2008年12月


1日●Sさんがヤクザに殺(や)られた
気がつくとビルの最上階にいた。10階建てぐらいだろうか。昭和30年代を思わせる古びた建物で、私は踊り場に置かれた桶の中に手を入れ、糠味噌をかき回している。どうやら漬け物を漬けているらしい。不意に、1階の玄関を出たあたりから2人の人間が激しく言い争う声が聞こえてきた。そのうち1人は話しぶりからしてヤクザで、もう1人はどうやらSさんの声のようだ。Sさんは何故、ヤクザなんかと言い争っているのだろう。暫く聞き耳を立てていたが、言い争いが激しく深刻になるばかりなので、私は(すぐに止めなくては!)と思い、階段を猛ダッシュで駆け降りた。このビルにエレベーターは無いようなのだ。1階に辿り着いてみると、地面にはSさんが倒れており、その脇にヤクザが10人ほどたむろしてSさんを見下ろしていた。すぐ近くの路上には、縦15cm×横6〜7cmほどの金属板のような電池(?)が落ちていた。それは見たこともないシロモノで、金属の一部が櫛(くし)のような形になっている。その一部が少し欠けているのを見た私は、Sさんがその欠片を無理やり飲まされたのだと知る。電池を飲まされたSさんは中毒症状を起こしているに違いない。Sさんの反応が全くないので、私はヤクザを無視したまま大声で何度も「Sさん! Sさん!」と名前を連呼し続けた。その声が大きかったらしく、驚いて目が醒めてしまった。
【解説】 恐ろしい夢だった。「人が死ぬ報せは良い報せ」などと言うが、今夜の夢は緊迫していてそれどころではなかった。今年見た夢のなかで、これがいちばん怖かったかも知れない。Sさんには「ヤクザと金属板には気をつけるように」と言っておこう。


2日●回文の俳句を練る
俳句教室らしきところ。自分が先生なのか生徒なのかは不明だが、このクラスの中心人物であることは確かだ。私たちは回文になる俳句を練っている。しかし、なかなかいい句が作れない。ホワイトボードには、昔の人が考えた素晴らしい回文の俳句が書かれている。しかしインクが消えかかっているのか私の目が悪いのか、書かれた文字がよく読めない。ほかの生徒たちが「真美さん、あれ、何て書いてあるの?」と尋ねてきた。声に出してそれを読もうとしたところで目が醒めてしまった。
【解説】 ホワイトボードには、果たして何が書かれていたのだろうか。昔の人が考えた回文の俳句と言えば、「ながめしは 野の花々の はじめかな」が有名である。ボードに書かれていたのがこの句だったかどうかは、定かでないのだが。


3日●3人の女神たち
「3」という数字が最初からずっと頭の片隅にある。何千年か前の草原のような場所。女神または妖精のようなイメージの3人の女性たちが、草を編みながら黙って占いをしている。風になびく亜麻色の髪。厳(おごそ)かで孤高な雰囲気。
【解説】 今夜の夢には何かしらストーリーがあったように思うのだが、草原で見た女神のような3人の女性が印象的過ぎて、あとの場面をすっかり忘れてしまった。そう言えば先月23日にも、3人の女性の賢者が夢に現われた。「3」は三位一体・三種の神器などにも代表される、とても重要な数字だ。しかもこの場合は「女性性」というものにも大きな意味がありそうだ。何かパワーを与えられるような夢だった。



