2009年6月


1日●奇妙な編み物
私は編み物をしようとしている。手にしているのは、棒針編み用の編み棒がなぜか1本だけ(注/棒針編みの場合、普通は2本の棒を両手に持って編む)。毛糸は可愛らしいピンク色だ。(どこでこんな糸を買ったっけ?)と怪訝に思う。私は棒針を鍵針のように使いながら、大きな「輪」のようなものを作っている。と言っても、作っているのは輪の輪郭部分だけなのだが。直径2メートルほどの巨大な輪が完成しかかったとき、私はふと、(こんなモノを作って一体どうする気だろう?)と自問した。それきりスーッと冷静になって、私は編み物をやめた。
【解説】 何やら意味不明な夢だった。私は編み物が好きだが、今夜の夢でやっていたことは編み物の技術的には初歩中の初歩。面白くも何ともなかった。ただ、ピンクの毛糸が妙に印象的だったので『夢の事典』(日本文芸社)で調べたところ、「ピンク色」の意味は「幸せでありながら不安を感じている心理状態」。「毛糸」「編み物」の項目は載っていなかったので、(仕方なく)代わりに「糸」の意味を見ると、「人間と人間のつながり/絆/自分自身の異なる2つの側面(理性と感情・意識と無意識など)を統合すること」となっていた。



2日●リスも入る大浴場のある老舗旅館にて
私はどこか旅先(日本国内)にいる。目の前に大きな日本旅館があって、私は吸い寄せられるように入り口の暖簾をくぐっていた。玄関あたりだけで優に畳100枚分はあるだろうか。全体ではどれほど大きいのか、想像もつかないほど巨大な旅館だ。ずっしりとした柱や梁は黒光りして、いかにも老舗の風格がある。玄関の突き当たり正面にある廊下の先が、なぜか昇り坂になっていて、最後のほうは常人では登れないほどの急勾配である。まるで忍者屋敷のようだ。私は何度かその坂を登ろうと試みるのだが、そのたびにスルスルと滑り落ちてしまう。廊下の隅に昭和の遺物のような黒い電話が置いてあったので、私は旅館の人には無断で電話を使わせてもらうことにした。私はここの泊まり客ではないので、この電話を使うことは明らかに違法だが、私がかけたい電話はこの黒電話からしかかけられない。背に腹は代えられないと思い、私は人差し指でダイヤルを回した。どんなナンバーにかけたのか、会話の内容も何も覚えていないのだが、電話の相手は今は亡き父だったような気がする。ごく短い会話ではあったが、私は非常に満足して受話器を置き、折角なのでこの旅館ご自慢の大浴場に入ることにした。例の急勾配をどうにか登りきり、その先を右折して木の引き戸をガラガラと音を立てて開くと、驚いたことに向こうからやって来たのは、石鹸や手ぬぐいを抱えたリスではないか。リスは身長50センチぐらいで、浴衣を着て、人間のように二足歩行をしている。風呂上りらしく頬がポッと赤らんでいる。呆気にとられていると、リスのあとからも浴衣を着た動物が2〜3匹やって来た。身長50センチほどの、目のパッチリした小動物だったと思う(おそらくウサギとビーバー)。みんな風呂上がりらしい。私は次第にこの旅館の雰囲気に慣れてきて、動物たちに混ざって大浴場のほうへ向かいはじめた。
【解説】 まるでお伽噺の世界に紛れ込んでしまったような、ファンタジックな夢だった。しかし残念なことに、このあと大浴場に入った記憶がない。どうせなら、動物たちと一緒に入浴するところまで夢を見たかったのだが。亡き父と電話で何を話したのか全く覚えていないが、とても充実した幸福な会話だった気がする。



3日●……
【解説】 今夜も夢を見たのだが、起床してすぐに内容をメモしなかったため、いざ日記に付けようと思った時には忘れてしまっていた。おそらく、あまり印象的な内容の夢ではなかったのだろう。



