2007年5月


1日●意地の悪いT家の女たち
目の前にT家の女性達が勢揃いしている姿が見える。T家は格式のある旧家で、本家と分家の女性達を合わせると15人前後になるだろうか。この家では、恐ろしく古臭い因習やしきたりを未だに頑なに守っているようだ。どうやら私はT家の嫁の一人らしい(但し夫が誰なのかはわからない)。誰かから「真美さんはT家で2番目に意地の悪い女ですね」という意味のことを言われ、(ああ、きっとそう思われているんだろうな)と思う。15人のうち最も意地の悪い女は、先頃亡くなった当主の弟の嫁に当たる女性(推定年齢80歳)であるという。この人は、若い時はさぞ美人だったろうと思わせる整った顔立ちをしているが、鷲鼻で頬の肉が薄く、取りつく島がないほど冷たい印象がある。私は、亡くなった当主の妻(推定年齢90歳)の顔を思い浮かべながら、心の中で(病室にいる彼女のことを皆は忘れているようだけれど、彼女は誰よりも圧倒的に意地悪だから、私の順位は2番ではなく3番じゃないのかな?)などと思っている。

【解説】 まったく意味のわからない夢。T家は実在する旧家だが、私とは何の関わりもない。このあとで何か事件が起こったような気もするのだが、よく覚えていない。


2日●オムニバス形式のプチホラー映画『男の子と生肉と殺人鬼とメロン』
2階で泣き叫んでいる幼い男の子が見える。小さかった頃の息子のようにも見えるが、定かではない。すぐ近くにもうひとり幼い男の子がいるようだが、彼が誰なのかはわからない。場面が変わり、「生の肉」という言葉が聞こえた。この言葉は決して忘れてはいけないと思う。私は心の中で(生の肉、生の肉)と何度か唱えた。再び場面が変わり、バンガロー風のホテルのような場所。ここには私を含む数人の女性客が泊まっている。今は夜で、あたりには筆舌に尽くしがたい妖気が感じられる。宿泊客は全員、赤の他人同士だ。このホテルでは、シャワールームへ行くためにはパラソル付きのテーブルが何卓か置かれた庭を突っ切って、敷地のはずれまで行かねばならない。しかしどうやらシャワールームには犯罪者が忍んでいるらしい。犯罪者は男で、1人または2人。最初は単純な痴漢のように思われたが、実はどうやら恐ろしい殺人鬼らしい。出刃包丁のような刃物を持っているのかも知れない。最後にどこかから「メロン」という言葉が聞こえてきた。この言葉も覚えておかなければと思う。

【解説】 「泣き叫ぶ男の子」「生の肉」「刃物を持ってシャワールームに忍ぶ殺人鬼」そして「メロン」と、全く共通点のない4つのアイテムが次々に現われる奇妙な夢だった(※以上4つのアイテムの登場順序は、もしかしたら上記とは違っていたかも知れない)。全体としては、オムニバス形式のプチホラー映画を見てきたようなイメージ。1つ1つのアイテムのうち「生の肉」と「メロン」には思い当たる節がある。昨日は現実世界で愛犬のブースケが少しおなかをこわしていた(軽症)。犬がおなかをこわしたときは、生の馬肉を食べさせると効果があると一般に言われている。昨夜は就寝前に(馬肉を買ってきてブースケに食べさせなくちゃ)などと思っていたので、おそらくそのことが夢に現われたのだろう。もう1つの「メロン」は、同じく現実世界で息子(高校生)から「メロンパン買っておいて」と頼まれたことが夢の原因と思われる。しかし「2階で泣き叫んでいる男の子」と「刃物を持った殺人鬼」のほうは、意味がまるでわからない。全体になんとなく不気味で、イーグルスの名曲『ホテル・カリフォルニア』を彷彿させるような幻想的な夢だった。


