n




旅に出ていない限り毎週土曜日に更新します。
直前号(日本最古級の映画館で舞台挨拶)は
こちらから、それ以前のバックナンバーは
こちらから御覧になれます。

2021年11月8日(第676号

今週のテーマ
インド工科大学向けオンライン集中講義が終了しました
 今年もインド工科大学ハイデラバード校(IITH)の学生達に向けた集中講義(全14回、1単位)を行ないました。

 新型コロナ感染症(COVID-19)の世界的パンデミックのため、今回はオンライン授業となってしまいましたが、物理的な制限のあるなかで可能な限りわかりやすく、面白く、臨場感のある授業を心がけたつもりです。

 授業タイトルはストレートに"Japan and its Culture"(日本とその文化)としました。
 履修者は過去最多の209名

 まさに満員御礼状態で、オンラインの向こうで明日のインドを背負って立つ学生達が手ぐすね引いて待っている様子がひしひしと感じられ、こちらも大いにやる気にさせられた次第です!

 この授業がきっかけで一人でも多くの学生が日本を好きになり、日本に留学・就職してくれることを願って止みません。

 以下、授業内容のごく一部をダイジェストでご覧いただきます。
(録画した授業のキャプチャ画像です。画像が荒れていますことをお許しください。)

 第1回目の授業は、いきなり日本神話の世界観から話をスタートいたしました。

 インド人は老若男女を問わず神話に対する免疫力が極めて強いですからね。
 私の経験上、この切り口から入って「滑った」ことは一度もないんですよ(笑)。
 
授業の最後に現代日本の各種データを提示。日本の人口が減少
傾向にあり2048年には1億人を切る予測であると話すと、学生から
「なぜだ!」の質問が殺到。インド人には理解困難な事態のようです。
  第2回目の講義では、日本人の姓・氏・名字に関する話を展開。

 藤原氏と佐藤氏の関係からサントリーの社名の由来(赤玉の太陽+創業者鳥井さんの名前)まで、幅広く話しました。

 ちなみに、学生達に予想外に受けたのは、世界最大のタイヤメーカーであるブリヂストンの社名が創業者のお名前(石橋さん)をひっくり返したものであるというこぼれ話でした(Stone Bridge → Bridge Stone)。

 ちなみに学生達はブリヂストンという会社の存在をこの時まで知らなかったようで、「こんな優良企業があったのか!」という点でも驚いていたようでした。

 後日、学生達に書かせた課題の作文の中にもブリヂストンにつぃて書かれたものが複数あり、教えた私も、

(ブリヂストンの社名の由来がここまで学生達の心の琴線に触れるとは……!)

と驚きを禁じえないのでした。

 今後インド工科大学ハイデラバード校からブリヂストンへの就職希望者が出た場合は、おそらく今回の授業が原因でしょう(笑)。本当にそうなったら面白いですね。
 
 第4回目の授業では、アマテラス(太陽神)が父の左目、ツクヨミ(月神)が右目からそれぞれ生まれた古事を紹介し、かつて日本では左が右よりも上位であったこと、それが後に覆された理由などを説明しました。

 日本では「右左」と言わず「左右」と言うこと。
 左大臣は右大臣よりも上位であること。
 桃の節句に飾る「男雛」と「女雛」の左右の立ち位置が伝統的に京都と東京では逆であった理由などなど。

 ヒンドゥー教では古来、右が左の上位に位置づけられていることから、この話題もインド人にとっては殊のほか興味を惹かれるものだったようです。

 ……ここから入って、話はどんどんマニアックかつディープに展開して行ったのでした(笑)。
 
 さらに5回目の授業では、鳥居の由来や神社の詣で方などをレクチャー。

 そもそも鳥居はなぜ「鳥居」と呼ばれるのか(※これはアマテラスの岩戸隠れの神話に端を発します)など神話絡みの話題がつづき、学生達からはこの日も活発に質問が寄せられました。

 バリバリ理系の学生達ですが、こうした分野にも非常に心が開かれているのはインドならではなのでしょうか?
 
