2008年8月



1日●バッハのような髪型のY氏に驚愕する
前後関係は不明だが、気がつくと目の前に友人のY氏が立っていた。驚いたことに、Y氏は作曲家のヨハン・セバスチャン・バッハのようなトンデモない髪型になっているではないか。私は驚愕のあまり笑うことすら忘れ、「それ、ヅラですよね?」と聞こうとしたのだが、やはりその質問は失礼だと思い留まり、心のなかで(もしかしてYさんは裁判官にでも転職したのだろうか? それにしてもこの髪型はハッキリ言って似合っていない。教えてあげた方が親切だろうか・・・・・・)と思っている。

【解説】 目が醒めてから、(そう言えば小学校の音楽室にはクラシック音楽家の肖像画がズラリと並んでいたけれど、あれは今考えると噴飯モノだった。今なら思わず爆笑してしまうかも知れない。あのなかではベートーベンの髪型が割とマトモだったな)などと思い出し、1人で笑ってしまった。ちなみにY氏は音楽家ではなく、現状の髪型も至って普通な勤め人である。そのY氏が何故トンデモ髪型で夢に登場したのかは謎。なおバッハの肖像画はこちらからご覧いただけます。


2日●マジックをしないマジシャン
大きな室内イベント会場。1,000人以上収容の大ホールには、すでに大勢のお客さんが入っている。これから大きなマジックショーが始まるのだ。パフォーマーは南インドを代表するマジシャンのムトゥカド氏と彼の弟子たちである。私はこのショーを企画した当事者らしく、ステージの袖に隠れて様子を見守っている。最初にムトゥカドさんがマラヤラム語で短い挨拶をした。通訳は背の小さい見たことのないインド人の少年だ。(今回の通訳はもっと派手な顔の人にさせなくちゃダメだ。何故あんな地味顔の男を起用したのだろう。通訳自体もヘタだし)と心のなかで思っている私。すぐに華々しい音楽が鳴り響き、ショーがスタートした。……と思いきや、ステージ上で始まったのはマジックショーではなく、なんとインド人の子どもたちによる歌謡コンテストではないか。次々に子どもが1人ずつ現われては歌を歌い、ムトゥカドさんはその司会をしているだけだ。私は一部始終をステージの裾から眺めながら、(やれやれ。マジックショーというふれこみでチケットを販売したのに、全然マジックをしないとは。あとでお客さんからクレームが付きそうだ。しかしまあ、何とかなるさ)と思っている。

【解説】 先日、日本テレビ開局55周年記念番組「阿久悠物語」を見た。歌謡ショーのイメージは、おそらくこの番組のなかに登場した「スター誕生」のイメージから来ていると思われる。夢の内容は、よく考えるとひどい話なのだが、私は困ってもいないし反省もしていない。なんというか、ヤクザな夢だった(笑)。


3日●編集者の座敷わらし
気がつくと、小さな喫茶店で数人の人たちと一緒に談話していた。その店にはテーブルが2つしかないので、私たちのグループだけで店は一杯だ。入り口に近いほうのテーブルに座っているのは、私と、正面に担当編集者、そして見知らぬ男女である。隣のテーブルにも4〜5人座っているようだが、彼らの顔はよく見えない。同じテーブルの男女のうち、男のほうが「しまった、僕お金を忘れちゃった」と言っている。どうやら彼は女に5,000円を支払わなくてはならないらしい。男と女は顔を寄せ合い、一緒に1冊のメニューを見ているのだが、メニューを持つ指と指の間に、小さく畳んだ5,000円札がそっと隠されているのが見えた。私はそれを指さしながら、「ここに隠し持ったお金があるから、大丈夫じゃないんですか?」と男に告げた。そこへ誰か知っている人が通りかかったようだ。私は立ち上がって挨拶をし、それから、目の前に座っている編集者のことを紹介した。その紹介の中で、「この方は、私がこれまでに出版した本のほとんどを編集してくださった○○さんです」と私は言ったのだが、そう口にしてから、(それはおかしい。私の担当編集者は芝田さんなのだが)と思う。そこで隣のテーブルに目をやると、芝田さんはそちらに座っていたではないか。では、現に私の目の前にいる人は誰なのだろう。その人の名前を思い出そうとしてみるのだが、数秒前には知っていたはずの「○○さん」という名前さえ急に忘れてしまった。しかしどう考えてみても、この人は今までに私が書いた本を片端から編集してくれた担当編集者に違いないのだ。(いや、そんなはずはない。私の担当編集者は芝田さんだ。もしかしてこの人は、伝説の座敷わらしなのでは?)と思ったところで目が醒めてしまった。
【解説】 昨夜の夢の中ではマジシャンがマジックをせず、今夜の夢の中ではごくフツーのカップルや編集者がマジックをした。そんな不思議なイメージが残る夢だった。