4日●犬のキス、猫のキス
「犬のキスは人間と同じ。しかし猫のキスは違う」というメッセージが、どこからか聞こえてきた。闇の中に交互に浮かび上がる、ビーグル犬と三毛猫の顔。
【解説】 何やらサッパリ意味のわからない、暗号のような夢だった。ちなみに私は犬しか飼っていないので、猫のキスについては何一つ知らない。



5日●息子の修学旅行とグルグル回る遊具
最初に、長さ1メートルほどの白い棒が10本ほど見えた。棒の両方の端には直径15センチほどの輪が付いている。何のための棒なのか皆目見当もつかない。その後、私は日本国内のどこかにある見知らぬ場所に行った。現在、息子たちが修学旅行でここを訪れているようだ。今は夜で、海岸では息子とクラスメートたちがキャンプファイヤをしている(注/厳密に言うと「火」を見た記憶はないのだが、雰囲気としては、あれはどう見てもキャンプファイヤであった)。息子は男友達らと一緒にアメリカンインディアンが付ける羽飾りのようなものを頭に付け、輪になってポカホンタスのように踊っている。何かの儀式だろうか。厳(おごそ)かな上にも、幻想的でノスタルジックな雰囲気。彼らの中心にあるのは、公園の遊具だ。傘の骨のような形の鉄骨に吊り革がたくさん付いた、「ぶら下がってグルグル回る」あの遊具だ。吊り革の部分には、例の両端が輪になった白い棒がたくさん取り付けられている。息子たちはこの遊具で遊ぶことを最初から見越し、わざわざ白い棒を用意して行ったらしい。実に準備の良い人たちだと思い、私は感心している。
【解説】 何とも不思議な雰囲気の夢だった。この夢を見たのが6月5日から6日にかけての夜で、6日は息子の卒業式である(インターナショナルスクールのハイスクール課程を卒業)。今夜の夢には「息子の旅立ちの儀式」の意味が含まれているのかも知れないが、なぜ「グルグル回る遊具」や「アメリカンインディアンの羽飾り」なのか、理由はわからない。



6日●宇は宇津井健の宇
最初に何かとてつもなく面白いストーリーがあったのだが、残念なことにその部分は完全に忘れてしまった。気がつくと私は誰かから「漢字でどう書くんですか」と聞かれていた。それに対する答えは「宇」だ。私は即座に「宇津井健さんの『宇』ですよ」と答えていた。しかし相手は平成生まれの若者らしく、「宇津井健って誰ですか」と聞き返されてしまった。私は心のなかで(宇津井健がわからない人に対して、どうしたら『宇』の字を説明できるのだろう)と悩んでいる。そのあと場面が変わり、また最初のとてつもなく面白いストーリーに戻ったように思うのだが、その部分もやはり思い出せない。
【解説】 「宇」という漢字を説明したいのなら、素直に「宇宙の『宇』ですよ」と答えれば良いものを、わざわざ宇津井健さんの名前を出してくるとは(笑)。どうにもおかしな夢である。本当は、夢の最初と最後を飾ったストーリーこそが今夜のテーマだったように思うのだが(そしてそれは実に楽しく奇想天外な内容だったのだが)、本当に残念なことにすべて忘れてしまった。それだけ「宇津井健」という名前のインパクトが強烈だったのだろう。ちなみに宇津健さんはこんな方です。念のため。



7日●ブキミな小路
気がつくと今は夜で、私はひとり自宅近くの小路を歩いていた。道の左手は(塀を隔てて)古い寺、右手は(やはり塀を隔てて)墓地。道の幅は1メートルほどしかないのだが、その半分ほどの幅に緑色のビニールが敷き詰められている。この下には一体何があるのだろう。ビニールの上を踏んで良いのかどうか躊躇しながら歩いていると、ビニールの下に小さな2つの「モノ」が存在しているのが感じられた。それらは「穴」のようでもあり、「目」のようでもある。猫のような顔の少女の瞳かも知れない。「モノ」のひとつは目玉おやじかも知れない。少しブキミで妖怪でも出そうな気配。
【解説】 今夜の夢に登場した風景は、実際に自宅近くにある場所だ。お墓とお寺に挟まれた少しブキミな道である。その印象どおり、静かでブキミな夢だった。

