子どもの頃、私はしばしば予知夢を見た。祖父が事故に遭う夢、飛行機が落ちる夢、医者から不妊症と診断された女性に子どもが授かる夢…。その頃は、誰もがごく普通に予知夢を見るのだと信じていた。だから、実際はそうではなく、予知夢を見る者は例外的存在なのだと知ったときの衝撃は大きかった。夢とは一体何だろう。そこには、深層心理DNAの中に刻まれた膨大な量の記憶の堆積が関与しているように思う。ここで私が言う記憶とは、前世の記憶といったオカルト的なものでは全くなく、先祖から無意識に受け継いだ生物としての記憶のことである。2003年の暮れ、不思議なことがあった。友人でイラストレーターのカノンさんから電話があり、こんなことを言われたのだ。いわく、彼女の夢の中に私が現われ、瓶に入った香油のようなものをプレゼントして行ったと。実は、その直前に私は仕事で南インドを訪れ、そこで彼女のためにアーユル・ヴェーダ用のマッサージオイルを買い求めたばかりだった。私がまだそのことを告げない内に、彼女はそのことを夢の中で知っていたのである。この出来事が、今回ホームページで「夢日記」を公開することを私に決意させた。夢とは、私の中で眠っているもうひとりの私からのメッセージではないだろうか。その真実を探る手がかりを得るために、私は自分の夢を記録することにした。これは、私自身の私自身による私自身のための深層心理の記録である。
※夢が現実になった場合や、夢と現実の間に何か関係があった場合に限り、後日談を記す。


2004年1月1日 山田真美







2006年2月


1日●太ったことを喜ぶ
行く先々で「あら真美さん、少しふくよかになられた?」と聞かれる。どうやら体重が2キロほど増えたらしい。この世界では太ることは吉兆のようだ。私は「あら本当? 嬉しい!」などと言って喜んでいる。

【解説】 この前後にもストーリーがあったのだが、思い出せない。現実世界の私は最近になってホットヨーガを始めたため、太るどころか反対に2キロほど体重が落ち、体調は絶好調である。にもかかわらず夢の中で反対に太っていたのも奇妙な話だ。ちなみに『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「太る夢」の意味は「心身のパワーや利益」だそうである。


2日●独房の中のホリエモン
塀の向こう側。独房に入ったホリエモンの姿が見える。ホリエモンは「なんで俺がここにいるの?」と言いたげな顔で半分キョトンとしながらこちらを見ている。塀の前を、小学生ぐらいの男の子の手を引いた厳しい顔つきの母親が通りかかり、子どもに対して「ほらご覧なさい。おまえもちゃんと勉強しないと、ああいう人間になっちゃうのよ」などと言っている。子どもはションボリ俯いて歩いている。私はこの男の子を気の毒に思っている。別の大人が歩いて来て、ホリエモンを見ながら「やっぱり株なんてやるもんじゃないよね」などと言っている。そのあとも数人の人が通りかかって、口々にホリエモンを批判している。私は心のなかで(人間の心ほどいい加減なものはない。勝てば官軍で必要以上に持ち上げ、負ければ必要以上に突き落とす。もう少しバランスの取れた見方は出来ないのか)と思っている。
【解説】 今夜の夢は、あまり面白味のない夢だった。私は株というものに興味がなく、また堀江さんのような人にも関心がない。このタイプの人がクローズアップされるたびに、日本には大局を見通すことの出来る大人が少ないとつくづく思う。今夜の夢は、空疎でスカスカな日本を見せつけられたようで、何やら空しい感覚だけが残った。



3日●二つ折りに出来る女の子
無機質な感じの長い通路を歩いて行くと、向こうから背の高い男性と小さな女の子が歩いて来た。男性の身長は優に2メートル以上あって、顔はよく見えないが、おそらく35歳〜40歳ぐらいの白人と思われる。女の子の身長は男の半分もない。不思議なことに、女の子のからだは胴の辺りでポキンと二つ折りにして持ち運ぶことが可能らしい。男はこれから女の子を二つ折りにし、飛行機に乗るようだ。女の子には感情も神経がないのだろうか、二つ折りにされることに何ら抵抗はないと見える。私はそのまま歩き続けて、今しも二人とすれ違おうとしている。
【解説】 これまた意味不明な夢だった。目が覚めてから思い出してみると、私たちが歩いていた長い通路は、空港内部にある通路だったかも知れない。登場した男女の顔はよく見えなかったが、それは私が彼らに対して無関心だったことを意味しているような気もする。この夢のあとに、もっと身近で懐かしい人たちが登場する夢を見たように思うのだが、残念ながらそちらの内容は何ひとつ思い出せない。