4日●巨大で冷たい銀色の風景
巨大な倉庫のような体育館のような建物。ジュラルミンのような感覚。銀色。冷たい感じのする大きな鈍角三角形が見えたような気がする。私はその建物の前を歩いている。何かの終わり。殺伐とした風景。倦怠感。
【解説】 巨大で冷たい印象の残る銀色の風景の中を歩いている夢だった。おそらく今夜の夢にはもっと長いストーリーがあったと思うのだが、起床してみると、何故か印象しか思い出せない。



5日●皮膚と注射針
左手の甲が見える。これはおそらく自分の手だ。看護師が静脈に注射針を刺そうとしているのだが、彼女の技術がヘタなのか道具が悪いのか、針はなかなか正しい位置に刺さらない。
【解説】 この夢には続きがあったような気がするのだが、この場面しか思い出せない。



6日●三味線の師匠とふたりで鉢巻を締める
気がつくと目の前に大きなステージがあった。どうやらここは演芸ホールのような場所らしい。私は客席の前からほぼ10列目、中央あたりに座ってステージを眺めている。不思議なことに、ステージ上の向かって左側には私が立っている。その右側は三味線の師匠(女性)だ。私たちはとてもリズミカルに、まるで演舞をするかのような大袈裟な動作で裃(かみしも)の紐を結ぶと、次に白い鉢巻を締めた。ふたりの一連の動きは一糸乱れず同時に行なわれ、実によく訓練を積んだパフォーマンスという感じだ。客席から見つめる私が、(これは白虎隊か?)と思った瞬間、夢はいきなり終わってしまった。
【解説】 意味のわからない夢だった。ステージ上に立っていらっしゃったのは、何年か前に私に三味線を教えてくださった東京芸大の先生である。最近はなかなかお目にかかる機会がないが、お元気でいらっしゃるだろうか。そう言えば先生は白虎隊と同じ福島のご出身だったような気もする。このところカウラ事件関係の仕事が続いているので、もしかすると「カウラ事件→敵の捕虜となることを恥とする文化→白虎隊(白い鉢巻)→福島→三味線の先生」という連想から今夜の夢になったのかも知れないが、よくわからない。



7日●高度1,000メートルの滑り台
恐ろしく高いビルの屋上。おそらく地上から1,000メートルは登ってきたようだ。ふと下を見ると、遥か彼方に地上が見える。足下には雲や霞も広がっている。目がくらみそうになりながら立っていると、不意に誰かに背中を押された。私はあっと言う間に前につんのめって、押し出されるように滑り台に乗り、あれよあれよと言う間に滑り始めてしまったではないか。上下に蛇行する滑り台。とてつもないスリルとスピード。果たして生きて地上に戻れるのか。私は心の中で(ひょっとしてこれは夢だろうか? こういう疑似体験のできるシミュレーターを作ったら、アトラクションとして人気が出るのではないか)などと思っている。
【解説】 とてつもない高さから滑り落ちながら、ふと冷静にビジネスチャンスを考えているという、これまた奇妙な夢だった。そう言えば私の夢には何年かに一度、“とんでもない高さからスタートする恐ろしくスリリングな滑り台”が登場する。この手の夢は、怖い以上にワクワクする。嫌いじゃない。



8日●人間化したブースケと"Shall we dance?"
愛犬のブースケが人間化して、ついに2本脚歩行を開始した。ブースケが"Shall we dance?"と言い、私たちは向き合って社交ダンスを踊ろうとしている。
【解説】 今夜の夢には膨大なストーリーがあったように思う。しかし目が醒めた時に覚えていたのはこの部分だけだった。残念。



9日●……
【解説】 今夜も間違いなく夢は見たのだが、起きた瞬間に首を寝違えそうになり、その衝撃で一瞬にして夢を忘れてしまった。なお首のほうは無事でしたので、何卒ご安心ください(苦笑)。



