2010年5月


1日●土井たかこさん
見知らぬ建物の内部。扉が開いて、部屋の中から大勢の人たちがどっと廊下に出てきた。ちょうど講義が終わったところなのだろう。誰かが何か意見を言い、私がそれに対して反対意見を述べた。するとそれに対して土井たか子さんがさらに反対意見を言った。もっとも私たちはシリアスな事柄について議論しているわけではなく、何らかの冗談または軽口を叩いているに過ぎないのだが。その証拠に、土井さんも私も楽しそうにニコニコ笑っている。具体的に何を話したのかは思い出せない。土井さんは明るい色のスーツを着て、背筋をしゃんと伸ばし、とてもお元気そうだった。
【解説】 数日前に電車の中吊りで見た週刊誌の広告に、「土井さん重体説」が書かれていた。それでこんな夢を見たのかも知れない。土井さんからは毎年お年賀状をいただいているが、今年は体調が優れないようで秘書の五島昌子さんの代筆だった。もう一度お元気な姿を見せて欲しいと切に思う。



2日●犬の鑑札を並べてボードに飾る
目の前に大きなボード(板)がある。私はその上に区役所から交付された犬の鑑札を貼り付けている。鑑札は毎年いただくものなので、手元にはブースケとパンダの2匹分の鑑札がたくさんある。それらをボードに貼りながら数えたところ、全部で30枚以上あった。私は心の中で(おや? ブースケは7歳、パンダは6歳だと思っていたが、鑑札が全部で30枚以上もあるということは、あの子たちは2匹とも15歳以上なのだろうか。知らなかった)と首をかしげている
【解説】 犬を飼っていると、毎年4月頃に狂犬病の予防接種を受け、役所から犬鑑札をいただく決まりになっている。うちにはブースケ(7歳)とパンダ(6歳)がおり、これまでに2匹合わせて合計13枚の鑑札をいただいた計算だ。しかし夢の中では実際の倍以上の数の鑑札があった。これは「ブースケとパンダには長生きをして欲しい」と願う私の気持ちの表われかも知れない。



3日●ピンクの高層ビル
夢の最初に、林立する高層ビル群が見えた。無数のビルに隠れるようにして、いちばん奥にピンクの高層ビルの頂上部分が見えている。彩度の低いくすんだピンク色だが、「おやっ?」と目を引く不思議な色だ。そのビルには何か深い意味があるという。場面が変わり、そのあと3つか4つの異なる夢を見たのだが、その部分の内容は忘れてしまった。最後に誰かが死に、私は(あのかたは御高齢だし、亡くなるのも仕方のないことだが、やはり人がいなくなるのは淋しい)と思っている。
【解説】 今夜は長い夢を見たのだが、起床してみると具体的なことはほとんど思い出せない。最後に亡くなったのが誰かもわからない。唯一印象的だったのはピンクの高層ビルだ。但し、それが何を意味するのかは全くもって不明なのだが……。



4日●不良イケメンと手をつないで歩く
最初に私は心の優しい善良な男と手をつないで歩いていたようだ。その人の顔は一度も見えなかったのだが、アクのない可愛らしい顔立ちだった気がする。ところが途中で何かが起こり、次の瞬間、私はいきなり現われた別の男と手をつないで歩いていた。その男は私好みの顔をしているが、明らかな“不良”である。私はそのことをよくわかっている上、この男と付き合うつもりなど毛頭ない。しかし今はとりあえず手をつないで楽しく歩いている。
【解説】 この夢を見る前日、私は年上の女性と話していたのだが、彼女いわく、「私はただの一度も夫と手をつないだことがありません」。この言葉には度肝を抜かれた。彼女の旦那さまは既に他界されており、また彼女は「男なんて二度とご免」と明言しているほどの重度の男嫌いなので、おそらく死ぬまで男性と手をつなぐことはないのだろう。彼女の話は、私にとってかなり衝撃的だった。今夜の意味不明な夢を見た理由は、ひとえにその女性の話を聞いたことによるものだと思う。



5日●蕎麦研究会ピロリリン♫♪
私はジープ型の四輪駆動車に乗って山の中を走っている。それとどういう関係があるのかはわからないが、このたび「ピロリリン♫♪」という名前の蕎麦研究会が発足したそうだ(あるいは「ピロロリン♫♪」かも知れない)。「蕎麦」と「ピロリリン♫♪」はひどいミスマッチだと思い、私は(ネーミングのセンスが悪いな)と思っている
【解説】 なんのことやら意味のわからない夢だった。それにしても夢の中に「♪」のみならず「♫」(連桁付き八分音符)が登場するとは。マニアックすぎて我ながら笑ってしまう。