4日●ヘレンの名を連呼する少年
前後関係がわからないのだが、気がつくと自動車に乗っていた。座席が少なくとも横に4列以上はある大型のバンだ。前から2列目の右端に、赤ちゃんを抱いた少年が乗っている。彼は中3か高1ぐらいで、眉を極端に細く整え、昔の不良が着たようなガクランを着ている。前から3列目には彼の男友達2〜3人と、ヘレンという名前の白人女性(おそらくアメリカ人)が座っている。ヘレンは21〜22歳の平凡そうな女性だ。少年とヘレンはどうやら夫婦らしい。私は4列目に座っており、前の座席で起こっていることがすべて見えている。私たちはバンでどこかへ移動しようとしているのだが、その間ずっとガクランの少年は後ろを振り向いては「ヘレン、ヘレン」と妻を呼び、些細なことを話しかけている。彼は心底からヘレンに惚れているようだ。一方のヘレンは無口な女性で、幼い夫から呼ばれると一応そちらのほうは向くのだが、あまり相手をしてやらない。1分間に5回も6回も後ろを振り向いてヘレンの名を連呼する少年を眺めながら、私は(そんなにへレンが好きなら、並んで座れば良いのに)と思っている。
【解説】 今夜の夢も、何が言いたいのかわからないストーリーだった。眉を極端に細く整えたガクラン少年とアメリカ人女性の組み合わせもミスマッチで、とても夫婦には見えなかった。


5日●サクラサク
私はどこかの大学(あるいは高校?)に入学したらしい。近くには同級生がたくさんいる。見渡す限り初めて見る顔ばかりだ。すぐ近くの人たちとお喋りをしながら何時間かが過ぎた(または何日も経過したのかも知れない)。その間、知り合ったのはすぐ近くにいる数人の人たちだけで、少し離れた場所にいる人たちとは未だに「こんにちは」の挨拶を交わすチャンスさえない。場面が変わり、受験の神様として有名な湯島天神。私は知人のお子さんのために合格祈願をしに来たらしい。知人のお子さんは私立中学の受験を控えているのだ。しかし湯島天神はすべIT化されたらしく、神主や巫女の姿は見えず、本殿の前にコンピューターが設置されているだけ。パソコン画面に受験日と受験番号、受験者の氏名を入力するシステムになったようだ(不思議なことに受験校を入力するスペースはない)。私は画面上に「受験日2月7日」、「受験番号B27(またはD27?)と打ち込んだ。そのあと、知人のお子さんの名前を一瞬度忘れしてしまうのだが、すぐに思い出して名前を打ち込むと、薄いピンク色の文字で「サクラサク」と出た。
【解説】 そう言えば世の中は受験シーズンだ。先週末、某私立大学の附属中学で先生をしている人から、「今週末が試験なので、私も試験監督で出勤よ」という話を聞かされたばかりだったので、そんな世間のムードを反映して今夜の夢を見たのかも知れない。パソコンに打ち込んだ「2月7日」、「27」という数字が妙にリアルだった。なお、湯島天神がIT化されたという話は現実世界では聞いたことがない。
【後日談】 この夢を見た数日後、夢に現われた知人から「お蔭さまで子どもが第一志望の中学に合格しました」という嬉しい報告を受けた。個人情報保護のため詳しい話ははぶくが、お子さんの受験番号は3桁の数字だったという。実は、この夢の中で「B27」という番号を見たとき、「B」は「3」のようにも見えたのである。もしも夢の中で見た数字が「B27」ではなく「327」だったのだとすれば、知人のお子さんの受験番号とは数字が1つ異なるだけの、極めて似通った番号だったらしい。不思議なことがあればあるものだ。


6日●法律部門の最小化
このたび日本政府に「歳賀部」という部署が出来たらしい。「歳賀部」と書いて「さいかぶ」と読むようだ。聞いたことのない日本語だと思い、首を傾げている私。歳賀部は日本国憲法を始めとする法律全般を統括的にまとめる部署で、配備される人員はたったひとりであるという。そのひとりとは、現国会議員の某氏(実在の人物ではない)である。指名された某氏は40代後半、「え、私がやるの?」とでも言いたげな表情を浮かべている。法律は恐ろしく煩雑な世界だと思っていたが、実はたったひとりの公務員だけで取りまとめることの出来るほどシンプルなものだったのか。そのことを知って私は驚いている。
【解説】 このあと何か非常に面白いストーリーが続いたことは間違いないのだが、残念ながら目が覚めると同時に忘れてしまった。なお辞書で調べてみたが、「歳賀」という言葉は日本語にはないようだ。


7日●原爆ドーム
広島の原爆ドームによく似た、しかし別の場所。辺りは閑散としており、生活臭というかリアリティーが希薄だ。ここは何らかの仮想空間なのかも知れない。鮫のような奇妙な形をした大きな乗り物(爆撃機?)が超低空飛行で現われ、その直後に核爆発が起こった。恐ろしい閃光が視界一杯に広がる。但しそれは仮想空間での出来事なので、見ている人間が被爆するようなことはない。この光景を別の人にも見せたいと思う。次の瞬間、気がつくと私は幼い息子を伴って再びこの場所を訪れていた。息子はまだ3〜4歳で、私は彼の手を引いて懸命に走っている。再びあの爆撃機が音もなく近づいてきた。核爆発の閃光を予感する私。しかし今回は何故か爆発は起きず、爆撃機はそのまま去って行った。場面が変わって、高層ビルの最上階。社長室らしきオフィス。2つ並んだ立派な椅子。そこには、健康的にコロコロ太った2人の紳士が並んで座っている。2人は社会的身分の高い人たちで、まるで双子のようによく似ている。まるで Tweedledum and Tweedledee のようだ。彼らの姿を見た途端、私はたまらなく懐かしい気持ちを覚えた。
【解説】 このあと、さらに場面が2転3転して新しいストーリーが展開したように思うのだが、その詳細は覚えていない。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「爆弾」の意味は「今の環境を破壊して新しい世界を一から作り直したいという願望の現われ」、「太った人」の意味は「心身ともに上昇気流に乗っている証し」、「双子」の意味は「物事の二面性をよく見極める必要」だそうである。