10日●永遠のお別れ
胸をかきむしられるように悲しいメロディーが流れている。しかし不思議なことに、よくよく聴くと曲そのものはハ長調の明るいメロディーなのだ。その楽曲が、私の耳には何故か葬送行進曲のように聴こえている。一体これはどうしたことか。曲は遠い昔にどこかで聴いたテレビの主題歌だと思う。子どもの頃にやっていたアニメ番組かも知れない。同じ曲がいつまでも執拗なまでに続く。私は心の中で(これでもう永遠のお別れだ)と思っている。
【解説】 夢から醒めてみると、それが果たしてどんな曲だったかどうしても思い出せない。無理に何かを諦めようとしているような夢だった。



11日●知人宅に不法侵入する男
気がつくと私は見知らぬ部屋にいた。どうやらここは友人Yさんのアパートらしい。私の横には娘もいたようだが、彼女は最後まで無言のまま。Yさんは仕事に出かけており、今は留守だ。それにしても私はどうやってこの家に入ることが出来たのだろう。Yさんから鍵でも預かったのだろうか。するとそこへいきなり見知らぬ初老の男が現われた。驚いた私が「どちら様ですか」と尋ねると、男は落ち着いた様子で、「私はY君の会社のOBでね、Y君とはお互いに顔見知りなんだよ。Y君が仕事に行っている時間帯はどうせこの家は空家だろう? だから毎日こうして私が使わせてもらってるのさ」と悪びれずに答えたではないか。私が「Yさんはこのことを知っているのですか?」と畳みかけると、男は笑いながら「Y君には知らせてないけど、別に構わんだろ、どうせ昼間は誰も使ってない部屋なんだから」と言う。「それって不法侵入じゃありませんか」と言おうとしたのだが、しかしYさんのいい加減な性格を考えると、この男の言うとおり誰かが昼間だけこの部屋を使っていても一向に構わないのかも知れない。私は男に抗議することはやめ、この部屋にいるのも飽きてきたので出かけることにした。
【解説】 そう言えば少し前、一人暮らしをしている男性のアパートの天袋に数ヶ月前から見知らぬ女が住みついていたことが発覚しニュースになっていた。あのニュースを見たときは、不法侵入のうえに長期滞在、しかも勝手にキッチンの食品を食べていたという重大犯罪であることはわかっていながら、不覚にも私は大笑いしてしまった。凶悪犯罪ニュースばかりを聞き慣れてしまった耳に、そのニュースはあまりにも大らかでユーモラスに聞こえたからである。今夜の夢には、その“天袋事件”のイメージが影響しているのかも知れない。ちなみにYさんは某新聞社のジャーナリストで、20年来の友人である。


12日●腹の立つ婚約者
前後関係はよくわからないが、ふと気がつくと見知らぬ建物の中にいた。建物は2〜3階建てで、中にはレストラン、カフェ、ブティックなどがあるようだ。結婚式場やブライダル関係の小さな店も入っているらしい。先刻この建物に入って来たときのことを、私は既に忘れかけている。確かあの時、私のすぐ横にいたのは友人のTさんで、彼は建物に入るなり「前にマリちゃんとここへ来たことがあるんだ」と嬉しそうに言っていた。マリちゃんというのは、どうやらTさんの昔の恋人らしい。そしてTさんは現在の私の婚約者という設定のようだ。Tさんが昔の恋人の話をするので、私は内心ムッとしている。そのあと同じ建物の別の部屋へと続くガラスのドアを押しながら、Tさんはニヤニヤ笑って「昔ユリちゃんと結婚しようと思って、ここの結婚式場を予約したこともあるんだよ」と言った。マリちゃんの次はユリちゃんとのノロケ話か。私はすっかり腹が立って、Tさんとの婚約を今すぐ解消することを決めた。
【解説】 夢の中で怒っているうちに目が醒めてしまった。Tさんは現実世界では「タダの友達」のひとり。かなり優柔不断なところがあって、いかにも昔の恋人の想い出を引きずっていそうなタイプ。恋人や夫には持ちたくない男性だ。何故そういう人が婚約者役で夢に現われたのか、理由はサッパリわからない。



