ここでは、読者の皆さまから寄せられた『ブラック・アンブレラ』読後感想文のうち、一般公開をご快諾いただいた分だけをご紹介しています。

※プレゼント当選者(印の付いている方)には「山田真美の世界」オリジナルグッズをお贈りします。

〔No.001〕 投稿日:2002年8月30日 投稿者:小島博様 (30歳、製本業、男性)

ここのところ、『ブラック・アンブレラ』の事で頭がいっぱいでした。発売日の8月27日は、仕事が終わるのが遅く、本屋さんが開いてなくて『ブラック・アンブレラ』を買えませんでしたが、こうして昨日から山田真美の最新作を読める事を楽しみにし、今日の青空や、暑さ、1日の全ての事が『ブラック・アンブレラ』に結びついていく。記憶として、これからもずっと残して行きたいです。まだ、作品を読めていないわけですが、今日は素敵な1日になりました。ありがとうございました(以上、8月28日記す)。
(以下、8月30日記す) 昨日、無事に読み終わりました。ところどころ、インドにおける知識がちりばめてあって、読んでいると一緒に頭も良くなっていく、まみりん♪小説の威力はすごいなと思いました。最初のほうは、おお、いかにもまみりん♪の書く小説だと、「帰って来たまみりん♪」を楽しく思っていましたが、読み進むうちに作風が深くなって行く感じがしました。うーん。書いているのが本人なのに、本人の介入する隙の無い感じの熱い小説でした。ケサランパサランも出て来ましたね! すごく雰囲気のよいところで、可愛らしい登場でした。
本当、キレのある小説でした。おもしろかったです。では。



〔No.002〕 投稿日:2002年9月3日 投稿者:コスモス様 (20歳、フリーター、男性)

山田真美さま、『ブラック・アンブレラ』を読まして頂きました。
物語の舞台はインドの西、アラビヤ海に面する小さな漁村なのですね。そこはもう、海を渡ればアラビア半島、アフリカ大陸という、日本の小説にはまず出てこない地域でした。気候も文化も生活習慣も、人々の心理も、まるで日本と違う世界を舞台に選んだということは驚きでした。それも旅行者という立場でなく、そこに住み、生活していく日本の若い女性を主人公に選んだことに、とても新鮮な感動を覚えました。
また小説として、それを言葉にしていくという作業は、山田真美さまがかってインドで生活していたということを割り引いても、大変困難な作業だったと思われます。これがパリやニューヨークの話なら、あるいは旅行者の話なら、小説の世界は現実の地域と日本の言葉で触れ合えるかもしれません。しかしアラビア海に面した、日本人のほとんどにとって全く未知な地域での生活感ある物語の展開は、その地域への感情移入がとってもしづらく、言葉の力に頼るしかありません。
山田真美さまの『ブラック・アンブレラ』は、軽々とこのハンデを乗り越えて、まるで身近な世界のように物語は展開していきました。私は山田真美さまはとっても不思議な才能がある作家に思えてなりません。
『ブラック・アンブレラ』は、インドで読まれても、たぶん人々の心にすっと入っていく小説なのではないでしょうか?日本にいて読んでも、面白く読める本が、インドの人々に面白くないはずはないと思われます。この本が日本人向けに、脚色されたものであれば別ですけど、山田真美さまはあえて、そのようなことはしていないと思います。すでに『ブラック・アンブレラ』は世界文学という領域に入ってるものと思われました。
『ブラック・アンブレラ』の混沌とした世界は、とりもなおさず私達の世界であり、世界の現実だというとっても暗い印象を受けました。しかし、その現実から主人公の繭子が逃げださなかったということが、かすかな希望に感じました。
山田真美さまのこれからのご活躍を心よりお祈りしています。



〔No.003〕 投稿日:2002年9月3日 投稿者:蜜柑様 (40代、女性)