4日●赤ちゃんを待ちながら雑巾がけ
目の前に明るい茶色の床(ゆか)が見える。私はしゃがみ込んで雑巾がけをしている。視界には床しか見えていないので、自分がどこにいるのかは全くわからない。床はキレイで特に汚れた箇所はないが、なぜかたくさんのビーズ(あるいはガラスの破片?)が落ちている。直径1〜2mmの小さな物ばかりだ。キラキラ光るので容易に見つけられる。刺さると危ないので、気をつけて全部撤去しなければと思う。この部屋にはじきに赤ちゃんが来ることになっているようだ。赤ちゃんがハイハイをするので、この部屋の床は特別キレイにする必要があるのだ、きっと。私はうきうきした気持ちで雑巾がけを続けている。
【解説】 今夜の夢の中で見えていた風景は、せいぜい50cm×50cmほどの床だけ。しかも「雑巾がけ」という地味な作業をしている私。にもかかわらず、ほのぼのと暖かい気持ちがしたのは、これから赤ちゃんが来るとわかっているからだろう。そう言えば先月は、家の中に孫がたくさんいる夢を見た。最近ときどき、こんな夢を見るような気がする。私は「赤ちゃん」という存在が大好きで、仕事の邪魔をされようが大声で泣かれようが夜中に起こされようが、何があっても「赤ちゃんLOVE」の人なのだ。いつか孫が生まれようものなら、目も当てられないほどの「超バババカ」になると思う。それが何より証拠には、夢の中では早くも雑巾がけをスタートしていた。我ながら気が早すぎる(笑)。



5日●バスタブの蓋を締め忘れる
自宅の風呂場。そこから数メートル離れた廊下に立って、ブルーの浴槽を見ている私。浴槽の横には息子が立っており、「蓋を締め忘れているぞ」と言った。私は(誰が蓋を締め忘れたんだろう?)と怪訝に思いながら風呂場に近づき、室内を覗いてみた。湯気がもうもうと立ち込め、柚子(ゆず)のような優しい匂いが充満している。風呂の蓋の形がいつも違うことに気づき、「誰が蓋を新しいのに取り換えてくれたの?」と聞こうとしたところで、突然場面が変わり、私は別の夢を見ていた。その夢は、「小さいものと大きいものの対比」+「2という数字」に関係があったと思うのだが、詳細はまるで覚えていない。
【解説】 「蓋の締め忘れ」とは、いったい何を表わしているのだろう。最後の詰めが甘くなることへの警鐘か? うっかりミスをしないようにとの夢からのお告げか? 気を引き締めて行こう。



6日●……
【解説】 今夜は高野山大学に提出する修士論文執筆のため一睡もしていない。ゆえに、もちろん夢は見ていない。



7日●……
【解説】 昨夜に引き続き、今夜も修士論文の執筆。これで2晩連続の不眠不休の執筆。我ながらタフだ。というわけで今夜も夢はナシ。お蔭さまで論文は期限内に提出できました。



8日●天文学者と一文字の苗字
脳裏にいきなり「安史の乱」という言葉が浮かぶ。次の瞬間、ガラスのドアを押して天文学者のAさんが部屋に入って来るや、私の帯を指さしながら「わー、それ可愛いですね。ブースケ?」と言う。次の瞬間にAさんは消えて、私はブータンらしき場所にいる(但し実際のブータンではない)。ここでは、苗字には漢字一文字しか使ってはいけないらしい。しかも自分の姓は自分で選べるという。それは面白いシステムだが、勝手に苗字を選べるとなると、誰がどこの家の人間か判断出来なくなってしまう。これは父系制が崩壊する前兆だと思う。いずれにしても、ここで暮らす以上は一文字の苗字に改名しなければならないようだ。(それなら「瞬」という苗字がいいな)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 Aさんは日本人天文学者で、10数年来の友達。今は台湾の大学で教鞭をとっていらっしゃる。昨日mixiでメッセージのやり取りをしたので夢にも現われたのだろう。「瞬」という名前に心当たりはない。



