2009年2月


1日●爆発炎上
丘の上の大きな屋敷が突然、大爆発した。オレンジ色の閃光。すぐに屋敷は大きな炎に飲み込まれ、巨大な火の玉のようになった。私は現場に向かいながら、(これは夢なのか? それとも現実か?)と思っている。
【解説】 この夢を見る前夜、東京へ遊びに来た母を相手に、何十年も前に某所で起こった火災がいかに酷(ひど)かったかという話をしていた。どうやらそのことが早速夢に現われたらしい。



2日●サボるお坊さんたち
建物の奥まったところにある秘密めいた部屋で、5〜6人のお坊さんがソファーに座っている。彼らからは、「目下サボり中ですから放って置いてください」的オーラがビシバシ出ている。がっしりした体格と鋭い眼光。普通ならば、恐ろしくてとても話しかけられないような雰囲気だ。しかし私は平気で部屋の中に入り、「どうも、お疲れさまです」と微笑みかけた。お坊さんたちは(アンタ何者?)と言いたげに、怪訝な顔でこちらを見ている。私は心の中で、(これは本当にサボりなのか。それともサボりと見せかけて、実は虎視眈々と時期を待っているのか。本当のところはわからない)と思いながらも、素知らぬ顔で「お茶、お淹れしましょうか?」などと尋ねている。
【解説】 夢から起きて唐突に思いだしたのは、討ち入りの計画を悟られないために遊んだふりをしている大石内蔵助の姿だった。今夜の夢に現われたお坊さんたちも、サボっているふりをして闘いの準備をしている人たちに何故か見えた。意味深な夢である。



3日●変わった名前の犬
前後関係は思い出せないが、気がついたとき私はブースケを連れて知らない街を散歩していた。何か茶色くてふわふわした物(ピエロのカツラ?)が見えたような気がするが、それが何だったかはわからない。1匹の仔犬が駆け寄って来て、ブースケと遊び始めた。飼い主の女性に「わんちゃんのお名前は何というのですか」と尋ねると、彼女は笑いながら「新宿です」と答えた。私は彼女が住所を答えているのだと思い、「いえ、そうではなくて、わんちゃんのお名前は何というのですか」と再び尋ねた。すると彼女はまた笑いながら「新宿です」と答えた。私は心の中で(変わった名前の犬だな)と思ったが、黙っていることにした。その間もずっと、例の茶色いふわふわした物が近くに見えていたような気がする。
【解説】 今夜の夢では、変わった名前の犬もさることながらカツラのようなふわふわした物の正体が気になった。結局最後までわからなかったが、あれは一体何だったのだろう。
【後日談】 この夢を見た2日後の夜、編集者さんとの打ち合わせ場所に向かうために乗った東京メトロ丸ノ内線の車輛の中で、ナント「部分カツラ」らしき物(!)が落ちているのを見た。電車の車輛にカツラが落ちていること自体があまりにもシュールな状況で、思わずプッと噴き出したい気持ちを抑えるのに必死だったのだが、よくよく考えてみると、車輛内に落ちていた部分カツラらしき物は、夢に登場した“茶色くてふわふわした物”とそっくりだったではないか。まさかピエロがメトロに乗ったとも思えないが……(笑)。しかもそれを目撃したタイミングは、電車が新宿駅を通過しようとする、まさにそのとき。実におかしな一致だった。
【後日談その2】 さらにその数時間後のこと、ブースケといつもの公園を散歩中に、柴犬を連れた女性に逢った。一般に柴犬とシーズーは相性が悪く、シーズーが柴犬に噛まれる事件はしばしば起こっている(逆のケースは聞いたことがない)。だから私は柴犬がブースケに近づいて来ても絶対に遊ばせないと決めているのだが、このとき逢った柴犬はまだ赤ちゃんで、しかも連れていた女性がとても感じの良い人だったので、私にしては珍しく、ブースケを初対面の柴犬と遊ばせることにした。いつものことで、飼い主の女性に「わんちゃんのお名前は?」と聞いたところ、この柴犬の名前がナント新宿ならぬ「新橋」だというのには吃驚した。夢との近似性に驚くと同時に、(一体なぜそんなユニークな名前を!?)という疑問が湧き、思わず飼い主さんに「どうして新橋なのですか?」と思ったままを尋ねたところ、女性は笑いながら「なんとなく、ピンと来たんです」と仰っていた。夢の中では「新宿」だった犬が現実には「新橋」となって、山手線で10駅の隔たりはあるものの(笑)、これはもう「正夢」と呼んでいいだろう。



