2008年7月



1日●脂っこい料理はもう結構
料亭の一室。目の前のテーブルには鱧(ハモ)のフルコースのほか、キャビアやらフォアグラやら、脂っこい高級料理ばかりが所狭しと並んでいる。私は鱧を一口だけ食べてから、(もっとあっさりした物が食べたいな。例えばお蕎麦とか。お御馳走はもう十分にいただいたし)と思っている。

【解説】 そう言えば先週は鱧のフルコース料理をいただいた。お料理自体はたいへん美味しかったのだが、私はもともとウナギや鱧を好んで食すほうではないので、やや胃もたれしてしまい、(もう当分、鱧はいいや)と思った。贅沢な話だが、その気分が夢に反映されたようだ。



2
●恩師に100万円ずつ差し上げる
小学生時代の担任だったX先生とY先生の姿が見える。お二方とも70歳を過ぎた頃だろうか。懐かしそうに私を見ていらっしゃる。私はお二方に100万円ずつ差し上げることに決めた。札束を手渡すとき、(目上の人にお金を差し上げるという行為は失礼かな)と一瞬だけ迷うのだが、(これが今の私にできる最高の恩返しなのだから)と思い直し、現金を渡した。先生たちは驚きながらも喜んでくださった。後日、先生たちがどうしていらっしゃるかをカメラが捉えた映像を見る機会があった。お二方のうちX先生はお金を使った形跡がない。Y先生は例の100万円を使ってハワイへ遊びに行かれたようだ。さらに後日撮られた映像によると、Y先生はじきにボケてしまい、お金をくれた生徒が誰だったか思い出すことすら出来なくなったようである。私は若くて元気溌剌だった頃のY先生の姿を懐かしく思い出している。
【解説】 恩師にいきなり100万円を差し上げるという、なんとも奇想天外な夢だった。しかも封筒にも入れない剥き出しの札束なのだから、失礼にも程がある。しかし夢の中ではその点は問題ではなく、先生たちもあたりまえのように現金を受け取っていた。形式はともかく、夢の中の私はふたりの先生に対して小学校時代のお礼をしたかったのだと思う。



3日●3人の賢者に何かを贈る
すぐ近くに3人の男が立っている。とても不思議な男たちで、若くないことは間違いないのだが、さりとて年寄りとも言い切れない。日本人でないことは確かだが、「ではどこの国の人か」と問われれば、どこの国の人にも当てはまらない。それどころか彼らは人間であって人間ではない。と言って宇宙人の風体でもない。実に不思議な人たちなのだ。彼らは一種の智恵者なのだと思う。数千年の過去または未来からやって来た「時を超えることの出来る賢者」なのかも知れない。私は彼らに何かを贈った。しかしそれが何であったかは自分にもわからない。
【解説】 奇妙なまでに静かで、どこか暗示的な夢だった。そう言えば今夜の夢には「音声」というものが一切登場しなかった気がする。私は彼らに何を贈ったのだろう。そのあたりの記憶がないのが何よりも不思議だ。「目上の男性に何かを贈る」というパターンは、昨夜の夢と同じである。



4日●寿老人の帽子の中身
前後関係は思い出せないのだが、私の隣で朱色の欄干(らんかん)にもたれかかっている人は、どうやら寿老人らしい。欄干に両手をかけ、その上に顔をうつ伏せているので表情は見えない。「僕の帽子の中はね、人に見せてはいけないんだよ」と寿老人は言った。しかし声の様子からして、彼は老人ではなく少年のようだ。私はドキドキしながら、「ケチ。ちょっとぐらい見せてくれてもいいじゃない、減るモノじゃなし」などと言っている。
【解説】 何となく滑稽で、しかしどこかが妙に色っぽい夢だった。寿老人は七福神のなかでもユニークな存在だと私は思うのだが、大黒天、恵比寿、弁才天、毘沙門天らに比べて知名度は低い。しかしそのマイナーさがかえって色っぽい原因かも知れないゾ、などと思わせるヘンテコな夢だった。



5日●……
【解説】 今夜は仕事でほぼ徹夜をしたため、夢を見たのか見なかったのかすら覚えていない。



6日●大好きな人と道で遭遇
道を歩いていると、大好きな人とバッタリ遭遇した。私は飛び上がらんばかりに喜んで、夢中で立ち話をしている。
【解説】 今夜の夢のなかで、私は一体誰と逢ったのだろう。大好きな人だったことは間違いないのだが、夢から醒めた今となっては、相手が男性だったのか女性だったのか、それすらも思い出せない。もしかしたら私は、現実にはまだ出逢っていない(つまり未来に出逢う予定の)誰かと、夢で“先取り遭遇”したのではないか。何だかそんな気がしてならない。