3日●老母の病気について話し合う姉弟
昭和初期を思わせる古い日本家屋。夜の帳がおりて、初夏の風が静かに吹いている。2階のベランダで夕涼みをしながら、夫とその姉が小声で話し合っている。どうやら病気の母親のことで何やら話し合っているらしい。「このまま薬を買い続けたとしても数百万円はかかるから、普通に病院へ連れて行こう」と言う声がした。私は話し合いの席に呼ばれていないのだが、彼らの声はハッキリと聞こえている。私は心の中で、(姑は亡くなったと聞いていたが、実は生きていたのか)と驚いている。

【解説】 目が醒めてから思い出してみると、今夜の夢は全編を通じてモノクロだったような気がする。小津安二郎の映画を観ているような懐かしい雰囲気もあった。現実世界では姑は疾(と)うに亡くなっている。終わってしまった遠い思い出を見るような、非現実的な後味の夢だった。


4日●試験管のように細長いカラフルな棒
大きなテーブルの上に、細長い棒のような物がたくさん立っている。試験管のようにも見える。棒はすべて長さが約15センチ、直径が約1.5センチほどで、カラフルな色が付いている。私は黙ってそれらの棒を観察している。

【解説】 今夜の夢にストーリーがあったのかどうか、目が醒めてから思い出そうとしても思い出せない。それが何のための棒だったのかも全くわからない。


5日●パステルカラーのカフェバーで友人と再会する
広々とした部屋。一面にパステルカラーのクッションや小物が所狭しと並べられている。色も形もてんでバラバラながら、全体の色調が似通っているためか、可愛らしく落ち着いた感じがする。どうやらここは友人のM子さんが経営するカフェバーらしい。私には2〜3人の連れがいるようだが、彼らが誰なのかはわからない。そこへM子さんが姿を現した。M子さんは私との久々の再会を心から喜んでくれている。私は内心、M子さんが私に対して好意的であることに驚いている。

【解説】 M子さんは古い友人で、アート系の仕事をしている真面目な女性。しかし最近はあまり交流がない。仲が悪くなったというわけでは決してないが、ライフスタイルが違いすぎて次第に接点がなくなってしまったのだ。その人がカフェバーの経営者として夢に現われたのは不思議である。


6日●ゴミ箱を開けると白い鳩
夢の冒頭に何か重要なストーリーがあったのだが、そこはどうしても思い出せない。気が付くと私の目の前にゴミ箱が置いてあった。そのゴミ箱は直方体で、色は白または限りなく白っぽい薄目の色。私は以前、このゴミ箱に何かを入れたことがあるような気がする。しかし詳細は自分でもわからない。ゴミ箱には蓋が付いている(あるいは上にハンカチが掛けてある)ため、中が見えない。私は何の疑いもなく蓋を取ってみた。中には、目を開けたまま横になっている白い鳩の姿があった。。

【解説】 つい先日、原宿のブティック「竹の子」(大昔の「竹の子族」発祥の地)へ行き、そこでキンキラキンの衣装の上にピンで止められた1枚の写真を発見した。驚いたことにそれは友人のアメリカ人マジシャン、スティーブ・マーシャル氏のバストアップ写真だったではないか。スティーブは3月3日の「雛の茶会」で正客を務めてくれた人(写真はこちら)。それにしてもスティーブの写真が何故「竹の子」に!?と驚愕した直後に見たのが今夜の夢である。実は近々マジックショーで使う「鳩」のことでスティーブに相談したいことがある。おそらくそのことが夢となって現われたのだろう。ちなみに私は「竹の子」で購入した紫のサテンのドレスを持っています(パーティードレスとして重宝するんですよ、これが(笑))。


7日●テニス(ダブルス)
室内でテニスをしている。バドミントンだったかも知れないが、おそらくテニスだと思う(そのへんは定かでない上、ストーリーには影響がない)。今はダブルスの試合の最中だ。敵側のコートの中には、中学校からの旧友であるI君の姿が見える。(へえ〜。I君ってテニスをするんだ!)と意外に思う。I君は平凡な風貌の女性と、私は見知らぬ男性(横顔しか見えないが長身でかなりハンサム)と組んでいる。4人はボール(或いはバドミントンの羽根?)を一心不乱に追いかけている。