4日●ブースケの食わず嫌い
家族がブースケを囲んで、何か食べ物を与えようとしている。新発売になった高級ジャーキーのようだ。ところがブースケは頑としてそれを受けつけず、口を開けようともしない。「強情だなあ」「食べてみればいいのに」という声が聞こえる。私は2〜3メートル離れたところに立ってその光景を眺めながら、(ブースケの意外な強情さは誰に似たたんだろう)と思っている。
【解説】 昨夜から2晩続けてブースケの夢である。ブースケが誰かに似ているとすれば、当然、生物学的な意味での両親に似ているに違いない。しかし今夜の夢の中で(ブースケは誰に似たんだろう)と思っていた私は、明らかにブースケを自分の実の子どもと見なしていた(笑)。ちなみにブースケを買った時に受け取った血統書によれば、ブースケは埼玉県生まれで、同じ時に生まれた兄弟姉妹が(ブースケ以外に)2匹いるそうだ。彼らがブースケとどれほど似ているかは(逢ったことがないので)全くわからない



5日●ケチな中年男の出し渋り
グレーの服を着た冴えない中年男が見える。年齢は55歳から60歳ぐらい。俳優の某氏に似ていると思う。彼は覇気のない顔をして、やや背を丸めて椅子に座っている。周囲には2〜3人の男女がいる。彼らは中年男の知り合いではなく、一種のオブザーバー(観察者)らしい。中年男は何かの実験の被験者なのだろう。そのうちに中年男は、左手を後ろから高く上げ、そのまま前に突き出すという動作を始めた。手が前に出るたびに、彼はパッと手を開いて中身を見せるのだが、彼が手の中に隠し持っているのはケチ臭い物ばかりだ。私は心の中で(なんという出し渋り。もっと思い切って良い物を出せばいいのに)と思っている。オブザーバーたちは彼の行動をいちいちメモしている。そのあと私だけ全く別の場所へ行ったような気がするのだが、詳細は残念ながら覚えていない。
【解説】 体感時間にして数秒にも満たない短い夢だった。ケチな役で登場した男は某俳優に似ていたが、実際にその俳優さんがケチであるかどうかは不明。
【後日談】 この夢を見た○日後、夢に登場した中年男と酷似した男性と知り合った。いつ、どこで逢ったかを書くと相手が特定されてしまう危険があるので、そのへんの事実関係は言葉を濁すことにするが、顔立ち、動作(腕をぐるぐる回して手から物を出す)、それに吝嗇ぶりまで、まさに夢の男性にそっくりだったのは驚きだ。



6日●美味しい焼きそば
前後関係は全くわからないが、気がつくと目の前に大きな白いお皿があって、そこに大量の焼きそばが盛りつけられていた。イカや海老がふんだんに入った海鮮あんかけ焼きそば(柔らか麺)だ。酢と辛子を混ぜたものを大量に焼きそばにかけ、テーブルの上に置いてあった割り箸を使って食事を始めた。よく味の染み込んだキャベツがこの世のものとも思われないほど美味しい。ものも言わずに食事をしながら私は、(夢の中なのに、どうしてこんなに美味しいのだろう)と思っている。
【解説】 自分が夢を見ているということが十分わかっていて、そのうえで食事を満喫するという、実に器用で“ちゃっかり”した夢だった。そう言えば私は夢の中でときどき食事をするが、美味しさは現実そのままであるにもかかわらず、なにしろ夢だから料金を支払った試しがない(笑)。しかも、いくら食べても太る心配はない。なんともラッキーなことである。



7日●泥穴に落ちても平気な赤ちゃん
目の前には土が剥き出しの茶色い大地が広がっている。ジャングルなのだろう、緑色が濃い。おそらく南インドなのだと思う。すぐそばの地面に直径50センチ弱ほどの穴が開いている。私の位置から中は見えないが、それは深い深い穴で、中は泥水で一杯らしい。そのとき、どこからともなく生後間もない赤ちゃんが現われて、ヌルリと滑って穴に落ちてしまった。しかしその赤ちゃんが苦しんだり命を落とすようなことはないようだ。私は少し驚きながらも、(さすがはヨーガの達人の血を引いているだけあって、ものすごい赤ちゃんだ)と感心している。
【解説】 今日の夢では、「ヌルリとした泥水が溜まった深い穴」と「超人的な赤ちゃん」のコントラストが非常に不思議だった。しかしこの夢が何を意味しているのかは全くの謎