7日●読者さんの家でお泊まり会
気がつくと見知らぬ家の中にいた。どうやらここは読者のNさんのご自宅らしい。しかしそれは実に奇妙な形の家で、幅は狭く(2〜3メートル)、奥行きは長く(20〜30メートル)、まるでウナギの寝床のような建築物だ。しかも建物の内部には何ヶ所か段差があって、奥へ行くほど微妙に標高が高くなって行くのだ。建物の端は1本の長い廊下で、それに沿って小さな部屋が4つか5つ並んでいる。家具調度品はカントリーっぽい。部屋には扉がないので中がほぼ丸見えだが、奥の部屋の入口だけは長い暖簾(のれん)が下がっている。奥の部屋がNさんの寝室で、そこにはNさん夫妻と1歳になる娘さんがいるらしい(但し彼らの姿は見えず声が聞こえるだけ)。私は最も玄関寄りの(つまり建物の中で最も標高が低い)部屋にいる。今夜はここに泊めていただくらしいのだが、私の部屋には娘や息子もいて、ほとんど雑魚寝の様相を呈している。隣の部屋は今のところ空いているが、そこには読者のRさんと小学生の息子さん(通称ドングリくん)が泊まる予定らしい。Rさんは仙台に住んでいらっしゃるので、到着は少し遅れるようだ。奥の部屋から「マミリン先生、足りないものはありませんか?」というNさんの声が聞こえた。私は「それは大丈夫だけど、今日はさくらさんは来ないの?」と返事をしたのだが、その声が大きかったのか、自分の声で夢から醒めてしまった。
【解説】 まるでプチ旅行をして来たような楽しい雰囲気の夢だった。Nさんは東京近郊に住む読者さん。少し前に、おうちの中が写った写真を見せていただいたことがあるが、今夜の夢に現われた家は現実とは似ても似つかぬものだった。ちなみにRさんもドングリくんも実在の人物。さくらさんは山田真美ファンクラブを主宰してくれている読者さん(男性)である。
【後日談】 この日記をアップした同じ日、Rさんからメールを頂いた。それによれば私がこの夢を見る前日、Rさんはドングリ君の寝坊のため何かの集まりに遅刻してしまった由。しかもRさんはやはりその日に「Nさんに逢いたいな」と突然思っていたのだという。「マミリン先生の夢が私の生活と完全にシンクロしています」とRさんはビックリしているのだが、実は、Rさんに関して私は覚えているだけでも2度ほど正夢を見たことがある。おそらくRさんと私の間に、何か通じるものがあるのだろう。実に興味深い“以心伝心”だ。



8日●素敵なセミロングヘアとイギリス旅行
鏡をのぞくと、髪を肩まで伸ばした私が微笑んでいた。くるっとカールした毛先。なんとも優しいイメージで、素敵なヘアスタイルだ。私は非常に満足している。場面が変わり、気がつくと私はイギリスにいた。近くには1人ないし2人の連れがいるような気がするが、彼らの顔は私からは見えない。知らない街を歩いていると、不意に「せっかくイギリスに来たのだから○○へ行こう」と思い立った。小学校時代、長い夏休み中にやりたいことがあったにもかかわらず、親に許してもらえず、結局は実現できなかった。あのときの空しい気持ちと脱力感がふつふつと蘇る。(今回のイギリスでは悔いを残してはいけない)と私は思った。
【解説】 目下、現実世界でも髪を伸ばしたいと思っている。この2年ほど髪を短くしていたのだが、もうすっかり飽きてしまったのだ(苦笑)。しかし髪というものは、伸ばしたくないときは不必要に伸びるくせに、伸ばそうと思うとさっぱり伸びて来ない(ような気がする)。夢の中の私は、理想のヘアスタイルになっていた。こういう夢は気分最高である。ちなみに夢の後半、イギリスで行こうとしていた「○○」がどこだったのかは、どうしても思い出すことが出来ない。



