2010年2月


1日●迷路デパート
ベージュ色の壁。同色のフロア。ここはデパートなのだと思う。しかし商品は全く置かれておらず、館内には人っ子ひとりいない。迷路のように入り組んだデザインの通路。不思議なことに、私は少しも「道に迷う」気がしない。なぜなら、この迷路は私には簡単すぎるから。事実、私は少しも迷わずにデパート最上階にある「迷路出口」にたどり着くことができた。途中、見知らぬ親子(40歳ぐらいの母と5歳ぐらいの娘)を見かけた気がするのだが、彼女たちの姿形などは何も思い出せない。
【解説】 何を言いたいのか全くわからない夢だった。そもそもデパートに品物が置いてないことも奇妙なら、通路が迷路になっているのも奇妙。そんな場所にいるにもかかわらず、その状況を全く奇妙だと思っていない自分自身が一番奇妙なのだが。ちなみにベージュ色はあまり好きではない。そのせいか、夢に登場した建物には全く興味をそそられなかった。



2日●ループするスパイ映画
目の前にひとりの男(日本人)が見える。スラリとした体形、やや長めのソバージュヘア。鼻筋が通ったノーブルな顔立ち。どうやら彼はスパイのようである。ここは山奥にある空港で、彼は今から荷物検査を受けるところだ。すぐ前に並んでいた肉感的な金髪女(英語のアクセントから察するにアメリカ人)に彼がちょっかいを出した。すると女は迷惑そうな表情を顔に浮かべて彼を一撃で叩きのめし、ベルトコンベアの上でスルメのようにペチャンコにしてしまった。一旦ペチャンコになった彼は、すぐさま元に戻った。どうやら彼は不死身らしいのだ。そのあと悪い奴らが現われて格闘シーンが繰り広げられた気がするが、そのあたりはよく覚えていない。次に現われたとき、彼は地下牢にいた。部屋の隅に小さな排気管があって、地下へと繋がっているようだ。男はそこに顔を近づけて、パイプから昇ってくる臭いを嗅ぎはじめた。どうやら臭いによってこの場所がどこであるかを特定しているようだ。その直後に足枷(あしかせ)をはずした男は、難なく地上へ出ることに成功。そこも人けのない山中で、配線になった(あるいは1日に1本しか電車が来ないような)鉄道の線路や、廃坑になった炭坑跡のようなものが見える。男は排水溝に近づいて再び臭いを嗅ぎ、何かを理解したように頷くと全速力で駆けだした。そのあと再び乱闘シーンがあり、誰かが死んだ(殺された)ように思うのだが、その場面はなぜか思い出せない。気がつくと場面は最初に戻っていて、男は空港にいた。再び荷物検査の場所でアメリカ人の女にちょっかいを出し、叩きのめされる男。さらに彼が地下牢に入れられ、そこから抜け出して排水溝の匂いを嗅いでいるところで目覚まし時計が鳴り、夢は終わった。
【解説】 ひとりの不死身のスパイが女にちょっかいを出して叩きのめされ、何者かによって牢屋に入れられるもののそこから逃げ出し……という全く同じシーンが2度繰り返される、なんともおかしな夢だった。すべてがループしているような奇妙な感覚を覚えた。最初の回の最後に誰かが死んだ(殺された)ような気がするのだが、それがスパイ自身だったかどうかはわからない。私は目の前で起こっていることを安全地帯で見ているような、映画を見ているような夢だった



3日●千里眼
突然、目の前に知らない景色が広がった。これは数千キロ先のどこかに実在する、ある村の景色らしい。城壁。茶色い建物。埃っぽい道路。荷台一杯に積まれた野菜(見たことのない種類の菜っ葉だ)。アーミッシュのような黒づくめの服装の男女。サスペンダーで半ズボンを履きハンチング帽をかぶった男の子。彼らは教会に行くのかも知れない。どこかで子どもが生まれるようだ。赤ん坊の性別をまだ誰も知らないが、私にはわかる。それは双子だ。赤ん坊のひとりには「チノ(Chino)」とか「チコ(Chico)」というような音の名前が付けられるだろう。だがもうひとりは死産なので、名前が付けられることはない。
【解説】 今夜の夢には、前後にも複雑なストーリーがあったような気がするのだが、思い出せるのはこの部分だけ。私自身はどこか安全な場所(自宅?)にいて、遠くの風景を透視してきたような、千里眼になったような妙な気分の夢だった。目撃した風景が「村の現在」なのか「村の過去」なのか、そのあたりのことはよくわからない。「自分は安全な場所にいて、遠くで起こっている事件を見ている」という設定は、昨夜の夢と共通している。