8日●放射能に汚染された世界での最後の晩餐
ひとりの女性が空っぽのベビーカーのようなものを押して薄暗い部屋に入って来た。それはやや細長い部屋で、ところどころに段差がある。数人の男女が無言で女性を迎え入れた。彼らは赤ちゃんのことで何か短い話をする。具体的にどんな話だったのかは思い出せないが、彼らにはどこか淋しい雰囲気が漂っていた。私はベビーカーを押した女性にシンパシーを感じている。場面が変わり、どこか別の場所にあるやはり薄暗い部屋。アンネ・フランクの一家が隠れ棲んだ屋根裏部屋のような雰囲気が漂っている。私は理由があってこの部屋で暮らしているらしい。夫と娘も同じ室内にいるようだ。外出が許されていないので、私はだいぶ前から木の寝台で寝転んだままだ。そこは核戦争または何らかの別の理由で放射能に汚染された世界なのかも知れない。外にベランダがあって、別の家族が食事をする姿がガラス越しに見える。彼らはアメリカ人のようで、両親と3〜4人の子どもたち、それにお祖父さんかお祖母さんもいるようだ。暫くすると彼らは部屋に戻って行った。次に彼らがベランダに姿を現したとき、人数は前回に比べて3人か4人ほど減っていた。放射能汚染が進み、何人かが死んだのだろう。人類滅亡の日はそう遠くないのかも知れない。今ベランダでとっている食事が、おそらく彼らにとっての最後の晩餐なのだと思われる。
【解説】 昨夜に引き続き、核戦争または放射能に関連した夢である。何故このような夢を見るのか、理由は定かでない。最初のほうで空っぽのベビーカーを押した女性が現われたが、それは「何らかの理由で赤ちゃんを産めない女性全般」を示しているようでもあった。今夜の夢は全体的に「人類の終焉」を思わせる物悲しさを秘めていた。



9日●年上の男性を怒鳴りつける
社会的な身分の高い年上の男性を怒鳴りつけている。怒りの内容は全く思い出せないが、私は心底から猛然とその男性に怒りを爆発させ、大声で怒鳴りつけている。
【解説】 この前後にも間違いなくストーリーがあったはずだが、怒鳴っている自分のパワーがあまりにも凄まじく、ほかの場面は全て吹っ飛んでしまった。現実世界の私は、家族や親しい友人達によれば「炎のような人」で、かなり激しく生きているらしい。その「炎」が、今夜の夢の中では炸裂したようだ。


10日●一夫多妻に誘われる
年老いた大富豪の白人紳士の姿が見える。眼窩が落ち窪み、眼光は鋭く、長めの白髪が肩まで届いている。私は彼の通訳をしているらしい。私たちはシルバーメタリックのリムジンカーに乗っているのかも知れない。場面が変わり、目の前にE美さん夫妻の姿が見える。E美さんはにこにこしながら、「真美さん、うちの夫と私と3人で夫婦として暮らさない? 相手が真美さんなら、一夫多妻でも私は全然ジェラシーを覚えないし、むしろとっても楽しいと思うから」と言った。私は心のなかで(確かに、相手がE美さんなら、一夫多妻でも構わないかも知れない)と思っている。再び場面が変わり、屋外でテレビ番組の撮影(?)をしている。私は何かを受け取るために、見知らぬ家に入って行った。そこは小さな一軒家で、2階にAD(アシスタント・ディレクター)の男性がいるらしい。ひどく狭い階段を登って行くと、何故か途中で階段が途切れてしまった。天井の一部が開き、小さな窓からADが顔を出した。彼はいかにもオタク風の長髪の男性だ。私の顔を見ると一瞬にしてすべてを理解したようで、無言で手を差し伸べてきた。どうやら天井裏の部屋に登って来いと言いたいらしい。しかしそこへ登るためには、現在立っている階段から、天井の高さにある小さな窓に足をかけて一気によじ登るしか方法がないようなのだ。ADがしきりに(大丈夫ですよ)と言いたげに手を差し伸べてくれるので、私は思いきって天井の窓のところに右足の指先をかけた。ほとんど180度の開脚である。自分の身体がこれほど柔らかくなっていることに驚いた。ホットヨーガをやっていて良かったと思う。
【解説】 今夜の夢は短いストーリーの羅列で、それぞれの物語には関係性がなく、また身に覚えのない話ばかりだった。なかで特におかしかったのは、E美さんのエピソードだ。E美さんは昔の友達で、今は海外に住んでいらっしゃる。E美さんも旦那さまもさっぱりした性格で、たいへん明るく健康的なご夫妻だ。およそ一夫多妻などという淫靡な世界とは縁のなさそうな彼女だけに、今夜の夢はまったく意味不明だった。暫く音信不通になっている相手なので、たまには連絡を取ってみようと思う。


