2008年5月

1日●数字のマジック
至るところに「9」という数字が見える。時々それが逆立ちをして「6」になっている場合もある。これは全てマジックによる幻覚だ。ピエロの服を着た人たちがくるんくるんと横転している。そのたびに「9」も回転して「6」になり、また「9」に戻る。
【解説】 今夜の夢には何かストーリーらしいストーリーがあったように思うのだが、思い出せない。現実世界ではマジック大会に出席するため、昨日からインド入りしている。マジックの夢を見たのは現実の投影に違いあるまい。なお「9」は私の好きな数字である。



2日●男性マジシャンが犬に背中を噛まれる
クリシュナン(インド人の男性マジシャン)が背中を犬に噛まれたらしい。しかし彼は噛まれたことを秘密にして傷を放置したため、その傷が今ではひどい状態になってしまっている。このままではクリシュナンの生命が危ないらしい。

【解説】 おかしなことに、今夜の夢に出てきたクリシュナンという人を私は知らない。しかし夢の中では長年の男友達という設定で登場していたようだ。顔もハッキリと見えており、非常にリアリティーのある夢だった。



3●トンネルとトポロジー
長いトンネルの中。私はトンネル左側の壁に「穴」の絵を描いている。「穴」の絵が描き終わると、そこは四次元空間への入り口になるのだ。この「穴」はトポロジーに関係したものらしい。そこへいきなり車が突っ込んで来た。あわてて跳びのいたため私に怪我はなかったが、車は大破してしまったようだ。
【解説】 最近、私はトポロジーに嵌っている。学生時代にトポロジーを知っていたら、もっと数学の勉強をしただろう。そう思えるほど、私はトポロジーの考え方が好きなのだ。今夜の夢にトンネルと車が登場した理由はわからない。



4日●……
【解説】 昨夜はカニャクマリへの小旅行を終えてホテルに戻ったのが深夜0時過ぎ。しかも今朝は3時台の飛行機に乗るために夜中の1時過ぎにホテルをチェックアウト、2時には空港チェックインと忙しく、完全に徹夜。当然のことながら夢は見ていない。



5日●2つあるべきものが1つ足りない
マジシャンの腹部が見えている(ただし服は着ている)。それが誰の腹部なのかはわからない。大人の男性マジシャン、或いは小学生ぐらいの女の子マジシャンのような気がするが定かではない。ただ、この人の体には大きな特徴がある。2つあるべきものが1つしか付いていないのだ。(足りないものは何なのだろう?)と考えている最中に目が醒めた。

【解説】 腹部に2つあるべきものが1つしかないとなると、腎臓あたりだろうか。何やら意味不明な夢だった。



6日●2枚重なったカード
気がつくとクロースアップ・マジックの会場にいて、私はマジシャンの手元を注視していた。しかし何かがおかしい。何かが歪んでいる。そうだ、マジシャンの手と思ったものは、実は私自身の手だったのだ。どうやら私はプロのマジシャンで、観客の前でクロースアップマジックを演じているらしい。私の手の中には1枚のトランプのカードがある。一見、1枚にしか見えないカードだが、実は2枚のカードを重ね持っているのだ。私はそのことを観客に見破られないよう細心の注意を払いながら、2枚のカードをピッタリと重ね合わせたまま宙を飛ばしたり、他のカードと一緒にシャッフルしたりしている。そのあと何かハプニングが起こったように記憶しているのだが、それは確か吉兆だった気がする。