9日●2本の竹輪
目の前に2本の竹輪が見える。私はそれを輪切りにしたいのだが、1本ずつ別々に切ることは禁じられているので、2本並べて一度に切るしかない。しかし困ったことに、この部屋には俎板が見当たらない。硬い台もなく、あたりは全て柔らかいタオル地で出来ているのだ。ふかふかのタオル地の上で、私は一生懸命に竹輪を切ろうとしている。ここは宇宙船の中なのかも知れない。このあと中国に関係のあるユーモラスな夢を見たような気がするのだが、その内容は全く覚えていない。
【解説】 何やら唐突な夢だった。個人的に、竹輪は特に好きでも嫌いでもない。それにしても柔らかなタオル地の上で庖丁を使うのは難しかった。そのあとで見た中国の夢は、かなり面白い内容だった気がする。忘れてしまったのが残念だ。



10日●琴を弾く人
少し広めのリビングルームのような部屋。誰かが琴を持って来て、これから演奏をするらしい。それは私の知らない女性だ。私は心の中で(わざわざ琴を持ってくるとは、大袈裟な人だ)と思っている。
【解説】 これも唐突な印象の夢だった。ちなみに私の周囲に琴を弾く人はいないし、最近琴を聞いたこともない。



11日●不動産を買おうとする
友人のIさんが不動産を売ってくれるらしい。「おいくらで譲ってくださるのですか」と私が何度も聞いているのに、Iさんはニコニコしているだけで何も答えない。もしや彼は日本語がわからないのかと思い、"How much will it cost?"と英語で尋ねてみたが、Iさんはやっぱり笑っているだけだった。
【解説】 何のことやらサッパリわからない夢。Iさんはずっと年上のお友達(日本人)だが、これまで不動産の話などしたことはない。もちろん、日本語がわからないはずもない。



12日●散乱する「f」と「g」と「i」
床の上にアルファベットの「f」と「g」と「i」がバラバラに飛び散って落ちていて、そこにスポットライトが当たっている。どうやらこのアルファベットを使って何かしろという課題らしい(ただし誰が何のために出した課題なのかは不明)。私は3つのアルファベットを拾い、「fig」と並べ直してから、何事もなかったようにその場を立ち去った。
【解説】 一瞬の夢だった。「fig」は「イチジク」の意味だが、なぜその単語が夢に登場したのかは不明(ちなみに私はイチジクが好きではない)。



13日●双眼鏡内に秘められたポケットを発見する
新しく買った斬新なデザインの双眼鏡を持ち歩いていたところ、知人のYさんに逢った。Yさんは工学博士だ。彼は私から双眼鏡を受け取ると、おもむろに本体をぐるっと回し、上のほうを捻(ひね)って2つに割ってしまった。見ると、双眼鏡の中は一種のポケットになっておりり、その内側には思いがけない宝物がたくさん詰まっているではないか。「ここにポケットがあることがどうしてわかったんですか?」と私が問うと、Yさんは当然のような顔で「構造上どうしても、ここにはポケットがあるはずだと思ったので」と答えた。さすがに理系の秀才は発想が違う。
【解説】 なんとなく幸先の良い雰囲気の夢だった。現実世界での私は近眼なので、「コンタクトレンズ」「メガネ」「双眼鏡」などは“なくてはならないモノ”だ。その双眼鏡に、自分に足りない理系の智恵を足したらお宝が出て来たという、何やら示唆的な夢だった。



14日●自分のウェブサイトからHさんにリンク
目の前にパソコンの画面だけが大きく広がっている。私は自分自身のウェブサイトからHさんのサイトにリンクしようとしているらしい。Hさんは子どもの頃の女友達だが、大人になってからは一度も逢っていない。リンクすることを娘に告げると、何故か娘は嫌な顔をした。
【解説】 全く意味のわからない夢。Hさんとは最近全く付き合いがないし、娘に至ってはHさんという人が地球上に存在することすら知らないはずなのだが。