読みました、読みました、『ブラック・アンブレラ』。官能小説と聞き、ちょっとためらいましたが(レディース・コミックもダメな私)、読んじゃいましたよ! もう、まみりんたら、最初っからすっ飛びまくってるんで参りました。
でも同じ人間なのに住む国、土地が違うというだけで、こんなにも人間の生き方や扱われ方が違うのですね。なによりも女の人を“人”として扱っているのか判らなくなりました。特に、この舞台となった南の島のこの村は、まさしく自分達の作った掟や習慣で自分達の首を絞めていたのですね。だからと言って、日本だって戦争の頃は、戦地で死んだ男の弟に兄嫁が嫁ぐということも日常でしたから。
マニュアルどうりの夫婦が良いのか、違う形がよいのか私には分かりませんが、日本が自分の意見を発言し、自分の考えで行動できる国であることには感謝しなくてはならないかも(しかし、自分の行動に責任を持たないやつも多いですが)。
まみりんの小説は、最後にかならずハッピーで終わることがとてもうれしいです。ただ、ラティのことは少し同情的です。この村の掟にもてあそばされた被害者の一人であり、諦め慣れている村の女性の中でただ一人、自分の情熱を堂々と主張した人ですね。今度は愛する人と結ばれる国に生れ落ちて欲しいな〜。
あ、そうそう、私この3日間、庭の桜の木の毛虫退治に奮闘しておりました。50匹くらい駆除しましたよ! なんとタイムリーなこと!



〔No.004〕 投稿日:2002年9月16日 投稿者:鈴木央様 (38歳、公務員、男性)

前作の『夜明けの晩に』と同様、一気に読み終えました。今回も様々の魅力あるキャラクターが登場しましたね。これらの登場人物が織り成すドラマは秀逸でした。
主人公以外のエピソードが、また良かった。中でも、ラティの夫のエピソードは、とてつもなく愚かで、哀しく、そしてロマンチックですらあり、印象に残りました。また、カストゥーリーを出ていった男が二度と戻ってこないことを悟った売春婦ローズのモノローグ。これも又、とても印象に残る場面でした。
毀れつつあった繭子が精神的な安定を取り戻せたのは、カーマが妻の苦悩と悲しみに気づき、自省し、繭子を守りぬこうとし、人間として成長したことが最大要因でしょうか。ラティの長女が悲劇を乗り越え明るく生きているという事実。そしてカーマ、繭子、シッダールダの若き親子三人が確かさと力強さをもって歩んでいく、というエピローグは、明るい未来を感じさせました。
この南インドの漁村も時代遅れの文化は廃ってゆき、徐々に、あるいは急速に、その文化を変容させていくものと思いますが、さて、我が日本の農村などを見ると、この南インドの漁村の現状とあまり変わらないなあと感じます。因習、掟、相互監視など、息の詰まるようなところが多分にありますしネ。繭子が味わったような苦しみ、悲しみをなめている人は、たくさんいるでしょう。
話が脱線しました。山田真美ワールド(あるいはマミリンワールド)は、素晴らしい広さと奥行きを持っていますね。次はどんな世界を展開するのでしょう。いまから楽しみでワクワクします。期待しています!!



〔No.005〕 投稿日:2002年9月18日 投稿者:大滝敬子様 (42歳、販売業、女性)