11日●30の倍数の名前が付いたセル
やや丸みを帯びた長方形。その中はいくつかのセル(小さな部屋)に分かれている。それぞれのセルには名前が付いており、「30」「60」「90」「120」という具合に30の倍数で呼ばれている。私は現在、右上の角のセル「30」にいるのだが、逢いたい相手は左下の角のセル「180」にいる。私は右回りで「180」に進んだ。しかし私が「180」に到達したとき、相手は「30」まで進んでいた。どうやら相手も私と逢うために右回りに進んでしまったらしい。両者は苦笑いをしている。逢おうとしている相手は、家族の誰かかも知れない。
【解説】 私の夢には、しばしば意味不明な数字が登場する。今夜の夢もその一例だ。私は「9」という数字が大好きで、同時に「3」と「6」にも安らぎを覚える。また「1」という数字には一種の信頼感を覚えるが、「2」「4」「5」「7」「8」にはシンパシーを感じない。「30の倍数」は当然「3の倍数」なので、今夜の夢に登場した数字はすべて「私が好きな数字の倍数」ということである。そのせいか、ストーリー的には意味不明な夢であったにもかかわらず、今夜の夢は安堵感と親密さに溢れていたような気がする。



12日●この子、誰の子?
小学校高学年ぐらいの少年の姿が見える。この子は誰の子だろう。少年は次第に成長してゆき、その姿にオーバーラップするように、ひとりの成人男性の横顔が見えた。日本人のようだが、かなりハッキリとした目鼻立ち。この人が少年の父親だ。小学校高学年ぐらいの少年の姿が見える。この子は誰の子だろう。少年は次第に成長してゆき、その姿にオーバーラップするように、ひとりの成人男性の横顔が見えた。日本人のようだが、かなりハッキリとした目鼻立ち。この人が少年の父親だ。
【解説】 上に書いた文章は、間違って重複させてしまったわけではない。今夜の夢は、同一のストーリーと映像がそっくりそのまま2度も繰り返される、実に不思議な内容だったのだ。登場した少年にも父親にも現実世界で見覚えはないが、目が覚める瞬間、(この男性にいずれ現実でも逢うのではないか)と思ったのも不可思議なことだ。



13日●ふたつの大浴場
前後関係は思い出せないが、気がつくと鄙びた温泉旅館の、大浴場の入り口にいた。私の正面と右側にはそれぞれ扉があって、右は女性用浴場、正面は混浴の大浴場らしい。そこにいる人々は私を除く全員が白人の男女だ。子どもや老人はおらず、ひとり残らず壮年である。女性の風呂は狭く、混浴の浴場は広々としている。私はどちらに入ろうか迷っており、どちらかと言えば混浴の湯船のほうがいいと思っている。近くには夫もいるらしい。私は小さな手提げ籠(かご)を持っていて、それを棚の最上段に乗せようとするのだが手が届かない。長身の夫に頼んで籠を棚に乗せてもらった。そのあと風呂に入ったのかどうかは、何故かまったく覚えていない。
【解説】 この前後には別のストーリーがあったような気がするが、思い出すことが出来ない。私は大のお風呂好きで、普段から朝昼晩と湯船に浸かることも珍しくない。ところが奇妙なことに今夜の夢では、温泉場まで行ったにもかかわらず湯船に浸かった記憶はない。周囲が外国人だらけだったのもおかしな話だ。現実世界では近く娘とSPAに行くことになっているので、そのことが夢に反映したのかも知れない。



14日●量子エネルギー測定場で小説を編む
爽やかな草原。ちょうど私の目ぐらいの高さのところに、細いワイヤーのような物が10本ほど平行に張ってある。それぞれのワイヤーには、白っぽいカードのような物がぎっしりと吊るされている。カードの大きさと形はさまざまだが、どのカードにも文章が書かれているようだ。ここは量子エネルギーの測定場も兼ねているらしく、海外の科学者が大勢集まって何かの実験をしている。よく見れば私以外は全員が外国人男性で、そのほとんどが白人だ。私は1枚1枚のカードに書かれた文章を確認し、一編の小説が完成するようにカードを正しい順番に並べ替えようとしている。しかし科学者達が実験をするたびにワイヤーに高圧電流が流れるので、細心の注意を払っていないと感電の恐れがある。私は全部のカードに書かれた文章を調べ、その中から必要な6枚だけを選び出して縦3枚×横2枚に並べてみた。並べながら、(数日前にもこの形を見た記憶がある)と思っている。場面が変わり、見知らぬ建物の中。目の前の壁に四角い穴が開いていて、その奥にスパイ養成所があるらしい。私の近くには白人女性が立っていた気がするが、彼女が敵なのか味方なのか定かではない。穴の奥から機密事項を盗み出したような気もするが、詳細は思い出せない。
【解説】 今夜の夢も、例によって何やら意味のわからない夢だった。たくさんのカードの中から選び取った6枚を並べた形は、今月11日の夢でに見たセルの並び方に似ていたような気がする。