【後日談】 この夢を見た翌々日、くだんの道を通りかかると、驚いたことに、道路の幅の半分だけが長さ50メートルほどにわたって緑色の薄いビニールで覆い尽くされているではないか。夢と起こったこととまるで同じなのである。一体なぜビニールを敷いたのかは謎。【追記】 さらにその数日後、同じ道を通ったところ、道の片側の長い壁を塗り直す作業が行なわれていた。なるほど、道に敷かれたビニールは、ペンキで辺りを汚さないようにするための工夫だったようだ。


8日●出来たてほやほやの核兵器
世界のどこかにある危ない国(詳細不明)が、たった今、核兵器の製造を完了したようだ。まずいことになったと思う。この国は脅しではなく、本気で兵器を使う気なのだ。しかも、この数日中にである。出来たてほやほやの核兵器が目の前に見える。私は困惑しながら、さてどうしたものかと気を揉んでいる。
【解説】 北朝鮮が最近核実験をしたことが、おそらく今夜の夢に繋がっているのだろう。しかし夢のなかで核実験をしていた国は北朝鮮ではなかったようだ。まったく、危険な国が多過ぎる。



9日●誤って薬を過剰摂取する
私はヒマラヤのどこかにいる。最初はダージリンのような気がしたのだが、どうやらそうではないらしい。現在の標高は約3,500メートルで、私にとっては“楽勝”の高度だ。そこへインド人のスタッフが数人やって来て、「これからもう少し高い場所へ移動します」とヒンディー語と英語の混ざった言葉で告げた。行き先は7,000メートル近い高山らしい。それだけ高いところへ行くとなれば、きちんと予防しておかないと高山病を発症する。私は高山病予防に効き目のある薬品(錠剤)を飲み込んだ。2粒目を飲み込みかけてから、(しまった! これはバファリンじゃないから、1粒しか飲んではいけないんだ)と気づく。しかし気づいたときには時既に遅く、2錠目は喉の奥に消えていた。私は副作用が心配になっている。そこへ薬学に極めて詳しい人がやって来て、「2錠飲んだぐらいでは深刻な事態は起こらないから心配しなくて良いですよ」と言ってくれた。それを聞いて私はようやく安心して、7,000メートル級の山への移動を開始した。
【解説】 文字にすると長い夢のようだが、実際には一瞬の夢だった。今年はヒマラヤに行く予定は(今のところ)ない。高山病のことを夢のなかで心配するのは、いささか唐突な感じがする。



10日●「超速の鬼」を思わせる珍しい苗字
とても珍しい苗字の人と逢った。漢字で書くと2文字で、1文字目は「鬼」。2文字目は「足」という字を上下に2つ重ねた非常に珍しい文字だ。2文字目の読み方は(最初に教わったはずなのだが)夢の途中で忘れてしまった。
【解説】 「鬼」という象形文字の成り立ちは、2本足で走る人間の体に1本の角が生えたイメージである。今夜の夢の場合は2本も余計に足が生えているのだから、よほど俊足な鬼に違いあるまい。ところで、『夢の事典』(日本文芸社)で「鬼」の意味を調べたところ、「赤鬼」は「要注意。何事も一人相撲になる」、「青鬼」は「トラブルが円満解決する兆し」だという。夢占い的には、赤鬼=悪い鬼、青鬼=良い鬼ということのようだ。今夜の夢のように鬼自体は登場せず、鬼という漢字だけが登場したような場合には、どう解釈すべきなのか。うーん、悩む。