6日●誰かにサヨナラ
誰かが亡くなった。老衰ではないようだが、それなりにお年を召した方だったので、私は淡々とその事実を受け止めている
【解説】 今夜の夢には具体的なストーリーがあったと思うのだが、目が醒めてみると「誰かの死」というファクターしか覚えていない。それにしても、今月3日の晩にも誰か高齢の方が亡くなる夢を見たが……虫の報せだろうか。



7日●増殖する赤い鳥居
前後関係はわからないが、気がつくと暗闇のなかに赤い鳥居がぼうっと浮かんでいた。それはとても幻想的な鳥居で、不思議な霊気を放つ光を放射しているうえ、超高速で回転しているらしく何重にもぼやけて見えるのだ。つまり、ひとつの鳥居を中心に3つ4つの鳥居が増殖して見えるのである。その横にもうひとつ、何かとても霊的な感じのアイテムが置かれていて、それも高速で回りながら増殖していたのだが、そちらが何だったかは思い出せない。
【解説】 たまに「鳥居」が登場する夢を見る。鳥居が登場する夢には、言葉で表現するのが難しい、一種独特の霊気がみなぎっている。何を意味しているのかはわからないが、これは一種の吉夢なのだろう。
【後日談】 この夢を見た翌日はお茶の稽古日だったのだが、そこで使われた蓋置が、なんと赤い鳥居だった。しかもそれは普通の鳥居ではなく、同じデザインの鳥居が三つ巴になった、まさに夢のなかに登場した「超高速で回転して増殖する鳥居」にそっくりなデザインなのである。これにはかなり驚いた。聞けばその蓋置は師匠(荒井宗羅先生)の手づくりであるという。この夢を見たとき、私は(これは吉夢だ)と思ったのだが、もしかしたらこれは「茶道に関する吉夢」だったのかも知れない。


8日●四角関係と水難事故
どのように始まったのかよく覚えていないのだが、目の前にアメリカ人らしき白人の男がいて、彼を中心に物語が進んでいる。彼は中肉中背あるいはそれよりもやや太めの中年男で、いかにもモテそうにない地味な顔立ちをしている。アゴが少ししゃくれていることと、やや苦虫をつぶしたような表情以外には、特に特徴もない顔立ちだ。髪は薄茶色で、少し癖毛なのか前髪だけが自然にリーゼントのように軽く巻いている。彼は安アパートで一人暮らしをしている。ときどきガールフレンドらしき女と、友達らしき男およびその妻が遊びにやって来る。登場人物は全員が地味な風貌で、どこと言って特徴がない。色っぽい場面もまったくないのだが、この4人は実は「四角関係」らしい。但し、表面的には争い事が一切なく、どのような種類の「四角関係」なのか私にはサッパリわからないのだが。暫くして、ガールフレンドが水難事故で死んだようだ。水上バイクのような乗り物を運転していて事故を起こしたらしい。男がアパートに帰ると、友達夫妻が暗い顔で待っていて(と言っても彼らはいつも暗い顔をしているのだが)、何か「秘密」を告げられた。主人公はいつもの苦虫をつぶしたような顔で淡々とその「秘密」を受け止めている
【解説】 まるでB級テレビドラマを見ているような、何のことやらサッパリわからない夢だった。登場人物の男は地味で特徴のない顔立ちだったが、なぜか私の脳裏にはハッキリと刻まれている。もしもこの男と道でバッタリ遭遇する日が来たら、私はすぐさまそれが「ガールフレンドを水難事故で亡くした四角関係の男」だとわかるだろう。