【解説】 夢から醒めてみると、妙に悲しい気分が残っている。どうやらテニスの場面の前に、何かとてつもなく悲しい夢を見たようなのだ。しかしいくら思い出そうとしても、その部分のストーリーは思い出せない。今夜の夢は、本当はそこが一番重大だったかも知れないのだが……。「I君」は中学校以来の友達。クラスは違ったが当時からお互いの家に行き来するほど仲が良かった(但し色っぽい話はゼロ(笑))。その後もずっと交友があって、現在は「mixi」のマイミクさんでもある。普段はROM(Read Only Member=読むだけの人のこと)専門で書き込みはしないI君だが、先日、私の日記に対して初めてコメントを付けてくれた。コメントを発見したのが昨日だったので、その印象が今夜の夢へと続いたもの思われる。『夢の事典』(日本文芸社)によると、「テニス」の意味は「人間関係のシンボル。楽しいプレーは周囲と良い関係でいる証拠」だそうである。ちなみに現実世界の私は、テニスというスポーツが好きではない。


8日●付録つきの少女漫画
日本から遠く離れた静かな場所。ヒマラヤかも知れないが、よくわからない。そこには、ひとりの日本人男性がいる。私は彼のことを知らないのだが、付録つきの分厚い少女漫画(『りぼん』?)を届ける義務があるらしい。現場まで辿りついてみると、そこには男性のほかにも数人の人がいた(但し姿形は全く見えない)。私は男性に少女漫画を渡しながら、(何かが変だ。違和感がある)と思っている。

【解説】 昨日は現実世界でも、仲間内で『機動戦士ガンダム』の話題で盛り上がっていた。おそらくそのことが今夜の夢の原因かと思われる。


9日●ピアノを弾いてから後悔する
前後関係はまるで思い出せないのだが、私は人前でピアノを弾くことになった。このところあまり練習をしていないので、上手に弾ける自信はないが、やるだけやってみようと思う。弾き始めた曲は現実世界では聴いたことのない曲なのだが、メインのパートが2つあって(AとA')、その間を全く別の曲想(B)で繋いでいるような構成になっている。Bのパートを弾きながら(少しスピードが速すぎるかな)と思うのだが、私の指の動きは留まるところを知らない。どうにか間違わずに最後まで弾いた私ではあったが、終わるとすぐに自分の弾き方を後悔し始めた。特に真ん中のBパートは、極端なほどゆっくりと楽しんで弾くべきだったのではないかと思う。自分はまだまだ人間的に未熟だなとも思い、大いに後悔・反省しているところで目が覚めた。

【解説】 今夜の夢はとても示唆に富んだ内容だったように思う。実は今年の1月頃からずっと、「私の人生は前半戦が終わり、後半戦に入りかかっている」ということと、「今は前半戦と後半戦の間にある休憩時間だから、思いきり楽しもう」ということを思っている。何故そう思うようになったのか、長くなるので理由はここには書かないが、そんなことを1月からずっと考えている。しかし実際にはこのところ気持ちが忙しく、なかなかゆったりできない現状がある。今夜の夢はそんな現状に警鐘を鳴らし、「中間部分(つまり今という時)をもっとゆっくり楽しみなさいよ」と私に告げていたのではないだろうか。勝手な解釈かも知れないが、少なくとも私はそう感じた。


10日●男女4人で合唱
落ち着いた感じの薄暗い和室。とても古い感じの建物だ。時代的には江戸、あるいは更にさかのぼって戦国時代かも知れない。室内には8人(または6人?)の人間がいて、そのうちの4人がこれから合唱をすることになっている(合唱ではなく楽器の演奏だったかも知れないが、そのへんのことはハッキリと思い出せない)。合唱をするのは男性2人と女性2人で、私のそのうちの1人だ。身仕度を整え、自分の姿を見るために鏡の前に立ってみた。すると驚いたことに、私は見たこともない女性の姿をしていたではないか。普段着の着物を着て、髪を簡単に結い上げており、実際の私とは似ても似つかぬ美女なのだ。私はこんな顔だったのかと驚く。しかし折角こんな美女になったというのに、何故か私は少しも喜んでいない。自分の容姿にとめどもない違和感と不満を感じる。美女でなくてももとの顔のほうが私らしくて良かったと思う。鏡に映った顔の表情に少し翳りがあって、やつれた感じがするのも気になる。一言でいうと幸福そうに見えないのだ。着物の衿からちらりと見えるのは、喉に巻かれた包帯。扁桃腺でも痛めているのだろうか。このあと、鏡を見終えた私が部屋に戻って他の3人と合唱をしたのかどうか、そのあたりの事の顛末は全く思い出せない。