11日●くまさん
小さなお店に行った。小学生のときによく行った文房具店の「ハラダ」に似た感じの店舗だ。私は店の奥へ行き、オーナーらしき女性と話している。「くまさん」という名前が何故か唐突に頭に浮かんだ。それとは別に、「くまさん」と似たような女性の名前(「くみさん」或いは「くめさん」?)も脳裏にちらついている。
【解説】 何やら意味のわからない、突拍子のない夢のように聞こえるかも知れないが、実はこの夢は現在執筆中の小説に関係している。詳しいことは、いずれわかっていただけると思う。



12日●布製バッグの把手を切る
小学生が持つレッスンバッグのようなデザインの布製のバッグが見える。2つある把手のうちの1本を、なぜか根元からハサミでざくりと切ってしまった(ただし、切った場面は夢に出てこなかったのだが)。なぜ把手を切ったのか、理由は自分にもわからない。私は把手を切ってしまってことを後悔している。
【解説】 何のことやら自分でもわからない夢。現実世界の私には後悔していることは1つもないし、バッグやハサミに関連したイヤな出来事もないのだが……。ちなみに『夢の事典』(日本文芸社)によれば、「バッグ」の意味は「自分自身の性格・能力・ステータス」とあり、「バッグをなくす夢」は「自分自身の存在価値や生きる意味を見失い、この先どうやって生きていけばいいのかを悩んでいる状況」。「ハサミの夢」は「恋愛関係や他人との心の糸を切ること」を意味しているそうだが、どちらも私には全く当てはまらない。というわけで、全体にサッパリ意味のわからない夢だった。



13日●灼熱地獄に死体の山
四方をガラス窓で囲まれた大きな浴室。室内は恐ろしく高温だ。灼熱地獄という言葉がピッタリである。カラカラに干上がった大きな浴槽のなかに、老若男女の死体が4〜5体、折り重なっていた。私は携帯を取り出して子どもたちに電話をした。しかし目の前にある惨劇については少しも触れず、なぜか世間話だけにとどめて電話を切ってしまう。浴室内はさらに温度が上昇し、死体の数も鰻上りに増えてきた。どの死体の顔にも、断末魔の凄まじい苦しみが刻まれている。私はそれを不気味だと思う。ガラスを割って外に出ようと試みたが、防犯ガラスなのかビクともしない。この時になって私はようやく、(そうだ、携帯で救助を呼べばいいんだ)と気づくのだが、しかし何故かそのことを実行に移そうとはしないのだった。
【解説】 何やら薄気味の悪い夢だった。拙著『死との対話』を読んでくださった方はおわかりのように、私は「異常な死に方をした人の死体」をかなり見慣れている。そのためか、今夜の夢で死体の山を目にしても、(不気味だな)とは思ったものの、それ以上の感情は持たなかった。ちなみにこの夢を見たのは四国の旅館だったのだが、夜中にタイマーが切れてしまったのか、いつの間にかクーラーがOFFになっており、夜明けに気づいたとき部屋はベラボーに暑かった。しかし暑かったからと言って、いちいちこんな夢を見るのはたまったものではない(苦笑)。



14日●失礼な仲居さんに怒る
私は旅館に泊まっているようだ。階段を1〜2段登りかけたところで仲居さんが話しかけてきた。どうやら何かの料金を払えと言っているらしい。どことなく人を馬鹿にしたような態度だ。私がお金を差し出すと、仲居さんは階段の手すりの間から手を突きだして、すこぶるぞんざいなやり方でお金を掴み取った。私はムッとして、「客を大切にしなさい!」と激怒している
【解説】 この夢も四国の旅館で見た。そう言えばこの宿の仲居さんは風邪気味らしく、食事の支度をしながら咳をする。それも、口元に手を当てずに咳をするのだ。社員教育の悪い旅館だと憤慨しながら寝たために、こんな夢を見たのだろう。



