2005年10月


1日●停止して見える列車と、すげ変わる男の首
私は新幹線に乗っている。グリーン車輌だ。乗客はまばらで、しんと静まり返った車内。卒然、それまで時速300キロほどで走っていたはずの列車が、まるで停止しているように感じられた。しかしそれは、おそらく私だけが感じている時間の流れなのだ。ほかの人たちは、列車の動きは時速300キロのものとして感じているらしい。退屈な違和感。世の中の動きが遅いと感じる。隣に敷かれたレールの上を、反対側から新幹線が走ってきた。その列車に乗っている人の顔がはっきりと見える。ひとつの座席がクローズアップされた。座っていた男の首から上だけが、いろいろなものに変化してゆく。ニワトリの顔、カミソリ、雲、地球儀……。いろいろなものが彼の首の上に乗っている。「総理大臣」と小さく刻印された顔も見えたが、その顔は口と鼻の部分が何故か鳥の嘴(くちばし)になっていた。最後に、男の顔はすっかりなくなってしまった。時間の感覚がもとに戻り、私は従来の時速300キロのイメージを取り戻した。と思う間もなく、顔を失った男を乗せた新幹線は私の背後へと走り去って行った。
【解説】 感覚的には2〜3秒にも満たない夢だったのではないかと思う。目が覚めた瞬間、急にアインシュタインの特殊相対性理論について深く知りたくなった。



2日●寄付金と履歴書
学校の教室のような部屋。アメリカ人らしき中年女性が近づいてきて、(英語で)言葉巧みに盛んに何かの「寄付金」を求めてくる。目と目の間の感覚が狭い、神経質そうな顔立ちの女性だ。私はやんわりと彼女の勧誘をかわしている。しかし女性がしつこく食い下がってくるので、今度は「寄付金を払う気はありません」とハッキリ伝えた。場面は変わり、私は自分の履歴書を書いているようだ。年号は西暦なのだが、あとでそれを読み直してみたところ「1660年生まれ。2895年、大学卒業。3772年、最初の本を出版」という具合に、ひとつの出来事と次の出来事の間がほとんど1000年も隔たっているではないか。私は爆笑しながらその紙を人に見せている。えなりかずきさんによく似た顔の男性が真面目に頷きながら、「私も以前、これとよく似た体験をしたことがあります」とコメントしている。夫がそれを受けて、「僕はそういう経験をしたことはないな」と言っている。そのあと私はさらに笑ったような気がするのだが、何がおかしかったのかは思い出せない。
【解説】 前後関係もそれぞれのストーリーが持つ意味もさっぱりわからないヘンな夢。但し、夢の後半では何度も笑っていた記憶があり、楽しい気分だったことは間違いないのだが。なお現実世界で寄付金を求められる心当たりは、とりあえずない。



3日●コンサートホールの上の祭壇
変則的な2階建ての巨大な建物。1階部分はコンサートホールのようになっており、ちょうど歌謡ショー(?)を開催中だ。既に何人も歌った後なのかも知れないが、私が最初に見た出演者は、ちょっと暗い感じのおかっぱ髪の美少女で、見た目は若い頃の藤圭子さんに似ている。着ているドレスがまたユニークで、お姫様が着るような真紅のロングドレスであるにもかかわらず、スカートの前部分はミニスカートになっており、腿から下が丸見えなのだ。彼女の両脚に綺麗な花の刺青が彫ってあるのが印象的だった。彼女は何か特徴的なオリジナル曲を歌った。次に登場した女性は、とてつもなく派手な紫色のロングドレスを着ている。彼女もまた聞いたことのないオリジナル曲を歌ってみせた。どちらもジャンルは演歌である。歌謡ショーの最中に、私は何度も建物の2階に上がってみる。2階は古い民家のような佇まいで、狭い和室は片側の壁が仏教の祭壇、反対側の壁が神道の祭壇になっている。但しそれらの祭壇は、一見ごく普通の民芸調箪笥(たんす)なのだ。私以外にも、大勢の客が1階と2階を昇ったり降りたりしている。私は神道の祭壇が気に入っているらしい。誰かが「この箪笥、何が入っているのかな」と言っているので、私は心の中で(最近の日本人は神道の何たるかも知らないのか)と驚いている。
【解説】 これまた意味のわからない夢だった。印象的だったのは、歌謡ショーで歌われていた歌がなかなかの名曲だったこと。しかもそれらは、現実世界では聞いたことのない、夢のオリジナル曲なのである。真紅と紫のドレスもゴージャスそのもので、しかし同じ場所の2階には仏教と神道の祭壇があるという、このミスマッチが意外にしっくり感じられたのも不思議なことだ。ちなみに藤圭子さんは1970年代に活躍なさった歌手で、宇多田ヒカルのお母さん。



4日●世界トップの研究所にて
アカデミックな機関。そこは大学院あるいは国立研究所のようなところで、世界でもトップクラスの研究を行なうインスティテュート(研究所)らしい。但しここで何の研究が行なわれているのかは不明。このインスティテュートでは、最も大事な式典が行なわれる際には、出席者全員にある一定の服装を規定している。それがここの「正装」なのだが、なぜかそれは、どう見ても体操着にしか見えない白(トップス)と青(ボトムス)の部屋着のようなシロモノなのだ。そのカジュアルさに私は驚いている。研究所内にある講堂のような部屋。前方に設えられたステージへと、例の白と青の服を着た大柄な白人男性が足取りも軽く登壇して行く。この人が世界トップの科学者だ。さすがにA国には素晴らしい施設と人材が揃っている。ふと、この会場のどこかに息子がいるような気がした。
【解説】 A国とはどこのことなのか、夢の中では最後まで明かされずじまいだった(おそらくアメリカ合衆国であろうと思うのだが定かではない)。この前に何かストーリーがあったようにも思うが、その部分が思い出せないので夢全体の意味がよくわからない。しかし、研究所の関係者が着ていたあの青いボトムスには見覚えがある。あれは間違いなく、現実世界で息子が愛用しているパジャマだった。この夢は何らかの形で、息子の将来を暗示しているのかも知れない。



