2007年4月


1日●小惑星探査ロボットとの会話
気がつくと、私はふわふわと宇宙を漂っていた。前方から近づいて来るのは、小惑星イトカワを探索するために地球を発った惑星探査機「はやぶさ」に搭載されていた超小型ロボット「ミネルバ」だ。私がミネルバのほうへ近づこうと思う間もなく、ミネルバは自分からスーッとこちらに近づいて来てくれた。私たちは宇宙空間で向かい合い、ごく自然に会話を始めた(但しそれは音声を伴った普通の会話ではなく、テレパシーのような方法における以心伝心だった気がする)。まるで世間話でもするような調子で、私たちは共通の知人が飼っている猫の話をしはじめた。(ミネルバが元気そうで良かった)と心の中で私は思っている。

【解説】 夢と現の境を見てきたような、奇妙な“後味”の夢だった。先週はJAXA主催の公開シンポジウム「ロボットが拓く宇宙開発のNEXT STAGE」を聴講してきた。そのためにこのような夢を見たのかも知れないが、ロボットとテレパシーで、しかも猫について語り合うという状況は、夢とは言え実にシュールな体験であった。


2日●自宅の裏庭に高野山を築く男
どことなく見覚えのあるアパートの一室。聞き覚えのある声が、裏庭から私の名を呼んでいる。窓を開けてみると、裏庭では友人のYさんが地下足袋を履き、大八車で土砂を運んでいるではないか。呆気に取られて見ていると、Yさんは大八車から土砂を下ろし、裏山に小さな山を築き始めた。聞けば、そこを「高野山」と名づけて信仰の対象とするのだという。それにしても、Yさんに地下足袋は似合わない。私は半分呆れながらその光景を窓越しに眺めている。

【解説】 知人が小さな山を作ってそこを高野山を名づけ、信仰の対象とするというジョークのような夢。しかも友人が築いていたのは、標高わずか10cmほどの超ミニチュア山なのだった。なおYさんは高野山関係者ではなく、宗教的にはごく普通の人である。



3日●蜃気楼を撮るためにスキー場へ
スキー場の頂上あたりに、珍しい蜃気楼が出るという。スキーをしている人たちの姿が、大パノラマ写真のように虚空に映し出されるというのだ。その蜃気楼を写真に撮るため、私はスキー場の頂上まで上がった。私は何かに対して苛立っている。理由はわからない。心の中の苛立ちを他人には見られないよう努力していると、突然、目の前に女友達のKさんが現われた。Kさんは驚くほど派手で趣味の悪い赤い服を着て、これまた驚くほどの饒舌さで話しかけてきた。弾丸のような勢いでトークするKさんを目の前にして、私は内心、(彼女、キャラが変わって訳のわからない女になってしまったな)と思っている。言いたいことだけ勝手に言うと、Kさんはさっさとどこかへ滑って行ってしまった。そのあと私は蜃気楼を写真に撮ろうとするのだが、何故かうまくいかない。その間もずっと、私の苛立ちはくすぶり続けている。やがて最終リフトが下りる時間になった。このリフトを逃すと、終電に乗り継ぐことが出来ないのだ(注/このスキー場では上りだけでなく下りもリフトを使う決まりになっているらしい)。苛立った気持ちのままリフトで下山した私は、満たされない孤独な気持ちを抱えたまま、ひとり電車の駅に向かっている。

【解説】 苛立ちと孤独感を抱えたまま“蜃気楼”を写真に撮るためにスキー場に行くものの、目的を果たすことが出来ない上、久しぶりに逢った女友達は(良くない意味で)すっかり変わってしまっていたという、全体にややブルーな気分の夢だった。今夜の夢には、現実と願望とのギャップに対する私自身の苛立ちが現われていたのではないかと思う。



4日●懐かしい人との楽しいお喋り
夢の中を歩いていると、とても懐かしい人にバッタリ逢った。私たちは互いに「お久しぶり!」と叫び、子どものようにはしゃぎながら、これまでのことを堰を切ったように話し始めた。明るい声。春の陽光のようにまんまるで柔らかい微笑み。私たちは今にも踊りだしそうに両手を取り合い、楽しいことばかりを話して大笑いをした。暫くして、道の分岐点に辿り着いた私たちは、そこで手を振って明るく笑いながらそれぞれの道へと別れて行った。