【解説】 またしてもマジックの夢である。しかも今日は自分自身がマジシャンになっていた。カードが手に張り付いてくる感覚もリアルで、なかなか緊張感漂う夢だった。



7日●赤ちゃんを崖から降ろす
私は誰かの赤ちゃんを預かっている。もしかしたら親に無断で赤ちゃんを連れ出してしまったのかも知れない。その子は肉づきがよく、頬は丸々とピンク色で、とても可愛らしく健康的だ。何か用事があって、私は赤ちゃんを抱いたまま崖の上に登った。登ったはいいが、赤ちゃんを連れて降りることは不可能だと気づく。崖の下ではそろそろ赤ちゃんの両親が心配し始める頃だろう。私は崖の上に赤ちゃんを置いたまま地上に降りると、おんぶ紐を取りに自宅へと走った。自宅に置いてあったおんぶ紐と別の何か(赤ちゃんを抱くための道具)を持って急いで崖をよじ登り、再び赤ちゃんのところへ戻る間、(赤ちゃんは寝返りを打って崖から落ちていないだろうか。或いは、悪い奴にさらわれていないか)と気が気ではない。幸いにも赤ちゃんは無事だった。私はまずおんぶ紐で赤ちゃんを背負い、崖から降りようとした。しかしこの状態は意外に安定が悪く、とても無事に降りることができそうもない。おんぶ紐を使うことを断念した私は、次にもう一つの道具(形は全く覚えていない)を使って赤ちゃんを崖から降ろそうと試みるのだが、今回もやはり失敗である。困り果てた頃、突然何やら素晴らしいアイデアが頭に浮かんだ。それがどんな方法だったかはどうしても思い出せないのだが、その方法で私は無事に赤ちゃんを崖から地上に降ろし、両親のもとへそっと返すことに成功した。
【解説】 「他人の赤ちゃんを黙って連れ出す」とはずいぶん物騒な夢だが、『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「誰かを誘拐する夢」の意味は「自分を変えたい気持ちが強くなっている。誘拐したい相手は、自分が羨ましいと思う理想の人」とのこと。また「赤ちゃん」の意味は「新しい可能性と生命力の象徴」だそうである。



8日●カラダに紐を通すマジック
私はカラダに紐を通すマジックを練習している。黒い服を着ているので、白い紐がとても鮮やかに見える。すぐ近くではもうひとりのマジシャンの卵が同じマジックを練習している。そうこうするうち、私は種のある手品ではなく本当に紐をカラダに通すことのできる能力を身に付けてしまった。(魔法って意外と簡単だな)などと思い、私は淡々とマジックを続けている。

【解説】 今月は1日から4日まで南インドのケララ州で行なわれたViamayam2008(850人のマジシャンが集ったマジック大会)に“文化大使”として出席してきた。このところマジックの夢ばかり見るのはそのせい。



9日●石窟の中で茶道の先生から課題を与えられる
非常に大きな石窟のような場所。私はその中を歩いている。石窟とは言え、全体に明るく開放的だ。色でいうと「白」のイメージ。私のすぐ近くには哲学者のような風貌のインド人男性が歩いていたような気がする。細かいことは覚えていないが、この人からも「白」のイメージを感じた。ほかにも何人か人がいるようだが、ハッキリと姿が見えたわけではない。暫くすると、向こうから茶道の荒井宗羅先生が歩いていらした。先生もどなたかお友達とご一緒である。先生は微笑みながらも決然とした口調で、私に対し何か新しい課題を与えられたようだ。それがどんな内容だったかはわからないが、課題の難易度は上の下ぐらいだった気がする。

【解説】 石窟であるにもかかわらず光が溢れ、明るく開放的なイメージの夢だった。荒井先生から申し渡される課題と言えば、次のお点前だろう。そう言えば今月は「唐物(からもの)」の許状を伝授していただくことになっている。そろそろ次のお点前を勉強する時期かも知れない。



10日●大学院に関する手紙
目の前に1枚の小さな紙がある。それは若い女性から届いた手紙で、そこには彼女が大学院に通う期間を延長したいのでよろしく頼みますという意味のことが書かれていた。私は「事情がわからないので、直接会って詳細を聞きたい」という内容の返事をしたためている。