8日●浜辺で蟹を探す
友人のYさんが「待ってたのに蟹が来なかった」とボヤいている。どうやらYさんはレストランで蟹料理を注文したにもかかわらず、(何か急用が出来たために)料理が出てくる前にレストランから立ち去らざるを得なかったらしいのだ。私は蟹を食べ損なったYさんが少し気の毒だったので、浜辺で蟹を探すことにした。そこは南インドはケララ州のビーチだったような気がする。そのあと蟹のことで何か進展があったように思うのだが、残念ながら目覚まし時計に叩き起こされたため覚えていない。
【解説】 Yさんは非常にグルメな人で、日頃から口を開けば食べ物の話ばかりしている(笑)。夢の中でもそのキャラのままだったのが妙におかしい。そう言えば昨夜に引き続き、今夜の夢にも南インドのイメージが登場した。現実世界では南インドには数ヶ月前に行ったきりだ。なぜ南インドの夢を見るのか、思い当たる節はない。



9日●……
【解説】 今夜は何かインパクトの弱い夢を見たような気がするのだが、起床した途端に忘れてしまった。


10日●想い出は美しすぎて
映画『天空の城ラピュタ』の主題歌「君をのせて」のメロディーが流れている。私は見知らぬ建物の中にいる。都心から遠く離れた温泉宿のようだが、オフシーズンなのかひどく閑散としている。ホールのような部屋を歩いているあいだも、例の曲がずっと流れているので、私はその歌詞に耳を傾けている。すると驚いたことに、聞こえて来たのは今まで知っていた「君をのせて」とはまるで別の歌詞ではないか。いま聞こえている曲は、美しく激しく物悲しいロマンスが具体的に語られているのだ。数メートルほど離れたところに娘の姿が見えたので、「『君をのせて』の歌詞がこんなに切ない内容だとは知らなかったよ」と言うと、娘は全て知っていたらしく、「あれ、知らなかったの? あれは本当に切ない歌詞だよ」という答えが淡々と返ってきた。私は心の中で(こんなにも美しく激しい愛の想い出があったなら、その後の人生を生きることはどんなに辛いことだろう。私にはそういう想い出がない。現在と未来を生きるためには、それは幸いなことかも知れない)と思っている。
【解説】 今夜の夢の中でずっと流れていた曲は、メロディーは「君をのせて」でありながら、歌詞はオリジナルとは全くかけ離れたものだった。具体的な歌詞を思い出せないのが残念だが、美しすぎる想い出を持て余して生きる人の視点で書かれた、聞いているだけで心が重くなるようなツライ歌詞だった。そう言えば私には、いわゆる「忘れられない激しい恋の想い出」というものがない。大恋愛の経験はあったはずだが、なぜか想い出は残っていない。こう書くと驚かれるかも知れないが、私は過去の恋(およびその時の感情)を覚えていられない体質らしい。男性から見たらひどく薄情な女かも知れないが(苦笑)、なにしろすべて3日で忘れてしまう。感情の切り替えが恐ろしく早いのだ。だから、世の中の多くの人たちが過去の恋を忘れられずにズルズルと引きずって悩み苦しんでいることが、頭ではわかっても本当の意味では理解できない。つらかった過去を「忘れる」能力は、毎日を明るく生きるために不可欠な「才能」だとも思うし、自分自身が「忘れることの天才」である幸運には深く感謝している。なお、オリジナルの「君をのせて」の歌詞はこんな感じの爽やかな内容である。