5日●遥かなる地平線
果てしなく広がる荒野。その上に細く伸びた1本の長い道。私はその道を、どこまでもどこまでも歩いて行く。遥か彼方には、ゆっくりと波打つように地平線が広がっている。
【解説】 非常に短い夢。ストーリーと呼べるものもない。にもかかわらず、今夜の夢で見たあの大荒野は、遥か太古の昔にも見たことのある懐かしい風景のように思われた。



6日●あの人の死
湖に添って弧を描くような形で道路が伸びている。道路脇には、土産物屋らしき粗末な建物が数軒並んでいる。学生らしき若い人たちの姿が見える。ここは上野公園で、彼らは芸大生なのかもしれない(但し現実の上野公園とは似ても似つかない地形なのだが)。私は彼らに綺麗なパステルカラーの12色のクレパスをプレゼントする。次に気づいたとき、季節は9月に変わっていた。去年の暮れから今日に至るまでの10か月間の記憶が消えている。去年の暮れに誰か大事な人が亡くなったことを、このとき私は不意に思い出した。その人の死の衝撃があまりにも大きかったために、私は今日まで記憶喪失になっていたらしいのだ。そうだ、あの人は死んだのだ。そのことが実感として押し寄せてくる。重苦しい気持ち。40歳の若さで死んだその人は、遣り残した仕事がどんなにか心残りだったことだろう。塞ぎこんだ気持ちのまま、私は俯いて歩いている。それからどのぐらいの時間が経ったのだろう、不意に私は、これがすべて夢であることに気づいた。そうだ、あの人は死んでなどいない。これは単に夢なのだ。みるみる安堵の気持ちが戻ってくる。どこからか、「人が死ぬ夢は縁起がいいんだって。その人、きっと長生きしますよ」という声が聞こえた。
【解説】 夢の中の私は、この世の終わりでも迎えたように誰かの死を嘆き悲しんでいた。夢の中で誰かが「縁起がいい」と言っていたとおり、今夜の夢のテーマ「死と再生」は、確かにある意味で縁起のいい夢と言えるのかも知れない。



7日●マジック
気がつくと私は、古びた汽車(電車ではなく汽車)に乗っていた。通路を歩いていると、向こうからインドの美女が歩いてきた。彼女は艶然と微笑みながら、小さな女の子を空中でひっくり返して見せた。ひっくり返った女の子は洗濯板に変わり、もう1度ひっくり返すと今度は巨大な寒暖計になっていた。場面が変わり、サーカスの会場のようなところ。暗いテントの中には大勢の客が入っている。私もそのうちのひとり。どうやらこれからマジックショーが行なわれるらしい。客たちの顔は見えないが、声を聞く限り、ほぼ全員が中流階級以上の白人らしい。そこで話される言葉は主に英語で、ときどきスペイン語とヒンディー語が混じる。座席は、後方に行くほど高くなっていく階段状だ。そこへ、最後の客が到着した。しかし不思議なことに、彼の肉体は小さな頭だけなのだ。握りこぶし大ほどの頭から、マッチ棒程度の手足が生えた人間なのだ。しかしその姿に不気味さはなく、むしろオモチャのように可愛らしい。皆が、“Oh! Look at that man!”と言って驚いたように男のほうを見つめている。次いで誰かが、“And here comes his wife!”と囁いた。その言葉通り、「頭だけ男」の後ろからは、やはり頭だけの女性が歩いてきて、階段を上り、既に座席に座っていた夫の横に腰を下ろした。夫人は髪をきれいにカールして、優雅な感じだ。握りこぶしかリンゴほどの大きさしかない「頭だけ人間」の夫妻は、よく見るとなかなかの美男美女カップルなのだった。しかしこの人たちは、一体どうやって生きているのだろう。頭だけということは、心臓を含む臓器はどこへ消えてしまったのか。彼らは魔法使いが見せてくれる幻術の一種なのか。それとも改造クローン人間なのか。考えているうちに目が覚めた。
【解説】 今夜はマジックのほかに、もうひとつ、何か全く別の夢も見たような気がするのだが、最後に登場した頭だけの夫妻の印象が強烈すぎて、残念ながらほかのことは全部忘れてしまった。

【後日談】 この夢を見た約2週間後、とある会合に出席した。色々と差し障りがあるので、具体的な名前をあげることはできないのだが、そこで某有名マジシャンとお会いした。同じ会合では、ひとりのインド女性とも知り合ったのだが、その人は驚いたことに、どこからどう見ても7日の夢の冒頭に登場した「インドの美女」なのである。顔だけでなく、髪型や服まで夢の中とそっくり同じなのだ。彼女自身はマジシャンではなく、とある有名人の奥さんなのだが、とにかく、夢の美女と瓜二つ。それだけでも十分に驚きだったのだが、そのあと1時間ほど話し込んで完全に打ち解けた頃、彼女は“this is my daughter.”と言いながら娘さんの写真を見せてくれた。その写真に写っていた子が、これまたどう見ても、夢の中で空中で一回転していた女の子なのである。これにはもう、ただただ唖然とするばかり。しかも、相手がさほど親しい人でもなかったので、いきなり「実は2週間前に貴女の夢を見ましたよ」と告げることも出来ず、心のなかで悶々としていた私である。ちなみに、この女性とは来月一緒に食事をすることになっている。そのときに、雰囲気次第ではこの話をしてみようかとも思う。