9日●変わったデザインの家にやって来るイヤな女
気がつくと私は不思議な形の建物のなかにいた。それは、長い廊下に沿って片側にウナギの寝床のような細長い部屋が等間隔を置いて並んでいるような建物で、上から見るとアルファベットの「E」の縦棒を長くし、横棒の数を5〜6本増やしたようなデザインである。それぞれの部屋は、本来ならば壁面であるべき部分がすべてガラス張りらしく、お互いの部屋が丸見えだ。最初、私はいちばん端の部屋にいた。同じ部屋には家族も揃っていた気がする(あるいは娘だけは留守だったかも知れないが)。暫くして、ひとりの女がこちらへ向かっているという情報が入った。その女を仮にA子と呼ぼう。A子は40歳ぐらいで、髪を長く垂らしている。A子は才能のない平凡な女性だが、資産家の一人娘として生まれ、受験も就職も親の世話になり、何一つ努力をせずに世の中を渡ってきた人だ。趣味は食べ歩きだという。彼女は世の中をバカにしきっており、すべては自分の意の儘になる思っているようだ。私は、そんなA子を半分嫌悪し、半分かわいそうに思っている。A子が来るという情報を受けた私は、息子を連れて別の部屋へ移動した。この部屋だけは窓がマジックミラーになっており、こちらからは外が見えるが外からこちらは見えない。じきにA子がやって来た。A子は私たちが見ていることも知らず、私の家族と何事か話している。このとき息子を見ると、なぜか5歳ぐらいの姿に戻っていた(現実の彼は18歳)。この夢の途中で、もうひとつ何か別の事件が起こり、床上浸水する部屋を見たような気がするのだが、そのあたりの詳細は思い出せない
【解説】 今夜の夢でいちばん印象に残っているのは、「E」の横棒を増やしたような変わったデザインの家だ。その家には、何かドキドキするようなエキゾティズムが漂っていた気がする。A子は実在する女性。2回ほど“つきあい”で逢っただけの相手だが、夢のとおりの人で、話していて楽しいタイプの相手ではない(苦笑)。しかしそんなことよりも、今夜の夢のいちばんのポイントは「床上浸水する部屋」だと思う。なぜならば、これまでのケースから類推すると、この手の夢を見た翌日は現実世界でもかなりの確率で水難の相に見舞われるからだ。しかも昨夜の夢でも「海難事故」が起こった。気をつけよう。



10日●……
【解説】 今夜は2つのまったく異なる夢を見たのだ。それは間違いない。明け方、少し眠りが浅くなったときに、(2つ夢を見たから日記に書かなくちゃ)と思ったことまでは覚えている。しかし肝心の夢の内容は忘れてしまった。残念。



11日●海辺のレストランで懐メロクイズ
私は見慣れぬ建物の中にいた。そこは心地の良いスペースで、何かワクワクするようなイベントが繰り広げられていたのだが、その内容はどうしても思い出せない。場所のイメージとしては、葉山あたりの海に近いオシャレなレストランのような感じである。私はお店の人(?)から1枚の紙を渡された。そこにはクイズが印刷されており、正解者には漏れなく賞品が贈られるという。第1問は山口百恵さんの歌の歌詞を当てる問題だ。きっと解けるに違いないと高をくくって問題を見ると、「プレイバックPart2」の歌詞が印刷されており、「交差点では隣りの車がミラーこすったと怒鳴っているから私もついつい大声になる」と「バカにしないでよ」のあいだに「○○」と2文字分の空欄があった。その空欄を埋めよというのだ。私はこの歌を知っている。しかし「大声になる」と「バカにしないでよ」のあいだに言葉などなかったはずだ。そう文句を言ったところ、「一般の人が知らないだけで、特殊な聴覚を持った人が聞くとそこに隠された2文字の言葉が聞き取れるのですよ」と言われてしまった。私は素直に驚いている。そのあと、もう1曲、昭和の懐メロクイズが出題されたのだが、その内容はまったく思い出せない。
【解説】 今夜の夢では、懐メロクイズに入る前に繰り広げられていたイベントのほうがダントツに面白かったのだが、残念ながらそちらの内容は思い出せない。それにしても「プレイバックPart2」って不思議なタイトルだ。「Part1」はどこかに存在するのだろうか。