11日●驚くほど美しいオレンジ色のドレス
驚くほど美しいオレンジ色のドレスが目の前に見えている。美しいのは(デザインもさることながら)その色だ。若々しい生命力に溢れ、思わずひれ伏したくなるような美しさに輝いて見える。ドレスの生地はセミの抜け殻のように薄い布で、きちんと閉じた襟もとに共布のリボンが付き、ウェストがキュッとくびれたデザインは’60年代を思わせる。子どもの頃、これとそっくりなオレンジ色のサマーハットを持っていたことを急に思い出した。このドレスを見ているあいだ、私の周辺では3つの小さな貴重品がぐるぐる回っていたような気がするのだが、それらが何であったかはわからない。
【解説】 オレンジは人を元気にする「ビタミン・カラー」の中でも、私が最も好きな色彩だ。今夜の夢にはストーリーらしいストーリーはなく、ただただ神々しい色彩で溢れていた。見るだけで元気倍増するような夢だった。



12日●女神さまをまねて生きる姉妹
「常に弁才天と吉祥天の立場でものを考え、弁才天と吉祥天として生きよう」と心に決め、女神をまねて生きている美人姉妹がいる。彼女たちの行動は、あたかも自分たちが本当の女神さまだと信じているようにも見える。アイデンティティに関する一種の病気なのかも知れない。私は彼女たちについて研究しようと思い立ち、まずは吉祥天の生態について書かれた書物を読むことにした。その書物に書かれた内容よれば、吉祥天は「白い2つの星に関係があり、姉妹が羨むほどピンクである」という。白とピンクを含め、この書物には吉祥天のテーマカラーが全部で4つ書かれていたのだが、あとの2つが何であったかは思い出せない。
【解説】 わかったようなわからないような夢だった。ちなみに吉祥天のテーマカラーが白とピンクという話は聞いたことがない。



13日●言葉の限定的著作権
「言葉の一部に対する限定的な著作権はあるのか」というテーマでディスカッションが行なわれている。例えば「りんご」という言葉の「んご」の部分だけを限定して取り上げた場合、そこに著作権が認められるか否かという論議だ。眼鏡をかけた中年男が「著作権はある」という立場で熱弁を奮っている。男ののっぺりした凡庸な顔を眺めながら、(そもそも「著作権」という言葉の使い方が間違っている)と思い、私は白けた気持ちを持て余している。
【解説】 これまた意味不明な夢だった。そう言えば現実世界でごく最近、眼鏡をかけた中年男の独りよがりで見当違いな演説を呆れながら聞く機会があった。今夜の夢は、そのときの辟易した気分の表われなのかも知れない。



14日●母が妊娠
母が妊娠したという。もうじき出産だと聞いて、私は心の底から驚いている。しかも風の便りに聞いたところによれば、母の年齢は「68歳」であるという。実際の母は68歳ではなく、確か76歳だったはずだ。私は首を傾げている。しかし68歳だろうと76歳だろうと、その年齢で妊娠するとは驚異的だ。母は既に神の領域に入っているのかも知れない。私は何か神々しいものを見るような想いで、目の前を堂々と行進してゆく母の姿を見つめている。
【解説】 まったく予想外かつ大胆な内容の夢で、眼が醒めてから思わず苦笑してしまった。しかし「母が妊娠する」という夢は、(母の年齢が76歳であることから考えて)非現実的ではあるが、大きな意味での「家の繁栄」「種の繁栄」を告げる吉夢のような気がする。夢の中の母は、実に楽しそうに輝いて見えた。



15日●和歌の上の句と下の句を組み合わせる
夢のあちらこちらに「5・7・5」と「7・7」の音節から成る言葉が散らばっている。それぞれの句は、これから和歌になるための部品のようなものらしい。私に与えられた任務は、それらの言葉を拾い集め、どの上の句とどの下の句を組み合わせたら完璧な和歌になるかを吟味することだ。見渡せば空中にも地面にも、膨大な数の言葉が散らばっている。その何とも不可思議な世界は、いにしえのようでもあり、宇宙船の中のようでもある。私は言葉を組み合わせながら心の中で、(かなり良い線まで行っているけれど、イマイチ何かが足りない)とか(それぞれは完璧な句だけれど、上と下を組み合わせた途端ダメになってしまった)などと思い巡らしている。私の横には誰か研究者風の男性(白人?)がいたような気がするが、気のせいかも知れない。結局、上の句と下の句の完璧なコンビネーションが見つからないまま、私はどこかへ旅に出たようだ。
【解説】 言葉の海を泳いで来たような、とても幻想的で抽象的なイメージの夢だった。夢の中にあらわれた言葉は、どれも現実世界では聞いたことのないオリジナル作品だったと思う。内容を具体的に思い出せないのが非常に残念だ。