9日●サエキさん宅で大地震
友達のTさんとふたりでミュージシャンのサエキけんぞうさんの家へ遊びに行った。和室の畳の上にじかに座り、日本のサブカルチャーについて話していたところ、突然、大きな地震に襲われた。非常に奇妙な揺れ方の地震で、左右にそれぞれ50センチほどゆっくり揺れる「横揺れ」が延々と5分〜10分ほど続くのだ。私はサエキさんに「テレビのニュース速報を見ましょうよ」と言った。テレビもやはり畳の上にじかに置いてあるのだが、テレビの上にはジーパンが乗っており、足の部分が下に垂れているためにテレビ画面の3分の2は隠れてしまっている。地震の揺れは大きく、ジーパンを取り除きたくても近づくことすら出来ない。しかも、このテレビのスウィッチをオンにするには、パソコンを立ち上げる倍ぐらいの時間がかかるらしい。サエキさんがテレビにリモコンを向けている。なかなか付かないテレビを前にして、私たちはゆらゆらと大きく揺れ続けている。
【解説】 これから地震が起こるぞ、という地震直前の夢を私はときどき見るのだが、今夜のように実際に大きな揺れに襲われている夢は珍しい。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「地震の夢」の意味するところは「人生に大きな変化が起こる前ぶれ」だそうである。



10日●たくさんの蟲を世話する女の子
若い女の子の家へ遊びに行った。タメグチで話している感じからして、その子は私の同級生らしい。つまり私も若い女の子なのだろう(自分の顔は見えないから確信は持てないが、たぶんそうだ)。その女の子は、家でたくさんの虫を飼っている。それも、ホタルとかカブトムシのような好んで飼われる虫ではなく、巨大な芋虫100匹とか、なにやらニョロニョロした虫100匹とか、かなり不気味な虫を大量に飼っているのだ。ほとんど虫の牧場といった趣である。虫たちは女の子からもらった餌を精力的に食べ、きれいに掃除された巣箱の中を元気に動き回っている。女の子の手入れが良いので、悪臭などは一切しない。虫たちが糞をすると女の子がテキパキと片付けている。私はそれを見ながらふと、「親がいつか年を取ったら介護をしなくちゃね」と言った。すると女の子はあたりまえのような口調で「うん、介護しなくちゃね。でも介護は平気だよ私。暫くやってないから忘れちゃったけど」と答えた。「誰の介護をしていたことがあるの?」と尋ねようとしたところで目が醒めてしまった。
【解説】 今夜の夢に現われた女の子は、目が大きく、髪は短く、当然お化粧気はゼロの、素朴で懐かしい“古き良き女子高生”だった。そう言えば昔、古文の授業で『虫愛(め)ずる姫君』というお話を読んだが、まるであの姫君のような女の子だったと思う。虫が大量に登場する不気味な夢のはずなのに、むしろ女の子の爽やかさのほうが印象に残っている。



11日●インダス河と息子の微笑み
気がつくと私は小舟に乗っており、ゆっくりと河を下っていた。周囲の風景がヒマラヤらしいので、河はおそらくインダスだろう。櫓(ろ)を漕いでくれている船頭の姿は、私の位置からは見えない。河岸を見ていると、息子の姿が見えてきた。息子はまだ4〜5歳で、幼い顔で紺色のアポロキャップをかぶっている。舟の上に私の姿を見つけると、屈託のない笑みを浮かべた。私は息子に大きな一眼レフのカメラを向けてシャッターを切った。しかし思ったような構図が捕えられない。あきらめずに、数メートル先で舟が流れに従ってほんの少し左に曲がったところでもう一度シャッターを切った。今度は良い写真が撮れた気がする。舟は休まずに進んで行き、息子の屈託ない笑みは次第に遠ざかって行く。私はとても懐かしい気持ちで、過ぎてゆく時間を惜しんでいる。
【解説】 そう言えば息子が4〜5歳の頃、ヒマラヤを越えてインダス河に連れて行ったことがある。あの頃、息子はまるで仔犬のようによく動き回り、いつも楽しそうに笑いながら親のすることを真似ていた。彼が見よう見マネで一眼レフのカメラの扱いを覚えたのも、確かあの頃だったと思う。あれから幾星霜。今では息子もハイスクールの最終学年になり、親と出歩くことも稀になった。一緒にインダス河へ行ったあの頃が懐かしく思われる。