13日●間違いだらけの日本地図
目の前に大きな日本地図が見える。しかしそれはおかしな地図で、東京の隣に大阪があったり、富士山の麓にニューヨークやインドが並んでいたりするのだ。そのあと、ガミガミうるさい中年女性から何か言われたような気がするが、詳細は思い出せない。
【解説】 今夜はもっと長大な夢を見た気がするのだが、何故かこの場面しか思い出せない。



14日●ナイトメア(悪夢)研究所
私は白衣を着て、研究所のようなところにいる。周囲には2〜3人の同僚研究者がいるようだが、彼らの姿はよく見えない。私たちはナイトメア(悪夢)の上手な取扱い方法について意見を交換している。
【解説】 昨夜はマジシャンのスティーブ・マーシャル氏+科学者の友人と会食した。その際にスティーブが何やらご自身のナイトメアに関する興味深い話を聞かせてくれた。今夜の夢には、まさにそのイメージがそっくり投影されていた感じ。



15日●トマトが大豊作
庭の畑に出てみたところ、トマトが驚くほどの大豊作だった。大きめの真っ赤なプチトマトが数百個か数千個、あるいはそれ以上、見事に熟しているのだ。見たことも聞いたこともないような大豊作に大喜びしながら、私はひたすら畑の中を歩き回っている。
【解説】 今年は現実世界でも東京宅の庭でプチトマトを作っており、かなりの収穫がある。今夜の夢の中では、現実が極限まで大袈裟にデフォルメされた感じだった。



16日●駅の改札口で息子と談笑する
古めかしい感じのする大きな駅舎。明治時代を思わせる重厚な造りで、日本または英国あたりの駅のようにも見える。私は息子とふたりで改札口の付近に立っていた。ふたりとも堰を切ったように色々なことを話している。とても楽しく、笑い出したくなるような内容の会話が続く。息子はどこかへ出かけるようだ。すぐ近所へ出かけるだけかも知れないし、アメリカの大学に行くのかも知れない。どうやら私もどこかへ行こうとしているようだが、ふたりの行き先は別々だ。しかしそこに別離の悲しさは微塵もなく、両者ともに前途洋洋といった感じが漂っている。息子と何を話したのか、その詳細はどうしても思い出せない。
【解説】 この前には何か長いストーリーがあったように思うのだが、覚えているのはこの部分だけ。現実世界の息子は今月からインターナショナルスクールの12年生(高校の最終学年)で、来年の今頃は大学に進学している予定だ。そのへんの事情が今夜の夢には反映しているのかも知れない。前途洋洋としたイメージと、重厚な駅舎のイメージが印象的だった。



17日●牛乳瓶のフタがいっぱい
床の上に夥しい数の牛乳瓶のフタが散乱している。まるで桜の花びらが散ったようだ。1枚1枚のフタには何か文字が書いてあるようだ。何が書かれているか調べようとしたところで目が醒めてしまった。
【解説】 今夜の夢は唐突に始まり唐突に終わったような気がする。牛乳瓶のフタに思い当たる節はない。



18日●形のない何かを拾う
道を歩いている。何かがたくさん落ちているので、私はずっと下を向いている。そのため周囲の風景は見えず、自分がどこにいるのかわからない。落ちているものをたくさん拾ったようだが、不思議なことに、それら拾得物には質量や容積はないのである。私が拾ったものは知識とか品性、教養のようなものだったのかも知れない。
【解説】 昨夜とやや似通ったイメージの夢だった。しかし夢が何を意味しているのかは、よくわからない。



19日●船を待つ
気がつくと私は港にいた。すぐ近くに誰か人の気配がするようだが、それが誰であるかは不明。それ以外は完全な静けさがあたりに漲(みなぎ)っている。軽く小雨が降っていたような気がするが、気のせいかも知れない。私は船を待っているようだ。大きな客船だと思う。しかしその船に乗ってどこへ行こうとしていたのか、詳細はまるで思い出せない。
【解説】 港で船を待つという、何やら暗示的な夢だった。夢の中で自分が何を考えていたのか、思い出そうとしても思い出せないのが不思議である。



20日●……
【解説】 今夜もいつものように夢を見たのだが、その内容を書き留めておいたメモ用紙を間違って捨ててしまったため、どんな夢だったか今となっては思い出すことが出来ない。