16日●3本の金のネックレス
真っ暗な空中に、3本の金のネックレスが浮かんでいる。飾り気のない、チェーン部分だけのネックレスだ。3本のネックレスは音もなくグルグルと回っている。その様子は、まるで目に見えない透明観覧車に乗っているようだ。3本のうち1本は細く華奢な感じで、1本はノーマルで、1本は太くワイルドだ。音もなくグルグルと金のネックレスは回り続ける。
【解説】 今夜の夢で、私はどこか遠くへ旅をして来たような気がするのだが、なぜか詳細を思い出せない。ネックレスが登場したのは夢の真ん中あたりだったと思う。この部分には音がなく、一種独特の高貴さが漂っていた。『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「金色」の意味は「智恵/崇高なもの/心身ともにエネルギーに溢れた状態」、「ネックレス」の意味は「恋愛を含むコミュニケーション能力/自信の復活」だそうである。



17日●旅先で妊娠を喜ぶ男女
見知らぬ街。私は旅をしているようだ。旅先では色々なことがあったのだが、詳細はなぜか思い出せない。峠のような分岐点のような場所まで辿り着いたとき、一組の男女の姿が見えた。目の前の光景がほんの一瞬、江戸時代の“峠の茶屋”と、そこで休憩している町人風の男女に変わった。と思う間もなく、次の瞬間、風景は現代に戻っていた。女性は少し気分が悪そうで、顔色が悪い。男性は心配そうに女性の世話を焼いていたが、何を思ったか急に走り出して、近くにあった薬局から妊娠検査キットを買ってきた。女性が細長い紙を口にくわえると(唾液に反応して)紙の色が変わり、即座に妊娠の有無がわかるらしい。女性が紙をくわえると、暫くして男女の歓声が聞こえた。私の位置からでは良く見えないが、どうやら色が陽性を示したらしい。このときになってわかったのだが、カップルは何か理由があって妊娠を諦めていたらしい。しかし期せずして赤ちゃんを授かることが出来、今は妊娠を大喜びしている。私は心の中で(本当にオメデトウ!)と祝福している。
【解説】 そう言えば今月は14日にも「母が妊娠する夢」を見た。そのときに感じた「種の繁栄」のようなイメージを今夜も感じたので、気になって『夢の事典』を見たところ、「誰かが妊娠する夢」は「能力や魅力を引き出してくれる人と出会える」、「妊娠に気づく夢」は「ラッキーハプニングの前ぶれ」の意味だそうだ。幸先の良い夢のようだ。



18日●ビッグバン内蔵の直径5センチの球
驚くほど大きな飾りが付いたネックレスが見える。飾りの部分は真っ赤な球形で、直径は5センチほど。これを付けたら胸元がゴロゴロするだろう。実用的ではないと思う。しかし何故か私はそのペンダントを買おうか買うまいかと迷っているのだ。球の部分は、一見したところ、赤い毛糸またはボロ布をぐるぐる巻いてあるように見える。しかしよく見ると、その奥の部分は煮えたぎるマグマのようでもあり、さらに凝視していると、やがて球の中には宇宙の誕生を意味するビッグバンを思わせる物凄い光景が広がり始めた。直径わずか5センチの球の中に“生まれたての宇宙”が閉じ込められていることを知った私は、静かに固唾(かたず)を飲んで見入っている。
【解説】 一昨日に引き続き、またしてもネックレスの夢である。一昨日は飾り気のない金色のネックレスだったが、今夜は“ビッグバン内蔵の球形の飾り”が付いた恐るべきネックレスだ。これが何を意味する夢なのか私にはよくわからないが、このところ2度も立て続けに見た「誰かが妊娠する夢」と関連させて考えると、今夜の夢に登場した赤い球形のものは「宇宙の子宮」で、夢全体のイメージは「生命の誕生」を意味していたのではないか。いずれにしても、崇高な吉夢だったような気がする。