【解説】 とても楽しい夢だったのだが、いざ目が醒めてみると、不思議なことに夢で逢った相手が誰であったか少しも思い出せない。その人はとても懐かしく楽しい人だったように思う。逢った瞬間に「お久しぶり!」と挨拶したのだから、昔の友達なのだろう。にもかかわらず今となっては、その人が男性だったか女性だったか、そんなことすら思い出せないのだ。しかし心が浮き立つように楽しい夢だったのだから、詳細を思い出せないことはこの際「ノー・プロブレム」ということにしよう。



5日●知らない人たちの笑顔
闇の中に人間の顔が浮かんでは消える。丸い顔。三角形の顔。四角い顔。狐顔。狸顔。ひょっとこ顔。おかめ顔。色々な顔が浮かんでは消え、消えては浮かぶのだが、そのなかに知った顔はひとつもない。共通しているのは、それらすべての顔が笑顔だったということだ。

【解説】 ストーリーらしきもののない、静かで、どこか幻想的な夢。知人の顔がひとつも現われなかったにもかかわらず、割と親しみの感じられる夢だった。



6日●くじ引きで臙脂色のドレスを当てる
前後関係はわからないが、私はどこか中世のヨーロッパのような猥雑で埃っぽい街の雑踏の中に立っている。私を含む選ばれた何人かがくじ引きをした。私が引き当てたのは臙脂色のドレスだ。シェイクスピアの芝居の中で誰かが着たら似合いそうな凝ったデザインの、臙脂色のロングドレスである。ドレス自体は決して悪くないのだが、私は心の中で(先に見た別のドレスのほうが間違いなく自分には似合う。しかし与えられた物を文句を言わず着ることにしよう)と思っている。変えられない運命。自己犠牲。すぐ近くに私のファンらしい若い男性がいて、弾んだ表情で嬉しそうに話しかけてくる。私はこの男性を好きでも嫌いでもないのだが、冷たく突き放す権利はないような気がする。達観。諦め。私たちはこの地を捨て、皆で民族の大移動を始めるのだと思う。

【解説】 全体に「本当に欲しいものは手に入らず、代用品で我慢する」といったイメージの漂う夢だった。最後に「民族の大移動」というイメージと共に夢は終わるのだが、その部分にも一種独特の諦観のようなものが漂っていたように思う。それにしても今夜の夢に登場した人々はヨーロッパ人ばかりだったが、果たして私自身は誰だったのだろう? 自分の顔が見えていないだけに、その部分だけが謎のままである。



7日●大学時代の女友達との嬉しい再会
見覚えのない一本道(?)を歩いていると、反対側から知った顔が近づいて来た。大学時代の女友達・N子さんだ。N子さんは大学時代と変わっておらず、相変わらず楚々とした日本美人だ。何よりも印象的なのは、屈託のない笑顔と私に向けられたポジティブなまなざしである。暫くおしゃべりをした感じでは、N子さんはどうやら私の生き方を尊敬してくれているらしい。N子さんから認めてもらえて本当に良かったなと思う。

【解説】 この前後にもストーリーがあったのかも知れないが、他の部分はどうしても思い出せない。N子さんは大学時代の友達だが、卒業後はすっかり疎遠になり、今ではまるで没交渉になっている。もともと性格が全く異なる上、生活環境も正反対になった彼女と私では、ほとんど取り付く島がない感がある。世の中には、性格も生活環境も正反対でありながらなおかつ親しくなれる相手がいるものだが、N子さんとはそういう雰囲気になれない。夢の中では彼女が私を尊敬してくれていたようだが、現実ではおそらく彼女は私に対して無関心なのではないかと思う(私が彼女に対してそうであるように)。ゆえに、今夜の夢を見た理由は不明である。