15日●大洪水で溺れる
学校の校庭らしき場所。不思議なことに校舎はどこにも見当たらない。校庭の真ん中がやや凹んで、窪地のようになっている。私のほかに10人前後の女性が見える。私たちは皆、10代の少女らしい。雨が降ってきた。ところどころに水溜りが出来る。向こうのほうから白人の男性教師が近づいて来て、“Why don't you jump into the puddle and have some fun.(水溜りに飛び込んで遊んだら?)”と言う。私たちは水溜りに入って子どものように遊び始めた。ところが雨脚が急に激しくなり、あたりは見る見るうちに水浸しになってしまった。あっと思ったときはもう、水位は自分の背丈よりも上がっている。必死で立ち泳ぎをするのだが、轟々と水が流れてきて、とても苦しい。必死でもがきながら、どうやら高台に逃れることが出来た。そこへ友達の蜷川有紀さんが現われた。有紀ちゃんも全身水浸しだ。「お互い、ひどい目に遭ったわね。助かったのは真美ちゃんと私だけよ。あとは全員、溺れて亡くなったんですって」という有紀ちゃんからの報告を聞いて、私は急に先刻の白人教師のことを思い出していた。あの人は悪人で、私たちを溺れさせるために故意に水溜りに入るよう指示したのではないか。そう言えば、以前にもどこかであの顔を見たことがある。どんなときにも目が笑っていない、怖い顔だ。彼と出逢ったのがどこだったか、必死で思い出そうとしている私。
【解説】 昨日は朝から風邪っぽく、喉と鼻の調子が悪かった。夜に講演会があったので、出かけて行って2時間ほど喋ったせいか、夜になってさらに状態が悪化してしまった。そんな状態で眠りについたため、睡眠中の私はひどく息苦しかったようだ。溺れる夢を見たのはそのためと思われる。ところで、目が覚めてから思い出したのだが、今夜の夢に現われた白人の男性は日本の或る学校の英語教師(実在の人物)である。私はこの男性教師にかなり悪い印象を持っている。私の心の中にある彼に他する嫌悪感が、彼を「悪役」として今夜の夢に登場させたのだろう。

【後日談】 この夢を見た数時間後、夢に現われた男性(英語教師)の上司に当たるアメリカ人から連絡があった。このアメリカ人は、夢に現われたほうの男性とは比較にならないほど善良な人で、私は前々から好感を持っている。このアメリカ人が連絡を取ってきた理由は特になく、「急にあなたのことを思い出してメールしました」ということであった。しかし、この人から個人的に連絡をもらうのはこれが初めてなのである。夢との繋がりで不思議な縁を感じる。


16日●……

【解説】 夜中に39度台の熱が出て、一晩中うなされていた。そのようなわけで今夜は珍しく夢を見ていない。朝になって病院に行ったところ、インフルエンザA香港型という診断である。かなり流行しているそうなので皆さんも気をつけてください。



17日●"Help!"
驚くほど広大な土地。どこまでも伸びる地平線。ここはアメリカだろうか。今は夜で、大きな満月が地面に近いところで煌々と照っている。小学校低学年ぐらいの男の子と、彼を捕らえようとする2〜3人の悪い大人たち。少年の"Help!"という叫び声が、美しいほど哀しく響いている。その声に聞き覚えがあると思う。あれは誰の声だったか。救いを求めているのは誰なのか。もう少しで思い出しそうだが、私はどうしても思い出すことが出来ない。
【解説】 体感時間にして1秒程度の、まさに一瞬の夢だった。今夜の夢の中で助けを求めていた外国人の少年は、いったい誰だったのか。目が覚めてからも少し気になっている。何故ならば、あの声には確かに過去にも聞き覚えがあるからだ。もしも少年が実在の人物で、現実世界でも助けを求めているのだとしたら、私は彼の声を聞いた人間として何かしてあげるべきだと思うのだが、肝心の声の主が思い出せないのでは助け様がない。あるいは、この夢は単にインフルエンザによる発熱と、服用中の薬物によって垣間見た悪夢に過ぎないのかも知れないが。いまひとつ釈然としない。



18日●ネット上の変質者
インターネットをつないで、某SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)の自分のページにアクセスしたところ、知らない人からの新しい書き込みがあった。その文章は、冒頭から非常に馴れ馴れしい文体で、いかにも親しい友人からの書き込みのように見えた。しかし不思議なことに、書き込み者の名前が何故かどこにも記されていない。差出人不明のそのメッセージを、私はとりあえず読んでみることにした。最初に、「バレンタインデーのチョコレート、ありがとうございました。真美さんからチョコがいただけるとは思ってもいなかったので、望外の喜びです」という内容のことが書かれている。それを読んで私は仰天した。何故ならば、私はこの人にチョコレートを贈った覚えなどないからだ。驚きながら、さらにその先を読み進めると、「これからチョコレートを食べます」という意味のことが、さまざまな喜びの表現を加えて長々と書いてあった。私は、そのチョコレートが誰か別の人間から贈られた毒物である可能性を察知し、相手に「そのチョコレートは私が贈ったものではありません。危険ですから絶対に食べてはいけません」と知らせようとするのだが、何故か相手はメッセージの着信拒否をしており、こちらから連絡を取ることができない。そこで私は警察関係の親しい知人に連絡し、IT課の刑事に事件のあらましを説明して協力を要請した。しかし、その直後に同じ相手から再び長々とした書き込みがあり、「今までのは全部冗談です。少しは驚いてもらえましたか」などと書いてあるではないか。なんと性質の悪いイタズラだろう。私は憤慨すると同時に、ネットの奥に潜む姿の見えない変質者に何とも言えない嫌悪感を抱いている。
【解説】 現実世界の私は、一昨年あたりからmixiに参加している。参加していると言っても、本当に気心の知れた友人達との日々の挨拶代わりに使っているだけなのだが、私の友人達は世界中に散らばっているので、このようなサービスを使って彼らの動向を気軽に知れるのは便利なものだ。しかし、たまには奇妙な人からのアクセスもある。ネット上には顔も名前もわからない人たちも徘徊しているので、気をつけるに超したことはない。なお今年のバレンタインデー、私は義理チョコの類を一切どなたにもお送りしていません。もし受け取った方がいるとすれば、それは私からではなく私の名前を騙ったニセモノさんからの贈り物に違いありませんので、絶対に食べないでください(笑)。