15日●モンゴル人のお婆さんとツーショット
見知らぬ外国人のお婆さんと並んでいる。お婆さんはモンゴル人のようだ(注/チベット人でもブータン人でもなくモンゴル人のような気がする)。私たちが並んでいる姿を、ふたりのカメラマンが同時に写真に収めようとシャッターを切っている。私は、どうしたらいちばん美しく撮ってもらえるかを研究している。その結果、お婆さんと見つめ合っている姿がいちばん美しいことに気づいた。そんな簡単なことがわかるまでに暫く時間がかかってしまったことについて、私は反省しながら驚いている。
【解説】 またしても、意味がわかったようなわからないような夢だった。特に不思議だったのは、カメラマンがふたり登場したことである。なぜ「ひとり」でなく、「ふたり」だったのか。ここが夢の重要ポイントだと思うのだが、考えても答えはわからない。



16日●異国の地で道に迷う
どことなく怪しげな感じのする外国の街。東南アジアだと思うが、どこの国なのか見当もつかない。私はパーティーに招かれているようだ。招待状には会場の住所が書かれている。道で拾ったタクシーの運転手に招待状を見せたところ、「なんだか聞いたこともない住所ですね」という日本語が返ってきた。どうやらこの男は“ワケあり”で、日本からこの国に流れて来て密かにタクシー運転手として生きているらしい。年齢は30ぐらい。悪人ではないようだが、運が悪そうというか、ヘマそうな顔をしている。少し行った先で運転手が「ここです」と言うので、私は車を降り、運転手には「ここで待つように」と指示した。このときになって初めて気づいたのだが、どうやら私には連れがいるようだ。連れの顔はよく見えないが、寡黙であまり役に立たない日本人男性のようなイメージ。暫くその辺を歩き回ったが、パーティー会場は見つからなかった。その間にちょっとしたハプニングがあったように思うが、具体的なことは覚えていない。やがて、道がなだらかな下り坂になってきた。道の左側は落差10〜15メートルほどの崖で、その落差を利用してマンションが建っている。遥か彼方には海が見えていたような気もする。待たせておいたはずのタクシーも見当たらず、途方に暮れていると、そこへ私と同年代ぐらいの美しい日本女性が現われて、「この階段を降りた下に、お探しのタクシーが泊まっていますよ」と教えてくれた。崖の下をそっと覗くと、確かに例のタクシーが停まっているではないか。下に降りたいのだが、階段は地面に対して垂直に設置されている。これを降りるにはかなりの恐怖を伴なう。私は(背に腹は代えられない)と思い、その恐ろしい階段を下った。タクシーに近づいてみると運転手は中で寝ていた。どうやら誰かに睡眠薬を飲まされたらしい。運転手はしきりに「ゴメンナサイ」と謝っている。しかし彼に悪意はないのだし、それにもともとヘマな男を雇った私が悪いのだから、彼を叱っても意味がない。ようやく行き先がわかった私は、今度は自信を持ってパーティー会場に辿り着けると思った。気持ちを仕切り直し、タクシーに乗ろうとしているところで目が覚めた。
【解説】 今夜の夢に登場したそれぞれの「パーツ」は、現実世界で起こったことの羅列だったように思う。例えば「地面に対して垂直に伸びた階段」は、2〜3日前に四国で実際に登った「地面に対してほぼ垂直に置かれた恐ろしい梯子(はしご)」の再来だろう。スリリングな夢だったので、出来ればもう少し続きを見ていたかった。



17日●殺人事件の真犯人
詳細は全く思い出せないのだが、どこかで殺人事件が起こったようだ。その経緯を、私はまるで映画を見るように眺めている。あるいはそれは間違いで、実は私も登場人物のひとりなのかも知れない。黄土色がかったベージュの土肌が見える。切り立った崖、あるいは高い壁のようだ。全体の様子が見えないので、それが何処なのか具体的なことはわからないのだが、おそらくここが殺人現場(または殺人に関係した場所)なのだと思われる。負のオーラと言うのか、得も言われぬ恐ろしさが漂っている。その後、意外なほどの呆気なさで犯人が逮捕され、事件は解決した(ただし逮捕された犯人が誰なのか私は知らない)。ほっと安堵した人々が、向こうから10人ほど歩いて来た。そのなかに、眼鏡をかけて背の高い初老の白人男がいた。初めて見る顔だが、ひと目見るなり何故か私は(真犯人はこの男だ!)と確信する。しかし、私がそのことを知ったことがバレれば、おそらく私自身も殺されてしまうだろう。かと言って、このままでは真犯人を野放しにすることになる。どうしたらいいのかと困惑しながらも、私はいつもどおり微笑みながら平静を装って行動している。
【解説】 今夜の夢にはもっと長いストーリーがあった気がする。「学校」も登場したかも知れない。しかし、残念ながら思い出せるのは殺人事件うんぬんの場面だけ。「怖い」というよりは「スリリング」な内容の夢で、できれば続きを見たかった。