【解説】 今夜の夢には1枚の紙片しか登場しなかったような気がする。手紙の主が誰なのかは謎。



11日●インドの豪邸にて
ゆるやかな斜面に建てられた豪邸。エントランス部分の道路は、自動車がぐるりと回れるように弧を描いている。自動車道に沿って細い歩道もあり、そこには何故か1頭の馬が歩いていたようだ。この豪邸は、私が所有するインドの自宅なのだそうだ。外観は100%ヨーロッパ風で、古風な家具調度品はシェイクスピア時代を髣髴させる。(ここが本当にインドなのだろうか)と不審に思う私。場面が変わり、私は同じ建物の2階にいた。階段を登りきったところにある大きな踊り場に立っていると、1階からインド人の男性が階段を登ってきた。口髭を生やし、少し太り気味の、どこにでもいるようなインド男性だ。この人の顔に見覚えはないが、私の友人なのだという。私は男から何らかの質問または要求を受けた。その内容は、私よりもむしろ他の誰かに告げたほうが良い内容だ。私は男にその旨を告げようとしている。

【解説】 現実の私はインドに家を所有していないし、また所有したいとも思わない。今夜の夢には豪邸が現われたが、私はその家を欲しいとは全く思わなかった。また、その家は完全なヨーロッパ調だったが、それは昨日現実世界で友人とヨーロッパ旅行の話をしたためかも知れない。最後に現われた男から受けた質問(或いは要求)は非常に具体的な内容だったのだが、夢から醒めた途端、それがどんな内容であったか思い出せなくなってしまった。



12日●大量の洋菓子と不安定な建築物
気づいたとき私は大量の洋菓子に囲まれていた。ケーキ、アイスクリーム、チョコ菓子などなど、それこそ数えきれないほどの洋菓子が銀盆の上に盛りつけられた景色は壮観だ。それを片端から食べたあと、同じ品物をどこかへ発送したような気もする。すぐ近くには、とても上品な初老のインド男性がいたようだ。どうやらここはインドらしい。そのあと私はたいへん奇抜な建物を見た。それは、これまでに見たどんな建物よりも不安定なイメージの建築物だ。おそらくフロアごとに面積が異なるのだろう。外から見ると大きく外に張り出したフロアと内側に引っ込んだフロアが奇妙な凸凹を形成しているのだ。色彩的にも奇抜な色が塗られていたような気がする。私は心の中で(地震の多い日本のような国では絶対に建てられない構造のビルだな)と思い、こんな不安定なデザインの建物に一体誰が暮らすのだろうと首を傾げている。

【解説】 昨夜に引き続き今夜も「インドの建築物」の登場である。しかし今夜の夢でそれ以上に印象的だったのは、大量の洋菓子を食べたこと。高級そうな銀食器も印象的だった。

【後日談】 この夢を見た数時間後、知人が「世界第6位・インド第2位の大富豪ムケシュ・アンバニ氏が60階建ての物凄い豪邸を建築中で、もうそろそろ完成するようですよ」というメッセージとともに、ニュースのURLを送って来てくれた。早速ニュースサイトに飛んで見ると、そこに写っていた建物は、なんと今夜の夢に現われたものと寸分違わぬビルではないか! 私はアンバニ氏と面識がない上、彼が家を建てていることも知らなかった。ところが夢の中では、私は彼の家(ただし外観のみだが)を完全に見たことになる。千里眼という言葉があるが、今夜の夢はまさに千里眼で遠くの景色を見通してきたような不思議な内容だった。ちなみにアンバニ氏が建てている家は、総工費2,056億円で“世界最高値”の家になるのだそう。


13日●ずっとハッピーな気分
いつどこで何が起こっているのかはわからないが、私はとても楽しく嬉しい気分だ。色々な場所へ行き、色々な人に逢ったと思うのだが、具体的なことは全く思いだせない。ただ、心の底がくすぐられるようなハッピー気分が延々と続いている。

【解説】 今夜の夢にはきっと具体的なストーリーがあったのだ。それも長大なストーリーが。その証拠に、夢の途中に何度か意識が現実に近づいて来るたびに、(あ、今また夢を見ていた)(今夜は一晩中コンスタントに夢が続くなあ)などと思ったことを覚えているのだから。しかしそれがどんな夢だったのかは少しも思い出せない。何やらとても幸せな夢だったことだけは間違いないのだが。