19日●尊い人を出迎えるための訓練をする
誰か尊い人を出迎えるための訓練をしている。ただしこれは極秘任務なので、他人に悟られないよう、私はたったひとりで静かに行動している。そこは見知らぬ街で、目抜き通り(と言っても自動車が2台すれ違うのがやっとの狭い道路だが)の両側には小さな商店が立ち並んでいる。道路は山のほうまで続いていて、一方の端は山頂の砦(とりで)に達している。もう片方の端がどこに続いているのかはわからない。私が訓練を積んでいる場所は、山頂の砦だ。ここには観光名所も何もなく、訪ねて来る人はまばらで、秘密訓練にはもってこいなのだ。私が出迎えようとしている“尊い人”は、歴史上の人物(例えば『古事記』や『日本書記』に登場する神々や前史時代の天皇のような)だった気がする。
【解説】 今夜の夢で私は“訓練”をしていたという設定なのだが、特に何か訓練をした覚えはない。強いて言えば「精神的な鍛練」を積んでいたのかも知れない。そう言えば今夜の夢の中で、私は最初から最後まで一人だった。出迎えるべき“尊い人”も最後までついに現われなかった。私が夢の中で鍛練しようと試みていたのは、孤独に耐え、一切の見返りを求めない奉仕の心かも知れない。



20日●バナナ男とフランス語を話すアジア人
気がつくと私は見知らぬ外国の街にいた。歴史の重みを感じさせる石の街並み。おそらくヨーロッパのどこかだろう。黄色いスポーツカーが走ってきた。運転しているのはマッチョな白人男で、全身に油を塗りたくり、着ているものはピチピチのビキニの水着だけだ。スポーツカーの前のナンバープレートの上には、なぜかバナナが飾ってあった。私は心の中で(何なの、この変態男は?)と呆れている。私のすぐ横には2人の女性がいる。1人はアジア人で1人は白人だ。アジア人はフランス語を話し、白人は英語しか話せない。私はアジア人とはフランス語で、白人とは英語でコミュニケーションを取りながら、心の中では(2人とも英語が話せれば楽チンなのに)と思っている。彼女たちと連れ立って暫く歩いて行くと、やがて街はずれの古びたホテルに辿り着いた。どうやら私は今夜泊まるための宿を探しているらしい。目の前のホテルは、アルファベットの「C」で始まる名前(「セルリ」とか「セラン」とか……)だったように思う。ボーイがやって来た。彼はヒマラヤ系のインド人だ。その顔を見た途端に私はほっと安心して、このホテルに泊まることを決めていた。
【解説】 今夜の夢には、もっと長いストーリーがあったように思う。しかし思い出せるのはこの部分だけ。現実世界では、明後日からフランス語のブラッシュアップ教室に通うことが決まっている。また昨夜はバナナを一房買ったので、(傷んでしまう前に食べなくては)などと思っていた。どうやらそういう諸々の事柄が夢に投影されたようだ。



21日●「犬の散歩」は禁句
前後関係は全くわからないが、あたりはスパイだらけのようだ。誰が味方で誰が敵なのか、誰が一般人で誰が諜報部員なのか、外見からは見分けがつかない。ただ一つわかっていることは、「犬の散歩」という一言だけは絶対に口にしてはいけないということだ。ずっと前に道ですれ違った男(彼は味方のスパイだったらしい)が、すれ違いざまに、「いいですか、『犬の散歩』という言葉を口にしたら、全てはおしまいですよ」と言い残して去って行った。あの男に逢ったのはずいぶん昔のことで、あれ以来、もう二度と逢うことはなかったが、私は彼の命令を忠実に守って生きている。このスパイゲームがいつ終わるのか、そもそも司令は誰から出ているのか、全ては謎だらけだが、とにかく私は「犬の散歩」という言葉だけは絶対に口にしないように細心の注意を払いながら生きている。
【解説】 今夜の夢の中で私は、「犬の散歩」という言葉を口にしないよう気をつけながら、何年もの歳月をスパイとして過ごしたような気がする。つまり夢の中でひどく長い時間が過ぎたような感覚があるのだが、それにしては何やら意味不明で茫漠とした夢だった。なお、現実世界の私は、1日に1度は愛犬ブースケに向かって「お散歩でちゅよ〜♪」と言っている(笑)。