8日●ヒマラヤのお祭り
周囲を山に囲まれた村の風景。大きな円盤型の建物があって、そこから荷物を搬出している人の姿が見える。彼はお祭り用のお面をかぶり、民族衣装風の金襴のコスチュームを身に着けていた。ここはヒマラヤの村らしい。ラダックではないかと思うのだが、定かではない。お面をつけた人たちの姿が、そこかしこに見える。彼らはチベット仏教の大祭である「ツェチュ」の踊り手なのだ。しかし、祭りだというのに村は閑散としている。観光客はおろか、村人の姿さえ見えない。不意に私の視線は高いところに移動し、これによって村の全体像が見えた。この村は、さほど高くはない平凡な形の山々に四方を囲まれた狭い盆地で、お椀を伏せたような形の円盤状の巨大な建物が村の中心にあるほかは、特に目立った建物もない。私はその風景を俯瞰しながら、(この山の形は良くないわ)と思う。気がつくと地面に立っており、私の横には父がいた。父にデジカメを渡し、私を撮ってほしいと頼む。父が私に向かってシャッターを押した。スクリーンで確かめたところ、うまく写っていなかったので、さらに2〜3回シャッターを押してもらう。父は特に迷惑がりもせず、何度かシャッターを押してくれた。私は父に礼を言った。よく見ると父は、私がまだ高校生だった頃の姿をしていた。その姿を見た瞬間、なぜか胸がズキッと痛むほどの申し訳なさを感じた。
【解説】 この夢を見終えた途端、急に目が覚めてしまった。時計を見ると、まだ明け方の3時である。こんな時間に目が覚めてしまうのは珍しい。目が覚めてから暫くの間、私は(父には申し訳ないことをしたなあ)とぼんやり思っていた。しかし、具体的に何について申し訳ないと感じたのかは、自分にもよくわからないのだが。父は昨年の11月に77歳で亡くなったが、考えてみればその人生は常に家庭の犠牲になっていたような気がする。もちろん、どこの家でも親というものはそういうものなのだから、当たり前と言ってしまえば当たり前なのだが、今夜はなぜか急に、父にはもっと別の人生を歩ませてあげたかったような気がしたのだ。



9日●師を探して
私は師匠あるいは指導者のような人を探しながら旅しているらしい。それが私自身の師なのか、息子の師なのか、あるいはそれ以外の誰かの師なのか、細かな事情はわからない。ほうぼうを歩いた末に、今、私は洞窟のようなところに辿り着いた。それは巨大な鍾乳洞のような場所で、中はかなり複雑な地形になっており、また大勢の人が何かを見学しながら歩いている。私はここでひとりの男性に逢った。顔はよく見えないのだが、おそらく初老の外国人ではないかと思う。この人自身は私が探している師ではないが、師を探すためのキーパーソンになってくれそうな気がする。このあとさらに誰かと逢い、直径1メートルほどの白っぽい円形のものを見たような気がする。
【解説】 そう言えば、自分の人生の中で心から「師」と呼べる人は何人いるだろう。指折り数えてみた。片手で十分に足りてしまう。いや、片手を出して数えるほど大勢の師を持った私は、むしろかなり幸運な人間の部類に入るのかも知れない。それほどまでに、真実の師に巡りあうことは難しいのだ。ただし、真剣に自分自身を磨いていると、師はおのずからこちらへ歩いて来てくれるものだが。……というようなことを、夢から覚めて唐突に思った。



10日●魅力的な山
広大な土地。空の青さが尋常ではない。太陽が近い。ここはヒマラヤなのか。目の前に、不思議な形の山がある。一目見た瞬間、(これは活火山に違いない)と思う。とても魅力的な形の、青い山だ。どこがどう素敵と口で説明することは難しいが、この山はひどく私を惹きつける。もしかしたら、過去にもこの山を見たことがあるのかも知れない。左手前に掘っ立て小屋が見える。そこから2〜3人の子ども達が元気に走り出して来ることを、私は期待している。
【解説】 この前後にストーリーがあったのかなかったのか定かではないが、青い山が本当に魅力的で、夢の中で私はその風景に見入っていたような気がする。

【後日談】 この夢を見た翌日、駐日コスタリカ大使とお目にかかった。来年の終わりあたりにコスタリカへ取材に行こうということになり、その件で打ち合わせをしたのである。帰りにコスタリカの資料を山ほど貰って来たのだが、家に帰ってからそれらの資料を丹念にひとつひとつチェックしたところ、なんと、夢で見たものと瓜二つの山の写真があったではないか。しかも写真の左手前には、夢で見たものと全く同じ形の小屋まである。まるでデジャヴュのようで、実に不思議な気持ちがした。私はコスタリカに行ったこともなければ、これまで写真集などを見たこともない。にもかかわらず、この山には何とも言えない懐かしさを覚えるのだ。これは一体どういうことか。


11日●思いがけないテロ
上空のほうに、何か細長いものが見える。それはリフトのケーブルかも知れない。そこで思いがけないテロが起こるのだが、そのテロでは人は死なない。流血騒ぎもない。それとは逆に、何か可愛らしい光景が見える。鳩と風船が見える。パステルカラーのイメージ。私は穏やかな気持ちでそれを見ている。
【解説】 実際に見たのは、何かもっと具体性のある夢だったと思うのだが、目が覚めてから顔を洗っているうちに記憶が曖昧になってしまった。「テロ」という言葉も間違って覚えているのかも知れない。夢の中では、「事件」と言っていたのかも知れない。とにかく、後味としては「可愛らしい」「穏やかな」感じの夢だった。



12日●上下が反転した鏡文字を書く
自分の手もとが見える。細長い白い紙があって、私は左から右に向かって長い文章を書き連ねているのだが、ひとつひとつの文字が、何故か鏡文字なのである。それも、通常の左右反転の鏡文字ではなく、上下が反転した鏡文字だ。この書き方は実に難しい。特に「め」という文字を上下反対に書くときは混乱した。「ぬ」では、さらに混乱した。文章全体はひとつのメッセージとして成り立っていたのだが、それがどんな内容だったか思い出すことは出来ない。
【解説】 この夢を見て急に思い出したことがある。私は幼い頃、左右反転した鏡文字を書くのが得意だった。ノーマルな文字を書くのとほぼ同じ速度、同じ端麗さで、左右反転の鏡文字を書くことが出来た。この能力は、小学1〜2年生頃がピークだったと思う。友達は「まみちゃん、どうしてこんなことができるの?」などと言いながら驚いたように見ていたが、当時は鏡文字を書くことなど朝飯前だった。と言うより、友人達は何故こんな簡単なことが出来ないのかと不思議でならなかった。あれはいかなる能力だったのだろう。少し気になる。