4日●ピアノの調律
ピアノが置かれた部屋。誰の部屋なのかはわからないが、照明はやや暗く、家具は高級で、全体に上品で落ち着いた雰囲気を醸している。少し前から調律師がピアノを調律している。私はあと数分で出かける予定なので、そろそろ時計を気にしはじめている。この部屋にピアノがあり、調律師がピアノを調律していることは絶対に間違いのない「前提条件」なのだが、不思議なことに私はピアノを見ていないし、調律師にも会っていないし、ましてやピアノの音など一度も聞いていないのだった。
【解説】 ピアノとピアノの調律師の夢だったことは確かなのだが、ピアノも調律師も見た覚えがない。一体どういうことだろう。



5日●ここから見える景色が最高なんじゃよ
低い山の上。片側はミカン畑で、その奥に満開の桜が見える。目の前に広がる山の斜面には、東屋、ローズガーデン、噴水、井戸、えんがわ、ししおどし、盆栽などが品良く配置されている。その先の眼下には、遠く町が見えている。えんがわには、山高帽をかぶりメガネをかけたお爺さんが座っている。俳優の山崎努さんによく似ている(ご本人かも知れない)。お爺さんは缶コーヒーを飲みながら、誰に言うともなく「ここから見える景色が最高なんじゃよ」とつぶやいた。私は心の中で(庭爺はついに実写版の映画になったのか。mixiではさほど人気のないアプリなのに、誰が出資したのだろう)と思っている。
【解説】 前にも書いたように、最近mixiの「庭爺」というアプリにどっぷりハマっている。今夜の夢では山崎努さんが庭爺を演じておられた。なんとも贅沢な話である。それにしても庭爺の実写版映画って……作ってもまずハズすだろうな。



6日●天まで登る螺旋形の滑り台
最初に誰か若い女性の声で、「らせんの『ら』って、どんな漢字でしたっけ?」と言うのが聞こえた。私が空中に指で「螺」となぞりながら「虫偏に田んぼに糸ですよ」と答えると、急に目の前に螺旋状の屋根付き滑り台のようなものが広がり、私はあっと言う間に物凄いスピードでそのスロープを(座って両脚を前に突き出した体勢で)滑りはじめていた。それがおかしなことに、この滑り台は上から下ではなく、下から上に向かって滑るのである。ここでは万有引力の法則は適用されないようだ。あれよあれよと言う間に天に向かって急角度で螺旋状に昇ってゆく私のまわりには、赤と白と青の綺麗なストライプが見えている。それはまるでカタツムリの貝の部分に前衛アーティストが彩色したようなデザインだ。このデザインを宇宙エレベーターに応用できないかな、と思ったところで目が覚めた。
【解説】 昔、マスコミ関係のある人から、「水は高いところから低いところへ流れるのが常だが、キミの人生は常に低いところから高いところへ進んでいる。ほかの人たちとは真逆だ。そこがスゴイ!」と言われことがある。そういえば私の人生は常に、どんなときでも下から上へと進んできたような気がする。今日の夢では「下から上」という方向性以外に「螺旋状」というファクターが加わっていた。螺旋は、とても楽しい付加価値だと思う。そういえばインドでは法螺貝(内部が螺旋状)がラッキーアイテムである。今夜の夢は吉夢に違いない。
【後日談】 この夢を見た半日後、お茶室で逢った若い女性からいきなり「螺旋の『ら』はどんな漢字でしたっけ」と質問された。その言葉を聞いた瞬間、(あれっ。つい最近、これと同じ質問をされたような?)と思い、すぐにそれが夢の中だったことを思い出した。夢で逢った見知らぬ人に現実世界で本当に逢う、というような不思議な経験を昔はよくしたものだが、最近はそういう正夢をあまり見なくなった。今日の夢は、そういう種類の正夢の名残だろうか。