15日●三角錐のクリスタル
すぐ目の前に、三角錐のオブジェが見える。素材はおそらくクリスタルだろう。とても清浄な感じがする。私は洒落た感じの丸テーブルに座っており、同じテーブルの向かい側には見知らぬ女性が座っている。どうやら私たちは「20万円という金額が果たして妥当がどうか」について話し合っているらしい。彼女は20万円が妥当だと考えており、私はその考えに反対しているようだ。話は平行線をたどり、結論が出ぬままに夢は醒めた。
【解説】 これまた意味不明な夢だった。一緒にいた女性に見覚えはなく、しかも今となっては、彼女がどんな顔だったかすら思い出せない。「20万円」が何の対価として妥当なのか、そのへんの詳細はまったくわからない。



16日●男と女の会計報告
見知らぬ男が現われて、「今年、自分が女のために使った金額は普通でした」と発表している。それを聞いた女は、「今の発表を踏まえて、来年はお金をより有効に使います」と返答している。
【解説】 藪から棒な夢だった。男にも女にも見覚えはなく、内容にも思い当たる節はない。この夢は沖縄のホテルで見た。



17日●ムドキを点々
大勢の女工さんが大部屋で雑魚寝をしている。すぐ近くに、とても小言の多い人がいる。この人は工場の管理者かも知れない。いくつかの人影が部屋に入って来て、寝ている女工たちを無言で連れ去りはじめた。連れて行かれるのは顔の可愛い、選ばれた少女たちのようだ。突然「ムドキ(またはムネキ?)を点々」という言葉が頭に浮かんだが、それが一体どういう意味なのかは全くわからない。
【解説】 今夜の夢もまた藪から棒だった。特に最後に頭に浮かんだ「ムドキ(あるいはムネキ)を点々」の意味がサッパリわからない(※「転々」ではなく「点々」だった)。この夢も沖縄のホテルで見た。



18日●再び散乱する「f」と「g」と「i」
知らない道を歩いていると、足元に「f」と「g」と「i」がバラバラに散乱していた。(おや? この光景は少し前にも見たような気がするが)と思う。そう言えば少し前にも、足元に「f」と「g」と「i」が床に落ちていたことがある。あのときは何も考えずに「fig」と組み合わせたが、あれは間違いだったのだろうか。私は少し考えて、今度は「GIF」と並べ変えようかなと思うのだが、(いや、待てよ)と思い直し、「gfi」(go for itの略)と並べることにした。それにしても、この奇妙な問題の出題者は誰なのだろう。不審に思いながらその場から立ち去ろうとしているところで目が醒めた。
【解説】 今夜の夢は、今月12日に見た夢の続きらしい。足元にアルファベットが落ちているという奇妙な夢が2度も続くのは、どうにも不可解なことだ。ちなみに「Go for it.」は「一か八かやってみろ」の意味。これでも不正解なら、再び同じ夢を見るのだろうか。


19日●お屋敷で探し物
山深く、起伏の多い大地。鬱蒼とした森の中に1軒の大きなお屋敷が見える。最初はその建物を俯瞰していたのだが、気がつくと館内に入って探し物をしていた。近くにもうひとり誰かいたかも知れないが、その人の顔は思い出せない。私が探しているものは何かの情報だ。アルファベット1文字のヒントがあったような気がするが、どの文字だったかは目が醒めると同時に忘れてしまった。
【解説】 今夜の夢にはかなり長い(しかし単純な)ストーリーがあったように思うのだが、なにしろ起床の仕方がよくなかったため、夢の中身を忘れてしまった(犬のパンダに顔を踏まれ、その衝撃で目が醒めたのだ)。残念。



20日●三国連太郎さんと山本陽子さん
昭和の日本を思わせる、卓袱(ちゃぶ)台のある和室。俳優の三国連太郎さんが畳の上に座し、女優の山本陽子さんに向かって何か言っている。ハッキリは聞こえないが、どうやら三国さんは重要な手紙を書いたらしい。それに関連して、24時間以内に何かをしなければならないと告げているのだが、それが何なのか私にはよく聞こえない。山本さんは思慮深げに俯いたまま黙っている。私は心のなかで(これは現実なのか、それともドラマの一シーンなのだろうか)と思っている。
【解説】 不思議な夢だった。三国さんは言うまでもなく日本を代表する役者さんだが、拙著『死との対話』に素晴らしい序文を書いてくださったので、私にとっては特別な存在だ。山本陽子さんとは一面識もないが、私が大好きな宇野千代さんと親しい女優さんということもあって、私はこの女優さんが何となく好きである。つまり今夜の夢には好きな俳優さんが2人も登場したわけである。しかもノーギャラで(笑)。贅沢な話だ。