今回の作品は、真美さんの中から溢れ出る豊かで、美しく、なおかつ残酷ともいえる表現をゆっくりと味わい、場面場面を想像しながら時間をかけて読ませていただきました。読んでいる最中も、読み終えてからも、私の中ではラティの存在が重く心の中に残りました。
ラティの心の声は、私達女の心の奥に誰もが持っている部分だと思いました。最初は客観的に同情する気持ちだったのが、そのうち、自分でも気が付かなかった心の中を自分で覗いているような気持ちになってきました。
男と女では、女の方が悲しみや辛さを受け止める許容量が多く、さらにそれに耐えたり諦める事が出来る。だからそんな強いほうの女に子供を産み、育てる仕事を神様が与えた。そんな本来強い女が、心のバランスを失った姿、それがラティなんじゃないかと思いました。
そして女が犠牲になるというのは、けっしてこの土地だけではなく、日本でも昔から女は耐えるものと言う考えが根強くあり、男女平等が叫ばれる今でも、やはり女がある程度耐えることで世の中も、家庭も円満でいられるんじゃないかという気がします。ずっと昔からそうだったように・・・。
そして今私は、この作品によって改めて女を自覚したうえで、これからより良く生きていくためにはどうすればいいかを真剣に考える、いい機会を与えてもらったと感謝しています。
以上、これはごくごく一部で、ほかにも、今まであまり考える事がなかった男の人の気持ちとか、今や自分の中で不必要になってしまった性について、ここに登場する人々が、生きる上であまりに重要な事として捉えている、その事に驚いている自分が、実は本当の驚くべき存在かも・・・そう思えてきたり。



〔No.006〕 投稿日:2002年9月19日 投稿者:青木久子様 (46歳、パート店員、女性)

『ブラック・アンブレラ』さっそく拝読させていただきました。最初から官能的かつ不思議な空気の漂う内容でどきどきしましたが、一気に読ませるところはさすがですね〜!
私が特に感じたのは「におい」です! 立ち上る強烈な「におい」。ここは日本なのに、読んでいると、インドのあの場所の独特の「におい」の中にどっぷり浸かってました! これからもスケール感のある小説期待してます!
ところで『夜明けの晩に』の映画化とかないでしょうか? 息子とよく「これを映画でみたいね〜」と話してます! よろしくお願いします。
お体に気をつけて、ますますのご活躍お祈り申し上げます。



〔No.007〕 投稿日:2002年9月23日 投稿者:ツッチャ様 (42歳、サラリーマン、男性)

『ブラックアンブレラ』読ませていただきました。なかなか読書の時間がとれず、先週入手し、一昨日読み終わりました。
出だしは「何じゃこりゃ?」「作品の方向転換か?」が率直な感想です。読み進むうち奥深いものを感じました。
「一妻多夫」は馴染みというより、「えっ、そんな枠組みがあるのか?」と思いました(これって、男性から見た見方でしょうか?)。メリットを説明されると、なるほどと合点のいくところもあります。ある特定な地域、ある特定な階級(ある程度財産のあるような)では、自己防衛といったところから、必要な制度だったかもしれませんね。
私が知っている結婚制度でも、血統を守るための「近親婚」も、周りから奇異に感じられても、その人たちには大事なことなのかもしれません。近親婚の場合、普通よりも高い確率で特別な子供が出生するとのこと。本編のカーマ自身、「一妻多夫」に忌まわしさを感じながら、従姉妹ラティと通じ、結果カリヤニが出生しています。
ただ、私が思ったラティとカリヤニの関係は、「母親と特別な子供」ということに加え、「表裏一体」といった感じを受けました。何かにつけ自己表現をするラティに対して、言葉による自己表現ができないカリヤニ。終盤のラティの狂気を、カリヤニの行動が、ラティに対して鏡に映して教えているようにも思えました。
情景描写はさすがですね。私は見たことのない「アラビア海」。穏やかな海、嵐の海、目の前に迫るモノを感じました。子を宿したときの繭子の心情等、とても男性の私には体験、想像できませんが、何となく伝わってきました。情景にしても、心情にしても、貴女の見た・感じた経験に裏打ちされているのですか? だとすると、ラティの心情も?
とりとめのない感想になってしまいました。今後も期待しています。頑張ってください。



〔No.008〕 投稿日:2002年10月4日 投稿者:飛鳥PartU様 (17歳、インターナショナル・スクール学生、男性)

古今東西を問わず人間の心の奥に潜む「深い闇」の部分を、残酷なまでに見事に描ききっている。
場面は現代インドと思われるが、舞台を世界の何処に置き換えても ― もちろんここ日本でも ― 十分に通じる普遍的な説得力を感じた。
物語としてのエンターテインメント性があり、また≪華がある≫という意味でも文句無しの大型作品。