8日●掛け布団の下には飲まず食わずのブースケ
夢の前半、私は長い旅をしていたようだ。それは孤独で、とても疲れる旅だったように思う。何日も経ってから、ようやく一時的に家に戻ることが出来た(ただしそこは現実の家とは似ても似つかぬ建物なのだが)。秘密結社のアジトのような匂いのする屋根裏部屋に行くと、部屋の真ん中に木製のベッドがあった。どうやらそれが私の寝床らしい。掛け布団をめくってみたところ、なんと布団の下にはブースケ(愛犬)がうずくまっていたではないか。驚いてブースケを抱き上げる私。どうやら彼は私が家を離れてから今日までずっと、掛け布団の下に入ったままご主人の帰りを待っていたらしいのだ。それを知って胸が痛くなる。それに第一、彼は何日も飲まず食わずで大丈夫だったのだろうか。見たところは痩せた感じもしないが、どう考えても飢餓状態のはずだ。私は急いでブースケに水を与え、部屋の隅に落ちていたカラカラに乾いた餌(ビーフジャーキー?)の欠片を食べさせた。これが彼にあげることの出来る唯一の餌なのだ。暫くブースケを可愛がったのち再び掛け布団の下に隠すと、私は再び旅に出ようとしている。ブースケをひとりぽっちにするのは気の毒だが、こうする以外に方法がないのだ。よくわからないのだが、外は紛争地帯で、私は兵士なのかも知れない。再びブースケとの淋しい別れのときがやって来た。

【解説】 このあとにも夢は続いたような気がするのだが、ブースケと過ごした時間の記憶だけが脳裏に残り、他の場面は忘れてしまった。ここ暫く仕事の都合でブースケと離れて過ごすことが多かった。私はブースケを我が子(末っ子)のように思っていて、彼と離れることはとても辛いのだ。今年はインド国立文学アカデミーのご招待で2〜3ヶ月インドに行くことになりそうなのだが、何が心配と言って、留守の間のブースケの心理状態以上に心配なことはない。その気持ちが今夜の夢には現われたようだ。



9日●ずらり並んだ半裸体(ただし背中だけ)の写真
すぐ目の前の壁に、同じ大きさ・同じ構図の写真がびっしりと横並びに20〜30枚ほど展示されている。1枚1枚は名刺程度の大きさしかなく、しかも同じ写真を焼き増して並べているだけなので、あたかもトランプのカードを(裏側をこちらに向けて)展開したようなイメージである。写真に写っているのは、誰かの背中から腰にかけての半裸体だ(ジーンズを履いているので腰から下は裸ではない)。女性にも少年にも見える中性的なラインが印象的である。健康的で爽やかなカラダだ。すべての写真を見ていったところ、1枚だけ、微妙にカラダのラインが崩れかかった写真が混ざっていた。同一人物のカラダであることは間違いなさそうだが、この写真だけ肉づきが良すぎる。私は誰かを呼んで、そのことを注意しようとしている。

【解説】 どうにも意味不明な夢。しかも、この前後にはかなり長いストーリーがあったように思うのだが、詳細はまるで思い出せない。



10日●どこか南のほうにある未知の大陸
大パノラマと呼びたい壮大な風景。私は鳥のような視点から、地上を俯瞰している。そこは今まで知らなかった壮大な未知の大陸だ。南半球または赤道に近いどこかと思われるが、場所の名前も詳しい位置もわからない。エネルギッシュでダイナミックな可能性。私はここで生きようと思う。

【解説】 体感時間にして1〜2秒の、ごく短い夢。しかしそこには何か大きなエネルギーが詰まっていたような気がする。ポジティブな爽快感の残る夢だった。



11日●テレビのリモコンに感電する
目の前に小さなステージがあって、その上に特別なソファー(?)が置かれている。そのソファーに座ると心身が癒されるらしい。ステージに乗るためには、ステージ手前の床の上に置かれたテレビのリモコンを足で踏まなくてはならないのだが、その踏み方にはコツがあって、失敗しするとステージに登れないという。私はタイミングをはずしてリモコンを踏み、その結果、弱電流に感電してしまった。ビリビリと痺れる感覚。リモコン自体は、ごく平凡な細長い黒色のシロモノだ。こんなものを踏んだだけで何故感電してしまうのか、感電することに何の意味があるのか、それは全くわからない。

【解説】 実際に軽く感電したようなショックを伴う夢だった。そう言えば、私は毎晩ブースケ(毛むくじゃらな愛犬)と一緒に寝ているのだが、すぐ横に転がっているブースケに触れると静電気が起きることがある。それでこんな夢を見たのかも知れない。