7日●大きな銀貨
最初に何かが超高速で飛んで行った。そのあと、今度は目に見える程度のスピードで、大きな銀貨が低空を飛んできた。その銀貨は私を目指してやってきたようだ。私の僕(しもべ)になるのだという。金貨ではなく銀貨なのはなぜか、という説明があったように思うのだが内容は忘れてしまった。とにかく、その説明を聞いた瞬間、今は金貨よりも銀貨のほうが私のためになることを確信した。私は心から銀貨を「美しい」と思う。
【解説】 全く意味がわからないが、そのくせ不思議な満足感のある夢だった。「銀貨」には思い当たる節がない。



8日●M子さんの上をよぎる灰色の「ノイズ」
知人のM子さんと、彼女の取り巻き数人が談笑しているのが見える。ところがときどきM子さんの上だけを灰色の「ノイズ」のようなものがザザザッとよぎってゆく。灰色の「ノイズ」がヴィジュアルとして見えるのは私だけらしい。それは普通の人には見えないし聞こえないし感知することもできない。私は半分巫女、半分裁判官のような立場でそこに存在している。私にはM子さんの命を守る人間としての義務があるだろうが、といって彼女の味方というわけではない。むしろ余計な感情を持ち込むのは好ましくないと思っている。M子さんは何者かに憎まれているようだ。そしてM子さんはその事実に気づいていない。
【解説】 何やら不気味な夢だった。M子さんは実在の人物だが、私にとって特に親しい相手ではない。しかし、こういう夢を見てしまうと、彼女の未来が少し気になる。彼女の上をよぎった灰色の「ノイズ」のようなもの。あれは「心の迷い」とか「無知蒙昧」のような種類のモノだった気がする。



9日●明るい農村
髪をきちっと七三分けにし、黒メガネをかけた見知らぬオジサンの姿が見える。背筋がビシッと伸びた人だ。今どき見かけないファッションは、どこか70年代のテクノブームを思わせる。彼は農協関係者、あるいはアナウンサー、あるいは全くの「ネタ」なのかも知れない。ラジオから「明るい農村」「テクノカット」という言葉が聞こえたような気がするが、気のせいだろうか。
【解説】 一言でいうと「オシャレな農業」と「70年代のテクノブーム」イメージの夢だった(笑)。今夜の夢にはこの前後にもストーリーがあったのだ。しかし残念なことに詳細を思い出せない。



10日●螺旋形に連続するカラフルな立方体
前後関係は全く思い出せないのだが、私はカラフルな何かを持っている。それは文房具の一種のようだが、何という名前でどんな用途に使われるのか、詳細はわからない。形状としては、幅1〜2センチ×長さ10センチ×厚み5ミリほどの薄い立方体が無数にあって、ひとつの立方体の端ともうひとつの立方体の端が小さな止め具のようなもので止めてあり、それが何十枚、何百枚も繋がっているという物だ。どことなくDNAの二重螺旋を思わせる。それぞれの立方体はプラスティックのように透明な質感で、ピンク、ブルー、イエロー、グリーン、パープルなどなどの色彩が美しい(注/青、黄色、緑……ではなく、あくまでもカタカナで書いたほうが相応しい感じなのだ)。(実に美しいけれど、これは何に使われるんだろう)と思いながら、目の前のそれを飽かず眺めている私。
【解説】 そういえば今月6日にも「螺旋形」の夢を見た。そのときは何のことかピンと来なかったが、今夜の夢を見て、それらが「DNA」と関係していることがハッキリしたように思う。「DNA」は、私にとって最も興味あるサブジェクトだ。『夜明けの晩に』のテーマのひとつは「DNA」だったし、『ブースケとパンダの兄を訪ねて三千里』にも「DNAの歌」が登場する。夢に現われたDNA二重螺旋は、溜め息が出るほど美しかった。



11日●ブースケの正体はアザラシ
気がつくと私はパソコンの前に座っており、FacebookらしきSNSのページを開いていた。見ると、アザラシがゆるキャラ化したような生き物の顔写真が載っており、「ブースケのページへようこそ」というようなタイトルが見えたではないか。「えっ!」と驚いてよくよく読んだところ、それは飼い犬のブースケのページだった。どうやらブースケの正体はアザラシで、しかも私には内証でFacebookのユーザーにまでなっていたのだ。(ブースケめ、なかなかやるな)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 なんともふざけた夢であった。ブースケが人間の男の子になる夢は過去に見たことがあるが、今度はアザラシ……。シュールというか何というか。