18日●壁の裏側
目の前に白っぽい壁がある。壁と言っても威圧的なイメージはなく、高さ2メートル弱、幅1.5メートル程度のもので、ドラマのロケなどで使うチープな書き割りのようだ。私は何となく「壁の裏側に何があるのだろう?」と思い、裏側に回り込んでみた。すると壁はさらに裏側へ折れ曲がり、その奥もさらに折れ曲がっている。まるで角張った巻き貝のようなデザインだ。私は(しかしこの壁は、大したことはない)と思った。

【解説】 壁の裏側にあるかも知れないミステリーを探ろうとしたが、まるで大したことはなく、魅力を感じなかったという夢。まあ現実世界でも、本当に面白い「裏」を持つ人やモノなんて、滅多にお目にかかれるものではない。



19日●土管に無理やり棒をねじ込もうとする
気がつくと目の前に土管のようなものがあった。土管は土の中に直角に埋められている。それは土管ではなく、実は井戸なのかも知れない(ただし水は見えないが)。すぐそばに棒が置いてあり、それを見た途端、私は不意に棒を土管の中にねじ込んでみたくなった。しかし棒の長さは土管の直径よりも長いので、横にしたままではどうしても土管に入らない。それでもねじ込んでやろうと何度か無理やりトライした末、私はようやく棒を縦にすることを思いついた。すると(当然のことながら)棒は簡単に土管に入った。私は(棒を縦にするという簡単なことを、何故なかなか思いつかなかったのだろう)と呆れている。
【解説】 コロンブスの卵のような夢だった。現実世界でも、あたりまえのことに気づかないことは多い。気をつけたいものだ。



20日●新製品のブロックを推薦する
最初に何か長いストーリーがあって(その部分は忘却)、ふと気がつくと私は知育玩具のブロックで遊んでいた。「遊ぶ」と言うより「ブロックを研究している」と言ったほうが正しいかも知れない。そのブロックは上から見ると正方形で、厚みがほとんど無いというか非常に平べったい。色は半分透明な乳白色で、どことなく宇宙的なイメージがある。私はそのブロックが優れている理由について、ブログ(?)で推薦したようだ。その翌朝メールをチェックしてみると、数十通の新着メールが届いていた。メールの中身は「私も使ってみました」「ブロックにハマりました」「同じシリーズのさらに難しいバージョンを購入して孫と楽しんでいます」などというもの。そのうちの「孫と楽しんでいます」と書いて来た女性の顔が目の前に浮かんだ。特徴のない顔立ちのひっつめ髪のお婆さんだが、何故かその顔に見覚えがある。(誰だろう)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 そう言えば現実世界でも最近、新製品のブロックについて意見を聞かれるということがあった。そのことが夢に現われたようだ。ひっつめ髪のお婆さんについては、心当たりがない。