〔No.009〕 投稿日:2002年10月8日 投稿者:かずこ様 (50代、主婦、女性)

いいね。わかるよ。何が幸せかどうかと考えるとき、ペニスを大きくするための毛虫取りで、木から落ちて死んだ男のことは笑えない。主人公のマユコより、ラティ夫婦のなんとも哀しいすれ違いに強く惹かれたし、ラティの夫と娼婦の結びつきにもね。みっともないほど人間らしくてさ。
マユコの描き方は、ラティとの対比なのか、妙にけなげなのが鼻について、好きになれなかった。あっけない幕切れだったし、あんなハッピーエンドってあるのかって。



〔No.0010〕 投稿日:2002年10月10日 投稿者:美穂子様 (40代、主婦、女性)

面白かったー。全然どろどろじゃないじゃん。真美さんの運転に、助手席できゃあきゃあ言いながらF1コースをかっ飛んでる感じ。さすが。
それにしても帯の文、もっと魅力を伝えるのがあるんじゃないの? 素人が御免なさいだけど。



〔No.0011〕 投稿日:2002年10月17日 投稿者:R★★S様 (40代、デザイナー、女性)

幕開けから大胆な描写で、のけぞりました。いきなり登場したのが、嫉妬に狂った情念の蛇、蛇、蛇、ですもん。
絹のデザインをしながらひっそりと、一生懸命に生きている繭子が不憫で、心配で、(繭子が幸せになれますように。ラティの放った醜い情念の蛇に殺されませんように)と、そればかりを終始願いながら読んでいました。
最初はどうしようもない男に思えたカーマが、最後はキチンとけじめをつけて男として確立したあたりも、好感が持てましたよ。
小説はやっぱりこういう具合に、ドラマチックに事が運んで、最後はハッピーエンドでなくちゃね。山田真美さんの才能に、拍手!



〔No.0012〕 投稿日:2002年10月22日 投稿者:花より団子のアンこ様 (女性)

『ブラック・アンブレラ』めちゃおもろかった!!!
今回の作品は「ホントに、あの真美さんが書いたの?」って驚きが素直なところ。あれほど大胆な表現にもかかわらず、卑猥に感じないのはさすが! 本物の芸術って事でしょうか?
心が創り出すエネルギーと動物的な官能の世界が3Dの抽象画?みたいでした。
ただ、正直なところ最後が物足りなかったです。自分が勝手にもっとドロドロな世界を予想してたから、続きがあるんじゃないかとマジで思った!!!



〔No.0013〕 投稿日:2002年11月25日 投稿者:庄子利枝様 (31歳、主婦、女性)

『ブラックアンブレラ』の目次の2文字の漢字(遠雷、淫雨、閃光、狂霖、神立)、なんてぴったりなんでしょうか。ぴったり合ったパズルを感じさせました。無駄がなく一部の隙もなく完璧…。
実は、初めの1〜2ページでとても嫌悪感を感じ、本を閉じてしまおうかと思った程で。なにが、それを感じさせるのか、皆目、検討もつかなくて。もちろん、性描写にではなく、です。人妻ですし(笑い)、女子高出身ですし。実際、読み終えて清々しい気持ちにさえなり、晴やかな気分になりスッキリしてしまったのですから。
先程ボケェ〜としていて思い浮かんだのが、ラティの妬みや嫉妬心でした。誰しも持っているこの感情に嫌悪を感じたのではと思ったのです。嫉妬や恨む心などは本当に恨めば恨むほど自分に返ってくる、かつてそんな感情を持ち得た時もあった自分を思い起こし、そんな気持ちになったのかもしれません。
ラティが死に絶えたことで、私自身のそういった部分も消滅したような気になったのでしょうか? すばらしく気持ちが晴れ、スッキリしました。そしてマユコも色々な煩悩や葛藤を乗り越え、一つの強さを携え、また人生に挑んでゆくのではないでしょうか? 私もそうありたいと思いました。