19日●からだに絡み付くオレンジ色の光
私のからだのまわりに、巨大なオレンジ色の光が絡み付いている。光はメビウスの輪のようでもあり、立体的な∞のマークにも見える。その光景を、私は第三者のように少し離れた場所から見ている。オレンジ色の光は明るく、暖かく、強い希望に満ちて輝いていた。私はそれを見て、自分の病が癒えたことを知る。
【解説】 ここ何日かインフルエンザにかかって体調が悪かったのだが、今夜の夢の中でオレンジ色の光が現われたのは、病が癒えたことを知らせるメッセージだったようだ。なにしろ目が覚めてみると、昨夜とは比較にならないほどのパワーが充実していたのだから。なお、今夜の夢を見てひとつ思い出したことがある。それは、一昨年の秋にインドのダラムサラにあるチベット亡命政府本部で、ダライ・ラマ法王から頂いた「ジャムヤン・ラモ」というお名前のことである。この名前は「文殊菩薩」を意味する立派なものなのだが、その後、ダライ・ラマ法王事務所の方々からは次のように教えていただいた。「文殊菩薩のテーマカラーはオレンジ色なので、山田さんはオレンジ色を多く身に付けると良いことがあるでしょう」。それ以来、オレンジ色や黄色のアイテムを身の回りに増やしているのだが、今夜の夢で見たオレンジ色の輝きはほとんど太陽のように眩しかった。生命力に溢れた夢だったと思う。



20日●アタッシェケースを持ったマジシャン
チャコールグレーのアタッシェケースを持った男性がやって来て、何日か同じ家で暮らすことになった。この人が何者なのかは、まったくわからない。同じ家で暮らすと言っても、その間に私はこの人の姿をほとんど見なかったような気がする。男のアタッシェケースのグレーの部分が布張りで、目立たないチェック柄になっていたのが印象的だ。彼は中年の白人男性で、常に一種独特の笑顔を浮かべており、自分の左側の頬を相手に見せる形でやや斜に構えている。そのポーズはどこかしらマジシャンを髣髴させた。現に彼は一度マジックを見せてもくれた。数枚のカードを使ったカードだったと思う。このときは私のほかにもうひとり、一緒に見ている若い女性がいたような気がする。場面が変わって、プラットフォームに入って来る電車が見える。この電車に乗っているのは、高校の英語教師をしている夫妻と一人息子だ。彼らは右から左へ進む電車に乗ってやって来て、ホームで英字新聞だけ買うと、今度は左から右へと進む電車で楽しそうに帰って行った。再び場面が変わり、地下にある料亭のようなバーのようなところ。私は最初、数人の知人とともに客としてそこに来たはずのだが、店の経営者らしき女性から「ここの女将を務めてくれないか」と頼まれている。椅子の上には、私が脱いだものらしい紫色の毛皮のコートが見える。
【解説】 異なるストーリーがモザイクのように組み合わされた夢だった。それぞれのストーリーは時系列が侵食し合い、オーバーラップする部分も多かったような気がする。特にアタッシェケースの男は、別のストーリーの中にもときどき顔を覗かせていたようだ。全体としては「マジシャン」のイメージが色濃く残る夢だった。それにしても、男が持っていたケースの中身は何だったのだろう。少し気になる。



21日●父と娘のコーヒー・ショップ
一組の父娘の姿が見える。彼らの顔がハッキリ見えているにもかかわらず、何故か国籍や民族は皆目わからない。西洋人にも東洋人にも見える不思議な顔立ちなのだ。年齢は父親が60前後、娘が20代前半だろうか。父親は人懐こい感じのする好人物で、娘のことが可愛くてたまらないらしい。ほとんど“Daughter Complex”と言っても良いほどに溺愛しているのが微笑ましい。娘のほうは、そんな父親を半分苦笑しながら容認しているようだ。長い道。旅の終わりのイメージ。ふたりは今、ここで別れようとしているのかも知れない。おそらく娘には娘の人生があるのだろう。淋しげな父親の顔。娘が去れば、これからはひとりでコーヒーを飲まなくてはならないのだ。そのとき娘が近くのコーヒー・ショップを指差し、「あそこで一緒にコーヒーを飲みましょう」と父親を誘ったようだ。「一緒にコーヒーを飲んでもいいのかい」と目を輝かす父。「当たり前でしょう」と言いたげに笑う娘。コーヒーの香り。砂糖をまぶしたドーナッツの薄茶色。温かな喫茶店で、湯気の向こうにふたりの笑顔が広がった。
【解説】 何やら短編ロード・ムービーを観ているような今夜の夢だった。「娘との別れ」というシチュエーションは、長い夏休みを終えて今週オーストラリアに戻る自分の娘の姿が多少オーバーラップしているのかも知れない。最後の場面は、今にもコーヒーの芳香まで立ちのぼってきそうな臨場感に溢れていた。