  6回目の授業では、まずは三種の神器の顛末について詳述。

 その後、仏教伝来と蘇我氏vs.物部氏の対立、聖徳太子による四天王寺建立、その建設に携わった金剛組が2021年の現在は世界最古の企業に認定されている事実などを熱く語らせていただきました。

 工学系の大学だけあって、さすがに学生達は金剛組に激しく反応、というか目がハートに(笑)。
 後日、課題の作文を書かせたところ、金剛組について調べて書いてきた学生が複数いたことからも、彼らの関心の高さが見て取れます。

 インドは古代文明発祥の地ではありますが、今日まで長く続いている君主や企業が存在するわけではありません。
 その意味で、日本の皇室や金剛組は彼らにとって憧れの存在かも知れません。
 
 第7回目のテーマは「日本で人気者になったインドの神々」。

 日本人が大好きな七福神のうち、三柱がインド由来の神々(弁才天・大黒天・毘沙門天)であることなどを歴史的に説明。

 その中でも特に弁才天(インド名はサラスワティ)が、さまざまな理由により他の多くの神格を取り入れてほぼ一人勝ちのスーパー女神になった経緯などをお話ししました。

 これは私自身の得意分野であり、インド人学生達にとっても興味津々な領域ですので、事細かく掘り下げてお話ししました。

 このテーマなら60分どころか何時間でも延々と話し続けられる私です(笑)。

 と言うかインド工科大学で採用している60分授業って、大学の授業としてはいくらなんでも短すぎなのでは? しかも授業と授業の間には休憩時間というものが設けられていないし。

 日本の大学では90分授業がスタンダードかと思いますが、諸外国の様子はどうなっているのでしょうね。インド工科大学の60分が例外的なのか、それとも世界的に見れば60分授業も十分にアリなのか。

 ……気になるので今度調べてみたいと思います。
 
 第8回目の授業では古代史から時間軸を現代に戻し、「日本の歳時記」をレクチャー。

 学生達は日本の四季折々の行事の豊かさに感心していたようです。

 例えば正月の初夢占いの話をすると、彼らは「一富士山、二鷹、三茄子」にいう奇妙な組み合わせに興味を持ち、そこから日本文化のユニークさに気づいたのみならず 徳川家康の影響力の強さなど色々な事柄に想いを馳せているようでした。

※注: 初夢に見ると吉兆とされる富士・鷹・茄子はすべて駿河国(=家康ゆかりの地)に関係のあるモノとされています。

 そのあと、お盆の話の中にも茄子の精霊馬(しょうりょうま)が登場するし、日本人はよほど茄子好きな国民なのだなと思われたかも知れませんねぇ(笑)。
 
 このあと14回までの授業では、主として現代日本にフォーカス

 「データで見る平均的な日本人の一生」や「平均的な日本人学生の一日の過ごし方」など、将来日本に留学するかも知れない彼らに必要なリアルな情報を提供しました。

 また、学生達から寄せられた大量の疑問に答えるコーナーなども設け、毎回の授業をギリギリまでフルに使って14回の講義を終了いたしました。

 最後に彼らに出した課題は作文です。
 この作文の出来不出来によって彼らの成績を決定しました。

 作文のタイトルは"A Japanese Diary"(ある日本人の日記)。

 具体的には、みずから日本名を名乗り、日本人になりきって、ある一日の日記を書きなさい、という課題です。
 英文で、分量は上限が600ワード。これはA4で1枚半程度に相当します。

 その際、

(1) 授業で学んだ日本に関する情報をなるべく数多く、有効に用いること。
(2) 授業で学んだ日本語の会話文を文中に織り交ぜること(注:14回の授業の最後には毎回必ず"Japanese conversation in three minutes"というコーナーを設け、その日に習った内容に即した日本語の基本的な会話文を教えておきました)。
(3) 日記にマミ先生(私)が登場すること。
(4) 仏教と共に日本にやって来たインドの神も登場すること。