14日●憧れの国にワンシーズンだけ留学する
今はまだ1970年代で、私は10代の女の子らしい。大学の夏休みを利用して憧れの国に留学している。そこは世界一の先進国で、日本にはない珍しい物がゴロゴロしている。アメリカ合衆国かと思ったのだが、友人との会話から、そこがアメリカではないことが途中で判明する。アメリカ合衆国でないのなら、ここは一体何処だろう。明らかにヨーロッパではなく、カナダでもない。勿論、オーストラリアでもない。そこは地球上のどこかにある英語圏の国で、世界中の学生達の憧れの的なのだという。留学の最中、私はホームパーティーに招待されたり、牧場に行ったり、プールサイドでバーベキューを楽しんだりと、これ以上ないほど健康的な青春をエンジョイしたようだ。めくるめくうちに時は流れゆき、やがて夏の終わりがやって来た。日本に帰る日を迎え、私は留学先で知り逢った2人の女性とメールアドレスの交換をしている。2人は東南アジア(フィリピンかマレーシアあたり)の人らしく、エキゾティックな顔立ちだ。そのうちの1人から(英語で)「貴女はどうして留学したの」と問われ、私は何かを力説している。懐かしく、少しだけメランコリックな気分。

【解説】 今夜の夢の中で、私は完全に10代の女の子に戻っていた。それは半分懐かしく半分メランコリックな、ちょっと不思議な気分であった。現実世界の私が19歳の時にしたことは、アメリカ西海岸(カリフォルニア州サンノゼ)へのひと夏の留学だ。当時(1979年)は留学というものがまだまだ珍しく、友達からは「泥棒には十分に気をつけて」「生水は飲んじゃダメだよ」などと心配される始末(苦笑)。しかも私は親の援助を一切あてにせずに、旅費全額をバイトで稼いだのであった。今から思えば本当にエライ子である(笑)。ちなみに、こんな夢を見たからと言って、私は若い頃に戻りたいとは全く思っていない。何故ならば、夢を模索して足掻いていた当時よりも今のほうがどんなにか人生が楽しいからである。



15日●ダルマチャクラと特別なラーメン
最初に何か象徴的な“模様”が現われた。仏教の法輪(ダルマチャクラ)だったように思うが、それが現われたのは誰かの胸の上だったようだ(法輪の形をしたものはTシャツの模様だったのかも知れない)。そのあと何か別の長いストーリーがあったのだが、学校を思わせる建物の階段から大勢の若い人たちが私を見下ろしている場面を除いては、この夢の内容は忘れてしまった。最後に、インド人のサナルと彼の妻の姿が見えた。妻は私のために特別なラーメンを作ると言っている。しかしそのラーメンの出汁を取るためには、少なくとも3時間を要するらしい。サナルが(英語で)「真美はもう日本に帰らなくてはならないのだから、そんな時間のかかることはやめなさい」と言った。妻はその言葉に納得し、ラーメンを作ることは断念したようだ。この直後に目覚ましが鳴り、私はその音でいきなり起こされてしまった。

【解説】 ダルマチャクラとラーメンとは、まさに聖と俗、理想と現実である。その対比が何ともおかしい。しかし、今夜の夢でいちばん重要だったのは、忘れてしまった中間部分だったように思う。そこには大勢の人が登場し、何か非常に面白いドラマが展開した気がしてならない。ちなみに最後に現われたサナル夫妻とは、インドに住む古い友達である。



16日●睡魔との闘い
夢の中で、一生懸命に睡魔と闘っている。しかしどうしようもない眠気が襲ってきて、ベッドの端に載っている私の手はだらりと下に落ちてしまう。手が落ちるたびに我に返り、睡魔と闘う。そんなことを繰り返している。

【解説】 睡魔と闘っている今夜の夢、あれは夢だったのか現実だったのか、実はよくわからない。しかし現実の私はベッドではなく布団に寝ているのだから、あれはやはり夢だったのだろう。眠った気のしない、疲れる夢だった。