12日●女神と悪魔
夢の最初に、「Y子さんは隠れた神である」という事実が立証された。Y子さんは高校時代からの友達で、今もさまざまな形で私の仕事をサポートしてくれる奇特な人だ。私は常日頃から、(Y子さんはなぜこれほど私に親切にしてくれるのだろう)と不思議に思っていたのだが、その理由は、Y子さんが神だからなのだ。その事実に私は深く感動している。場面が変わり、大勢の若い女性たちが血相を変えて走っている。全員が大学1〜2年生のようだ。彼女たちはひとりの男性をめぐって争奪戦を繰り広げているらしい。男性は某国の王子で、恋人のいない彼はひとり退屈そうにベッドに寝転んでいる。彼の最初の恋人になるために、彼女たちは死に物狂いの競争を繰り広げているのだ。鬼気迫る姿だが、同時にこの上なく滑稽でもある。女性のうちのひとりが特に積極的で、白っぽい膝丈のワンピースにロングヘアという女性らしい容貌とは裏腹に、隣りを走っている女性の足に自分の足をかけて転倒させたり、後ろから追い上げてくる女性たちの体を腕や肘を使って押しとどめたり、顔を引っ掻いたり髪を掴んだり、陰険な仕打ちをやりたい放題なのだ。しかし最終的にはその女性が王子のベッドに一番乗りで飛び込み、彼女は文字通り“体を張って”妃になることに成功した。結婚式での彼女は、実に貞淑そうに微笑んでいた。一部始終を見ていた私は、(あな恐ろしや。この女は大嘘つき。悪魔の化身だ。王子の目は節穴か)と呆れている。
【解説】 今夜の夢には「神」と「悪魔」、ふたりの女性が登場した。その対比はわかりやすく、ドラマとして見ている分には面白かったのだが、しかしこの夢は私に何を告げようとしていたのだろう(特に後半のストーリー)。そこがイマイチわからない。



13日●ブースケの大脱走
最初にたくさんの犬が見えた。すべて小型犬だ。私は立っているので、彼らの背中を上から見下ろしている格好だ。そのなかにブースケがいる。不意にブースケは何を思ったか全力で走りだした。私はあわてて後を追ったが、ブースケはかなり強い意志をもって脱走しようとしているようで、全く速度を緩めずにそのまま駆けてゆく。私は心臓をバクバクさせながら走っている。このまま二度とブースケに会えなくなるのではないかという恐怖が90パーセント、うまくすれば捕獲できるかも知れないという望みが10パーセント。橋を渡り、茂みを横切り、ブースケは全く止まろうとしない。私もノンストップで駆け続けている。そうやってかれこれ5〜6キロは走っただろうか。不意にブースケが立ち止まった(水を飲もうとしたのかも知れない)。私は間髪を入れずに飛びかかり、ようやくブースケを取り戻すことができた。
【解説】 疲れる夢だった。現実には走っていないのだから肉体的に疲れるはずはないのだが、実際に数キロ走ったあとのような疲労感である。ブースケが逃げ、私が追いかける夢をときどき見る。一種の警告かも知れないので気をつけようと思う。



14日●「8」で始まる驚くべき長寿
誰かが驚くほど長生きをしているという。その年齢というのが驚きで、800歳だったか8,000歳だったか80,000歳だったか800,000歳だったか、ゼロの数がわからないのだが、とにかくあり得ない高齢なのだ(最高の位が「8」だったことは確か)。しかもこの人の若さは科学の力によるものではなく、自然に授かった命なのだという。私は(やはり「8」か!)と思っている。
【解説】 誰かがとんでもなく長生きをしている夢だったが、あれは一体誰だったのか。不思議なことに相手の顔を見た記憶がない。誰か男性だったような気がするのだが。自分がなぜ(やはり「8」か!)と思ったのかも謎。