22日●X子さんの危うい日本語
女性週刊誌のページをパラパラとめくっていると、街でインタビューした読者のコーナーがあった。ページの左上に、縦5cm×横10cmほどの小さな囲み記事があって、そこに見覚えのある顔が載っていた。小学校の同級生だったX子さんの近影だ。隣に写っているのはX子さんの妹らしい。ふたりは顔を寄せ合い、微笑んでいる。X子さんは基本的に小学生の時と変わっていない。顔や髪型は昔のまま、シワや白髪が増えたという印象だ。私は興味津津で記事を読んだ。そこに掲載されていたのはX子さんさん本人の文章らしいのだが、驚いたことに、その日本語はとんでもなくメチャクチャだった。「私は」が「はたしゎ」、「妹と来ました」が「#=ーととま来した」となっているなど、何が書いてあるのかほとんど判読不能なのだ。そう言えばX子さんの読み書きは小学生の頃から危うかったが、しかしいくら何でも、ここまで悪化してしまったのは驚きだ。私はX子さんに文字の間違いなどを教えてあげたいと思い、この記事を載せた週刊誌の編集部経由でX子さんに手紙を書こうかと思うのだが、(いや、待てよ。X子さんは私のことを覚えていないに違いない。それなら、この手紙を出しても意味はない)と思い直し、X子さんに手紙を出すのはやめることにした
【解説】 遥か昔の小学校時代の、しかも、当時少しも親しくなかった同級生がいきなり登場する、奇妙な夢だった。最近X子さんのことを考えたこともなく、彼女の夢を見た理由はさっぱりわからない。



23日●昨夜のことを思い出せないスパイ
目の前に、痩せた初老の男が立っている。きちんとした身なりと、神経質そうな細淵の眼鏡。この人はどうやら諜報部のマネジャーらしい。彼は私に、「昨夜の任務の報告をしてください」という意味のことを機械的に告げた。私は答えようとするのだが、驚いたことに昨夜の出来事を何一つ答えることが出来ない。思い出せないのだ。敵の手で(脳の手術などによって)記憶を消されたのかも知れないが、もちろんその記憶もない。(困ったことになったな)と思っているところで目が醒めた。
【解説】 夢の中で部分的に記憶喪失になったような不思議な気分を味わった。それにしても、一昨日に引き続いて今夜も「スパイ」の夢とは面妖である。今夜の夢に登場した男の顔は、自民党幹事長の細田博之氏によく似ていた。



24日●音楽を間違えてずっこける
しんと静まり返った部屋。私はこれから何か重大なことを発表するらしい。数人から10人ほどの男たちが椅子に座り、私の発表を待っているようだ。私は用意してきた音声を流そうとして、オーディオ装置のスイッチをオンにした。するとなぜか予定とは全然関係のない『タブー』が流れだしたではないか。それまで真剣そのものだった場の雰囲気が一気に崩れ、男たちはずっこけて全員椅子から滑り落ちた。その瞬間、私も目が醒めてしまった。
【解説】 何やら全く意味のわからない、しかし笑える夢だった。ちなみに『タブー』とは、日本では加藤茶の「ちょっとだけよ」で有名な(クリック→)この曲(←クリック)のことです(笑)。