22日●椅子を探す
私は椅子を探している。それは、かつて誰か特別な人が使っていた歴史的価値の高い椅子で、座る部分が丸みを帯びた三角形だ。私はその椅子を、ずっと以前にどこかで目にしたことがある。現在、その椅子の所在は不明らしい。椅子を探して、私はほうぼうを旅している。ニューデリー市内のアメリカンスクールで写したらしい1枚の写真が見える。それは学長室と隣接する事務室の内部を撮ったもので、3〜4人の生真面目そうな事務員に混ざって、何故か私も右端のほうに映っている。学長から、「貴女はかつてここで働いていたことがあるのですよ。椅子を探すために」と言われるが、私にはそのような記憶はない。椅子を探すために、私は本当にそんなことまでしたのだろうか。そのあと全く別の場所へ行ったような気がするが、詳細は思い出せない。
【解説】 以前にも何度か「意味ありげな椅子」が登場する夢を見たことがある。例えば、2004年1月14日に見た「弟から椅子を譲られる夢」、同6月11日の「玉座の夢」、同8月31日の「三島由紀夫の死体をグランドピアノの椅子に座らせる夢」などがそれだ。今夜の夢の本当の意味は不明だが、昨日は娘とふたりで「アンデルセン生誕200年展」(東京都文京区の印刷博物館にて4月3日まで開催中)に行き、そこに展示されていたアンデルセン使用の椅子を見た。そのことが、もしかしたら今夜の夢には関係しているのかも知れない。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「椅子の夢」の意味は「あなたの存在価値、家庭や職場におけるポジション」だそうである。



23日●カタカナ2文字の地名
海外のどこかに来ているらしい。そこはカタカナ2文字の地名で、「リ」という音が混ざっていたかも知れない。刺激的ではないが、のどかで平和な場所のイメージ。
【解説】 今夜の夢には、特記すべきストーリーはなかったように思う。「リ」が含まれる2文字の名前と言って思い出されるのは、チリ共和国、マリ共和国、リマ(ペルー共和国の首都)、リオ(デ・ジャネイロ)といったところか。これらの場所に近い将来の訪問予定はないが、今夜の夢は何かの予告だろうか。


24日●戦場のメリークリスマス
坂本龍一氏の「戦場のメリークリスマス〜Merry Christmas, Mr. Lawrence」が鳴っている。映像はなく、ただ楽曲だけが一晩中繰り返し演奏されている。
【解説】 久々に見る「音だけの夢」である。今夜は珍しく眠りが浅かったようで、一晩に何度か目が覚めた。そのたびに、直前の夢の中で「戦場のメリークリスマス」が鳴っていたのは不思議なことだ。しかも、どんなに思い出そうとしても視覚に訴えるものは何一つなかった。どうにも奇妙なことである。


25日●クイズ大会と狐の嫁入り
床の上に、さまざまな不用品が置いてあるのが見える。私はそれらを燃えるゴミと燃えないゴミに分別している。次に気がついたときには、小さい教室のような部屋にいて、椅子に座っていた。教室の反対側には、こちらに向かって座っている人たちもいる。クラスは半分ずつに分かれ、向き合ってクイズ大会をしているのかも知れない。クイズを出題する声に混ざって、何故かビールがグラスに注がれるときの「コポコポコポ」という軽やかな音が聞こえ、私は思わず小さく笑ってしまう。監督者から「試験中に笑ってはいけません」と注意されたような気もするが、こちらを向いて座っている男性のひとりも、私と目が合うと一緒になって笑ってくれた。その人は、昔リクルートでアルバイトをしていたときに知り合ったTさんだったようだ。再び場面が変わり、私は古い町にいた。そこは、細長い街道沿いに発達したいかにも歴史のありそうな場所で、「古都」と呼ぶに相応しい風情がある。そばに誰か人がいるような気もするが、定かではない。すぐ近くには小川が流れているようだ。どこかが非現実的で、幻想的な雰囲気。このときパラパラと小雨が降ってきた。「狐の嫁入り」という言葉が、不意に頭に浮かんだ。
【解説】 全体のストーリーがバラバラで、趣旨のわからない夢だった。しかし最初にゴミの分別をしていた場面を除けば、イメージとしては全体にふんわりと柔らかく、懐かしい雰囲気の漂う夢だったと言えるかも知れない。特に、最後に頭に浮かんだ「狐の嫁入り」というフレーズが妙に気になった。