13日●探し物は何ですか
何かを探して長い旅をしている。旅の途中で見たのは、鼻の大きな外国人の男。彼は細君を連れている。ただしふたりは本物の人間ではなく、切り絵の人形だ。空に浮かんだ球形のもの。山。それでも探し物は見つからず、旅は続いた。不意に井上陽水さんの『夢の中へ』という歌を思い出す。あの歌のはじまりは、「探し物は何ですか」だった。そう言えば、私の探し物は何だったろう。何を探しているのかわからなくなってきた。いや、もしかしたらこの旅は、「何かを探す旅」ではなく、「何を探していたかを探す旅」なのかも知れない。私は黙って歩き続けた。
【解説】 何かを探しているのだが、何を探しているのか最後までわからない夢。最後に探すこと自体に意味があるのではないかと気づくのだが、そこへ井上陽水さんの歌がかぶって、とてもいい感じだった。今夜の夢は、人生の旅を意味しているのかも知れない。鼻の大きな外国人がどのような意味を持っているのかは、全くわからない。



14日●筋肉質な美大の先生
美大らしき建物の中。見たことのある顔の人たちが数人、部屋から出たり入ったりしている。私たちは何かのプロジェクトに取り組んでいるようだ。美大の先生が荷物を運んでいる。その人の上半身が、おとなしそうな顔に似合わずシュワちゃんもどきの筋肉質なのに驚いた。いつの間にか、私はその人の上半身裸の写真を手にしていた。「彼、顔に似合わずすごいいい体をしているんだねえ」と、誰かが驚いたように言いながら写真を覗きこんだ。私はまるで自分のことを自慢するような口調で、「そうなんですよ。彼はすごい体をしているんです」と訳知り顔に頷いた。その後、私は人を待つために自宅に戻った。そこはワンルームマンションなのだが、部屋自体は昭和中期を思わせる古い和室だ。出窓の外側には欄干のようなものがある。私はここで静かに誰かを待っているらしいのだが、その間に飲み物を買いに出かけたような気もする。やがて日が暮れてきた。不意に私は、(待ち人は来ないだろう)と悟った。
【解説】 まったく意味のわからない夢。「筋肉質な美大の先生」は何を意味しているのか、私は誰を何のために待っていたのか、ひとつとして腑に落ちる部分はなかった。



15日●曖昧な感じのする182cmの男
大きな木造2階建ての建物。そこは神殿のようにも学校のようにも見える場所で、私のまわりには数人の女性が見える。私たちは静かに何かを運んでいるようだ。1階と2階のあいだを何度か往復したような気がする。「勾玉」またはそれに類似した宝石を見たような気もする。気がつくと、私の横に背の高い日本人男性が立っていた。以前どこかで逢ったことのある人のように思える。その人の身長が182センチだということまで、何故か私は知っている。しかし、彼が誰なのか思い出すことはできない。男が、何か一言二言話した。曖昧な感じの語り口が嫌だなと思う。敬遠したい相手だ。そのあと、ほかの女性たちも一緒にどこかへ移動しようとしているところで目が覚めた。
【解説】 神殿のような建物と勾玉という、大吉っぽいアイテムが登場する夢だというのに、途中で妙な男が乱入し、夢の流れが変わってしまった。その男が誰なのかは全くわからないのだが、「182cm」という身長がぱっと頭に浮かんだのもおかしなものだ。ストーリーの流れは全く別物だが、イメージ的にはどことなく昨夜の夢にも似ているような気がした。さらに遡れば、今月3日の夢にも「1階と2階のあいだの階段を登ったり降りたり」「神棚」というアイテムが登場している。これらは何のメッセージだろうか。



16日●182cmの男リターンズ
気がつけば、すぐ隣に昨夜の夢に登場した182cmの男がいた。ほとんど頬と頬をくっつけるようにして、「僕のこと、そんなに嫌わないでください」と囁く彼。心のなかで(ギャーッ!)と叫びながら、反射的に回し蹴りを食らわせようとしたところで目が覚めた。
【解説】 時間にして1秒ほどの夢。夢から覚めるのがあと0.5秒遅かったら、回し蹴りが効いていただろうに。かえすがえすも残念だ。それにしても、このキモイ男は誰なのでしょう。夢の中のストーカー?