25日●……
今日は何やらダラダラと続く長い夢を見たのだが、起きがけにいきなりクシャミを連発し、その拍子に夢の内容をすべて忘れてしまった。残念。



26日●冷淡な白人女性とのモノレールでの会話
気がつくと今は夕方で、私はモノレールに乗っていた。車内は仕事帰りの人々で一杯だ。ここは見知らぬ外国で、人々は英語を話している。イメージとしては米国に近いが、米国ではない。本当に「見知らぬ国」なのだ。私は仕事のためにここへ来て、今日の昼間に仕事を済ませたらしい。明日はもう日本へ帰る予定なのだと思う。モノレールに乗った理由はわからない。今夜泊まるホテルがどこにあるのか、実はそれすらもわかっていないのだ。しかし私は(ま、どうにかなるだろう)と思い、例によって好奇心の赴くままに街へ繰り出したのだ。高いところを走っているモノレールから街を見下ろすと、夜景がとてつもなく美しい。眼下に遊園地らしきものが見えたとき、私は懐かしいような気分になって今すぐ観覧車やジェットコースターに飛び乗りたい衝動に突き動かされたのだが、その気持ちをグッと堪えた。私のすぐ横には、30代と思しき白人女性が立っている。彼女の顔をまじまじと見なかったので、どんな顔立ちなのかはわからないが、彼女の話し方には特徴がある。冷淡というか、そっけないのだ。彼女は私の仕事先の社員と思われる。いかにもエリートらしいエグゼクティブ臭が漂う、どこか冷たい雰囲気の女性だ。彼女は私に「どこのホテルにお泊りになるのですか」と(英語で)尋ねてきた。私が笑いながら「さあ、どこだったでしょう。メモを見ればわかるんですけど」と本当のことを答えると、彼女は呆れたように「道に迷っても、うちには泊めてあげませんからね」と即答した。私は心の中で(貴女の家に泊まろうなんて最初から考えていませんよ)と思いながら、ふと彼女の私生活に興味を覚えたので、「ご家族はいらっしゃるのですか」と聞いてみた。すると今度も彼女はそっけなく、「ええ、夫がいますが、それが何か?」と答えた。おそらく旦那さんもエリートなのだろう。子どもがいない、シンと静まり返った立派な邸宅が想像できて、瞬間、私は冷蔵庫の底にいるような冷たさをこの女性から感じた。そのあとも私たちは少しだけ会話を交わしたが、何を話す場合も彼女は常に身構え、距離を置くことを忘れなかった。そのあと目覚まし時計が鳴り、夢はいきなり強制終了されてしまった。
【解説】 今夜の夢の中で、私は白人女性と(体感時間にして)15〜20分ほどモノレールに乗っていたはずだが、不思議なことに一度も彼女の顔を見ることがなかった。そのため、彼女のそっけなく冷淡な声だけが耳奥に残っている。ところで私は「見知らぬ外国に行き、モノレールから街を見下ろす夢」を以前も何度か見たことがある。最近では1月9日の夢がまさにそうだった。この手の夢には、なぜか一種独特のノスタルジックな雰囲気がつきまとう。今回の夢でも遊園地が見えてきたとき、何という言えない懐かしさが感じられた。夢占い的には「モノレール」の意味は何なのだろう? 手持ちの『夢の事典』(日本文芸社)には「モノレール」の項目はなかった。

【後日談】 この夢を見たわずか1〜2時間後、大学時代の知人から突然電話がかかって来た。彼女とは年賀状以外の付き合いは全くなく、したがって彼女からの電話は意外中の意外だったのだが、驚いたことに、彼女の話し声は何故か夢に登場した白人女性とそっくりだった。日本語と英語、言語が違っているにもかかわらず、独特のトーンや単調な感じが酷似しているのだ。と言うより、同一人物の話し方としか思えないほどの“激似ぶり”であった(※そう言えばこの人は大学時代からひどくそっけない話し方をする人だった)。単なる偶然の一致にしても、驚くべき一致と言えよう。


27日●ドラム缶の底の穴
前後関係はわからないが、ハッと気がつくと私は大きなドラム缶の中を覗きこんでいた。缶の底には直径20センチ程度の穴が空いていて、そこからかすかに風が吹き上がっていたように思う。さらに前のめりになって中を覗き込むと、穴からいきなり鋭く尖った細長い武器のような物が40〜50本、一斉に飛び出してきた。私はうまくそれらを避(よ)けることが出来たので怪我はなかったが、これは非常に危険な仕掛けである。(金属類は危険だ。気をつけよう)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 とても唐突な感じの夢だった。何故このような夢を見たのか、思い当たる節と言えば、つい最近、東大で鉱物学を教えていらっしゃった先生に逢い、とある金属のことで質問をしたぐらいか。しかしそれが何故「危険」につながるのかは皆目わからない。



28日●アルミの板
初老の男性が、アルミ製(あるいは鉄製?)の大きな板を数枚重ねて持っている。どの板も縦2メートル×横1メートルほどあって、1人で何枚も運ぶのはかなり厳しそうだ。私は心の中で、(この男性はアルミの板を足の上に落して足を怪我するのではないか)と思う。そのことを口に出して注意しようかと思うのだが、言葉を発する前に私はふと冷静になって、(今夜もまた危険な金属な夢か。これはいよいよ変だ)と思った。そこで急に目が醒めてしまった。
【解説】 昨夜に引き続き“危険な金属”の夢である。ますます意味がわからないが、とりあえず金属製の缶や板には気をつけることにしよう。





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