21日●アメリカ人に助けられながら探し物をする
見知らぬ外国。アメリカ人が多く登場するのでアメリカ合衆国なのだろうが、実際のアメリカとはだいぶ様子が違っている。そこは川のある街で、堤防に沿った自動車道路が見える。私は探し物をしている。日本に帰るタイムリミットが迫っているので、あと1日以内に探し物を完了しなくてはならない。冴えない風貌の中年アメリカ人が情報を持ってやって来た。「お探しの物はAにあります」と男が言うので、私は「わかりました。今すぐAに向かいます」と答えた。Aは知名で、川の先のほうにあるらしい。情報提供者は私より一足先にAに向かって出発した。私がAへ向かおうとしていると、今度は私と同い年ぐらいの背の高い金髪のアメリカ人男性がやって来て、「お探しの物はAではなくA´にあります」と言った。2つ目の情報のほうが正確な気がしたので、私はAへは向かわず、2人目の情報提供者と共にA´を目指すことにした。私たちは猛スピードで車を走らせた。最初は彼が運転し、途中から私が代わったようだ。アメリカでのドライブに慣れていないにもかかわらず、私の運転は常に時速150キロを超えている。途中、小さな商店に立ち寄った。男は自分のために買い物をしたついでに、私にも安物の(あるいは何かのオマケに付いて来る無料の)小さなピンバッヂをくれた。「出発しよう」と男は言い、先に立って歩きだした。私はと言えば、今もらったピンバッヂが気に入らない。同じシリーズで、もっと好きなデザインの品物がカウンターの向こう側に見えるのだ。私はいきなり無言でカウンターを飛び越えた。それを見て、インド人のようなパキスタン人のような風貌の店員が驚いている。希望どおり好きなピンバッヂに取り変えてもらうことが出来たので、私は男の後を追いかけ始めた。しかしまたしても別のアメリカ人に捕まってしまった。今度は2〜3人の若い男女混合グループだ。彼らが言うには、私が求めている物はAでもA´でもなくA´´にあるという。私は彼らの言葉を信じ、彼らと一緒にA´´へ向かった。あたりは葦が生い茂った湿地帯だ。私たちは自転車を使って捜索を開始した。しかし探せども探せどもブツは見つからない。そのうちに第二の男がやって来た。彼は何十キロも全力で走った人のように汗を流し、息を切らしながら、「困るなあ、急にいなくなっちゃ」と言った。それを聞いて私はようやく第一情報提供者の存在を思い出し、(そう言えばあの人は今頃どうしているのだろう。しかし私が心配しなくても、きっと元気で生きているだろう)などと能天気なことを思っている。
【解説】 今夜の夢のなかで私は何かを探しており、そのために多くのアメリカ人の助けを借りるにもかかわらず、彼らのことを次々に忘れて行くというトンデモない女を演じていた(苦笑)。「演じていた」というより、これは私の本性なのかも知れない。だとしたら相当ヒドイ女だ。それにしても、自分は何を探していたのか。最後のほうでは、探し物のことはどうでも良くなっていた気がする。実は最初からさほど重要な物ではなかったのかも知れない。そう考えると、今夜の夢のなかの私は「結果」ではなく「プロセス」を楽しんでいたのだろうか。なお、目標地点が3つ登場したにもかからわず、それらが「A・B・C」ではなく「A・A´・A´´」だったのは、3つの地点に強い近似性があったからだ。似た者同士というニュアンスを強めるために、夢の中の私はあえて「A・A´・A´´」という言い方をしたのだと思う。