26日●母の災難
実家のダイニングルームとよく似た部屋。実際の部屋と違っているのは、窓があるべき場所に熊手、絵馬、達磨、羽子板などの縁起物が山のように置いてあることだ。そこだけがまるで縁日のようである。横に長いカウンターのようなテーブルに座っていると、母が「近所のマーケットに行ったら、これを頂いたの」と言いながら日本酒と刺身を出してくれた。父も今日はまあまあ体調が良いのだろう、テーブルの端のほうに座って同じものを食べている。私もお酒に口を付けてみたのだが、何故か全く味がしない。念のためにパッケージを見たところ、賞味期限のところに「199×」(最後の数字だけ見えない)と印刷してあるではないか。あわてて母に「これ、何年も前に賞味期限が切れているわよ。こんなの捨てなくちゃダメ」と伝えると、母は驚いたように「あら。マーケットの奥さんはそんなこと言っていなかったのに」と応じた。騙された母が気の毒になる。場面が変わって、見知らぬ町並み。すぐ近くには母がいるらしい。父と弟も近くにいるのかも知れない。ここは私が子どもの頃に住んでいた団地らしいのだが、それにしては風景に見覚えがない。私たちの家から数メートルしか離れていない隣家の軒下が黒焦げで、少し煙が立ち上っている。母がその家を指差しながら「この家は昨日からこんな具合で燻(くすぶ)っているのよ。大火になるといけないから、消防署に連絡しようかしら」などと悠長なことを言っている。私は驚きながら「そんなこと、大至急119番しなくちゃダメじゃないの」と告げた。すると母は一旦家に戻り、「火災報告書」のようなものを取り出して、そこへ隣家の火災状況を記入し始めた。どうやらこの世界では、火事を見たらこのように書類で消防署に通達するらしい。あまりにも悠長なので見ていてイライラする。しかも報告者の欄のところに、母は見たこともない漢字2文字を書き入れたではないか。「何故、本名を書かないの」と尋ねると、「とんでもない。本名なんか書いたら火元の家から恨まれてしまうのよ」という返事だ。日本は本当におかしな国だと思う。再び場面が変わり、スーパーマーケットのように広い室内。部屋の中は緩やかなスロープ状で、そのなかを弧を描くようにして通路や小川(?)もあったような気がする。ここで夫が主催する飲み会が行なわれているらしい。遊びに来ているのは、大多数が外国人の男性だ。飲み会の制限時間はあらかじめ2時間と決められているようだ。私は色々な人と話をしたような気がするが、何の話をしたのかは全く印象にない。おそらく当たり障りのない世間話に終始したのだろう。予定の2時間が終わり、夫が「ちょっと時間が足りなかったなあ」などと言っている。私は皆に手を振ってその場を去ると、次の仕事へと急いだ。このあと山裾を歩いていて重厚な古民家を見たような気もするが、詳細は覚えていない。
【解説】 今夜の夢では、何と言っても母の存在感が圧巻だった。ふたつのストーリーの中で、母は人から騙されたり火災(ボヤ)を目撃してしまう。私はそれらを「母にとっての災難」と感じるのだが、当の本人はのんびり構えていて災難を災難とも思っていない。父は近くにいるにもかかわらず何の発言もしない。これは、現実世界では一昨年の暮れに亡くなった父が、最後の何年間か闘病生活を送った(=入退院を繰り返した)ことが夢に反映しているのだと思われる。母は社交的で若い友達も多く、地方の俳句雑誌の同人をつとめるなど趣味も充実している。今年はハワイに行くのだと言って今から準備しているぐらいだから、割と気の若い人だとも思う。そういう意味では心配はないのだが、年老いた親が遠くに住んでいると何かと気がかりなことも多い。おそらくその気持ちが、今夜の奇妙な夢になって表われたのではないか。


27日●紅い表紙の本
闇の中にくっきりと、上品な紅い表紙の本が2冊、浮かび上がって見える。2冊は文庫本サイズで、全体にベルベットのような質感がある。タイトルは英語で、金または銀で書かれている。全体に豪華な大人の本というイメージだ。このほかにも、何か紅い色のものが登場したような気がするが、具体的に何だったのかは思い出せない。
【解説】 夢の中に紅い本がぼーっと浮かび上がった様子は、とても幻想的だった。しかし、2冊の本が誰の書いた何というタイトルの本で、どのようなテーマのことが書かれていたかなどは全て不明。


28日●友達に友達を紹介する
華やかで個性的な雰囲気。どこまでも広がる布の感触。色彩の海。ここはファッションショーの会場なのかも知れない。デザイナーの白浜利司子さんの姿が見える。私の横に立っているのは、子供地球基金代表の鳥居晴美さんだ。私は晴美さんに向かって、一生懸命に利司子さんのことを紹介している。晴美さんは私の言葉に深く頷きながら、「まあ、白浜さんって本当に素敵な方なのねえ」としきりに感心している。
【解説】 今夜の夢に登場した晴美さんと利司子さんは、ふたりとも私が心から尊敬している女友達だ。現実世界では、18年ほど前に利司子さんを私に紹介してくれたのが他でもない晴美さんなのだが、夢の中では何故か私が晴美さんに利司子さんを紹介していた。どうにもおかしなことだ




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