【後日談】 この夢を見た直後、起床した私はいつものとおり朝食の準備を始めた。暫くすると高校生の息子が起きて来て、「変だなあ。テレビのリモコンが見当たらないぞ」と言い出した。探してみたところ、確かにリモコンが紛失している。我が家ではリモコンは常に定位置に置いてあるので、それが紛失してしまうことは非常に珍しい(※注/うちは4人のうち3人までが「几帳面なA型」のため、すべての物は基本的に定位置に置かれているのだ)。うちのテレビのリモコン、もしや私の夢の中に置き忘れて来てしまったのだろうか(笑)。


12日●クイズ大会で勝って月世界旅行をゲットする
気がつくと、テレビのクイズ番組のセットの中にいた。本番前のやや緊張した空気。「本番10秒前。5、4、3…」というディレクターの声。番組が始まり、誰か有名な司会者(みのもんた氏だったような気がするが定かではない)が立て板に水のトークを始めた。今は決勝大会で、私は唯一の解答者らしい。「それでは問題です」という司会者の声がして、いきなり「日和見(ひよりみ)の代名詞で知られる日本史の有名人と言えば?」という唐突な質問が続いた。一瞬(えっ)と頭の中が真っ白になった後、洞ヶ峠”の逸話を思い出して「筒井順慶?」と答える私。すると司会者は顔色も変えずに「…筒井順慶ですが、『筒井順慶』という本を書いた現代作家は?」と質問を続けた。あわてて「筒井康隆!」と答える私。すると司会者は追い討ちをかけるように「…筒井康隆ですが、昨年映画化された彼のドタバタ小説は?」と続けた。間髪を入れずに「日本以外全部沈没!」と答える私。だが司会者は「…日本以外全部沈没ですが、この映画の中で危機管理担当大臣を務めた女優は?」とカウンターパンチを繰り出すように質問を重ねた。余裕で「大地真央!」と叫び返す私。しかし司会者はこちらの返事など聞こえなかったような涼しい顔で「…大地真央ですが、彼女が再婚した相手の職業は何でしょう?」と言いながら、実に意地の悪い目でこちらを見た。私の脳裏には、つい先日ニュースで見たばかりの大地真央さんの再婚相手のお顔が浮かんでいる。いかにもアーティストらしく髪の長い、すらりと痩せた男性だ。1秒ほど考えた後、私はおもむろに「インテリア・デザイナー」と答えた。いつの間にかすっかりみのもんた氏の顔になった司会者が、少し薄気味の悪い笑顔を満面に浮かべ、「…正解! マミリンさんを月世界旅行にご招待!」と叫んだ。こうして私は月世界旅行へのチケットを手にすることが出来たらしい。

【解説】 このあとどこか遠いところへ行き、信じられないほど面白い人と逢ったような気がするのだが、詳細はどうしても思い出せない。なお、目が醒めて暫くしてから、今夜の夢にはトンデモない間違いがあることに気づいた。大地真央さんが出演していたのは本家本元(小松左京作)の『日本沈没』であって、パロディー版(筒井康隆作)の『日本以外全部沈没』ではないのである。さらにその直後には1人の読者さんから連絡が入り、「大地真央さんは婚約なさっただけで、再婚はまだですよ♪」とわざわざ教えてくださった。全くもってそのとおりです。ご指摘ありがとうございました。夢の中の司会者、もっとしっかりしてください(苦笑)。



13日●村の分教場に無許可で滞在し注意を受ける
私は誰かと旅をしている(但し相手の姿は最初から最後まで見えず、気配だけがする)。それは目的を持った旅ではなく、当てのない放浪だ。草原、森、透明な風の中、どこを歩いていても淋しい気持ちが付きまとうのは何故だろう。今夜の宿を探していると、目の前に寂れた村の分教場のような建物が見えてきた。昔の用務員室のような小屋が建っていて、そこは畳敷きの小さな簡易宿舎だ。私たちはそこで仮眠を取ることにした。しかしこちらが寝付くか寝付かぬうちに、少し離れたところに建っている校舎から数人の男たち(ここの教師らしい)がやって来て、「こんなところに違法滞在者がいるぞ」という意味のことを言いながら部屋に入ってきた。見つかって叱られる私たち。(やっぱり行く場所はないのだな)と淋しい気持ちになっている私。

【解説】 今夜の夢の中で私は、寝る場所もない浮き草のような状態で知らない場所をさまよっていた。どこへ行っても、とても淋しい風景ばかりが広がっていたように思う。孤独感と諦めに似た気持ちが漂う夢だった。