12日●赤いキャミソール
目が醒めるほどキレイな赤色のキャミソールが見える。いかにも女性らしい華奢なデザイン。ここはブティックの店内のようだ。私はこのキャミソールを買おうとしている。
【解説】 とても短い夢だった。キレイな赤色と、女性的なキャミソールのデザインが印象的だった。



13日●……
【解説】 昨夜は仲のいい友人たちと一緒に楽しいお酒を飲み、帰宅するや否やまさに“死んだように”眠ったようだ。そのためか夢を見た記憶は全くない。



14日●急流を進むボート
目の前に川が流れている。少し蛇行している上にかなりの急流だ。10〜15人乗りほどの細長いボートが見える。乗っているのは全員が白人の若者で、黄色やオレンジなど色とりどりのヘルメットをかぶりライフジャケットを装着している。彼らは手に手にオールを持って、全力でボートを漕いでいる。これは何かの大会なのか。私はボートを傍観しているだけなのかも知れないし、自分自身がボートに乗っているのかも知れない。若い躍動感、スピード、水しぶき。
【解説】 今夜は11日にもボートで川を進む夢を見た。しかも今夜はボートのスピードが格段に速くなっていた。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「ボート(舟)」の夢は「自己管理能力/生活能力/人間関係を築く能力の象徴」だそうである。



15日●脚本家からの懇願を断る
前後関係はわからないが、ひとりの女性が私を訪ねて来た。彼女はどうやら脚本家らしい。彼女はしきりに何かを懇願(あるいは謝罪?)している。私はにこやかに、しかし非常にハッキリとした口調で彼女からの申し出を断っている。相手は途方に暮れているようだ。そのあと誰か迎えの人が来て、私はどこかへ出かけたようだが、そのあたりの詳細は覚えていない。
【解説】 この前後に何かストーリーがあったような気がするが、思い出せない。やや突拍子もないイメージの夢だった。



16日●燃え上がる仏教寺院
最初、私は息子と一緒に夜の街を散歩していた。このあと大事件が起きることを、ふたりとも予期している。「お寺で何か起こるんじゃないかな?」などと言いながら歩いていると、いきなり物凄い爆発音がし、あたりが昼間のように明るくなった。見ると1キロほど先にある寺が炎上し、100メートルほどの巨大な火柱が上がっているではないか。「やっぱりお寺で事件が起こったね」などと言いながら、息子と並んで寺の方へ向かって駆け出した私は何故か笑っている。横を走っている人々も何やら叫びながら笑っている。浮き浮きした気持ちは、まるでお祭りの夜のようだ。そうこうするうちにも火の勢いは増し、いよいよ寺全体がオレンジ色の大きな炎で完全に包まれてしまった。それはこの世のものとも思われない一種異様な美しさである。町人風情の人々が、恍惚とした顔に微笑みを浮かべ大歓声をあげながら一斉に寺の方へ駆けて行く。彼らは着物を着て、髪を結い上げている。今は江戸時代なのかも知れない。息子と私が寺に辿り着いたとき、既に火はほとんど鎮火されていた。あれほどの火力で燃えたというのに、寺の建物や仏像、経典、宝物などは、ひとつ残らず無傷のまま残っていた。僧侶たちも少しも汚れておらず、いつもどおりの様子で立ち働いている。さすがは仏法に護られた場所だ。炎に遭ったぐらいではビクともしないらしい。私は驚嘆しながら寺のなかに佇んでいる。
【解説】 このところ高野山大学の修士論文執筆に忙しい。毎日のようにチベット密教の成立について研究・執筆している。そのことが今夜の夢の原因だろう。なお『夢の事典』(日本文芸社)によれば、火事の夢は「再出発/再生」の意味で、「火の勢いが強いほど大きな幸運の象徴」とのことである。



17日●期待はずれの遊園地
気がつくと、透明チューブの空中回廊のなかにいた。この街の人々は地上を歩かず、もっぱら空中に網の目のように張り巡らされた透明な空中回廊を通って移動するらしい。しかも、それらはすべて「動く歩道」なので、自分の足で歩く必要すらないというのだ。どうやらここはオーストラリアらしいが、見たことのない風景が続く。すぐ近くには家族がいるらしいが、声が聞こえるばかりで姿は見えない。ふと空中回廊から眼下を見ると、大きな遊園地が見えてきた。前から行きたい行きたいと思っていた有名な遊園地だ。私の気持ちに気づいた家族が、予定を変更して遊園地に立ち寄ってくれた。私は3つ4つのアトラクションを訪ねてみたのだが、どれもこれも見るからにショボい造りの三流品ばかりで、遊ぶ気になれない。私は心底ガッカリしている。結局、どの遊具にも乗らぬまま私はその遊園地を後にしたようだ。
【解説】 今夜の夢で印象的だったのは透明のチューブのような空中回廊と、名前ばかり有名で実体の伴わない遊園地だ。夢を見ているあいだ、私はずっと退屈を持て余していたような気がする。不完全燃焼な感じの夢だった。