22日●足して20になるモノ
娘のLiAと顔を突き合わせて話し合っている。どうやら私たちは「足して20になるモノ」のことで何かを決めなければならないらしいのだ。何らかの結論が出そうになったところで目が醒めてしまった。
【解説】 そう言えば先月13日の夢の中で、娘から「300万円貸してくれない?」と頼まれた。今夜の夢に登場した数字は「20」だが、どちらにしても数字がらみの夢であったことには違いない。と言っても、「300万」も「20」も現実世界では全く思い当たる節のない数字なのだが……。



23日●マラソンと温泉
夜の町。「ざぶん」とか「どぶん」というような平仮名3文字の名前の温泉が見える。私はそこまで運転して行って、駐車場に車を停め、ジョギングシューズに履き替えてランニングを始めた。行き先は公園だ。ひと気のない公園は、ところどころにクリスマスのイルミネーションが施されていて、見ているだけで気持ちが温かくなる。公園を何周か走ったあと、駐車場に戻った私は車内からお風呂セットを取り出し、そのまま暖簾を押して温泉に入って行った。白い湯気がパッと上がり、大きな湯船が見えた瞬間に目が醒めた。
【解説】 このあともう少し夢が続いていたら温泉に入れたというのに、肝心のところで目が醒めてしまったのは残念だ。温泉独特の匂いが漂って来るような、とても臨場感のある夢だった。



24日●秋吉久美子さんと英会話
私は誰かに引率されて、見知らぬ街を歩いている。近くのビルの地階に、誰か素敵な女性が経営するブティックがあるらしい。行ってみると、そこに立っていたのは女優の秋吉久美子さんだった。私は秋吉さんが大好きなので、ここに連れて来られたことはとても嬉しい。どうやら秋吉さんは英語しか話せないらしいので、私たちは英語で話し始めた。それによると、秋吉さんは近々何かの展覧会を開く予定だという。そう言えばこの店のなかも、イラストや手芸品などの作品で一杯だ。秋吉さんは想像していたより物静かで、シャイな感じの女性だった。もう少しワイルドな女性を想像していた私は、少し意外に思っている。
【解説】 秋吉久美子さんは私より5つほど年上の女優さん。ご自分の息子さんより年下の男性(アメリカ人)と再婚するなど、50歳を過ぎても話題の絶えない人だ。現在は一念発起して早稲田の大学院で学んでいらっしゃると聞く。今夜の夢の中の秋吉さんは無口な女性だったが、実際のところはどうなのだろう。いつかお会いしてみたい素敵な女性である。



25日●野党党首の死
気がつくと私は喪服(ただし着物ではなく洋服)姿で、誰かの葬式に参列していた。そこでは昨日亡くなったばかりの野党党首の葬式が執り行なわれているらしい。すぐ近くに知り合いがいたので、私はその人を相手に「まさか亡くなるとは思いませんでした。お身体が悪いとは聞いていましたけど」などと話している。
【解説】 俗に「人が死ぬ夢は吉夢」などと言うが、この夢の場合は、さてどうだろう。支持者が気にするといけないので、亡くなった党首の名をここに書くことは遠慮しておく。



26日●城と薔薇
前後関係も何も思い出せないのだが、夢の画面の左側のほうに大きな城があるようだ。城には色とりどりの薔薇の花があって、その件に関しては娘のLiAが深く関与しているらしい。これは一種のミステリーなのかも知れない。城と薔薇をどう結びつけたらいいのか、私は考えている。
【解説】 いざ文章に書いてみると何やら全く意味をなさない夢なのだが、実際に(夢を)見ていたときは実にハッキリとしたストーリーがあったのだ。しかし目が醒めると同時にわからなくなってしまった。そう言えば先日、知人から薔薇をたくさん贈られたので、そのことが今夜の夢には影響しているのかも知れない。