【解説】 今夜の夢は「合唱」がテーマだったのか、「翳りある美女の顔を手に入れたこと」がテーマだったのか、目が醒めてから色々と考えてみるのだが、一向にわからない。「合唱」がテーマだったとすれば実際に歌を歌う場面が登場しないのはおかしなことだし、「翳りある美女の顔を手に入れたこと」がテーマだったとすれば、美女になったにも関わらずその顔に喜んでいないのも奇妙な話だ。結局、今夜の夢は何を言いたかったのだろうか。昨日の「ピアノを弾いてから後悔する夢」と今夜の「合唱」の夢は、何らかの関連性があるように思うのだが、それがどのように繋がるのかも私にはわからない。


11日●カエルの顔が付いた緑色の化粧ポーチ
お寺の縁日(?)を歩いている。ブースケ(愛犬)の散歩をしているのかも知れない。目の前にワゴンのような物があって、そこに色とりどりの化粧ポーチが並んでいる。見ると「3つで1,000円」となっている。オレンジ、黄色、黒などのポーチが並んでいる中から、私は緑色のポーチを手に取って見た。それは和風の布製で、同じく布で作ったカエルの顔が縫い付けてある。なかなか可愛らしい。これで3つ1,000円は格安だと思う。お店の人が「1つなら380円ですよ」と声をかけてくれた。私は迷わずに緑色のポーチを買うことにし、お金を払いながら(これはアクセサリー入れとして使おう)と思っている。

【解説】 最近、身辺に緑色のグッズが増えつつある。この春から初夏にかけて買った洋服類は片端からグリーンだ。あまり着る機会がなさそうな鮮やかなグリーンのショートコートまで買ってしまった。別に風水に凝っているわけではなく(笑)、何故か急に緑色のモノが欲しくなったのである。そういう経緯があるので、今夜の夢に緑色が現われたのは自然な感じがする。なお、カエルという生物も私は大好きである。
【後日談】 夢を見た同じ日の午後、ブースケの散歩で浅草へ行った。今日はいつもと少しコースを変えて、ここ半年ほど歩いていなかった道を通ってみたのだが、そこで、以前は見かけなかった新しいお店を発見した。何気なく近づいてみて、驚いた。なんとその店先には、今夜の夢で見た物と寸分違わない「緑色のカエルの顔付き化粧ポーチ」が「3つ1,000円」「1つなら380円」で販売されていたではないか。しかもディスプレイの方法まで夢の中と同じ。お店の人がやって来て、「1つなら380円ですよ」と声をかけてくれるところまで、何から何まで夢と同じなのである。なんとも不思議な体験だった。


12日●楳図かずおが描く「海へ向かった6人の運命」
楳図かずお氏の漫画の世界が、目の前に大きく広がっている。登場人物は6人。そのうち全員が人間だったかどうかは定かでない。犬が混ざっていたような気もする。彼らは2人ずつ3組に分かれ、別々に海へ行って、そこで与えられた任務を遂行しなければならないらしい。海に着くと、そこにはさまざまな恐怖や胸が潰れそうに悲しい出来事が待っている(但し、それが具体的にどんな出来事であったかは何故か思い出せないのだが)。6人はそれぞれ苦難を乗り越えて、どうにか生きたまま元の場所に戻ることが出来た。夢を見ているあいだ最初から最後まで、BGMには「シャララララ…」で知られるミニー・リパートンの名曲『Lovin' You』が流れていた。

【解説】 私は小学生の頃から漫画家・楳図かずお氏の大ファンである。しかし今夜の夢のようなストーリーは、実際の楳図作品には存在しない。夢の中でひどく悲しい気持ちになるのだが、その理由は最後まで明かされない。なお、私がどういった経緯で楳図ファンになったかは、『週刊マミ自身』第36号をご参照ください。