12日●石垣島(?)と熱海温泉(?)への1泊2日の旅
私は旅をしている。バンかマイクロバスのような車に乗っている。どうやら家族旅行らしいのだが、少なくとも車に乗っているあいだは誰の姿も見えなかった。1泊目は「石垣島」という名の島に泊まった。しかしそこは「石垣島」と書いて「いたがきじま」だか「いちがきじま」だか忘れたが、微妙に読み方の違う別の島なのだ。車で島をめぐってみると、ヨーロッパの古都を思わせる堅牢な石の街並みが広がっていた。近くにはコロシウムもあるらしい。そのあと私たちは大きな観光船に乗り、あたりをクルーズした。船長は頭に鉢巻きを向いたいかにも漁師風の日本人の爺さんだが、船にはなぜかディズニーランド風のアトラクションが付いている。客はアトラクションの途中で水浸しになったり、その場面を写真に撮られたりするわけだ。娘と息子が写真に撮られた。ふたりとも満面に笑みを浮かべて嬉しそうだが、なぜか15年ぐらい前の幼い姿に戻っていた。石垣島で1泊したあと、私たちは一瞬帰宅したらしい。しかも全員一緒ではなく、なぜか子どもたちだけ一足先に帰宅したようである。その直後に大人が戻ったところ、泥だらけの道の真ん中に、ビニールで丁寧に梱包されたノートのようなものが置いてあり、拾ってみるとそれは娘が作った「石垣島旅行の思い出ブック」だった。ガムテープがたくさん貼ってあって、いかにも子どもっぽい作りだが、写真などもふんだんに使って実によくまとめられている。これは親へのプレゼントなのだという。私は(この子は、本当によく出来た子だ)と感心しながら娘からのプレゼントをありがたく受け取った。そのあと再び(今度は大人だけで)バンに乗り、熱海あたりの温泉へ行った(ただし現実の熱海とは明らかに景色が違うのだが)。ここも1泊または日帰りの強行軍のようである。滞在したのは「心理旅館」という変わった名前の宿で、どうやら古くからある名門旅館らしい。「心理」は「しんり」とは読まないようだが、何と読むのかは忘れてしまった。気がつくと私は大浴場にいて、母と並んで湯船に入っていた。母から「子どもの頃にこの温泉に来たの、覚えてない?」と言われ、私は(こんな温泉に来た覚えはないなあ)と疑問に思っている。風呂から出ると、よく存じ上げているお寺のお坊さんと檀家さんの御一行が、これから心理旅館へ泊まりに来ると誰かから聞かされた。しかし私はもうここから立ち去るつもりなので、お寺の御一行とはすれ違いになるだろう。
【解説】 旅をしている夢なのだが、あまりにも忙しい行程で、1泊2日あるいは2泊3日の短い時間のなかにイベントが山盛りなのには笑ってしまう。まるで現実世界における私の状況を物語っているようだ。温泉にまで入ったにもかかわらず癒された気がしない、実に忙(せわ)しない夢だった。



13日●アラビア風のパーティーで激怒する
見知らぬ建物の中。私は上品な感じのベージュの訪問着を着ている。どうやらここはどこかの国の大使館らしい。これからパーティーが始まるようで、ざっと見て100人ほどの人が廊下に並んでいる。この廊下の先にパーティー会場があるようだ。人々は彫りの深い顔立ちで、アラビアンナイト風のエキゾティックな衣装に身を包んでいる。日本人は私だけ。皆、チラチラと遠慮がちに(見慣れぬ物を見るときの怪訝そうな眼差しで)私を見ている。やがて会場にたどり着いた。そこは何百人も収容できる大広間で、中央の部分が階段2〜3段分ぐらい低くなった奇妙なデザインである(たとえて言えば部屋の中央に水の入っていない浅いプールがあるような感じ)。人々は手に手に皿を持ち、ヴァイキング料理をいただいている。誰もが不自然なほど静かで、楽しげに歓談している人はおらず、まるでお通夜でも営んでいるようだ。主催者のスピーチすらなく、これが一体何のための集まりなのか私にはサッパリわからない。不意に、会場の真ん中あたりで小さなどよめきが起こった。見ると、いつの間に会場に乱入したのだろう、12〜13歳ぐらいの少年が、消防車に附属しているような太いホースを小脇に抱え、ゲストめがけて思いきり水を噴射しているではないか。水の勢いは物凄く、腹部あたりに水が命中したご婦人はその場で転倒してしまった。それを見ると、私の中に突如凄まじい怒りが湧き起こった。と思う間もなく、少年のもとに駆け寄った私はホースを奪い、少年の両肩を乱暴に掴んでグイグイと振り回しながら、(なぜか日本語で)「こんな危険なことをして、何を考えているんだ!」「目に入ったら失明するぞ、このバカたれ!」と大声で怒鳴り始めた。少年は私の迫力に恐れをなしたのか、急に借りてきた猫のように大人しくなってしまった。周囲の人々は、気圧(けお)されたように棒立ちのまま私を見ている。それでも私は少年の肩を掴んだまま放さなかった。
【解説】 久々に“怒り爆発!”の夢だった(爆)。夢の中であんなに激しく怒鳴りまくったことが過去にあっただろうか。仮にあったとしても、極めてレアなケースであろう。大声をあげて怒鳴りまくったせいか、夢から醒めたときは実に気分がスッキリして快適だった(笑)。今日の教訓。怒鳴りまくる夢は――少なくとも私にとっては――どうやらストレス解消になるらしい。