17日●印象的な絵画と長い滑り台
格式の高い中華料理店らしきところ。さほど広い店舗ではないが、細長い部屋と高い天井が印象的だ。私は編集者の芝田さんと、ほかに2人の男性と一緒に食事をしている。2人の男性の顔は見えないが、社会的地位の高い中年男性のようなイメージだ。私たち以外に客はいない。4人はおしゃべりもせずに淡々と食事を終えた。この場所は、高い山の上にあるような気もするし、早稲田大学の近くのような気もする。2人の中年男性は、芝田さんの早大時代のお知り合いなのかも知れない。私から見て右前の壁面に、500号ぐらいの大きな油絵が掛かっている。そこに何が描かれていたかはどうしても思い出せないのだが、異国的な風景と人物を見たような気がする。中南米またはヨーロッパの風景だったかも知れない。食事を終えた私たちは店を出ることになった。2人の男性は相変わらず無言だ。芝田さんが小声で、「私はこの方たちと先に行きますが、山の下で合流しましょう」という意味のことを言う。3人の男達が出て行ったあと、私はゆっくりと店を出た。そこは高い山の上で、少し霧がかかっている。人の姿はない。私はスリッパのようなブカブカの靴を履いているようで、一瞬、歩きにくいなと思う。しかし、その問題はすぐに解決したようだ。山の頂上に出てみると、そこから下界に向かって蛇行するようなかたちで、信じられないほど長い滑り台が続いていた。しかもそれは普通にすわって滑る滑り台ではなく、平行した2本のレールが50cmほどの間隔で並んでいるだけなのだ。私は何も考えずにいきなりレールに腕を掛け、腕の力だけを頼りに猛スピードで滑り台を滑り始めた。時速100kmは優に超している。爽快な気分。誰かが驚いたように見ていたような気もする。そうやって、くねくねした滑り台を何キロも滑走して行く。滑りながら、心のなかで(先ほどの2人は芝田さんの早稲田時代の先輩なのだろう)と急に思った。滑り台を滑り終わったあとどうなったのかは思い出せない。
【解説】 昨夜は就寝前にシドニーに住む娘と2時間ほどチャットした。娘はもうすぐ夏休み(注/南半球はこれから夏を迎えます)で一時帰国するのだが、帰ったらすぐ小学校時代の女友達数人と遊ぶ予定だという話を聞かせてくれた。彼女の小学校時代の女友達は皆、なぜか申し合わせたように早稲田大学に入学している。現実世界でそんなことがあったために、編集者の芝田さん(早大卒)が夢に登場したのかも知れない。ところで、2本の平行したレールに腕をひっかけて滑り降りてゆくという夢は、以前にも見たことがあるような気がする。あのときは確か、幼い息子を抱いたたまま滑って行ったのだ。今夜の夢でひとつ残念なのは、油絵に描かれていたモティーフを思い出せないこと。そこには何か意味深長なメッセージがこめられていたような気がするのだが……。



18日●善良で退屈な3つの光景
大きな民家が見える。この家は自分の持ち物らしいのだが、私はまるで他人の家に忍び込む泥棒のように、音も立てずに鍵を開け、こっそりと中に忍び込んだ。ここは、以前にも来たことのある場所らしい。その証拠に、前回自分で使った日用品などが、そのままの状態で置かれている。しかし私は、この場所に対して少しも愛着を感じない。息子の衣服も置いてあった。息子が「なくなった」と騒いでいたスポーツ用のハーフパンツだ。こんなところにあったとは驚きだ。食料品(あるいは薬品)が入っていたらしいビニール袋もそのまま放置されていた。前に来たとき開封したまま、袋を捨て忘れたものだ。袋の中には液体が入っていた。中身が腐っているといけないと思い、私は外へ出て庭に液体を捨てた。入り口から外に出るとき、ドアに鍵を差しっぱなしだったことに初めて気づく。危ない、危ない。あわてて鍵を引き抜く。庭へ出るとき、近所の人たちの姿が遠くに見えた。皆、善良で平凡そうな人たちだ。のどかで退屈な雰囲気。場面が変わって、飛行機の客席。2〜3人の男と1人の女が1冊の雑誌を読んでいる。雑誌には短編ミステリー小説が掲載されていた。男のうちの1人が、小説に書かれていることを証明してみせると言い出す。どんなことだったか思い出せないのだが、彼はその場で立ち上がると、マジシャンのような手つきで何かを証明してみせた。もう1人の男が、何かトリックがあるのではないかと言って騒いでいる。騒いでいる男は、善良そうだが退屈な男だ。再び場面が変わって、ひび割れた広大な大地が見える。もとは水田だった場所らしいが、長いこと雨が降らなかったのだろう、今は完全に干上がってしまっている。そこに、死んだ女が横たわっている。女は金髪の白人で、歳は20代前半だろうか。100年前の西洋で流行したようなデザインの赤または緑の派手なロングドレスを着ており、まあまあの美人だ。女の死体を前にして、カウボーイハットをかぶった善良そうな若い男が嘆き悲しんでいる。彼は、「君はなぜ死んでしまったんだ。君と結婚して家庭を築きたかったのに。家庭を築いて、たくさんの子どものパパとママになりたかったのに」という意味の英語の歌を切々と歌い上げている。それを聞いているうちに、私はようやくこれがミュージカルの一場面らしいと気づいた。男にはあまり歌唱力がない。二流歌手だと思う。男が嘆き悲しみながら女の死を悼んでいると、突然、死んでいたはずの女の手がひらひらと動いたではないか。驚いている男を尻目に、女は笑いながら起き上がった。その瞬間、乾燥しきってひび割れた田んぼに、一斉に青い稲が茂った。これを見て、どうやらこれはオーストラリアのホームドラマらしいことに私は気づいた。番組の担当カメラマンは、友達のジョンらしい。ジョンはさすがにいいアングルを撮っている。しかし、シナリオがダメだ。これはハッキリ言って駄作だ。ストーリーがあまりにも退屈だ。こんな駄作に予算を使ってわざわざ日本語吹き替え版を作ろうだなんて、予算の無駄づかい以外の何物でもない。日本語版を作ろうとしている○○テレビに抗議の電話をかけようと思う。
【解説】 今夜の夢は、特に面白いストーリーも決定的な展開もない、なにやらダラダラ続くだけでスッキリしない夢だった。このほかにも複数のサイドストーリーがあったように思うが、詳細は思い出せない。おそらく他の3つと同じく、善良で退屈なストーリーだったのだろう。
【後日談】 息子が通っている学校は奇妙な学校で、夏のあいだは1度も水泳の授業をしなかったというのに、11月から水泳の授業を始めるという(笑)。もちろん屋内プールなのだが、それにしても、今さら水泳の授業があるとは想像もしていなかったので、水着の用意がない。今年はもう要らないと思い、先日、山小屋に置いてきてしまったのだ。スポーツ洋品店に行っても今さら水着が置いてあるとは思えないので、ネットの通販で買うことにした。息子が注文した品を、昼間に私が受け取ったのだが、驚いたことに、その商品は18日の夢の中で見た「ハーフパンツ」と全く同じ品物ではないか。本体はもちろん、タグの位置なども同じだ。水着を買ったのは、この夢を見てから1週間以上が経ったあとのことである。不思議なこともあるものだ。