13日●2つの物を移動させる
細長い金属製の台のようなものがあって、それは何か近未来のテクノロジーに関係した物らしい。その上に、野球のボールほどの大きさがありながら肉眼では見えない「何か」が乗っている。おそらく誰かの指示を受けて、私は「何か」のうちの2つを手に取り、同じ台の別の場所へと移動させている。

【解説】 何を何のために移動させていたのか定かではないが、それは2007年の世界には存在しない、近未来の何かだったような気がする。ややSF的な夢だった。


14日●お遍路道で空海の死の秘密を思い出す
気がつくと私は白衣(びゃくえ)姿でお遍路道を歩いていた。と、その瞬間、或る素晴らしいことを思い出した。それは空海の死に関わる重大な秘密だ。(そうだ、間違いない! 空海はやはり○○で亡くなったのだ!)と心の中で叫んでいる、その傍らでは、オレンジっぽい黄色い花が揺れていた。

【解説】 お遍路さんをしていて、空海の死に関する出来事を突然“思い出す”という、なんとも不思議な夢だった。“思い出す”と言うからには、私は昔もそのことを知っていたのだろう。しかし、それがいつの出来事なのかは、夢の中では明かされない。全体にミステリアスな雰囲気の漂う夢だった。


15日●こぶとり爺さん
気がつくと私は山小屋のような質素な家の中にいて、台所の井戸水で洗い物をしていた。不意にがらがらと音を立てて引き戸が開き、大国主命によく似た大きな男が笑いながら家に入ってきた。日本神話のとおり、大きな袋を肩に掛けている。ところが彼は大国主命ではなく、実はこぶとり爺さんであるという。そのことを教えてくれたのは彼自身ではなく、一種のテレパシーのようなものが私に語りかけてくれたのだが。こぶとり爺さんは、榊の枝を取り出して加持祈祷のような仕草をしたあと、笑顔のまま黙って家を出て行った。私は戸口のところで手を振りながらお爺さんを見送ったあと、再び何事もなかったように井戸のほうへ戻り、洗い物を再開した。

【解説】 1000年、またはそれ以上昔の日本にタイムスリップしたような、どこか不思議な雰囲気の夢だった。私自身はもんぺ(?)のような物を身に付けていたような気がするが、そのあたりの詳細は思い出すことが出来ない。
【後日談】 この夢を見た数時間後、ひどく不思議なことが起こった。実は私のオデコには小さなイボが1つあったのだが、そのあたりが急にむず痒くなり、何気なく掻いたところ、イボが一瞬にして取れてしまったのである。それは直径3〜4mm程度の肌色のイボで、髪の毛に隠れていることもあってほとんど目立たないものだったのだが、本人は少し前から気になっていた。それで、来週の水曜日に皮膚科の医院に行き、レーザーメスで除去していただくことになっていたのである。ところが15日の夜に「こぶとり爺さん」が登場する奇妙な夢を見て、16日の午前中に突然オデコがムズムズしだしたかと思うと、ちょっと掻いただけでポロリとイボが取れてしまったのだ。これを書いている今日は、その出来事から5日後の21日だが、イボがあったところには少しの傷跡も残っておらず、つるっとキレイに完治している。なんとも不思議な話で、一部始終を見ていた家族からもひどく驚かれている。実際、この世には不思議なことがあるものだ。


16日●時間が足りない
目の前にやりかけの仕事が山積みになっている。時間が足りないと思う。初夏だというのにコタツが見える。まずはこのコタツを片付けなくては。しかし梅雨が来ると寒いかも知れない。やはりコタツはこのままにしておこう。書きかけのメールを書き終えて送信し、受け取った手紙にも返事を書かねば。会議にも出席しなくては。やることが多すぎる。私は深呼吸をひとつすると、白い紙に大きく“Get things done ahead of time!”と書いて壁に貼った。