14日●2−1=1
2つの白っぽいマグカップがテーブルの上に乗っている。あっと思った瞬間、カップのうち1つだけが落ちた。私は心の中で「つまり、2−1=1ってことよね」と思っている。そのあとカップがどうなったのか、結末はわからない。
【解説】 そう言えば少し前に、ある人からマグカップを2ついただいた。夢に登場したカップはそのカップだったかも知れない。なお、今夜の夢には前後に長いストーリーがあったように思うのだがが、具体的な内容は覚えていない。



15日●高速で流れゆく風景
目の前の風景が高速で流れてゆく。私は高速で移動する乗り物(とてつもなく速い新幹線のような)に乗っているのかも知れない。たくさんの樹木が目の前を流れてゆく中に、ときどきふっと間道(かんとう)に似たカラフルな縦縞が木の合間に見えるのだが、それが何なのかはわからない。
【解説】 今夜はあまりストーリー性のない冗長な夢を見た気がするのだが、この部分しか思い出せない。



16日●秘密のある露天商
道に露店が並んでいる。そのうちの一軒は、中年の地味な男女(コーカサスあるいは東ヨーロッパの人?)が営んでいるのだが、彼らには何か人には言えない秘密があるらしい。女性は大きなスカーフを頭にかぶり、顎のところで結んでいる。
【解説】 この3日間、わけのわからない「瞬間の夢」ばかり見る。いや、本当は長い夢を見たのだが、結果的には、そのうちの「わけのわからない一場面」しか思い出せないのだが。露天商の男女に見覚えはない。



17日●町人に扮したブースケとパンダ
誰かが私を呼んでいる。ブースケとパンダらしいが、彼らは着物を着て髪を結い、人間に扮していたようだ(ただし顔は犬のまま)。その姿は江戸時代の町人風である。パンダは髪を丸髷(まるまげ)に結っていたが、まったく似合っていなかった。
【解説】 引き続き今夜も「一瞬の夢」だった。というか、見た夢の一部分しか思い出せない。パンダ(狆)の顔に丸髷は似合わないと思う(苦笑)。



18日●「る」と「れ」
前後関係も詳細もまったく思い出せないのだが、空中に「る」という文字が現われ、そのあと暫くして今度は「れ」という文字が現われた。私は(もう1文字で完成だ)と思っているのだが、暫く待っても3文字目は現われなかったように思う。
【解説】 何のことかわからない夢。「る」と「れ」にもう1文字加えて完成する言葉って何だろうか? 思い当たる節はサッパリない。



19日●ノホホンとした男に口説かれる
見たことがあるような、ないような、特徴のない顔立ちのノホホンとした印象の男がやって来て、何と言われたか具体的な言葉は覚えていないのだが、いきなり「結婚してください」という意味のことを遠回しに言われた。私は驚き呆れながら、なるべく相手を傷つけない言葉を探しながら、しかし毅然とした口調で「そりゃムリだ」という意味の返事をした。しかしノホホン男には通じないらしく、何度も「結婚してください」という意味の言葉を色々な言い回しで言い続けている。男は背が高く痩せていて、眼鏡をかけている。私は早くこの場から逃げ出したいと思っている。
【解説】 一言でいうと「キモい」印象が残る夢だった。興味のない男に口説かれることは、たぶん私にとってはキモいだけのことなのだ。以上(苦笑)。



20日●遣唐使船の海難事故
気がつくと大荒れの海にいた。私の乗る船は、底が盥のような構造なので、横風に弱い。今や船は暴風にさらされて45度以上に傾いている。私は床に座ったまま船の舳先(?)にしがみついている。自分が着ている着物の袖が見えた。ベージュの地色に赤い縁取りの施されたなかなか豪華な衣装だ。ちなみに私は男である。同じ船の少し離れた所には、空海らしき僧侶の姿もある。あっと思った時、船は大波に呑まれて真横になり、そのまま真っ逆さまにひっくり返ってしまった。周囲は全て水。私は呼吸が出来ない。着物の袖が船の一部にひっかかってしまい、私は逃げることが出来ない。
【解説】 遣唐使船が転覆し、自分は海の中で死ぬ(たぶん)という恐ろしい夢なのだが、不思議なことに私は苦しみもせず、かなり客観的にこの状態を見ていたような気がする。目下、空海がテーマの小説を書いており、執筆も佳境にさしかかっている。それでこのような夢を見たのだろうか。ちなみに実際には、空海の乗った船は転覆などしていない。