【後日談】 この夢を見た直後に息子から、「今夜はブースケの800歳の誕生日を祝っている夢を見たぞ」と言われた。なんと奇妙なシンクロニシティー! 息子は日頃からほとんど夢を見ない(正しくは「見た夢を覚えていない」)ようだが、たまに夢を見ると、かなりの確率で私が同じ夜に見た夢とシンクロする。このことは過去のデータから明らかだ。最近ふたりの間で「長寿」とか「8という数字」が話題になったことは全くないので、今回のシンクロが何を意味するのかは全くの謎である。


15日●……
【解説】 今夜は何か「全く異なる3つのストーリー」から成る夢を見た記憶があるのだが、起床してすぐに内容をメモしておかなかったため、すっかり忘れてしまった。残念。



16日●水難の相を預言される
最初に、何か吸い込まれそうなほど美しい透明なブルーのもの(湖または鏡?)を見たような気がする。次に、「今日は水難の相が出ているから注意せよ」という意味のメッセージが届いた。占い師からのメッセージらしいのだが、占い師の姿は見えないし声が聞こえたわけでもなく、電波またはバイブレーションのようなものだったと思う。そのあとにもう一度、透明でブルーのものが見えた。私はうっとりとそれを見つめている。
【解説】 今夜の夢には、これ以外にも何か具体的なストーリーがあったと思うのだが、その部分は思い出せない。「水難の相」と言われると、個人的には2002年9月11日のパプアニューギニアでの水難事故を思い出す。しかし今は海に行く予定もないので、むしろ1日に3回も入っているバスタブのことを心配したほうがいいかも知れない(苦笑)。

【後日談】 この夢を見た直後に読者さんのribuさんから届いたメールに、「水槽破裂」「工事に失敗して上(の階)から漏水」とあった。ribuさんと私は、以前から面白いほど思考や行動がシンクロする。特に、私が夢で見たことがribuさんの現実世界で起こることが少なくない。今から数年前、まだribuさんのお顔を全く知らない頃、夢の中にribuさんが現われた。ハッキリとお顔が見えたので、そのことを本人に告げたところ、ribuさんからは「ではどれが私でしょう?」という挑戦状と、女友達と一緒に写った集合写真が送られてきた。写真に写っていたひとりが夢に現れた人であることは一目瞭然だったので、そう告げたところ、やはりそれがribuさんだった。以来そういう不思議なことが何度かあったので、今日の出来事はさほど驚くべきことでもないかも知れないが。いずれにしてもribuさん、水難お見舞い申し上げます。



17日●恐竜が家に住みつく
気がつくと、我が家に小さな恐竜が住みついていた。そいつはカンガルーと同様に後ろ脚に比べて前脚が短いので、前脚は「手」として使い、おもに後ろの2本足だけで歩いている。身長は100〜120センチぐらい。キリンのような2本角が生えている。特徴としては、人懐こく、すばしこく、頭脳は犬と同じぐらい良い。ブースケ(7歳のシーズー)のやることを何でもマネしようとする。途中で気がついたのだが、この恐竜が現われた代わりにパンダ(6歳の狆)が消えてしまった。パンダがこの恐竜に変身したのか、両者は別の存在なのか、そのあたりは不明。ちなみに、この家は見たこともないデザインの家で、屋根が特徴的な三角形だったり、階段の途中の壁に茶室の「にじり口」のような小さな入り口が付いていたり、部屋の形が台形だったり、コーナーが必ずしも90度ではなく鋭角だったり鈍角だったり、とにかく面白い家だ。最初のうち、私はこの恐竜の正体(あるいは飼い主?)を突き止めようとするのだが、途中で何か事件が起こってしまった(但し、それがどんな事件だったかは思い出せない)。小学4〜5年生ぐらいの姿になった息子(※実際には18歳)が現われて、事件を解決するために何かを追いかけて走りだした。その後ろをブースケと恐竜が追いかける。息子は階段を駆けあがり、例の小さな「にじり口」にひょいと飛び込んだ。ブースケと恐竜も次々と息子の後を追って飛び込んだ。おそらく「にじり口」の向こう側には『不思議の国のアリス』のような世界が広がっているのだと思う。私は心の中で(そう言えば、パンダはどこへ行った?)と思っている。
【解説】 ここ暫く、現実世界でのパンダの様子がおかしい。これまでは、ブースケが近づいただけで無闇に怒るというようなことはなかったのだが、最近はブースケが近づいただけで唸(うな)り、本気で噛みつくマネをするのだ。パンダはもともと孤高の犬というか、女王さま気取りでブースケを寄せ付けない傾向があった。トシを取って、その傾向がさらに強くなったのかも知れない。いずれにしても、ブースケに対する最近のパンダの態度は、ちょっとした「モンスター・ワイフ」だ(苦笑)。そのことが今夜の夢になったのかも知れない。