17日●終わらない夏とブランコ
白いフェンス。夏草。懐かしい風景。ここはずっと昔に見たことのある場所だ。ピアノのお稽古バッグ。この中には黄色いバイエルが入っているのだろう。夏草と一緒に白と黄色の花がたくさん咲いていて、これで王冠を作ったら可愛いだろうなと思う。少し先には、子どもがふたり並んで乗れるブランコが揺れている。ブランコの上には食べかけのドロップが置いてあった。これは弟の忘れ物かも知れない。ドロップを手に取った私のそばでは、単調な声で蝉が鳴いている。終わらない夏の午後。

【解説】 今夜の夢に現われた場所は、子どもの頃に通っていたピアノ教室だった。先生の家の庭にはブランコがあって、小さな私はお稽古の帰りに時々、弟とふたりでブランコに乗ったものだ。あの一帯は街の再開発ですっかり様変わりしてしまったようだが、私は今も時々あの頃を思い出す。4つ年下の弟はあのブランコを覚えているだろうか。



18日●寿老人のミスマッチ
太鼓橋を渡って行くと、向こうから寿老人が歩いて来た。噂にたがわず頭の長い人だなと思う。しかし思ったよりせっかちな歩き方だ。寿老人は釣り竿と鯛(あるいは海老だったかも知れない)を抱えている。私が心の中で(それは恵比寿の持ち主でしょ)とツッコミを入れると、寿老人はこちらの心を読んだかのようにフッと鼻先で笑った。

【解説】 時間にして1秒ほどの夢だった。このあと私は寿老人と連れ立ってどこかへ出かけたような気もするのだが、その詳細は憶えていない。



19日●父を呼ぶ
すぐ近くで母の声が聞こえる。私はいつの間にか実家に来ていたらしい。父を呼ぼうとしたのだが、すぐに(そう言えば父はもう亡くなったのだ)と思い出し、私はぼんやりと自分の子ども時代を思い出している。

【解説】 私はときどき夢の中で、父が生きているような錯覚に陥ることがある。夢の中では、記憶の時間軸が自由自在に伸び縮みするからだ。父が本当に死ぬのは、私の記憶の中から父が消えるときなのだろう。



20日●……
【解説】 今日は何か仏像に関係のある夢を見たような気がするのだが、内容は全く思い出せない。



21日●よりを戻したSさん夫妻
見知らぬ家の中。Sさん夫妻の姿が見える。Sさん夫妻は、旦那さんがアメリカ人で奥さんが日本人。少し前に離婚したはずだが、夢の中では普通に仲良く生活しているではないか。しかも、いつマスターしたのか、旦那さんは日本語がペラペラになっている(それも、まるで何十年も日本語を話している人のような自然な日本語なのだ)。ふたりが“より”を戻したことを知って、私はホッとしている。
【解説】 Sさん夫妻は現実世界の友人で、仲睦まじい国際結婚カップルだったが、今では離婚してしまっている。話を聞く限り、関係修復の可能性は限りなくゼロに等しいふたりだが、夢の中では仲良く一緒に暮らしていた。しかも、実際には日本語ができない旦那さんは日本語を流暢に話していた。これはおそらく私が心の中で「こうだったらいいのにな」と望んだSさん夫妻の姿なのかも知れない。



22日●「生年月日を秘密にしなさい」と言われる
ざわざわした雰囲気。パーティー会場だろうか。手にはワイングラスを持っていたような気がする。ふと目の前に見知らぬ女性があらわれて、いきなり「山田さん、あなた生年月日を公表なさるのはやめた方がいいですよ。女性の年齢は隠すべきものですから」と言われた。私はもう少しで笑い出しそうになりながら、「何故ですか。年齢を隠す理由なんて一つもありませんよ。私は私の年齢を楽しんでいるのですから」と答えた。そのあとどうなったのか、結末は覚えていない。