21日●双六(すごろく)のように少しずつ進む
バス停のような場所。私は乗り物を待っている。近くに誰かいたような気もするが、誰だったかは思い出せない。おそらく親しい人ではないのだと思う。ふと次に気づいたときは別の場所にいて、私はまたしても次の乗り物を待っていたようだ。今度はバスではなく電車かも知れない。ここで誰かと話したようだが、またしても相手の顔などは思い出せない。そうやって私はいくつかの乗り物に乗り、ふと気づくと全く別の場所に現われているのだが、それらの場所がどこなのかはサッパリわからない。また、乗り物に乗っているあいだの記憶もない。気づいたときにはいつも“乗り物を待っている”状態なのである。乗り物を待ちながら私は、(ある1点から次の1点へと少しずつ進んで行く、これは人生双六なのだろうか)などと思っている。
【解説】 乗り物を待つというシチュエーションは一昨日の夢を同じだが、今日はもっと長い距離を複数の乗り物に乗って移動したようだ。かなりの距離を移動したように思うのだが、それにしては各地で見た風景や逢った人のことなどは少しも覚えていない。静かで孤独なイメージの夢だった。



22日●倒れている人
ここがどこで、今がいつなのかはわからない。目の前に誰かがうつぶせに倒れている。性別も年齢もわからないが、倒れた人は微動だにしない。私はその場にしゃがみ込み、「大丈夫ですか」と声をかけようとしている。
【解説】 目の前にサッと映像が見えたと思った瞬間に消えてしまったような、まさに一瞬の夢だった。倒れていた人の服や靴の色を夢の中では覚えていたような気がするのだが、目が醒めると同時に忘れてしまった。

【後日談】 この夢を見た朝、大事な用事があるのに目覚まし時計が壊れていたのか寝坊をしてしまった。急いでメイクをしようとしたところ、昨日はそこにあったはずの化粧品が何故か忽然と消えている。代用品で済ませ、そのあとマニキュアを塗ったのだが、何度もマニキュア液がこぼれたりはみ出したりで思うようにいかない。その後、外出しようとサンダルを履いて家の外に出た瞬間、今度はサンダルのかかとが壊れてしまった。この時点で(今日は体調は良いのに周囲の調子が変だ)ということを確信したのだが、大事な仕事があるので出かけないわけにはいかない。その後も、確かに持っていたはずのサインペンがバッグから紛失したり、新たに買ったペンがもう一度紛失したりと、2〜3時間のあいだに奇妙なことが立て続けに起こったのである。さらにその後、極めつけに、久しぶりに逢った友人がいきなり目の前で倒れるという非常事態が発生してしまった。救急車の到着を待つあいだ、床の上にうつぶせに倒れている友人に「大丈夫?」などと声をかけながら、私はにわかに今朝の夢を思い出していた。人が倒れている夢を見たことに始まり、今朝は何か目に見えない力が「外出するな」と私を制止しているような状況だった。目覚まし時計も化粧品もマニキュア液もサンダルもサインペンも、「今日は家にいて!」と訴えていたようにさえ思える。ちなみに倒れた友人は軽症で、すぐに退院できた(不幸中の幸いである)。


23日●巨大ロボとトレーディングカード
目の前に巨大ロボが見える。これは「ジュウレンジャー」に登場した大獣神(だいじゅうじん)だなと思う。私の手には何枚かのトレーディングカードが握られている。
【解説】 数日前に見た「東京オンリーピック2008」という映画の中に、巨大ロボが登場した。今夜の夢はおそらくそのイメージの延長線上にあるのだろう。ちなみに私にはトレーディングカードを集める趣味はない(苦笑)。



24日●美しさを鼻にかけたプチ美女
妙齢の女が船を待っている。女は物凄い美人というわけではないが、まあまあ人目を曳く程度の顔を持った、言ってみれば“プチ美人”である。女は自分の美しさを鼻にかけている。そのことが傍目にもわかるほど、彼女は四六時中鏡の中の自分に見惚れているのだ。女は隣に男をはべらせている。男は女の崇拝者だ。男に「貴女を愛している」と言わせるため、女は媚びたような微笑みを浮かべている。そんな女を見ているだけで、私の中に強い嫌悪感が生じてきた。女は男に向かって「海が降らないから大丈夫よ」と言った。「海が降らない」とは一体どういう意味だろう。「雨が降らない」の間違いだろうか。私は女がたったいま口にした言葉の意味を考えている。
【解説】 今夜の夢に登場した女性は、現実世界で知っているXさんに似ていた。もしかしたら私は、Xさんに対してあまり良い印象を持っていないのかも知れない。