……という条件を設けました。

 学生達が書き上げた作文を読んでみたところ、そのほとんどが現代(2021年)の日記でしたが、一部には神話時代の日記や、飛鳥時代の日記、はたまた近未来のSF的な日記を書いてきた学生もおり、実に読み応えがありました。
 
 総勢209名による作文を一つ一つ丁寧に読み、採点して成績をつけるのはそれはもう大変な作業でしたが、それも無事に終わりました。

 今回、オンラインとは言え実に白熱した授業を展開できましたこと、心から嬉しく思います。

こちらはインド工科大学での2019年のスナップ(Photo by Deepak)。
来年こそはコロナ禍が明け、現地で授業ができるといいなぁ♪
 最後にひとつ、ビデオ会議のプラットフォームアプリについて言及しておきます。

 今回、大学側から推奨され使用したプラットフォームはGoogle Meetでした。

 私はこれまでオンライン会議と言えばZoomしか使ったことがなく、初めてGoogle Meetを使うことには少々戸惑いもありました。

 しかし、どうやらインド工科大学ではZoomは使えないようなのです。

 それと言うのも、インド政府は2020年初頭からZoomアプリのセキュリティの脆弱性を指摘し、さらに同4月にはインド政府機関でのZoomの使用を禁止しています。

(※このあたりの新聞記事をご覧になりたい方はzoom, india, banなどの単語で検索してみてください。多くの新聞社のサイトにヒットすると思います。)

 インド工科大学は国立大学ですから、この政府決定に従ってZoomの使用を全面的に禁止しているのでしょう。

 実はインドにも「Jio MEET」、「Say Namaste」、「FLOOR」、「Webkonf Meetings」、「VideoMeet」といった国産のオンライン会議アプリがあるようなのですが、今回の授業でそれらを使おうという声は一度も上がりませんでした。理由はわかりませんが、これはちょっと寂しいことですよね。

 余談ながら、Googleの現CEOであるピチャイ氏はインド系のアメリカ人で、インド工科大学の卒業生。そういう流れを考えればインド工科大学でGoogleを使うことは自然なことに思えますが……そうは言っても、やはりインド国産のアプリが日常的に使われる日がくることに私は期待したいと思います。

 なお、ハイデラバード校での14回の授業が完了した直後、インド北部にあるインド工科大学グワハティ校からも、ハイデラバード校で行なったものと同じ授業を行なってくれませんかという打診が届いております。

 願ってもない話で、ご協力したいのは山々ですが、本音を言えばコロナ禍が明けるのを待って現地で対面式授業が行なうのが理想的ですよね。

 このあたり、慎重に状況を見極めながら可能性を模索して行きたいと思います。

 とりあえず今日のところは、ハイデラバード校での授業完了のご挨拶まで申し上げました。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました♪
 ↓今週のオマケ写真↓



母を連れて戸隠へドライブ。結局今年は計6回、
戸隠に詣でました。母の主目的は馬を見ること。
母が楽しそうでよかった♪



孫娘とも会って遊んでもらっています(笑)。すっかりお姉さんになってきて、
両親から離れ一人で山小屋へ遊びに来られる日も近いかも!?



デザイナーで親友の岡正子さんとベトナム料理を堪能するの巻。
気の置けない女友達の存在はありがたいですね。ちなみに私達は
高校の1年先輩・後輩でもあるんですよ。



某所にあるお気に入りの滝。小さいけれどパワフルで
リラックス出来る、私にとっての「隠れ家」のような滝
なんです。ここでバッテリーチャージ!
 ▼・ェ・▼今週のクースケ&ピアノ、ときどきニワトリ∪・ω・∪



秋深し。山小屋の庭はすっかり
落ち葉に覆われてしまいました

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2021年11月8日
山田 真美
※週刊マミ自身の一部または全部を許可なく転載・引用なさることはお断りいたします♪
©Mami Yamada 2000-2021 All Rights Reserved.