14日●ツリーハウスと黒人の子と愛犬
目の前に南国の海が広がっている。それは遠浅の海で、だいぶ沖のほうへ近づいたあたりに、浅い水に囲まれた小さな円形の砂浜がぽっこりと顔を出している。円の中心部分には1本の木が生えていて、その上にツリーハウスが乗っていた。私は小さな男の子と犬を連れている。子どもが2人と犬が2匹だったような気がするのだが、あるいは子どもが1人と犬が2匹、または子どもが2人と犬が1匹だったかも知れない。ハッキリ覚えているのは、子どものうち1人が黒人だったということだ。『ちびくろサンボ』の主人公のようにとびきり可愛らしい子で、私たちはとても仲良しだ。もうひとり、日本人の男の子がいたような気もするが姿はよく見えない。日本人の男の子は、あるいは人間の姿をした愛犬ブースケだったかも知れない。砂浜からツリーハウスへ行くためには、植物のツタで編んだ簡単な螺旋階段を昇る以外に方法がない。老人や足腰の弱い人は昇り降りのできない階段だ。私の腕の中には、老犬がいた。大昔に飼っていた雑種の日本犬、ポチである。私はポチを抱いてツリーハウスまで運んでやった。彼は自力では降りることが出来ないので、このまま室内でおとなしくしているだろう。黒人の男の子と日本人の男の子(あるいは人間の姿をしたブースケ)は仲良く砂浜で遊び始めた。ここへは大きな波が来ないので、子どもだけで遊ばせておいても安心だ。気がつくと私も童心に戻って海と戯れていた。燦燦と注ぐ南国の陽光。広がる幸福感。開放的な気分。

【解説】 とても温かく開放的な夢だった。途中に登場したポチは、大昔に飼っていた白い雑種の中型犬。実は人から押し付けられて仕方なく飼う羽目になった犬なのだが(苦笑)。私とポチは相性が悪く、あまり可愛がってやらなかったことが今となっては心残りである。そのポチが夢に登場するのは非常に珍しい。死んでから、かれこれ16年になるが、彼がいたのはまるで昨日のことのようにも思われる。



15日●ビーズをつかみ、移動する作業
教室のような広い部屋。周囲には小学生ぐらいの子どもたちがいる気配がしている(但し姿は見えない)。私の目の前には机があって、その上に縦25cm×横30cm×高さ5cmほどの透明なプラスティック・ケースが載っている。ケースの中は10ぐらいの部屋に分かれていて、それぞれの部屋には異なる色とデザインのビーズが入っている。どれも直径1〜3mm程度の、ごく小さなビーズだ。それらのビーズをひとつひとつ指先でつまんでは、どこかへ移動させる作業をしている私。いつ作業を始めたのか記憶はないが、気がついたときは既に最初の5つの部屋のビーズは移動し終えていたようだ。近くに先生のような人がいて、「第6室のビーズをすべてバラバラにしてから1粒ずつ指で○○○へ移動させてください」という指示を出してきた(○○○に入る文字は不明)。私は黙ってその指示に従っている。ビーズをいじったり移動させることに何の意味があるのかはわからない。単に脳の活性化を図るための作業だったのかも知れない。

【解説】 小さなビーズをつまんで運び続けるという気の遠くなるような夢なのだが、夢の中の私は特に苦もなく淡々とその作業をこなしていたようだ。しかし目が覚めてみると軽い頭痛がしている。夢の原因は、あるいはこの頭痛だったのかも知れない。



16日●B財閥の会長とインドで食事をする
気がつくと私はインドらしき場所におり、高級レストランで食事をしていた。同じテーブルには、眼鏡をかけた40歳前後の男性と、彼の部下らしき数人のインド人の姿が見える。眼鏡の男性は初めて見る顔だが、話の内容から察するに、どうやらインドを代表するB財閥の会長らしい。落ち着いた物腰の上品な男性だ。私達は食事をしながら、企業経営に関することやインド哲学の話で静かに盛り上がっている。