21日●金髪女性を病室に見舞う
病室へ誰かのお見舞いに行った。部屋に入ると、すぐ目の前のベッドには赤っぽい花柄のパジャマを着た綺麗な白人女性がおり、上半身だけ起こして優しく微笑んでいた。年齢的には50代の終わりか60代のはじめといった雰囲気なのだが、金髪のロングヘアが腰のあたりまで垂れていて、ゴージャスというか、とても若々しい感じがする。そのあと夢は全く別の場面へと変わってしまったのだが、そのあとのことはなぜか思い出せない。
【解説】 昨夜の「ひっつめ髪のおばあさん」から打って変わって、「金髪ロングヘアの、もう決して若くはないが綺麗な女性」の登場である。お見舞いに行ったからには、相手の女性は病気か怪我をしているはずなのだが、そういう様子はなく、むしろ元気そうだった。誰かにとてもよく似ていたのだが、それが誰なのかは思い出せない。
【後日談】 この夢の5日後の26日(アメリカ時間の25日)、往年のセクシー女優ファラ・フォーセット・メジャーズが亡くなったとニュースで聞いた。そのニュースを聞いた瞬間に、(そう言えば夢でお見舞いに行った女性はファラ・フォーセット・メジャーズだったかも知れない!)と俄かに得心した。夢を見た直後は(誰かに似ている)と思い、それが誰だったかどうしても思い出せなかったのだが……。ちなみに私は彼女の『チャーリーズ・エンジェル』は観ていないし、彼女のファンというわけではなかったが、私の大学時代に一世を風靡した女優さんであることぐらいは当然知っている。ご冥福をお祈りする。



22日●コロシアムにて
気がつくと古代ローマのコロシウム(円形闘技場)のような場所にいた。何百という椅子が並んでいるのだが、オレンジ色の椅子が並んだエリアと緑色の椅子が並んだエリアに分かれていて、その対比が目を引く。(オレンジと緑とは、ずいぶん派手は対比だな)と思いながら、私は会場の左側のほうからステージに近づこうとしている。
【解説】 このあと夢はどのように進展したのか、どうしても思い出せない。静かな、というか音のない夢だった。

【後日談】 この夢を見た1週間後の27日、真言宗のお坊さんたちとご一緒に秩父の霊場巡りをした。その途中でミューズ公園というところへ立ち寄ったのだが、その公園というのがローマを模した奇妙な建物の多い公園で、パルテノン神殿を簡略化したようなモニュメントや神像らしきものが建ち並んでいるのだ。しかも一番奥まったところにはコロシアムを摸した建物があり、なんと客席はオレンジ色の椅子のエリアと緑色の椅子のエリアに見事に塗り分けられているではないか。ひと目見るなり、「あっ、この場所をつい最近、夢に見ましたよ!」と思わず口に出し、同行者を「また正夢ですねっ!」と驚かせてしまった。なお、秩父にこんな場所があることを私が事前に知らなかったことは、言うまでもない。


23日●思いきって飛ぶ
具体的なストーリーをどうしても思い出せないのだが、私は何かの突端のような場所にいて、そこから先へ思いきって飛ぼうとしている。女神さまのように神々しく美しい女性の顔が見える。それはまさに母性の塊のような顔だ。その顔を見ているだけで私は安心し、思いきり飛ぶことに何の抵抗も感じなくなった。その後、自分が飛んだのか飛ばなかったのか、飛んだとして次に何が起こったのかといったことは、なぜか少しも覚えていない。
【解説】 この前後に何かとても楽しい夢をセットで見たような気がするのだが、その内容は覚えていない。女神さまのような女性は、一昨日の夢に登場した金髪の白人女性とどこか似ていたような気もする。



24日●Tさんに連続して食事を奢ってもらう
夢の最初のほうがどんなストーリーだったかは思い出せないが、ともかく私は四六時中何か美味しいものを食べていたようだ。すべて外食で、あたりは見たことのない風景ばかりである。おそらく旅先なのだと思う。ハッキリ覚えていることは、この直前の食事を奢ってくれたのが友人のTさんだということである。そして今また私は新たな食事をしている。Tさんも一緒だ。直前の食事が和食で、今回がイタリアンのような気がする。私は(さっき奢ってもらったから、今回は私が支払いをしよう)と思い、財布からカードを取り出した。するとTさんは冷静な口調で(しかし少し微笑みながら)、「どうしてもカードで払いたいんですか。どうしてもそのカードを使いたいんですか」と畳みかけるように言った。私は素直に「いいえ、別にどうしても払いたいってわけじゃありません」と答えた。するとTさんは自分のカードを出し、「いいですよ、別に。私が払っておきますよ」と言ってサッサと支払いを済ませてしまった。私は「すみません。ご馳走さま」と言って財布をしまった。
【解説】 Tさんは現実世界でもよく奢ってくれる友達。Tさん、いつも御馳走様です!(笑)