19日●完璧
長い時間をかけて、私は何かを準備している。それは百科事典とか全集といった類のもののようだ。「あ」から「ん」まで集まって、「A」から「Z」まで集まった。これで完璧だ。
【解説】 目が覚めてみると、何のことやら意味がわからない。何かが100%出来上がったことだけは確かなのだが……。



20日●忠犬ブースケ
どうやら私は寝ているあいだに誘拐されたらしい。目が覚めてみると、そこは鬼が島のような小さな島だった。海岸は岩だらけで、そこに波が打ち付けている。姿は見えないものの、あたりには見張りがたくさんいるらしい。さてどうしたものかと溜息をつく私。大海原に小さな白い波しぶきが上がっている。(こんな季節にサーファー?)と怪訝に思いながら目を凝らして見ると、なんとそれは愛犬のブースケではないか。ブースケは必死の形相で、短い脚で懸命に犬掻きをしながらこちらに向かっている。口にはロープらしきものを咥えている。どうやら私を助けに来てくれたらしい。(やっぱりブースケは私を裏切らなかった)と思った。
【解説】 誘拐されたというのに、ほとんど困っていない奇妙な夢。ブースケの必死の形相が実に可愛く、できれば夢のなかでデジカメを使って撮影したいほどだった。



21日●トミーのサイン
前後関係が良くわからないのだが、気がつくと周囲を高校時代の女友達に囲まれていた。ただし、彼女たちの姿はぼんやりとしか見えない。N美らしき人が、「ハードロックが入ってきたあたりから、私の心は彼らから離れたんだと思う」といきなり言いだした。どうやら彼女は、「ガロ」のトミーのことを言っているらしい。N美はさらに「ガロには<学生街の喫茶店>路線で行って欲しかった」などと言いながら、1枚の色紙(?)を取り出し、「見てよ、このトミーのサイン。最初のmの字がよくないでしょ。mという文字は、真ん中で分けて書かなくちゃダメよ」と言った。「m」を真ん中でふたつに分けて「nn」のように書けというのがN美の主張なのだ。しかし、名前の始まりなら「m」ではなく「M」だし、第一トミーのサインなら「M」ではなく「T」で始まって然るべきではないか。「それはトミーのサインではないのでは?」と言おうとしたところで、突然目が覚めた。。
【解説】 例によって、まったく意味のわからない夢。「ガロ」は1970年代に『学生街の喫茶店』で大ブレークした男性3人ユニット。そういえば、3人のなかのトミーという人は、20歳そこそこで不慮の死を遂げたと聞いている。高校時代のN美は確かにガロが好きだったが、彼女はトミーではなくマークのファンだったはず。そんなことを、目が覚めてから暫くぼんやり考えた。最近、高校時代の友達とも疎遠だなあと思う。年賀状のやり取りをしている高校時代の元クラスメートは、今も10人ぐらいいるが、年賀状だけで実際に逢うことはない。N美に至っては、まったくの没交渉だ。住所も何もわからない。大学時代はサルトルの原書を読むために仏文を専攻し、なかなかインテリな彼女だったが、今頃はどうしているのだろうか。久々に彼女のことを思い出した。



22日●才能のない営業マンたち
営業職らしき男性が大勢見える。そのなかに、ひとりとして知った顔はない。全員がグレーのスーツを着た中年男で、書店または印刷関係の会社の人のようだ。私たちは書店に来た。ここは普通の書店とは少し様子が違い、ショールームのような雰囲気である。置いてある本の数が少なく、棚のなかに小奇麗にディスプレイしてあるという感じなのだ。目の前のホワイトボードに、書店(あるいは出版社?)の名前が記されたネームプレートがたくさん貼ってある。そのなかの1枚を取って、営業マンの男性が「ここへは今日中に現金を支払ってあげないと。ここは経営が苦しそうですから」などと言っている。私は彼に、「失礼ですが、あなたはどのぐらい売り上げていらっしゃるんですか」と尋ねた。すると男は得々とした様子で「25万部です」と答えた。「それは、掛売りなのですか」と私は男に尋ねた。彼からは「いいえ。うちは掛売りはしません」という答えが返ってきた。暫くすると、私はまた別の営業マンと話している。私が今度も同じ質問をすると、男はにこやかに「25万部です。うちは掛売りはしません」と即答した。私はそこに作為的なものを感じ、(この男達は社長からあらかじめ命じられた回答を機械的に話しているだけだ)と思う。もうひとり、少し疲れた感じの営業マンが見えた。彼は半分白髪で、いかにも人が良さげだ。私は彼に同じ質問を繰り返した。すると男は「ええ、掛売りです」と答えた。やはり掛売りだったのだなと私は納得し、この会社の人間が言うことは嘘八百で当てにならないから気をつけようと肝に銘じた。気がつくと私は、なかでひとりだけ若い25歳ぐらいの営業マンが運転するオープンカーの助手席に乗っていた。彼は性格的に憎めないところがあるが、いかんせん口が軽い。何も尋ねないのにベラベラといろいろなことを話してくれる。来週の月曜と火曜に出張で箱根(?)へ行くことになっているので一緒に行きませんか、と旅行に誘ってきた。私は即座に「時間、ありませんから」と答えた。男が「いつならお時間いただけますか」としつこく聞くので、「あなたと旅行をする時間は、永遠にありませんから」と答えた。再び場面が急転し、大きなホールの客席。私が書いた脚本がミュージカルになって、今しも上演されようとしている。主役の女優を決め忘れていたので、急遽、娘に頼んでステージに立ってもらうことになった。娘は「えっ、どうして私が!?」と驚きながらも、乞われるままステージに登り、ぶっつけ本番で英語の歌を歌ってくれた(しかも詞と曲は即興で自分で作らなくてはならないらしい)。かなりアップテンポで早口な面白い曲だ。なかなかの出来だと思う。しかし私の後ろの席でミュージカルを観ていた男(先ほどの営業マンたちが勤務する会社の社長らしい)が、小声で「うーん、イマイチだな」と呟く声が聞こえた。私は(何コイツ、自分のところの社員の無能ぶりは棚に上げて、イヤなヤツ)と不愉快に思っている。
【解説】 例によって何やら全く意味のわからない、冗長で疲れる夢。大勢の「できない営業マン」が登場し、さまざまな会話が交わされたが、意味のある会話はひとつもなかった。このところ、意味不明な夢が多すぎる。明日の晩は、もう少し感性豊かな夢を見たいものだが。