【解説】 現実世界でも、今年に入ってから非常に忙しい毎日が続いている。その気持ちがそのまま現われた今夜の夢だった。最後に紙に書いて壁に貼った英語は「物事は早めにやり終えなさい」という意味。実際でこのような言葉を使ったことはないが、目が醒めてから思い出してみると、なかなか良い標語である。現実世界でも白い紙に書いて目の前の壁に貼り出しておこうか(笑)。


17日●……
【解説】 今夜はどうしても夢を思い出せない。夢を見たのか見なかったのか、それすらも覚えていない。


18日●幸福感
私は大きな幸福感に包まれている。これこそは私が望んでいた世界だ。この幸福がいつまでも続きますようにと心の中で祈っている。

【解説】 具体的なことは全く思い出せないのだが、夢の中で何か幸福な出来事があったようだ。それは平凡で温かく、心を癒してくれる何かだった気がする。


19日●物を食(は)む人
ひとりで食事をしている男性の姿が見える。見たところまだ30代のようだが、その姿には長年の孤独が沁み込んでいるようだ。私はその人を助けてあげたいと思うのだが、定めにより、助けてあげることは出来ない。その人が食事をする姿は、「食べる」というより「食(は)む」という言葉がピッタリだと思う。私はハムスターの食事を思い出し、心の中で「ハムスターのハムは食むのハム」などという訳のわからない歌を口ずさんでいる。

【解説】 時間にして1秒ほどの短い夢。食事をする男性の姿だけが視界に映っていた。しかしその姿は食事を楽しんでいるふうではなく、「食べなければ死ぬ」という自然界の掟ゆえに機械的に食物を口に運んでいるようにしか見えなかった。孤独な色の漂う夢。


20日●思いがけない成功
一生かけても実現できそうもない難しい「何か」がある。期せずして、私はそれを実現してしまった。思いがけない成功に、喜びよりも驚きの感情のほうが先に溢れ出してくる。オックスフォードの大学院を卒業したばかりの友人のKさんの顔が浮かぶ。私はゆっくりと寛ぎながら、次第に沸きあがってくる成功の喜びを噛み締めている。

【解説】 目が醒めてから、夢の中で何に成功したのか思い出そうとしてみたのだが、それが何だったのかどうしても思い出すことが出来ない。それは精神とか宗教といった、人間の内面に関わる事柄だったように思うのだが。Kさんは10歳ほど年下の女性だが、彼女が今夜の夢に登場した理由は不明。


21日●和田アキ子さんとの会話
廊下の向こうから、歌手の和田アキ子さんが歩いてきた。和田さんは、何やら真剣な表情で話しかけてきた。何を話したのか思い出せないのだが、それはとても真面目な話だったような気がする。

【解説】 体感時間にして1秒ほどの、とても短い夢だった。私は日頃からほとんどテレビを観ない人間で、和田さんが登場する番組などを最近観た記憶もない。その和田さんが何故夢に登場したのか、理由は全くわからない。


22日●偉い人との対談でちゃぶ台をひっくり返す
どこかの編集部の人が5人ほどやって来た。そのうち、見るからに編集長らしき男性が笑いながら、「聞きましたよ、山田さんの武勇伝。○○さんとの対談でちゃぶ台をひっくり返したそうですね。あんな偉い人を相手にブチ切れるなんて、山田さんらしいですね」というようなことを言った。○○さんが誰のことなのかはよくわからないが、どうやら社会的地位の高い人らしい。編集長は慇懃無礼に笑うと、少し嫌味な口調で、「山田さんはインタビューするよりもされていたほうがいいですよ」と言った。私は心の中で、(さて、近頃ちゃぶ台をひっくり返すような事件があっただろうか。何も記憶していないのだが)と首を傾げながら、少し憂鬱な気分になっている。

【解説】 またしても意味のわからない夢だった。「ちゃぶ台ひっくり返し」と聞けば、私などは星飛雄馬の父・一徹をすぐに思い出す世代だが(苦笑)、今夜の夢で私は誰に対して何を怒っていたのだろう。ちょっぴり気になる。