【解説】 現実世界では一面識もないB財閥の会長と食事をしている夢。現在、私はインドの大富豪がテーマの本を書き下ろしているので、そのイメージが今夜の夢となって現われたものと思われる。
【後日談】 この夢を見た1週間後の4月23日、インドから1通のUPS便(国際宅配便)が届いた。驚いたことに差出人はB財閥会長の秘書室で、封筒の中身は会長に関わる或る資料と顔写真(それはまさに夢で見た男性の顔だった!)なのだった。B財閥から郵便物が届く自体が全くの想定外だったので、夢と現実との一致は本当に吃驚である。



17日●緑色のイルミネーション
夜の街。少し離れた場所に、緑色のイルミネーションが並んでいるのが見える。それが何とも言えない不思議な色のトーンで、地球には存在しない色のような、宇宙からやって来た色のような、とにかく「見たこともない色合い」なのだ。しかもイルミネーションの形が少し変わっていて、細長い縦長の長方形がいくつもいくつも並んでいるのである。私はその光を飽かず眺めている。懐かしいような落ち着くような気持ち。もうすぐ、かぐや姫が到着するだろう。

【解説】 今夜の夢には音がなく、幻想的な緑色のイルミネーションがただただ美しかった。最後に心に浮かんだ「かぐや姫」という言葉が何を意味するのかは不明。



18日●……

【解説】 今夜はどんなに考えてみても、夢を見た記憶がない(或いは、見た夢を忘れてしまったのかも知れないが)。



19日●神秘的な魚
「マナ」という名前の魚の側面図が見える。それはとても神秘的な魚で、いわゆる魚臭さは微塵もなく、クリスタルのように輝いている。私が現在いるこの世界は、あるいは旧約聖書の中なのかも知れない。「マナ」という名のこの魚とマナガツオの関係性について、私は先刻から考えている。

【解説】 時間にして1秒ほどの、まさに瞬間の夢。ちなみに旧約神話に登場する「マナ」は神が天から降らせたとされる白色の甘い食べ物で、「マナ」はヘブライ語で「これは何だろう?」の意味。しかしこの場合のマナは魚ではない。日本語では魚の別名を「真魚(まな)」と言い、一説によればこれが俎板の語源になったとも言われる。さらに太平洋上の島々の原始宗教では、「マナ」は一種の呪術的な超能力を指す。今夜の夢に現われた「マナ」が何を意味しているのかは不明だが、「マナ」という音自体には、もともと神秘的な意味合いが含まれているのだ。その意味で今夜の夢は、やはり何か神秘的な意味を持つものだったのだろう。


20日●長髪の志村けんと女湯で隣り合わせる
銭湯(または温泉?)の女湯の洗い場で、志村けんさんと隣り合わせた。志村さんは黒々とした長髪を肩まで伸ばし、胸から下を大きな大きなタオルで覆っているので裸身は見えないが、女性のような話し方をしている。くねくねと体をねじるポーズも女っぽい。女湯にいることを誰も咎めないので、もしかすると志村けんさんは女性なのかも知れない。志村さんが「シャンプーを貸して」と言うので、私はシャンプーを貸してあげた。

【解説】 全く意味のわからない夢。そう言えばデビュー当時の志村けんさんは、今と違って髪が多く、しかもロン毛だったような気がする。それにしても何故彼は夢の中で「女湯」に入っていたのだろう。なんとも謎である。



21日●知らないおばさん達から何か貰う
田舎者丸出しだが親切なおばさん達から、何か貰っている。食べ物だったような気がするが、よく覚えていない。私は素直にその好意に甘えている。

【解説】 今夜の夢にはストーリーらしいストーリーがあったのかも知れないが、詳細は覚えていない。おばさん達の素朴な感じだけが印象に残る夢だった。



22日●「修士論文が書けない」とギブアップする同級生
高野山大学の同級生らしき男性(顔は見えない)がやって来て、「自分の能力ではとても修士論文を書け上げられそうにない」という意味のことを言い出した。彼は仕事と学問の両立をギブアップしかかっているらしい。こんなとき、「大丈夫。きっと書けるよ」とその場限り言葉をかけることは簡単だが、そんなふうに糠喜びをさせても本人の為にはならないと私は思った。彼が何故論文を書けないのか、問題点はどこにあるのか、ひとつひとつ具体的に質問する私。聞いていると、やはり今の彼には論文を書き上げることは難しそうだ。私は「どうも貴方の場合、2年で卒業するのは無理そうだから、3年あるいは4年計画に変更したらどうですか?」と率直な意見を口にしてみた。それを聞くと彼はだいぶ気が楽になったようで、「そうですね、そうします」と晴れ晴れした顔で答えた。