【解説】 前後の脈絡のわからない、突拍子もない夢だった。相手の女性にも見覚えはない。
【後日談】 この夢を見た数日後、あるパーティーに出席した。ちょうどワイングラスを手にした瞬間、目の前にいた男性から「山田さん、このあいだの新聞記事に年齢が載っていましたね。女性は年齢を隠したほうがいいですよ」と言われた。言われながら、(あれ? 少し前にこんな夢を見たのでは?)と思い出してビックリしてしまった。夢の中の忠告者は女性、現実世界では男性だったが、「パーティー」「ワイングラス」といった小道具まで一致していて、「これぞ正夢!」という感じであった。ちなみに私は自分自身の年齢に誇りを持っており、トシを取ることを楽しんでさえいるので、今後も年齢を隠すつもりはありません(笑)。



23日●限りなく膨張する地図
目の前に1枚の世界地図がある。それはビニールのような素材で出来ていて、触れるとその部分が膨張するようだ。私はインドの一部に触れてみた。するとその部分がどんどん膨張して行き、地図は見る見るうちに畳10枚分ぐらいの大きさになってしまった。手を離すと膨張は止む。再び手を触れると、触れた部分が膨張する。そんなことを繰り返すうち、地図は海のように波打ちながら化け物のように巨大化して行った。私は(この地図はどんな構造になっているのだろう)と思っている。

【解説】 なにやらシュールな夢だった。現実世界ではこのところ世界地図を見た覚えはなく、夢に地図が現われた意味は不明。



24日●大地震の予感

白と黒の市松模様。高いビル。マグニチュード8ほどの大地震が起こるらしい。逃げ場があるかどうか、それが問題だ。
【解説】 今夜の夢にはもう少しストーリーらしいストーリーがあったように思うのだが、残念ながら思い出せない。

【後日談】 この夢を見た1〜2時間後、起床してきた娘が開口一番に口にした言葉が「高いビルの中にいたら大地震が来る夢を見た」。娘と私はときどきよく似た内容の夢を見る。今回の場合は、中国・四川の大地震が大きく報道されているためにこんな夢を見ただけかも知れないが、それにしても不気味な一致だ。正夢にならないことを願う。


25日●敵のいない戦場にて
岩がごつごつ切り立った荒涼たる場所。数人の軍人が見える。女性がひとり、残りは全員男性だ。彼らは米軍の兵士なのだと思う。そう思うのには何か理由があるのだが、その理由が何だったかはどうしても思い出せない。戦場でありながら、敵の姿はどこにも見えない。敵はもう既に死に絶えてしまったのかも知れない。敵のいない戦場ほどナンセンスなものはないと思う。乾いた風が吹いている。人類の前途は多難だ。

【解説】 今夜の夢には一種独特のナンセンス感と、人間の愚かさのようなものが深く滲んでいたように思う。そう言えば近頃、「告発のとき(原題: In the Valley of Elah)」というイラク帰還兵がテーマの映画(試写会)を観た。そのことが今夜の夢を見た原因かも知れない。



26日●女子高が軍関係の施設に変身
教室のようなデザインの薄暗い部屋。おそらくここは女子高なのだろう。花の匂いがしている。と思った瞬間、女子高は一瞬にして軍関係の施設に変わってしまっていた。そのあと何が起こったのかは、どうしても思い出すことが出来ない。

【解説】 数日前、「ひめゆり部隊」に関する資料を精読した。今夜の夢はその印象の名残だと思う。



27日●ヒマラヤの鎮魂
横に広がりのある峠。ここがヒマラヤであることは間違いないのだが、それにしては風景が「横」方向に広がっていて、「縦」にギザギザに尖った峻厳さは見当たらない。そのため、この峠には穏やかで優しい印象がある。岩陰には地元の人たちが大勢集まっていて、私に向かって一斉に手を振っている。あれは「さようなら」の挨拶だと思う。何かを諦めたような、どこか悲しげな顔。彼らはチベット人なのだと思う。私はここを去って行く。彼らはここに残る。いくら伸ばしても届かない指先。運命という名の無常。「鎮魂」という言葉が浮かぶ。運命は過酷だ。私はひとつの決意を胸に秘めて山を降りようとしている。