27日●人を幸福にさせる氷柱
ひと気のない海岸。私が歩いて行く向かって左側は大海原で、右側に何があるのかは見えない。少し先のほう、つまり私の正面には台があって、その上にたくさんの直方体が積み重ねられている。直方体にピタリと合う大きさの氷を当てはめると、左側(つまり海側)にある小さな城(または要塞)で何らかのリアクションが起こるという。私の手の中には驚くほど美しい1本の氷柱がある。高さ15センチ程度、幅2〜3センチの直方体の氷柱だ。氷なのに少しも濡れず、冷たくないのは不思議なことだ。私はうっとりと氷柱を見つめている。この氷柱には人を幸福にさせる作用があるのかも知れない。そのあと全く別の展開があって、私はどこか遠い場所へ行ったと思うのだが、そのあたりの詳細は思い出せない。
【解説】 今夜の夢は3つか4つの異なるパーツに分かれた長大なストーリーだったように思う。目が醒めてすぐのときは内容を覚えていたのだが、顔を洗ったり犬と戯れたりしているうちに忘れてしまった。残念なことだ。昨日に引き続き2夜連続で「城」が登場したことが印象的だった。



28日●大火災による父の死を占われる
すぐ目の前に焼き場のような廟のような黒御影石のオブジェがあって、そこは葬送に関する何かを行なう場所らしい。同じ物が3基並んでいたような気もする。近くに誰か占い師のような男性がいるようだ。私はその人にあまり好感を抱いていないのだが、彼は勝手に占いを始めた。それは私の父親に関する事柄だ。「貴女のお父さんは大きな炎に関する事故で亡くなるでしょう。例えば大火災に巻き込まれて焼死するとか」と男が言った。私は父のことが心配になり、母に連絡を取って火の始末を十分にするよう告げかけた。しかしその瞬間に(あれ? そう言えば父はもう亡くなっていたのでは?)と思う。突然場面が変わり、「チェワメリー」という名前の飲み物が登場しそうになったところで目が醒めた。
【解説】 父が亡くなってから4年以上が経つが、今日の夢の中で父は(姿こそ見えなかったものの)まだ生きているという設定だった。父が大火災で亡くなるという占いが気になったので、目が覚めてから実家の母に電話をし、仏間の火の始末を特に十分にするようにと告げた。ちなみに父の実際の死因は脳梗塞で、火災とはまったく関係ない。「チェワメリー」という名前の飲み物は見たことも聞いたこともない。



29日●クリスタルの四角錐
高い塔の存在を感じ、近づいてみると、それはクリスタルの四角錐だった。「孤高」のイメージ。まばゆい煌(きら)めき。塔の頂上に太陽光が反射して放射状に照り返している。静かな地球。私は黙したまま四角錐の頂点に立った。と思った瞬間、足元が滑って、あれよあれよと言う間に私はクリスタルの四角錐を滑り落ちていた。
【解説】 滑り落ちながら同時に目が覚めた。このとき私は膝を立てて寝ていたらしいのだが、愛犬のブースケが膝の上によじ登っており、私が寝返りを打った瞬間にゴロゴロと滑り落ちたのだった。高い塔の夢を見たのが先なのか、現実世界でブースケが膝の上に乗ったのが先だった(だから高い塔の夢を見た)のか、どちらが先だったかはわからない。