【解説】 現実世界でも、今日は修士論文研究計画書の提出締切日だった。「当日消印有効」とのことだったので、夜遅くなって郵便局へ行き、研究計画書を出してホッと安心したあとに見た夢がこれである。通信制の大学院は普通の大学と違い、同級生と机を並べて切磋琢磨することもないし、教授から「勉強しなさい」と直接ハッパをかけてもらえることもない。すべては自分のやる気次第というか、かなり孤独な勉強である。高野山大学の場合、通信制大学院の第一期生30人のうち、最短の2年間で修士号を取得できた学生はわずか2名だったという。通信制の学生は基本的には仕事をしながら勉強しているので、時間的な制約がかなり厳しいのだ。そんな諸々の現実が反映されているような今夜の夢だった。



23日●赤ちゃんの名前を決められない男
35歳前後の痩せ細った男の姿が見える。彼は先刻から必死で赤ちゃんの名前を考えている。彼はいくつもの名前を思い浮かべては、「あれもダメ、これもダメ」と自分でダメ出ししている。彼が考え付く名前は、どれもこれもわけのわからないDQNネームばかりだ。私は少し離れたところに立って男の顔を見ている。

【解説】 赤ちゃんに名前を付けるという作業は、なかなか面白い。私の場合、娘の「里愛」(りあ)の命名の際には、第二候補の名前があったので出生届提出期限ギリギリまで迷いに迷った。しかし息子の「夏才」(なさ)のときには実にアッサリ名前が決まり、迷わずアッサリ届け出た。犬の命名に至っては、ペットショップで顔を見た瞬間に速攻で「ブースケ」と決めていたから1秒もかかっていない(笑)。また、私の父は自分の名前(寛)がほぼ左右対称形だったせいか、子どもの名前にも左右対称の文字にこだわって、私にも私の弟にも左右対称の文字だけで名前を付けている。弟には2人の娘がいるが、彼女達の名前は共にひらがなである。弟が何故ひらがなの名前を選んだのか理由は知らないが、おそらくそこには彼独特の哲学があるのだろう。さて、今夜の夢の男は、命名に当たって何を迷っていたのだろう。もう少し夢を見続けて、男が最終的にどんな名前を付けるか見守っていたかった。



24日●チベット人の住む村で
ヒマラヤの寒村。私はチベット人の女性が着る民族衣装を着て、田の畦道のようなところを歩いている。ところどころに民家がある。家々の窓からは主婦達が顔を出して私を見ている。彼らの眼差しには、よそ者を見るときに特有の懐疑と拒絶の感情が籠められているようだ。気がつくと私は民家の一軒にいて、窓から顔を出し、外に向かって叫んでいた。何を叫んでいたのかハッキリとは思い出せないのだが、すぐ近くでチベット人の小さな男の子が事件または事故に巻き込まれており、私はその男の子を助けるために大声を出して皆の注意を引こうとしていたのだと思う。次に気がついたとき、私はおかっぱ頭の小さな女の子の手を引いて、再び田の畦道を歩いていた。女の子は娘(LiA)の幼少時代だったような気がするが、よくわからない。あちこちの民家の窓からは、相変わらず懐疑的な視線が降り注がれている。私は視線に気づかない振りを装い、女の子と「アルプス一万尺」の手遊びを始めた。ところが途中まで遊んだところで手の動かし方がわからなくなってしまった。よく知っていたはずの手遊びを忘れてしまったことに愕然とする。一緒にいる女の子も「アルプス一万尺」を思い出せないようだ。残念な気持ち。

【解説】 数年前にヒマラヤの奥地へ行き、チベット系の子ども達に「アルプス一万尺」を教え、一緒に楽しく遊んだことがある。そのときのイメージが今夜の夢には投影されていたと思われるのだが、それにしては、夢の中で私に向けられていた視線は冷たいものだった。全体に“だるい”雰囲気の漂う夢だった。



25日●……

【解説】 今夜はほぼ徹夜だった。そのためか夢を見た記憶はない。



26日●悲しいお別れ
前後の状況はどうしても思い出せないのだが、私は日本を去ることになり、友達ひとりひとりにお別れの挨拶をして回っている。本当は日本にいたいのだが、内心の葛藤を隠してどこか遠い国へ行くことになった私は、何か悲しい覚悟を決めたようだ。いちばん別れたくない相手にもお別れを告げようと思うのだが、何故かその人は捕まらない。その人とは結局最後まで逢えないまま私は日本を後にするのだろう。