21日●インド人の大縄跳び
ヒンディー語で何か騒ぐ女性の声がした。どうやら私は、まだニューデリーに住んでいるらしい。キッチンのドアを開けると裏庭に見知らぬインド人のおばさんと子ども達がおり、みんなで大縄跳びをしようとしていた。
【後日談】 夢から覚めて約10分後、犬たちを庭に出すために玄関のドアを開けたところ、ちょうど女子中学生2人が家の前を歩きながら大きな声で「今日の朝練、何やるんだろう。リレーかな」「違うよ、今日は大縄跳びだよ」と言って通り過ぎてゆくところだった。「大縄跳び」なんて、もう何十年もやっていないし、子どもたちが大人になってしまってからは見たこともない。それなのに今日は、夢の中と現実世界の両方に連続して「大縄跳び」が登場するとは。不思議なことである。



22日●洞窟のような旅館にて
最初に何か長いストーリーがあったのだが、その部分は思い出せない。気がつくと私は旅先の旅館にいた。既に何泊もしたらしい。そこは奇妙な形の旅館で、細長い洞窟のような場所を利用して部屋が作られている。内部は緩やかな坂(高低差)があって、暗くひんやりとしており、神秘的な感じ。お寺の胎内めぐりのようでもある。旅館の人たちが揉み手をしながら私のまわりに集まって来ている。どうやら、そろそろここから立ち去ろうとする私を、彼らは引き留めたいらしいのだ。何か他のことも頼まれた気がするが、それが何だったかは覚えていない。
【解説】 鍾乳洞にでも行って来たような不思議な感覚の夢だった。ところで私は夢の最後に、旅館の人から何を頼まれたのだろう。それが気になるのだが、残念なことにその部分の記憶が抜け落ちている。そこが一番大事だった気がするのだが。



23日●……
【解説】 今夜も夢は見たのだが、起きるときの起き方が悪かったのだろうか、ベッドの上で上半身を起こした瞬間にスーッと頭から消滅してしまった。



24日●ウォー・ゲーム
最初に見えたのは凄まじい閃光と、耳をつんざく雷鳴、そして、ビルや人家が建ち並ぶ街の真ん中に大きな雷が落ちた様子だ。それは雷……だったと思う……のだが、見た目は竜巻のようでもあった。私は大きな四輪駆動車の助手席でそれを見ている。運転しているのは友人で科学者のTさんだったと思う。場所はN県S市に似ているが、違うかも知れない。私たちは「凄いですね」とか「とうとう始まりましたか」と言っている。しかしその言葉に緊迫感はなく、顔には微笑みさえ浮かんでいたかも知れない。その後、私たちは車から降りて、一般道を全力で走りはじめた。背後から、あるいは前方から、ときどき恐ろしい勢いでミサイルが飛んで来る。ミサイルはコンピュータ制御されているようで、地面から一定の高さ(約30cm)を保ち、道が直角に曲がるとミサイルも直角に、道が弧を描いているとミサイルも同じ形の弧を描きながら、目にも止まらぬスピードで次々に飛来する。このとき初めて気づいたのだが、私は透明な眼鏡(あるいはそれに相当する何か)を装着しており、雷やミサイルなどはレンズを通してのみ見えるようだ。つまり雷もミサイルも幻であって、実在はしない。これはウォー・ゲームなのだ。その証拠に、道を歩いているサラリーマンやお婆さんは、ミサイルが飛来しても何事もなかったように歩いているではないか。場面が変わり、キューブを組み合わせたような変わった形の建物の中。誰かが停戦(?)を申し込んで来たようだ。そのあと、結末がハッキリしないまま私が起床してしまったので、ゲームは中途で終了した。
【解説】 未来型の戦争を疑似体験している夢なのだが、それはあくまでも緊迫感を伴わないゲームであって、流血も死者もないのだった。ミサイルが次々に飛来する様子は、どこか群泳するバラクーダ(オニカマス)に似ていた。そして、これと同じような夢を、私は以前にも見たことがある気がしてならない。