25日●ロボットへの意思伝達
ロボットに何か大切なことを知らせようとしている。ところがこのロボットには直接メッセージを伝えることができない。まず別の伝令ロボットにメッセージを伝え、伝令ロボットから主たるロボットへメッセージを伝えてもらう仕組みだ。(ひどい二度手間だな)と私は思い、現在のテクノロジーがまだまだ中途半端な段階だということを再確認している。
【解説】 それにしても私はロボットに何を伝えようとしていたのだろうか。夢の中ではそのあたりの事情が全く語られず、ロボットの機能ばかりに視点が集中している感じだった。



26日●豊作
見渡す限り続く広大な水田。稲がたわわに実っている。私は風になって、黄金色の穂先ギリギリの高さを飛び回っている。とても好い香りがあたりに満ちている。温かく、幸福な気分。充実、平安。
【解説】 今夜の夢にはストーリーがなく、ただ稲の黄金色だけが視界いっぱいに広がっていたようだ。風が吹く夢はたま見るが、今夜のように自分自身が風になっている夢はとても珍しい。



28日●長い線路と雑草
長い長い線路が見えている。それは私が旅している鉄道の線路だ。何日も、何週間も、あるいはもっと長い時間をかけて私は移動している。鉄道の脇には雑草が生い茂っている。雑草というやつは、生命力が強く無口な生き物だ。毟(むし)っても毟っても伸びてくる、執拗なまでのその生命力に私は嫌気がさしている。しかしこの強さには勝てないとも思う。旅を続けながら私は各地で“普通のおばさんたち”に会ったようだ。彼女たちと何を会話したのかは覚えていない。ただ、雑草の逞しい力だけを思い出す。
【解説】 旅をしていたにもかかわらず、旅の記憶はほとんどない。鉄道脇の雑草だけが胸に迫って来る、ひどく地味な夢だった。あらゆる夢には何か示唆するところがあるのかも知れないが、しかし、こういう地味な夢を見るとひどく損をしたような気がする。せっかく夢を見るのなら、現実では絶対に叶わないレベルの大冒険をするとか、宇宙へ飛びだして行くとか、何かトンデモナイ夢を見たいものだ……と思う私は我儘ですネ(苦笑)。



29日●琵琶湖のある風景
琵琶湖の湖面。驚くほど青い空が広がっている。風にそよぐ薄い上着。雑誌の撮影が始まった。カメラのシャッター音が続いている。スタッフの笑顔。誰かのジョーク。つられて笑う私。夏の終わりの楽しいひと時。
【解説】 昨日は現実世界でも琵琶湖を訪ねていた。博報堂から年4回出版されている『広告』という雑誌の取材(+写真撮影)を受けるためだが、スタッフの皆さんが本当に素敵な方たちで、普通ではあり得ないほど楽しい取材となった。今夜の夢はその繰り返しと言うか、現実で行なわれたことをすべてリピートしたような感じだった。1粒で2度美味しい体験だった(笑)。



30日●疲れる中年アメリカ女性
キャピキャピした中年のアメリカ女性が数人、10代の女の子のような服を着て大騒ぎしている。そして、通りかかる男性にいちいち色目を使ったり、「あの男は85点」「あの男は30点」などと点数を付けては奇声を発している。いいトシをして、彼女たちは媚びることしか知らないのだろうか。私はうんざりしながら、(疲れる人たち!)と思っている。
【解説】 昨日は現実世界で"Sex and the City"という映画を観た。そこに登場したのが、まさに今夜の夢に現われた女性たちそのままの“キャピキャピおばさん”だったのだ(苦笑)。「観て損した。お金返せ」と思う映画は私の場合ほとんどないが、今回ばかりは、映画館に行ったことを後悔した。その結果見たのが、今夜の夢だったというわけである。



31日●不可能が可能になる
何かとてつもなく実現不可能なことが、急にできるようになってしまった。そのことに自分でも驚いている。ハッキリとはわからないのだが、それは身体をロケット大に膨張させて大気圏外にひとっ飛びするとか、その種のことだった気がする。私は早速、その能力を行使してみようとしている。
【解説】 普通では絶対に不可能な何かが可能になる、吃驚仰天な夢だった。あのまま夢を見続けたら、私は一体何をしたのだろうか。今夜はもう少し長く夢を見ていたかった。





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