23日●神社へと通じる長い階段
気がつくと、恐ろしく長い急勾配の階段を登っていた。ここは神社へと通じる階段だ。いったい何百年前に造られたものなのか、苔の生えた石段は、ところどころが崩れ落ちそうになっている。誰か知った人がふたりほど、すぐ近くを登っていたような気がするが、気がつくと彼らは姿を消していた。ふと私は、この場所に来てはいけなかったのではないかと思う。確か、以前に誰かから、この場所に来てはいけないと警告を受けていたはずだ。はっと思ったときには、鬼のような形相の男が上から降りてくる姿が見えた。この男は殺人犯なのだ。この場所に来れば、殺人犯に出会ってしまう。だからここへは来てはいけないと、前に夢のお告げで聞いていたのだ。男が近づいてきた。私は自分自身に(現実世界でこの階段を見たら、絶対に登らないようにしなければ)と言い聞かせている。
【解説】 夢の中の私は、自分が夢を見ていることをハッキリと理解していたらしい。夢の中で、(これは前に夢のお告げで聞いていた)と思っているということは、今夜の夢は夢の中で夢について語る、いわば「劇中劇」のような夢だったと言えるかも知れない。それはともかく、もしも現実世界で今夜の夢に登場した階段を見たら、絶対に登らないように気をつけようと思う。



24日●正しい文章はどちらでしょう
目の前にノートがあって、そこにはふたつの文章が並んで書かれている。ひとつの文章は、文字数にして20〜30文字だ。それぞれの文章は似ているが、一箇所だけ微妙に違っている。私は、そのうちのどちらが正しい文章かを言い当て、さらにその理由を説明しなければならない。全てのページに、同様の質問が書かれている。私は(こんなに質問数があるなんて、面倒くさいわねえ)などと思いながらも、真面目に問題を解き続けている。
【解説】 夢の中でおびただしい数の文章を読んだような気がするが、何が書かれていたのかは思い出せない。どこかに「樟」という文字があって、その文字の真偽を説いていたような気がするが、これも定かではない。



25日●大地震
息子とふたりで巨大な建物の中を歩いている。そこはおそらく東京で、私たちはどこかのファイブスターホテルに来ているのだと思う。息子と歩いていると、どこかで見たことのある男の姿がチラチラ見えた。なんとそれは、例の182cmの男ではないか(今月15日〜16日の夢参照)。あいつはこんなところにまで出没しているのか。男は何か言いたげにこちらを見ている。私は無視してどんどん先へと急いだ。しかし、ホテルの中をさらに歩いて行くと、またしてもその男とすれ違った。エレベーターの中でも会ったような気がする。ほんとうにしつこい男だと思う。最後に、息子と私はホールのような巨大な部屋にたどりついた。恐ろしく天井の高い部屋だ。このとき私は、理由のわからない胸騒ぎを覚えた。遠くのほうから「ゴォー」という低い地鳴りのような音が近づいてくる。と思った次の瞬間、信じられないような大地震が襲った。私は立っていられなくなり、床に倒れたまま息子を庇おうとしている。息子は、「俺は大丈夫だ。安心しろ」というような意味のことを言ったようだ。天井からは巨大なシャンデリアが吊るされている。あれが落ちませんようにと私は祈った。揺れはとてつもなく大きく、しかも長時間続いている。震度7はありそうな大地震だ。(家にいる夫は大丈夫だろうか)と思ったところで目が覚めた。
【解説】 実に恐ろしい夢だった。あの揺れの激しさは、夢の中とは思えないほど現実味があって、今この瞬間にもシャンデリアが落ちてきて死んでしまうのではないかと本気で思ったほどだ。これほど恐ろしい夢は、最近あまり見たことがない。しかも、今夜の夢にまたしても例の「182pの男」が登場したことが、まったく解せない。夢の中とは言え、疫病神のような男だと思う。



26日●IQテスト
よく似たふたつの文章が、ペアで100組ほど印刷されている。ふたつのうち、どちらが正しい文章であるかを瞬時に選び取る作業に没頭している私。文章は、日本語と英語、それにラテン語とサンスクリット語の4つの言語がごちゃ混ぜになっている。これは新手のIQテストらしい。メンサのコアメンバー数人が横にいて、ラテン語で「やっぱりIQは年をとっても変わらないものだな」などと感想を述べ合っている。私は(IQなんてどうでもいいから、早くこの作業を終えてワインを飲みたいんですけど)と思っている。
【解説】 時間にして2〜3秒にも満たない短い夢。「メンサ」は高IQの人々から成る会員制クラブで、全世界に支部がある。少し前にメンサのメンバーから、とある報告を受けたので、そのことが夢に現われたのかも知れない。