【解説】 今夜の夢には続き(山を降りてからのストーリー?)があったように思うのだが、残念ながら思い出せるのはこの部分だけ。全体に「鎮魂」のイメージが残る夢だった。



28日●SLV
目の前に何度も何度も「SLV」の文字が浮かぶ。誰かが「きっとセレブの略よね?」と言っている。私は心の中で(セレブはcelebrityだから、敢えてアルファベット3文字で表わすならSLVじゃなくてCLBでしょう?)と思っている。それにしてもSLVとは何だろう。サリヴァン(Sullivan)の略のような気もするが、見当違いかも知れない。私は長いこと「SLV」の意味について考えている。

【解説】 目が醒めてから「SLV」をネット検索したところ、ソニーのビデオデッキに「SLV」で始まるシリーズがあることがわかった。しかし今夜の夢に現われた「SLV」が果たしてソニーの「SLV」なのか、仮にそうだとして何故そんな夢を見たのか、真偽の程はわからない。



29日●今まさに飛び立とんとするコンドル
広々とした場所。草原に建つ宮殿が見えたかも知れない。今まさに飛び立たんとする巨大なコンドルの、澄んだ瞳と孤高な姿。そのあと大勢の人に逢い、何か信じられないほど複雑な出来事が起こったのだが、それがどんな出来事だったのかは残念ながら覚えていない。

【解説】 今夜の夢では、何と言っても「コンドル」の姿が印象的だった。『夢の事典』(日本文芸社)に「コンドル」という項目はないが、それに近そうな「鷹/鷲」の意味は「優越感と権威/他者を圧倒する力/闘い/広い視野」だそうである。



30日●焼き肉屋と水のあふれる排水溝
最初に、何か小さくてゴムのような感触の球形の物体がたくさん見えた。色は黒っぽい紫。グミのような感じで、私は嫌いだ。気がつくと場面が変わっており、焼き肉屋のような食堂に来ていた。畳の部屋には大きなローテーブルがいくつか並んでいる。同じテーブルの向かい側には友人のHさん(年上の男性)が座っている。私の手には未開封の瓶のようなもの(調味料?)。それを開けたところ、どこからともなく小さなゴミがいくつか出てきたので、私はそれを摘まんでテーブルの中心にある排水溝に捨てた。しかしそのやり方がうまくなかったため、あたりは水で濡れてしまった。私は雑巾で拭く代わりに、そのへんにあった適当な道具で水をすくって排水溝に戻している。それを見たHさんは苦笑している。

【解説】 のっけから「グミ」と「焼き肉屋」の登場である。私は毎日のように大量のお菓子を消費してお菓子大好き人間だが、グミだけはどうしても好きになれない。さらに、魚介類は食べるが陸上生物の肉は一切食べない“セミベジタリアン”なので、焼き肉屋へは絶対に行かない。夢の最初のほうで、現実には敬遠しているこれら2つのアイテムが登場した上、ゴミが出てきたり排水溝から水があふれたり、少しばかり疲れる夢だった。ちなみにHさんは仲の良い友達の一人。一緒にいて疲れる相手ではない。



31日●見渡す限りの海水
気がつくと私は海の真ん中に浮かんで漂っていた。周囲は見渡す限りの海水で、陸のかけらも見えやしない。また溺れるのかと思い、うんざりする。これが夢ならいいと思う。そのあと何が起こったのか、気がつくと私は陸にいて、普通にパーティーに出席していたような気がする。

【解説】 陸地の見えない海を漂っている夢、これは私にとって悪夢である。現実世界でも2002年9月11日にこれと全く同じことが起こって、溺れ死にかかった経験があるからだ。今夜の夢の中で私は苦しんでいなかったが、実際にこのシチュエーションに置かれると死ぬほど苦しい。こういう夢はもう二度と見たくないものだ。





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