18日●ピンクとオレンジの新素材
「それ」はピンクとオレンジの美しい2つの層から成っている。「それ」は柔らかそうな新素材で、ゆるやかな弧を描いている。「それ」は宇宙に関係しているらしいが、何のために開発されたのか私は知らない。私は「それ」を見ている。そのあと何か数字が登場したように思うのだが。詳細は全く思いだせない。
【解説】 今夜の夢にはもっと具体的なストーリーが続いたはずなのだが、この場面しか思い出せない。ピンクとオレンジの美しさが印象的だった。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「ピンク色」の意味は「幸せでありながら不安を感じている/女性らしい情動や官能」、「オレンジ色」の意味は「豊かな生命力/充実したエネルギー/創造的な力/交友関係の拡大」だそうである。



19日●1億円か10万円か?
アーティストのHさんが向こうから歩いて来た。Hさんは私に向かっていきなり、「今度、こういうアートプロジェクトをやるんだけどさあ、費用が1億円ぐらいかかりそうなんだ」と言った。それに対して私は、「どうして1億円もかけるの? 同じ仕事を私なら10万円でやれるのに」と即答した。Hさんは目を見開いて驚いている。
【解説】 何やら意味のわからない夢だった。10万円は1億円の1000分の1。料金設定においてHさんが正しいにせよ私が正しいにせよ、間違っているほうは極端に間違っていることになる。ちなみにHさんは実在するアーティスト。



20日●
非常識なサラリーマンを怒鳴りつける叔父
古い造りの日本旅館。広さが100畳ほどありそうな大部屋に、たくさんの人が泊っている。部屋の奥のほうは一段高くなっており、私はその部分に布団を敷いて泊まっている。叔父・叔母、それに幼いイトコたちも同じ場所で雑魚寝しているようだ。部屋の手前、一段低くなった部分には、いかにも中年サラリーマンっぽい風貌の男たちが15〜20人ほど滞在している。部屋には「仕切り」が存在しないため、お互いにプライバシーはゼロである。サラリーマンたちは掘りゴタツに座り、麻雀をしている。真夜中だというのに彼らがひっきりなしに「ポン!」だの「ツモ!」だの叫ぶため、こちらはおちおち寝ていられない。また彼らが灰皿や食べ物や茶菓などをたびたび要求するので、旅館の仲居さんたちはクタクタになりながら休む間もなく夜通し立ち働いている。そのうちサラリーマンのひとりが、ひときわ大きな声をあげて何かを注文した。その瞬間、それまで静かにしていた叔父が浴衣姿のままいきなり立ち上がり、「うるさいっ、お前らいいかげんにしろっ! いま夜中の何時だと思っているんだ。常識をわきまえろっ!」と一喝した。その声で部屋が一気に静まり返ると同時に、私も弾かれたように夢から醒めてしまった。
【解説】 同じ部屋に非常識な他人が宿泊しており、困り果てていると叔父が一括して相手を黙らせてくれるという、言ってみれば「勧善懲悪」的な夢だった。最近は国境問題その他を見るにつけても、傍若無人な近隣諸国との外交の難しさと、日本政府の軟弱な対応にしばしば苦々しい想いを味わっている。今夜の夢にはそのような現実が反映しているものと思われる。ちなみに夢に登場した叔父と叔母は、現実世界では夫婦揃ってマジメな税務署員である。



21日●大きな客船で旅をする
雲一つない明るい空。目の前には大海原が広がっている。ここは大きな客船の甲板の上らしい。私は旅をしているのだ。行き先はわからないが、とても前向きで朗らかな気分。周囲には複数の人がいて、顔こそ見えないものの彼らからはポジティブなオーラが感じられる。何か良いことが起こりそうな予感。
【解説】 今月は11日と14日にも舟に乗る夢を見た。今回の夢が前の2回と違っていたのは、何と言っても船の大きさだ。舟(ボート)から大きな客船へとバージョンアップし、今夜は気分的にも前途洋洋という感じだった。