30日●絶滅した人類と遭遇する
最初に何かミステリアスな出来事があったのだが、その場面の詳細は思えておらず、気がつくと私はピンと張った細いロープの上を這うように匍匐(ほふく)前進していた。すぐ後ろには、誰か親しい人(娘?)がいるようだ。そのとき、夢の最初に登場したミステリアスな誰かを逮捕しようと、警察が物凄い勢いでロープを揺すり始めた。その勢いで、ロープの上を這っていた大勢の人たちがボロボロと落下してしまった。ロープから地上までは4〜5メートルあるので、落ちれば間違いなく大怪我をする。私は大声で「危ないからロープを揺すらないでください!」と叫んでいる。場面が変わり、人里離れた洞窟のような地下室のような場所。世間から身を隠して暮らす白人の3人家族の姿が見える。3人は父親と母親、それに8〜9歳の娘だ。娘は長い金髪の髪を三つ編みに結って、頬にはソバカスがある。彼らは見た目には普通の人間だが、実はリアルタイムを生きる人類ではなく、ずっと前に(おそらく何億年も前に)絶滅した種族らしい。そして、いま私が見ている映像は、かつて彼らを撮影した記録映画だと言う。ところがそれはすべて嘘で、ここにいる彼らは現にリアルに生きている人間なのだ。彼らは何億年の昔に死に絶えてしまった種族の生き残りなのだ。しかし万が一そのことが露見すると、役人がやって来てたちまち彼らを殺してしまうという。その事態を避けるために、彼らは洞窟に籠って世間には顔を出さずに生きているのだ。私は彼らの秘密を守ることを決意し、現代人と全く変わらない姿をした“かつての人類”に遭遇出来たことに感動している。
【解説】 何億年か昔の地球に現在の人類と寸分違わぬ姿の旧人類がいて、絶滅した彼らの“生き残り”は今もひっそりと生きている。しかし政府は彼らを見つけ次第に殺そうとする……という、どこかSFチックな夢だった。夢の始まりの部分で私はロープの上を這っていたが、そもそも直径2〜3センチのロープの上を這えるはずがない。私は運良く落ちなかったものの、ほかの人たちはボロボロとロープから落ちていた。これは一種のサバイバルゲームだったのだろうか。夢から醒めたとき、何故かとても爽やかな気分だった。



31日●カタカリ俳優に海外公演を勧める
気がつくと目の前に旧知のカタカリ俳優が立っていた。名前は思いだせないが、背の高い、目の大きい、鷲鼻の男性だ。私は彼に海外公演を勧めている。しかし彼は旅行に興味がないのか、なかなか話に乗って来ない。そこで私はYさんという日本人写真家の名前を挙げ、「海外公演をすれば、必ずYさんが舞台写真を撮ってくれる。あなたにとっても、これは良い話だと思うが」と言った。するとカタカリ俳優は急に身を乗り出し、この話に喰い付いてきた。私は(そう来なくちゃ)と思いながら、海外公演の具体的な内容を俳優に告げている。このあと場面が変わって、アスファルトを敷いていない白っぽい土の道を、粋な和服姿の荒井宗羅先生(お茶の師匠様)が楽しそうに日傘をくるくる回しながら歩いていらっしゃる姿が一瞬見えた。
【解説】 カタカリは南インド(ケララ州)の古典劇。演者が男性だけであることや独特の化粧方法など、日本の歌舞伎に通じるところが多い。私は来年カタカリ劇をプロデュースすることになっているので、そのことがイメージとなって夢に現われたのかも知れない(但し夢に現われた俳優は今回は起用しない予定なのだが)。2008年を締めくくる最後の夢(いわゆる“大取り”)を飾ってくださったのがお茶の師匠だったのは嬉しい。来年が文化的に豊かなものになることを、今夜の夢は示唆していた気がする。
【後日談】 この夢を見た数時間後、母が藪から棒にメールでカタカリのことを聞いてきた。母はインドに行ったことがなく、私から話を聞いてインドの風物を多少は知っているにせよ、当然カタカリ劇を見たこともない。夢にカタカリ俳優が現われたこと自体がレアなら、母がカタカリのことを話題にするのも超レアなことで、今日は両者のシンクロぶりに驚いている。





※夢日記の一部または全部を許可なく転載・引用なさることは固くお断りいたします。
©Mami Yamada 2004-2008 All Rights Reserved.