18日●神業フィギアスケーター空海
前後関係はよくわからないが、気がつくと目の前で男子フィギアスケートの大会が開かれていた。おそらく冬季オリンピックなのだと思う。「1000年に一度の天才スケーター」としてデビューしたばかりの空海が滑走している。驚いたことに、彼は茶色っぽい僧衣を着て、手には数珠を持ったままだ。滑り出したが早いか、ほとんど助走もないまま軽々と6〜7メートルの高さまでジャンプし、そのまま空中で体をひねって超高速でクルクルと回転しはじめた。20回転したのか30回転したのか、あるいはそれ以上回ったのか、あまりの速さに目が追いつかない。空海がジャンプした跡(軌道)には、彼の体と同じ形で七色のラメ粉が飛び散っている。これまでのフィギアの歴史がすべて吹き飛ぶような神業を前に、観客は総立ちになっている。
【解説】 昨夜はDVDで『俺たちフィギアスケーター』というコメディーを観た。その上、現在はカナダのバンクーバーで冬季五輪が開催されている。毎日のように五輪報道を目にしているから、今夜のような夢を見るのも無理からぬことであろう。それにしても空海の滑りっぷりは、尋常ではないダイナミックさだった。今夜の夢にはこの前にもストーリーがあったと思うのだが、そちらは記憶から吹き飛んでしまった。



19日●バイクで疾走するふたりのA子
田舎道をバイクが走っている。運転しているのはA子だ。私は助手席にまたがり、A子の腰に腕を回してつかまっている。何がおかしいのか、A子は笑いながらベラベラしゃべり続けている。そのたびに後ろを振り向くので運転がおざなりになる。直進すべきバイクがゆらゆら揺れて、危なかしいったらない。私はドキドキしながら「頼むから前を向いて運転して!」と何度も注意するのだが、彼女はすぐにそのことを忘れて後ろを振り返ってしまう。暫くすると、私の背後からも女性の声が聞こえてきた。振り返ってみると、私の後方にナントもうひとりのA子が乗っていたではないか。前方のA子と後方のA子が楽しそうにおしゃべりを始めた。これでは危険の二乗のようなものだと思い、私は驚き呆れている。バイクはゆらゆら揺れながら田舎道を走り続けている。
【解説】 A子は実在する若い女性。とても可愛い子だが、私の目から見て男運が良いとは言えない。老婆心ながら、ときどきA子の行く末が心配になることがある。もしかすると今夜の夢には私のそういう気持ちが含まれているのかも知れない。



20日●鳥居とタヌキ
名もなき小さなお宮。鳥居の下に黒い影のようなものが見えたので、何だろうと訝(いぶか)りながら行ってみると、それは半分「石」と化したタヌキのようなものだった。何か少し悲しいストーリーがあって、ずっと昔にここでひっそりと死んだタヌキがいたことがわかる。そのことを知った私が神妙な気分になっていると、目の前でみるみるタヌキは完全な石となり、じきに原型も留めなくなって、石の上に刻まれたただの黒い影になってしまった。
【解説】 とても短い、音のない、しかし妙に存在感のある夢だった。具体的にタヌキが何を暗示しているのかはよくわからないが、この夢は、過去に起こった「精神的な事件」と、それによって受けた「心の傷」、心の傷をひっそりと葬った過去の自分、何かのきっかけで自分でも忘れていたはずの過去を思い出す自分……といった事柄がモティーフになっているのかも知れない。ほんの少し心が切なくなる夢だった。この夢は長野市内の実家で見た。



21日●……
【解説】 今夜は昨夜にひきつづき実家に泊まり、母の隣に寝て夜中まで布団の中でよもやま話をしていた。朝までに短い夢はたくさん見たような気がするが、その詳細は思い出せない。