23日●地球滅亡まであと数日
夜の街。そこは実家のある長野市がベースになった架空の都市で、至るところに幻想的なライトが瞬いている。それらのライトは、子どもの頃に憧れた遠い外国の遊園地のように見える。ディズニーランドにも似ているが、それよりも遥かにドラマティックで美しい。私は夜風に吹かれながら2人の女友達と歩いている。そのうちの1人は舞踊評論家のN子さん。もう1人はJALのスチュワーデスをしているKさんと思われるが、定かではない。私たちの目の前には、巨大な観覧車が見えている。あたりは美しくも妖しい光の洪水だ。しかし残念ながら、この風景ともあと数日でお別れだと思う。核戦争(?)が起こり、地球はあと数日で滅亡する運命だからである。あまりにも美しい風景を目の当たりにしながら、私の心の底には冷んやりとした風が吹いている。

【解説】 今夜の夢は、「栄枯盛衰」「諸行無常」といったイメージに彩られていたように思う。地球滅亡の日が数日後に迫っているというのに、それに対して成す術もなく、すべてを受け入れて達観している自分の姿が、幻のように浮かび上がる美しい遊園地との対比で際立って見えた。どこか詩的な夢だった。


24日●とんでもなく“おめでたい”こと
私の身の上に、何かとんでもなく“おめでたい”ことが起こった。それは結婚とか出産のような慶事だったと思うのだが、具体的なことは何故か少しも思い出せない。

【解説】 夢の中で慶事が起こり大喜びしていたことは覚えているのだが、詳しい内容は全く思い出せない。目が醒めたあとは、楽しい気分だけが残っていた。


25日●Ambition drives you forward.
目の前にノートが見える。そこには私の筆跡で“Ambition drives you forward.(大志がおまえを前進させる)”と何十回も書き連ねてあった。いつ、何のために書いたものかはわからない。何十年、あるいは何百年も前に書いたものかも知れない。ここに書かれた「おまえ(you)」は、おそらく私自身のことなのだろう。この世に生まれてきたからには、どこまでも前進する以外に道はないのだと思う。(野心こそ、私を動かす原動力のようなものだな)と思ったところで目が醒めた。

【解説】 過去の自分からのメッセージを読んでいるような不思議な気分の夢だった。そう言えば小学校の卒業記念文集の「一言」のページに、私は「少年よ大志を抱け」と書いている。そう考えると、今夜の夢の中で思ったとおり、確かに大志(≒野心)が私をここまで連れて来たのかも知れない。一瞬だけ人生を振り返るような夢だった。


26日●命がけのサーフィン
すぐ目の前に、直径4〜5メートルの球形のジャングルジムのようなものが見える。それはつやつやした銀色の金属で出来ており、何十本もの細い金属の通路が非常に複雑な形で張り巡らされている。それぞれの通路は幅が10センチほどで、その上をスノーボードのような形の板を履いてサーフィンできるデザインらしい。よくサーカスで球形の入れ物の中を縦横無尽にバイクで走り回るショーがあるが、あれのサーフィンバージョンという感じだ。気がつくと私はボードを履いており、金属の通路が張り巡らされた球の中をビュンビュンと音を立てながら滑走していた。あっという間に時速150キロを超えたのではないかと思う。風が耳を切り、痛いほどだ。もしも誤って落ちたら、おそらくその場で死ぬだろう。私は全身の神経を集中させながら、命がけのサーフィンをしている。

