の世話をする母のことが常に心にあるためだろう。最後に見た公園は、子どもの頃に毎日遊んだ公園(既に取り壊されてこの世にはない)とどこか似ていた。


28日●てんてこ舞いの舞台裏
数百人のゲストを集め、何かの集会を主催している私。会場は、後方に行くほど高くなる大学の大教室のような部屋で、作りつけの椅子と小さなテーブルがたくさん並んでいる。スタッフ(全員、見たことのない日本人)はのんびりお喋りなどしていて、なかなか働いてくれない。結局は、お茶の準備から全体のプロデュースまですべて自分一人でやるハメに。部屋の外をバタバタ走り回っていると、前からの知り合いらしい招待客(眼鏡をかけた60代ぐらいの男性)がやって来て、楽しそうに雑談を始めてしまう。その間、私は準備を続けながらも男性とお喋りをするのだが、書類が床に落ちてバラバラになったり、忘れ物に気づいたり、時計を見てイライラしたり、とてつもなく慌しい雰囲気(しかも、その感情を外には出さず、常に微笑みを絶やしていない)。その間、男性は「いやあ、真美さんは立派だねえ」などと言いながら喋っているだけで、仕事を手伝ってはくれない。そうこうするうち、パーティーの開始時刻になってしまった。焦った私が走って会場に行ってみると、司会の女の子が主催者の挨拶を忘れ、いきなり来賓挨拶を始めさせてしまった。すると、今まで私と一緒にいた男性が来賓挨拶のためにステージに向かったではないか。私は、通訳の準備は整っているのか(いない場合は自分が通訳をしなければならないので、男性の挨拶内容を素早くメモっている)、何か落ち度はないかと一生懸命考えをめぐらしている。
【解説】 非常に気疲れする夢。何の集会だったのかは不明だが、話しかけてきた男性は、現実のインド時代に知り合いだったKさん(日本人)ではないかと思う。会場にはKさんの奥さんの姿も見えた。私は何年か前、インドでかなり大きなオフィシャル・パーティーを主催したことがある。この時も、インド人スタッフの仕事が異常なまでにノロノロしていたため、予定の開始時刻に始められるのかどうか、最後までやきもきした。そのときの雰囲気が夢で再現された感じ。


29日●演繹と帰納
ドビュッシーの「アラベスク」が流れている(あるいは、ピアノを弾いているのは私自身なのかも知れない)。背景は黒、または空(くう)。長い時間、哲学的な議論が続けられる。相手の顔は見えない。声も聞こえない。ただ複数の意識がそこに在って、観念を交換している。演繹(deduction)と帰納(induction)について英語で論じている私。その間も絶え間なくドビュッシーは流れる。
【解説】 哲学の夢などと言うと、それだけで疲れそうなイメージがあるが、この夢は精神が開放され非常にリラックスできるものだった。目が醒めたあとも、いつもより頭がすっきり冴えていると感じた。


30日●風
長い長い旅をしている。特にドラマがあるわけではない。すすきの原っぱを歩いたり、人と出逢ったり、船に泊まったり、とにかく延々と旅をしている。その間、常に風が吹いている。近くに3人の女友達がいて、普段は付かず離れずの関係なのだが、必要なときには彼女たちが集まってきてアドバイスをしてくれる。それぞれのアドバイスは非常に的を射ている。私は素直に彼女たちの言葉に耳を傾ける。3人とも若々しく、頭の回転が速く、性格が違う。ひとりは真善美の「真」、ひとりは「善」、もうひとりは「美」を司っているらしく、3人の個性が合体するとほぼパーフェクトな人格になるようだ。旅をしているうちに、時間と風が一体化してきた。私は自分の顔に当たっている風を感じながら、これまでの人生をふと振り返り、(好い時間を過ごしてきたな)と想う。
【解説】 3人の「女友達」の顔はハッキリと見えない。現実世界では知らない人たちのようだった。


31日●兎と遊ぶ
広々とした草原のような場所。夜空には驚くほど大きな満月が出ている。鏡のように澄んだ月に見惚れていると、どこからともなく2羽の白兎(どうやら夫婦または恋人同士らしい)が現われて、遊びたいような素振りをする。彼らと遊んでいると、仲間の兎たちが次々にやって来る。草原を埋め尽くすほどたくさんの白兎だ。兎たちは嬉しそうに跳ね回っている。それを見て、私はどんどん身心が浄化されていると感じる。
【解説】 夢を見る前日に、三味線の先生から日本歴史占いというサイトの存在を教わった。生年月日と性別から、その人に似た「歴史上の人物(または古い物語に登場する人物)」を探してくれる占いなのだという。さっそく試してみたところ、私は「かぐや姫タイプ」と出た(型破りの自由さで世の中を渡る独自な価値観の持ち主という意味らしい)。そのことが頭の隅にあって、満月&兎という夢を見たのかも知れない。




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