22日●最高の席でスポーツ観戦
気がつくと娘と息子と3人でスポーツ観戦に来ていた。娘は小学3〜4年生、息子は幼稚園児ぐらいの姿になっている(※実際の年齢はそれぞれ24歳と18歳)。目の前で繰り広げられているのは、これまで一度も見たことのないウィンタースポーツだ。それは雪の上で行なう団体戦で、イメージとしては「短いスキーを履いて200メートル走をしながら雪合戦をしている」ような楽しい競技なのである。選手たちも走りながら笑っているように見える。特筆すべきは観客席のユニークさだ。観客は小型スぺースシャトルのような形のカプセルの中に入り、前方にある窓から競技を観戦するのである。席は「First come, first served(早いもの勝ち)」らしく、誰よりも早く現場に到着した私たちは前から1列目のベンチシート(3人用)を獲得したようだ。しかし、いざ座ってみるとその席には不都合があって、実際には前から2列目のベンチシート(3人用)のほうが見やすいことが判明。私たちは笑いながらその席を立ち、そのへんをウロウロ歩き始めた。すると2列目に座っていた男性3人が立ち上がり、1列目に移動した。それを見た私たちはすぐに2列目の席に座りなおし、文字どおり「最高の席」で競技を観戦することができた。
【解説】 現実世界では、現在バンクーバー冬季五輪が開催中。夏のオリンピックはほとんど見ない私だが、冬季はつい夜更かしをして見てしまう(なにしろ長野生まれですから)。今夜はまさにオリンピックの残像のような夢だった。



23日●空海の兄が経営するカフェにて
ビルの2階にあるカフェ。全体が夢のように綺麗なピンク色で染まっている。まるで店の中で桜が満開になったかの華やぎだ。窓の向こうに見える別のビルが火事だ。人々は驚きもせず、「あ、火事だ。綺麗だね」と言いながら歓談を続けている。そのうち火災は消火されたらしい。驚いたことに、このカフェはどうやら空海の実兄が経営しているらしい。そこへ空海の兄がやって来た。とても気さくな人で、驚くほど饒舌だ。彼は私に、今までずっと疑問に思っていたこと(空海の名前の由来)を教えてくれた。私は目の前からウロコが落ちて、「なるほど!」と何度も膝を叩きながら納得している。再び窓の向こうのビル(先ほどと同じビル)で火災が起こった。今回も誰も驚かず、「綺麗ね」と言いながら歓談を続けている。火災はまるで満開の桜のように美しいピンク色だった。
【解説】 なんとも不思議な夢だった。2度の火災(しかも居合わせた人々はむしろ喜んでいる)、満開の桜のイメージ、言葉にできないほど美しいピンク色といったモティーフのなかで、なんと空海の兄の登場である。「週刊マミ自身」(第375号)にも書いたように、現在、私の頭の中は空海のことで一杯。タイムマシンで空海が生まれた西暦774年の讃岐の国へ行きたいと心から思っている。行くことができれば、当時の空海の様子を実際に見聞きすることができるからだ。そんなことを思い続けているためだろう、今夜の夢ではなんと空海の兄が「カフェのマスター」という立場で現代日本にやって来て、空海の命名の秘密について教えてくれた。まさに吉夢!



24日●イケメンに惚れられ、迷惑がる
最初に何か「水」または「噴水」に関係のある長いストーリーがあったのだが、その内容は思い出せない。次に気づいた時、私は20代の女性になっていた。一瞬だけ鏡(?)に写った自分の姿は、柴咲コウに似た大変な美人だ。しかしその美貌にもかかわらず、自分は実に謙虚で地味な性格で、人生の裏方に徹している。どうやら表舞台に立ったり賑やかにすることが苦手な女性のようだ。学校の講堂のようなイメージの大きな部屋。ステージがあり、20人ぐらいの人々(おそらく女性)が登壇していた。顔など細かいところは全く見えないが、あまり有名ではない芸能人らしい。彼女たちの世話をするためだろう、柴咲コウ似の自分もステージの上にいて、なるべく目立たないように気をつけながら彼女たちの世話をしている。会場には何百人もの聴衆がいる。いつからなのかはわからないが、ひとりのイケメン男が私の手を握って放そうとしない。彼は超有名な日本人俳優だそうで、どうやら以前から私にゾッコンのようだ。私はそれをひどく迷惑に思っている。嫌われていることは彼もわかっているようで、何とも悲しそうな表情を浮かべながら両手で私の手を握り、一緒にいたいという意味のことを何度も何度も懇願している。私はその都度、拒絶している。最後にイケメンはこの恋を諦めたようで、「君のことは死ぬまで忘れない」というような臭いセリフを涙ながらに述べた。私は相変わらず黙々と仕事をしながら、イケメンを無視しつづけている。
【解説】 自分の顔が柴咲コウになった段階で、それはもう私ではない。だから不思議なことに、今夜の夢で私は自分自身の心に全く感情移入ができなかった。ただ面白がりながら劇を見ているような心境だった。ちなみに柴咲コウさんの顔は個人的に大好きだ。イケメン俳優の顔に心当たりはない。