【解説】 この直後に目覚まし時計の音が鳴り響き、一命を取り留めた(笑)。あれほど意識を集中する夢は珍しい。ずっと夢が続いたら、最後はどうなっていたのだろう。


27日●ガソリンスタンドの広告に使われるF1ドライバー
気がつくとガソリンスタンドにいた。いかにもスタンドらしい制服を着た店員2人が、ひとりの男を左右両側から挟み込んで腕を押さえている。腕を押さえられた男は小柄で痩せていて、目が大きく、何故かおどおどしている感じだ。彼は日本のF1チームの補欠ドライバー(?)らしい。この業界の常識では、F1チームのスポンサーである石油会社や自動車会社の恩に報いるために、ドライバー達は体を張って広告に登場しなければならないという。広告と言っても、その仕事の内容は、日本各地にあるガソリンスタンドへ行き、ガソリンのエンドユーザーである一般人にいちいち「ありがとうございます!」と頭を下げることらしい。いま私の目の前にいる補欠ドライバーは、逃走防止の木製の手枷を装着させられ、上半身が裸で下半身にはボロボロの黒いズボンを履かされ、ほとんど中世の奴隷のような風体である。今また給油のために1台の自動車が店に入ってきた。「ありがとうございます!」を言うために、補欠ドライバーは2人の店員に引きずられるようにして自動車のほうへ歩いて行った。私は心の中で(この人たちは、こうやって日本中のガソリンスタンドを回っているの? レースチームの補欠ドライバーって全部で何人いるわけ?)などと思っている。

【解説】 何やら意味不明な夢だった。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「ガソリンスタンド」の意味は「精神的に少し疲れている状態」、「給油」の意味は「愛情不足」、「奴隷」の意味は「対人関係における力関係/束縛度」だそうである。夢が示唆するところによれば、どうやら私は少し疲れているらしい(苦笑)。


28日●友達がいっぱい
どことも知れない空間。大勢の友人達がひしめき合っている。読者さんのNちゃん(30代の女性)の姿がすぐ近くに見える。学生時代の友人達のちらほら顔も見える。お茶の仲間、文化デザインフォーラムの仲間、そのほか色々なところで知り合った色々な人の顔が重なり合って見える。皆はそれぞれ談笑したり考え事をしたり目を瞑ったまま居眠りしたりしながら、互いに干渉することなく存在している。それはまるで人生という名の列車の「箱」の中で乗り合わせた人たちのようだ。私は黙ったまま彼らと同じ「箱」に乗っている。安堵感。安定感。

【解説】 ストーリーらしいものが全く感じられない上に、個々の人々との会話すらないのだが、不思議に心が落ち着く夢だった。何か「人生」を感じさせる内容だった。


29日●友達がいっぱい(+赤ちゃん)
どことも知れない空間。大勢の友人達がひしめき合っている。基本的には昨夜の夢とほぼ同じ光景が目の前に広がっている。またしても読者さんのNちゃん(30代の女性)の姿がすぐ近くに見える。昨夜と違っているのは、Nちゃんの腕の中に赤ちゃんが抱かれていることだ。Nちゃんの顔は誇りに満ち、太陽のように輝いている。私は昨夜と同じように黙ったままNちゃん達と同じ「箱」に乗っている

【解説】 驚いたことに今夜の夢は、昨夜とほとんど同じである。変わっているのは赤ちゃんが1人増えたことだけなのだが、たったそれだけのことが、この夢に劇的な変化をもたらしてくれたような気がする。「赤ちゃん万歳!」とサブタイトルを入れたいような明るい雰囲気の夢だった。


30日●友達がいっぱい(+赤ちゃんもいっぱい)
どことも知れない空間。大勢の友人達がひしめき合っている。基本的にはまたしても昨夜の夢とほぼ同じ光景が広がっている。昨夜と違っているのは、Nちゃんの数がぐんと増えたことだ。多くの女性達の腕の中に赤ちゃんが抱かれている。それぞれのお母さんの顔はハッキリと見えないのだが、全体に神々しいまでの力強い光が漲っている。私は底知れぬ幸福感を味わっている

【解説】 驚いたことに、28日以来3夜連続して、ほとんど同じ内容の夢だった。このような経験は前代未聞である。これらの夢が一体何を現わしているのかハッキリしたことはわからないが、終始一貫して強い生命力と明るい希望がほとばしっているのを感じた。この3夜を色に例えると、明るいオレンジ色のイメージだったように思う。


31日●…
【解説】 今夜は夢をいた記憶が一切ない。「見た夢を忘れた」というよりは、夢を全く見なかったという感じなのだ。しかも目が醒めたあとは、すっきりとした爽快感がある。夢を全く見ない夜も、たまにはいいものだと思った(しかし仮にこの状態が続いたなら、私のことだからすぐに「寝るのがツマラナイなぁ」と感じるようになるのだろうが(苦笑))。




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