22日●難しい名前の男の子
落ち着いた感じのする日本家屋の一室。趣味の良いお香のかおり。ここは山の中のお寺かも知れない。座卓に座って休んでいると、Y君が部屋に入って来た。彼は実際には親戚の子だが、夢の中ではなぜか見知らぬ他人という設定らしい。「僕の名前、こう書くんだよ」と言いながら、Y君は漢字5文字の名前を書いて見せた。最初の2文字が苗字で、後の3文字が名前らしいのだが、姓も名も非常に珍しいものだ。珍しすぎて読み方の見当すらつかない。Y君は胸を張って「これで○○○○○○って読むんだよ。難しい名前でしょ」と言った。私は素直に頷きながら「こんな難しい名前、初めて見た。なんだか武士みたいな偉そうな名前だね」と感想を述べている。それを聞くと、Y君は得意げに微笑んだ。
【解説】 Y君は親戚の子で、特に珍しい名前の持ち主ではない。しかし今夜の夢の中では、絶対に実在しないような難しい氏名を名乗っていた。あまりに難しくレアすぎる名前だったため、目が醒めてみるとどんな名前だったか思い出すことすら出来ない。私は自分の苗字(旧姓=鈴木、現姓=山田)があまりにも平凡きわまるため、昔から珍しい苗字に憧れている。ひょっとすると、そういう気持ちが今夜の夢に現われたのかも知れない。



23日●Xさんと山を歩く
誰かと田舎道を歩いている。しかし相手が誰だかハッキリとわからないので、仮にXさんとしよう。Xさんは一緒にいて気の休まる相手だ。私たちは色々と楽しげに会話している(ただし会話の内容は思い出せない)。暫く進むと、田舎道は山道に変わってきた。さらに進むと、そこはもはや“道”ではなく、全体がゆるやかな登り斜面になった。ススキのような背の高い植物が生い茂っていて、なかなか風情がある。ここは信州のどこかなのだと思う。やがて日が暮れてきた。この近くに知人が所有する山小屋があることを思い出し、「勝手に使える山小屋があるので、今夜はそこに泊まりましょう」と言うと、Xさんは「こんな場所の山小屋を知っているとは、さすがですね」と応じた。しかし山小屋に着いてみると、その建物には何か不具合があって泊まれないことが判明した(家がボロボロだったとか、そんな理由だったかも知れないが詳細は思い出せない)。そのとき初めて暗がりでXさんの顔が見えた。驚いたことに、そこに見えたのは大嫌いなTさんの顔ではないか。その顔を見た瞬間に虫唾(むしず)が走った。しかし、もう一度落ち着いてよく見ると、その人はTさんとは別人だった。だが、たとえ一瞬でもTさんの面影をXさんの中に見てしまった今となっては、Xさんと一緒に話していても今までのようには楽しくない。XさんとTさんのイメージがやんわりと混ざってしまうからだ。最初に計画していた山小屋には泊まれないことが判明したので、私は自分が本当に所有している信州の山小屋で泊まることを決めた。しかし、あの家にはここ暫く立ち寄っていないから、到着したらすぐに大掃除をしなければならないだろう。Xさんは優しい人だから嫌がらずに掃除を手伝ってくれるだろうが、それも面倒なことだ。そんなことを思いながら私は草の中を歩いている。
【解説】 今夜の夢は、基本的にはずっと山の中を歩き続けているのだが、「楽しい気分が続く前半」と、「Xさんの面影のなかにTさんの顔が見えて虫唾が走る一瞬」、そして「今までほどには楽しい気持ちになれない後半」と、見事なほどに気持ちの切り替えがある夢だった。ずっと一緒に歩いていたXさんが誰なのか、最初から最後までわからなかったのは奇妙なことだ。Xさんは友人のYさんだったような気もする。しかしYさんとTさんとでは顔も性格もまるで違うので、混ざりようがないのだが……。



24日●結婚と子づくりのススメ
誰かに向かって「たとえそれが○○でも、やっぱり結婚して子どもを産んだほうがいいと思うよ」と力説している私。
【解説】 非常に短い夢だった。誰かに向って結婚と子づくりを勧めているのだが、相手が誰だったかは不明。○○に入るのは「大変」とか「時間がかかる」のような意味の言葉だったと思うが、それも定かではない。