25日●ジュリエットは男だった!
最初に何があったのかよくわからないが、気がつくと私は中世のイタリアらしき場所にいて、目の前ではリアルの『ロミオとジュリエット』が今まさに展開しているところだった。ドタバタ走り回っている老若男女を見る限り、どうやら本作は悲劇ではなく喜劇なのかも知れない。ハムレットは(原作とは違って)、なぜか墓場で愛するジュリエットとめでたく再会することができた。しかし、その恋は実らなかった。なぜならジュリエットがひげの生えた、すね毛の濃い男だったからだ。私は一部始終を傍観しながら、(恋は儚い!)と思っている。
【解説】 先日、映画館の大スクリーンでオリビア・ハッセー主演の『ロミオとジュリエット』を観た。その、戯曲としてあまりにも完璧なプロットに改めて「シェイクスピアは血も涙もない悪魔だ。実にスバラシすぎる!」と感嘆したのだった。しかし、それにしても今夜の夢はわけがわからない。



26日●……
【解説】 昨夜は久々にお灸をして寝たところ、なぜか夢を見なかったようだ(あるいは見た夢を忘れたか?)。



27日●フィギアスケーターの目で世界を見る
私はフィギアスケーターで、ここはオリンピックの会場のようだ。既に競技が始まっており、私はいきなり氷の上で跳んで、くるくる回転しながら再び氷の上に降りた。周囲の風景がものすごいスピードで回転している。応援している人たちが振る日の丸が見える。歓声が聞こえる。さらに2つ目のジャンプを跳んだ。くるくると回る風景。たくさんの日の丸。人々の歓声。さらに3つ目のジャンプを跳んだ。くるくる回る風景。日の丸。歓声……。観客ではなく選手の目で見ると、風景ってこんなにも違うのだ。選手に見えるものは氷と観客だけで、肝心のフィギアスケートの妙技は見えない。当たり前だが、これは凄いことだ。私は何度もジャンプしてくるくる回りながら、そんなことを考えていた。
【解説】 目下、バンクーバー・オリンピックが開幕中である。フィギアスケートは何となく気になって見ているが、まさか夢の中で自分がスケーターの視点に立つことになるとは思わなかった。視点を変えると、こんなにも世界は違って見えるということだ。なお、今夜の夢には牡蠣(オイスター)が登場した記憶があるのだが、一体いつどこで牡蠣が登場したのか、詳細は全く思い出せない。



28日●砂漠にて
最初に何かとても面白い夢を見たのだが、その内容は思い出せない。次に気がついたとき、私はオンボロの長距離バスで砂漠を旅していた。一緒にいるのか家族または親しい仲間たちのようだ。私たちは何かスパイ絡みの事件に巻き込まれているようだ(それがどんな事件だったか夢の中ではハッキリ全容がわかったのだが、それも今は思い出せない)。事件だというのに、何がおかしいのか私たちは大笑いしている。砂漠特有の乾いた砂の匂い。目が痛いほど青い空。
【解説】 今夜は、非常に長い夢を見たように思う。それは全編が一種のスパイ映画のようになっていて非常に面白かったのだ。しかし目が醒めたときには、残念ながら砂漠をバスで移動していた場面しか思い出せなかった。ちなみに現実世界では来月サウジアラビアを初訪問する予定だ。そのことが夢に反映されたのだろうか。





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