27日●テーブル対抗クイズ大会
ホテルのボールルーム。円卓がたくさん並び、それぞれのテーブルには正装した男女がすわっている。私の左隣はスペイン公使だ。私たちはテーブル対抗クイズ大会を行なっている。しかも、賞品はなんと宇宙旅行だという。これはどうしても当てたいところだ。私たちは、英語で読み上げられるクイズを食い入るように聞いている。10問ほどが既に終わり、今のところ私たちのテーブルは全問正解だ。向かい側の席に座っているのは、どうやらフランソワーズ・サガンらしい。報道によればサガンは亡くなったことになっているが、何のことはない、たいへん元気そうである。しかし彼女は英語のクイズは苦手らしく、先ほどから1問も答えていない。そのまたお隣は、有名な物理学者だ。顔は知っているが名前がわからない。そのほかにも、アメリカ人ジャズ歌手や占い師、カトリックの司祭の姿などがチラチラ見える。最後の問題が読み上げられた。これに正解すれば、私たちは全員で宇宙旅行に行ける。出題されたのは、何か千利休に関する問題だったらしい。全員の目が一斉に私の上にそそがれた。スペイン公使が「マミ、間違えるなよ」とスペイン語で言った。私はなぜかインドの言葉で「アッチャー、ヘイ(了解)」と返事をし、ボードに答えを書き始めた。
【解説】 昨夜は現実世界でも大きなパーティーに出席し、私の隣はスペイン公使だった。そのシチュエーションがそのまま夢に出現したのだが、夢のなかで何故クイズ大会をすることになったのかは謎。そう言えば昨夜の夢でもIQテストを受けていたし、多言語が話されていた。昨夜の夢と今夜の夢はシリーズになっているのかも知れない。



28日●2という数字
夢の中で、(2を使わなくちゃダメなのね)と思っている。そう、ポイントは数字の2だ。まわりに白い陶器がたくさん見えたような気がする。私は忘れないように空中に大きく「2」と書いておいた。
【解説】 これまた意味のわからない夢。おそらく今夜の夢はこれだけではなかったと思うのだが、なぜか「2」というイメージしか思い出せない。「2」がどうしたというのか、具体的なことはわからない。



29日●歌う男
前後関係を思い出せないのだが、ヒスパニック系らしき男が歌を歌っている。彼は、年の頃なら50代半ばの、新聞配達店、またはクリーニング店の関係者だ。髪はほぼグレーで、痩せており、鷲鼻が目立つほかに特徴はない。彼のまわりを取り囲むようにして、何か固い和紙のような紙を蛇腹折りにしたものを持った人が、数人立っている。私もそのうちのひとりだ。彼の歌声は素晴らしいが、最後の音だけ何故か発声できない(あるいは、音を外してしまう)。これが、この男の能力の限界なのだなと思う。
【解説】 この場面の前に、何か前段階となるストーリーがあったように思うのだが、まったく思い出せない。歌っていた男の顔は、現実世界でもどこかで見たことがあるような気がするが、それは単に、彼がどこにでもいそうな十人並みの容貌の持ち主だったことを示唆しているのかも知れない。



30日●Y美さんのフランス留学
小学生時代の同級生だったY美さんの姿が見える。そのまわりにも、同年代の女性が数人いるらしいが、気配だけで姿は見えない。突然Y美さんが、「私やっぱりフランスへ留学することにしたわ」と言った。私は少しいぶかりながら、「それは素敵な選択ね。留学先はパリ第四大学?」と尋ねた。するとY美さんが「パリ第四? 何それ?」と首を傾げるので、私は驚いて、「パリ第四大学は、ソルボンヌ大学の正式な名前だけど」と答えた。Y美さんは「へええ、そうなんだああ」と目を見開いている。そんなことも知らずにフランスに留学しようとする彼女のことが、急に心配になってきた。
【解説】 このほかにも、今夜の夢には「学校」とか「留学」がキーワードの出来事がたくさん登場したような気がする。これはおそらく、現在執筆中のバイリンガル育児関連本の影響ではないかと思う。なお、Y美さんは特に親しかった友達ではなく、何故今になって夢に登場したのか不明。Y美さんはずっと地元(長野)で暮らしていて、フランスとも接点がなさそうに思うのだが。ソルボンヌと言えば、最近親しくさせていただいているフランソワーズ・モレシャンさんがソルボンヌ大学ご出身だが、もしやそのことが夢に影響しているのだろうか。いろいろな点で不可解な夢である。



31日●チョコレートドリンク
ホテルのロビーのような広々とした空間。そこに特設会場のようなものが設営されており、巨大スクリーンに何か映画らしきものが映し出されている。しかし、その区域は招待客しか入れないようだ。招待券を持っていない私は、会場のすぐ外、つまりロビーの片隅のような場所にいて、椅子にすわっている。すぐ近くには、とても小さなスクリーンがあって、特設会場内にある巨大スクリーンと同じ内容の映像が映し出されている。私の周囲には、やはり招待券を持っていないらしい人たちが10人ほどいて、それぞれ椅子に座って小さなスクリーンに目をやっている。彼らは全員が外国人で、そのうちの少なくとも2人はインド人の夫妻のようだった。不意に、ホテルの従業員がやって来て、小さいスクリーンを取り外してしまった。映画の途中だったため、その先を見られなくなった私たちは、それぞれに不満な想いを抱えている。特設会場にはほとんど人が入っておらず、席はガラガラである。こんなに空いているのなら、会場に入れてくれても良さそうなものだ。このホテルは吝嗇というか、心が狭いと思う。映画の続きを見ることを諦めた私は、席から立って近くの売店に立ち寄った。そこで販売されているチョコレートドリンクがなかなか美味しそうなので、注文してみた。1000円を出したところ、おつりが500円戻ってきた。チョコレートドリンクが1000円だと思い込んでいた私は、「500円得をした」と思っている。このほかにも、何か飲み物を買ったような気がするが、そのたびに1000円だしては500円のおつりを貰っていたような気がする。
【解説】 昨日、娘とチャットをしたときに、チョコレートの話になった。娘と私はチョコレート中毒(笑)。と言うのは冗談としても、かなりのチョコ好き人間なのだ。そのなかで私が娘に「あのGODIVAが、最近チョコレートドリンクを発売したのよ。名前はショコリキサーっていうんだけど、価格は580円。あのGODIVAにしては、メチャクチャ安いと思わない?」と告げたところ、娘は「えーっ。是非とも飲みに行きたい。お母様、日本への一時帰国中に連れてって♪」と反応してきた(爆)。そのことが、おそらく今夜の夢になっているのではないかと思う。娘はシドニーに留学中だが、明後日から一時帰国するので、帰ってきたら早速一緒にGODIVAのショップへ行こうと思う。




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