【解説】 今夜の夢はかなり漠然としていて、自分自身が日本を発ってどこへ向かおうとしているのか、何のために日本を離れるのか、いちばん別れたくない相手が誰なのか、よくわからない展開だった。目が醒めた瞬間、これと似たような夢をつい最近も見たことがあるような気がしたのだが、単に勘違いかも知れない。なお、現実世界で誰かと悲しいお別れをする予定は、今のところない。



27日●少年はぐるぐる腕を回す
草原のような広々とした場所。私は1〜2人の少年と連れ立って歩いている。私達から10mほど離れたところに、もうひとりの少年の姿が見える。少年はいがぐり頭(?)で、私たちの気を引こうと色々なことをしてみせるのだが、彼の思惑はことごとく失敗する。しかし彼は決してめげず、ニコニコ笑っている。そのあと少年はぐるぐると大きく右腕を回して見せた。しかしその行為も我々の感動を誘うことは出来なかったようだ。

【解説】 ストーリーらしいものがなく、意味のわからない夢だった。何をやっても上手く行かない、しかし決してめげない少年の存在が爽やかだった。



28日●女友達の長男の死
気がつくと学生時代の女友達Yさんと一緒にいた。私達はこれから一緒にランチを食べるようだ。Yさんの横には、彼女の女友達も同席している。その人はYさんが大人になってからの友達らしい。私がYさんに逢うのは10数年ぶりである。色々なお喋りに花を咲かせる私達だったが、何故か私は「何かが不完全だ」と感じている。そのうちYさんは次男の話を始めた。その話によれば、Yさんの次男は小学校高学年生で、野球部員らしい。その話を聞いているうちに、私はようやく彼女に長男がいることを思い出した。その子の名前がどうしても思い出せなかったので、「ところでご長男はお元気?」と尋ねてみた。すると驚いたことに、Yさんは突然その場に倒れるように泣き崩れてしまったではないか。Yさんに代わって女友達が「彼女のご長男は亡くなったんですよ」と告げた。私は大いに驚き、「知らぬこととは言え失礼なことを言ってごめんなさい」と何度も謝っている。そのうちYさんは泣きながら長男の死因について話し始めた。病死だったようだが、詳しいことは覚えていない。

【解説】 Yさんは現実世界でも学生時代の友達。かれこれ10年以上逢っていないが、彼女のお子さんは男児2人ではなく一男一女で、ふたりとも健在である。何故、夢の中で彼女の子どもが亡くなっていたのかは謎。思い当たる節も特にないのだが……。



29日●美空ひばりさんの路上ショー
ごく普通の道路上。頭に大きな黄色い羽根を付け、ゴージャスなドレスを纏った美空ひばりさんが、100人ほどのダンサーとコーラスグループを従えて立っている。彼女達は路上ショーを開催すべく、オープニングの時を今や遅しと待っているらしい。私は美空さんから頼まれて、何か(場所?)を探している。私のすぐ横にはもう1人アシスタント風の女性がいるが、それが誰なのかはわからない。私達2人はその辺りを走り回り、何かを探している。しかし目指すものは見つからない。走りながら私は心の中で(美空さんほどの人が何故、路上ショーをする必要があるのだろう)と考えている。

【解説】 今夜の夢には最初から最後まで「唐突」で「場違い」なイメージが漂っていた。ちなみに私はカラオケに行くと必ず『柔』を熱唱するが(笑)、と言って美空ひばりさんのファンというわけでもない。夢のあとに何か小さな事件があったような気がするが、その部分はどうしても思い出せない。



30日●携帯が天井からブラブラ
見知らぬ部屋。がらんとした空間。天井から何本も糸が垂れていて、それぞれの糸の先には携帯電話が結わえ付けられ、ブラブラと揺れている。

【解説】 今夜の夢には前後にもストーリーがあったのかも知れないが、残念ながら思い出せない。





※夢日記の一部または全部を許可なく転載・引用なさることは固くお断りいたします。
©Mami Yamada, 2004-2007 All Rights Reserved.