25日●「できる」と「やる」の違い
私は誰かに向って「できる」と「やる」の違いについて説いている。このほかに「曖昧」についても説いていたようだが、詳細は思い出せない。
【解説】 昨夜に引き続き今夜の夢のなかでも、私は誰かに何かを説いていた。しかし今夜の夢では自分が何を言いたかったのか、ハッキリとは思いだせない。おそらくこれも非常に短い夢だったのだと思う



26日●電車の線路に落ちる
すぐ目の前に、長い線路がまっすぐに伸びている。線路に沿って右側には、狭い舗装路が伸びている。私はその道で車を走らせているらしい(あるいは歩いていたのかも知れない)。そのとき不意に突風が吹いて(あるいは人に押されて)、私は左によろけて線路の上に落ちてしまった。ハッとしたものの、運良く電車が通っていなかったため私は事なきを得た。
【解説】 今夜の夢も実に短い、一瞬の夢だった。線路と道路が並行してどこまでも伸びている単調で平凡な風景は、日本のどこか田舎町のようだった。なぜ線路に落ちたのか、そのへんの前後関係はよくわからない。



27日●線路の遮断機に車ごと突っ込む
私は車を運転している。あるいは誰かが運転する車の助手席に乗っているのかも知れない。いずれにしても、私の目の前にはフロントグラスがある。気がつくと、道路と直角に交差する線路に電車が入っており、あっと思ったときには、車は遮断機のなかに突っ込んでいた。
【解説】 昨夜に引き続いて、今夜もまた線路にまつわる事故の夢である。これは何かの警告かも知れないので、線路の近くを通るときはくれぐれも気をつけたいと思う。



28日●……
【解説】 今夜は仕事でほぼ徹夜状態だったため、仮眠中に夢を見たのかどうか全く覚えていない。



29日●岡本敏子さんとお茶を飲む
前後関係はよくわからないのだが、私は岡本家の2階にある敏子さんのお部屋にお邪魔している。敏子さんはどこか異国の民族衣装のような素敵なお召し物を着ていらっしゃる。私たちはお茶を飲みながら岡本太郎さんのことを話している。木製の重厚なテーブルに、年季の入ったティーセット。今はおそらく午後の3時か4時ぐらいなのだろう。ゆったりとした時間が過ぎてゆく。このあと敏子さんと一緒に何かの会合に出席したような気がするのだが、詳細は思い出せない。
【解説】 岡本敏子さんが亡くなって何年経つのだろう。私は敏子さんのことが大好きだった。どこをどう好きだったかというと、パートナーの岡本太郎さんについて語るときの敏子さんの愛らしさ・純粋さ・畏れない強さ……それらがミックスされた“少女のような母性”が好きだったのだと思う。そう言えば最近、東京の街を歩いていて岡本太郎作品に遭遇した。持田製薬の社屋前に置かれた「歓び」という彫刻である。それを見たことが、おそらく今夜の夢に結びついたのだろう。



30日●人助けのために性転換手術を考える男
私は誰かを助けてあげようとしている。私の隣には45歳前後の見知らぬ男性がいて、彼も私が助けようとしている同じ人を助けようとしている。男性は、「僕が女だったら助けてあげられるんですけどね……」と残念そうに言った。どうやらこの任務は女性にしかできないらしいのだ。男性はさらに「僕、性転換手術を受けようかな」とも言ったような気がする。私は少し驚き呆れながら、「そういう大事な決定は、よく考えて。早まらないほうがいいですよ」と忠告しようとしたところで目が醒めてしまった。
【解説】 今夜は一体どうしてこんな夢を見たのだろう。まるで思い当たる節がない。夢に登場した男性にも見覚えはない。



31日●組閣人事の機密文書を読む
気がつくと、手のなかに白い封筒があった。封を切ってみると、中身は1通の文書だ。どうやら新しく編成される内閣の人事が記された機密文書のようである。新しい官房長官として小池百合子さんの名前が記されている。ほかにも全ての人事が記載されている。私は黙って書面を見終えると、紙をシュレッダーにかけた。
【解説】 夢はこのあとも続いたような気がするのだが、覚えているのはここまで。組閣人事の内容も、夢の中ではすべて理解したつもりだが、目が醒めてみると官房長官以外は何も覚えていないのだった。





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