25日●ゴージャスな旅行
詳しいことは思い出せないのだが、私は旅をしているらしい。具体的な地名はわからないが、行く先々でゴージャスな体験をしている。宮殿、高い天井、シャンデリア、背の高い護衛の人々、とても美味しい食事、銀の食器。ふわふわとくすぐったく快適な気分。(夢ならこのまま暫く醒めないで欲しい)と思ったが、残念ながら間もなく目が醒めてしまった。
【解説】 内容を書き出してみると無味乾燥に聞こえるが、実際に夢を見ているときはとてつもなく楽しく、ワクワクドキドキしていたような記憶がある。ひと言でいえば、今夜の夢は「特に事件があったわけではないが、精神衛生上とても良い夢」だったようだ。



26日●屈折し大爆発する空
いきなり目の前に知らない街の風景が広がった。私は車で高速道路を走っているらしい。いや、正しくは、誰かが運転する車の助手席にいるのかも知れないが。目の前の街には特徴がある。極端に高い建物がなく、周囲を高い山で囲まれていないという特徴だ。つまり全体にフラットな印象である。突然、この街の上空で空が音もなく屈折し、あっと言う間に大爆発した。それはこの世の終わり、あるいは宇宙の始まりに起こったというビッグバンを髣髴させる光景だ。その間、わずか1〜2秒。音はなく、完全なる沈黙があたりを支配している。私は平常心のまま、(なるほど、これがそうか)と思っている。
【解説】 今夜の夢は、目の前で大事件が起こっているにもかかわらず私は平気でそれを見ているというシュールなものだった。ちなみにこの街は、西日本にある某地方都市(私が最近訪れた街)とよく似ていた。



27日●お茶の水博士に逢う
『鉄腕アトム』に登場する「お茶の水博士」によく似た感じの、鼻の大きな白衣のおじいさんに逢った。おそらく科学者であろう。とても優しそうな人だった。しかし何のために逢い、どんな話をしたのか、具体的なことは全く覚えていない。
【解説】 現実世界では最近、毎週火曜日(フランス語の授業がある日)に文化学院へ通っているのだが、この学校の最寄り駅はJR御茶ノ水駅である。おそらくこの駅のイメージが今夜の夢に繋がったのだろう。



28日●……
【解説】 今夜も間違いなく夢を見たのだ。しかし朝方、パンダ(5歳の狆)がいきなり胸の上に飛び乗って来て、その衝撃で起床した瞬間にすべて忘れてしまった。何か金色の大きな物(大仏か?)が登場するきらびやかな夢だったように思うのだが。



29日●4文字の暗号
前後関係はわからないが、気がつくと私は失われた暗号を思い出そうとしていた。それは4文字の言葉または4桁の数字で、私の家族に関係がある事柄らしい。しかし暗号に関する手がかりが全く掴めないまま、夢は終わってしまったようだ。
【解説】 ときどき暗号がらみの夢を見ることがある。しかし今回のように手がかりが少なくストーリー性の希薄な夢は珍しい。どうせ暗号の夢を見るのなら、もっとミステリアスでワクワクするような夢を見たいものだ。



30日●娘とスイーツ
娘がスイーツを手に持っている。新発売の品らしい。私がいる場所からではよく見えないが、ラグビーボールのような形とした長さ7〜8センチの抹茶色の菓子が見え隠れしている。「それ、どこで買ったの?」と聞こうとしたところで目が醒めた。
【解説】 今夜の夢は、この前に何か別のストーリーがあったのだが、なぜかサッパリ思い出せない。





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