25日●ビルの中の悲惨な暮らし
見知らぬビルの一室。冷たく無機質な感じのする銀色のドアを押して中に入ると、部屋の真ん中にテーブルがあり、姑と義姉、姪がいた。姑は体調が悪いようで、ずっと押し黙っている。義姉と姪は忙しそうだ。室内には知らない人が数人いる。彼らの顔をまじまじと見たわけではないが、ときどきメンバーが入れ替わっているようだ。私は皆の邪魔にならないよう、テーブルに座って読書を始めた。私の腕の中にはブースケが大人しく抱っこされている。それからどれぐらいの時間が経ったのだろう。数時間、あるいは数日が経過し、不意に(私がここにいても手伝えることはないし、かえって邪魔になるだけではないか)とようやく思い至った。義姉に「私は隣りの家に行きますので」と告げたところ、「気を使ってもらってごめんなさいね」という答えが返って来た。相変わらずみんな忙しそうだ。ドアを開け一旦廊下に出て、同じビルの同じ階にある殺風景な部屋へと移動した。そこが私の家らしいのだが、なぜか見知らぬ人たちが10人ほど住みついていたではないか。彼らは貧相で、おどおどしており、違法に日本へやって来たボートピープルのようなたたずまいである。ブースケの喉が渇いていると思い、前に使っていた容器を探したところ、容器はひどく汚れていた。壁際に粗末な水道設備があったので蛇口をひねったところ、中から出てきたのは緑色の藻が混ざりドロドロに腐った水で、飲めるどころか手を触れることすらできないシロモノだ。わっと思い、手をひっこめたところで目が醒めた
【解説】 大勢の人が登場したにもかかわらず、会話らしい会話もなく、水道の蛇口をひねれば腐った緑色の水が出るというヒドい夢だった。そういえば前に住んでいた家は10階建てのビルで、私はそのビルが(というか最上階に寝所を持つことが)嫌いだった。万が一のことが起こった時に窓から飛び降りても平気な高さの建物(平屋または2階建て)に暮らしたいと思っていた。そのときのビル暮らしのイメージが今夜の夢には籠められていたかも知れない。なお、現在の私は2階建ての家に住んでいる。夢に登場した姑は10年ほど前に他界し、残念ながら今はもういない



26日●アメリカ人の悩み相談に乗る
私はアメリカ人の悩み相談に乗っているらしい。最初は本人の話だけを聞いていたのだが、次第に(この人が抱えている問題を解決するためには、この人の家庭環境を知る必要がありそうだ)と思い、彼の奥さんからも話を聞くことにした。奥さんは日本人だ。私は喫茶店の階段を昇っている。2階でアメリカ人と日本人の夫妻が私を待っているからだ。階段は、人ひとりやっと通れるほどの細さで、急勾配。しかし、いかにも老舗の喫茶店っぽい重厚な感じを漂わせている。2階に上がると、アメリカ人と日本人の夫妻の姿が見えた。ふたりは小さなテーブルでコーヒーを飲んでいた。
【解説】 実は現実世界でも、某アメリカ人の悩み相談に乗っている。そのことが今夜の夢になったらしい。印象的だったのは「狭く、急勾配で、しかし老舗っぽい重厚」なイメージの階段だ。実は、友人の悩みというのは彼の職業に関することで、彼の職業は誰にでも簡単になれるものではない、いわゆる「狭き門」なのだ。今夜の夢の印象では、「彼の悩みはいずれ解決するが、そのためにはまだ長い時間がかかる」ような気がした。



27日●大学留年の危機
私は誰かの命を助けるために、ほうぼうを走り回っている。そのため暫く大学へ行くことができなかったようで、ある日、大学から「あなたは卒業できない可能性があります」という内容の手紙が届いた。手紙は日本語でなく英語だったので、私はどこか海外の大学に通っているようである。文章の詳細は思い出せないが、途中に「pending(審理中)」という単語が入っていた。私は(まあ、留年も仕方ないか)と思っているのだが、それを知った周囲の人たちが、「人の命を救おうと頑張った人が留年させられるのは絶対におかしい!」「卒業できるよう、みんなで嘆願書を書こう!」と騒ぎ出し、嘆願書を書いてくれた。出来上がった嘆願書の文章を見せてもらったところ、「win win(ウィンウィン=双方に有利な)」という言葉が入っていた。しかし、その綴りが何故か「wyn wyn」となっているのである。そのあと無事に大学を卒業できたのかどうかはわからないが、私自身は悟りでも開いたように気分がサッパリしていて、卒業できるかどうかは、もうどうでも良くなっていた。
【解説】 周囲の大騒ぎをよそに、当の本人(私)だけが落ち着き払って、運を天に任せているような、一種のポジティブな諦観に達したような不思議な夢だった。それにしても、大学卒業後28年が経った今頃になって「留年の危機」の夢を見るとは驚きである。そう言えば、たまに中学生か高校生に戻って試験を受けている夢を見ることもあるし。いやだいやだ(苦笑)。



28日●母と娘と姪と遊園地
気がつくと私は車を運転していた。旅をしているのだろう。何か意外な出来事があって、それが非常に印象的だったのだが、何故かその部分だけ記憶が残っていない。次に気がついたとき、車は遊園地の中に入っていた。この遊園地にはとても面白いアトラクションがあるのだ。私は以前にも何度かここへ来たことがあるので、そのことをよく知っている。いつの間にか現われた娘にチケットを買い与えると、娘は喜んでアトラクションのほうへ走って行った。暫くして、娘が満面に笑みを浮かべて帰って来た。気がつくと目の前に、母と姪のHちゃんがいた。どこから現われたのだろう。ふたりもチケットを持っているようなので、例のアトラクションを薦めた。母はとても嬉しそうに笑いながら、Hちゃんとふたりでアトラクションのほうへ向かおうとしている。私は心の中で(なぜ私だけチケットを持っていないのだろう。車を運転していたら自然に遊園地に入ってしまったから、チケットがないんだ。乗り物で遊びたくなったら娘のチケットを借りようかな)と思っている。
【解説】 そういえば今から10年ほど前に、母・娘・姪のHちゃん・私の4人で、私が運転する車で軽井沢へ遊びに行ったことがある。そのときの写真は今でも私の携帯に入っているが、あれ以来、そのメンバーでどこかへ遊びに行ったことは一度もないかも知れない。そういう意味では、今夜の夢はちょっとノスタルジックだった。「私だけチケットがない」というところに夢からのメッセージが籠められているのかも知れないが、まあ、それがどんなメッセージだったとしても、それはそれで「仕方のないこと」なのだという気がする。人生は、自分が思ったようには行かないこともあるのだ♪



29日●Oの悲劇
Oさんの身に「凄絶」と言うべき悲劇が起こる。それはこの世のものとも思われない、目をそむけたくなるほどむごたらしい惨事だ。Oさんは惨殺されたのだと思う。Oさんの横にはHさんらしき男性が立っていた。Hさんの体は3分の2ほどが赤紫色に染まっていたが、彼が死んだのかどうかはわからない。
【解説】 今夜の夢はいわゆる「グロい」夢だったのだが、それ以上に心理的に恐ろしい夢だったような気がする。しかし夢自体は一瞬にして終ってしまい、しかもなぜか詳細を思い出せない。そのため、いざ文章にしてみるとひどく呆気ない感じがする。ちなみにOさんとHさんは、ここにフルネームを書くのも憚られるほどの有名人コンビだが、幸い私自身は一面識もない。※ちなみに「O」はアルファベットの「オー」です。数字の「0」ではありません。



30日●翔ぶ雄牛
乾ききった真っ赤な大地。いくつもの切り立った崖。岩がゴロゴロしているほかには何もなく、草木は1本も生えていない。強烈な太陽の光と、その下にできる影の対比。遠くで針が落ちる音も聞こえような、絶対的な静寂。今がいつで、ここがどこなのか、何もわからない。そのとき崖の上に1頭の雄牛が現われた。普通の雄牛ではない。ギリシャ神話に登場する半神半獣のような、恐ろしいほど気高く孤高な牛だ。と思う間もなく、彼は崖っぷちから飛んでいた。私は遥か下の平地から、その様子を見上げている。雄牛には翼がないので、空中に飛んだ雄牛は四肢を前後に伸ばしたポーズのまま――ちょうどムササビやモモンガが飛ぶときのような姿で――空を渡ってゆく。数十メートル離れたところにある別の崖に飛び移った雄牛は、さらにジャンプして別の崖へ。そこからまたジャンプして別の崖へ。そうやって崖から崖へと飛翔している。私は地面に立ちつくしたまま、その様子を見上げている。おごそかな雰囲気。静寂。祈り。
【解説】 目下、日本のトップニュースは宮崎県を襲った「口蹄疫」である。毎日のように牛や豚の殺処分のニュースを見聞きして心を痛めていたことが、今夜の夢を見たひとつの理由かも知れない。もうひとつ重要な理由は、現在書いている空海の小説の冒頭場面。それが今夜の夢の直接的な理由なのだろうと思う。



31日●キッカドゥーを探して
前後関係は全くわからないが、私は「キッカドゥー」という奇妙な名前の何かを探している。キッカドゥーは花の名前らしい。途中で年輩の男性に逢い、この花を見つけるための重要なヒントを教わったようなのだが、その内容は思い出せない
【解説】 いかにも藪から棒なイメージの夢だった。キッカドゥーという花が実在するとは思えないが、それなら一体この言葉はどこから出て来たのやら。謎である。





※夢日記の一部または全部を許可なく転載・引用なさることは固くお断りいたします。
©Mami Yamada 2004-2010 All Rights Reserved.