ここでは、読者の皆さまから寄せられた『ロスト・オフィサー』読後感想文のうち、一般公開をご快諾いただいた分だけをご紹介しています。

※毎月抽選で1名様(印の方)に、山田真美特選の記念品(手書きのカード付き)をお贈りします。

〔No.001〕 投稿日:2005年8月6日 投稿者:鈴木央様 (41歳、塾経営、男性)

 多くの新しい証言が得られ、Dコンパウンドの謎が少しずつ明らかになるものの、それぞれの証言や資料の中身は、微妙に、あるいは大きく異なり、60年以上前の歴史に決定的な断定をくだすことの難しさを感じました。しかし、読了後、「当時の状況は、おそらく、こうではなかったかな」という一つの絵は私の脳裏に描かれました。それとても、私の誤解かもしれませんが、多くの証言や資料をとおし、一本の線が浮かんでくるのです。いずれにせよ、カウラ事件のなかで今まであまり分析されてこなかったDコンパウンドについて、多くの新しい事実を明らかにし、カウラ事件に新たな光をあて、さらにはカウラを切り口に日本人の精神構造を掘り下げたこの力作に、心から拍手です。



〔No.002〕 投稿日:2005年8月19日 投稿者:もち様 (18歳、学生、男性)

 以前から楽しみに待っておりました『ロスト・オフィサー』を購入し、拝読することが出来ました。私は、戦争捕虜脱走事件に関してはもとより、他のほとんどの戦争に関する知識が足りない為、きちんとした感想を送らせていただくことが出来ずに、けだし、私の生成りの知識に歯がゆい思いでいっぱいです。ですが、そんな至らない私でさえも、読みすすめるうちに、読む手を止めることが出来なくなってしまいました。知識不足で、わからないなりにも、内容を少しは汲みとることが出来ました。ちょうど夏休みに入って「敗戦論」を少しだけ拝読していましたので、『ロスト・オフィサー』に描写されている、日本人の有り様、処世観は、私の胸中に直接的に入り込んできました。
 帯にも「日本人は、いい意味でも悪い意味でも、集団行動の得意な民族である」と書かれていらっしゃいますが、私自身、これからどうすべきなのかと、考えなければならないと思いました。私には、優柔不断な面があると思います。こころの中では、早々と決断を下してはいるのですが、感情を表に出す時には、どうしてもワンクッション置いてしまいがちです。人から、なにかしていただけるときにも、心の中では、即座にYESかNOか決めているのに、いざ、人に頼むとなると「ほんとうに良いのでしょうか?」とか、相手を やきもきさせてしまう面があるのだと思います。この欠点は、日本人全体の欠点と比すると、少しずれていますが、まずは、私自身の欠点をなんとかせねばという思いが、本を読み終わると同時に、浮上してきたのです。本の内容と、かなりかけ離れていますし、それとこれとは、別問題だから、短絡的にすぎるのかもしれませんが、快刀乱麻という言葉を充てることで、自分を信じたい。今は、そう切実に感じています。
 これから、幾度となく、『ロスト・オフィサー』を読み返してみようと思っております。そうして、感化されるものがあれば、もっと自分に素直になって、吸収していくことができれば、と思っています。



〔No.003〕 投稿日:2005年8月26日 投稿者:黒住宗晴様 (67歳、黒住教教主、男性)

 御著『ロスト・オフィサー』を一気に読了しました。よくぞここまで「カウラ」を追跡して下さったという感動と、おこがましいことですが、感謝の念さえ湧いて来ました。と申しますのも、私ども縁あって昭和59年(1984年)よりカウラ墓地での慰霊祭を重ねていまして、戦没した方々に格別の思いを持っているわけです。
 昭和52年(1977年)12月、ニュー・サウス・ウェールズ・ポリスシチズンズ・ユースクラブの柔道部一行が、私どもの明治時代の神殿を道場にしているのに興味を持ってその第一試合を希望して来たのが事の始まりでした。その後、略二年毎に少年少女柔道チームの交流が続いて今日に至っていますが、昭和58年11月に私どもが参りましたとき、シドニーの日本人会、日本商工会議所の方々からカウラでの日本人宗教者による慰霊祭を要請されて始めたものでした。
 昭和59年8月にみまつりをつとめて以来、渡豪する度毎に慰霊祭を執り行ってまいりましたが、御著にもお認めになっています昨年8月5日の60年祭には、天台宗、浄土宗、金光教そして私どもの者、またシドニー在の真言宗、浄土真宗の方も加わっていただき地元のキリスト教の聖職者とともにつとめたことでした。
 私どもは神道ですが、昔から他宗教との共同活動もいくつかありまして、10年前には、ダライ・ラマ法王ご来日の受け入れ教団の役を仰せつかりお迎えしたことでした。御著拝読の感激のあまり勝手なことばかり申し上げ失礼しました。ますますの御健筆を祈ります。



〔No.004〕 投稿日:2005年8月26日 投稿者:庄子利枝様 (33歳、主婦、女性)

 翻訳書を読んで、カウラの事件については大筋で理解したつもりでいたのですが、 『ロスト・オフィサー』を読んで、さらに、細かく微妙な(日本人と言うか、軍人の)心の機微や、真実に触れ、驚いたり、背景や行動を理解しながら、じっくり読みました。歴史から抹消され、壁の中にきっちりと塗り込められた真実が、出してくれと言ったのかは解りませんが、歴史自身が、その相手をマミリン先生に選んだのは、読み終えて納得しました。
 真実を真実のままに、国内外を歩き尽くして、書かれた本を読み、日本人の行動の構造やそして、同じ過ちを起こしそうな種や、根本は変わってはいないのではと感じました。「皆が行くなら、行きたくないけど行こう・・・」 「誰かが、止めてくれるだろう」と流されるままに行動した結果、流されなくても、良かった血が今も、流され続けている事をきちんと鑑みて個の考えを、しっかりと持って、いかなる場合でも、それを主張する勇気を持たなければならないと思いました。
 しかし、戦時下の洗脳にも似た、60年も前の、あの状況で生き晒すのは恥と、刷り込まれ死ぬまで、それを抱え、貝の様にして終えられた方もおられたことでしょうが、マミリン先生とお話をされて、旅立たれた方達はこの人ならと、思いを託し、無事お役目を果たし尽くして、背負い続けた重い物を漸く降ろして安心して逝かれたのだと感じました。日、豪、米とどこがどの時点で、嘘をついているのかは今となっては、藪の中でしたが、歴史が語りたくなかった事なのでしょうか? 少なくとも歴史自身が伝えたいと思っていた事は、この本の中にしっかりと書かれているのだと感じ、静かに本の扉を閉じました。



〔No.005〕 投稿日:2005年8月27日 投稿者:宮島和雄様 (60歳、会社役員、男性)

 真美さんとカウラ事件との関わりがやっと理解できて、霧が晴れたような気がしました。『生きて虜囚の辱めを受けず』を読んでおりませんでしたので、真美さんとカウラ事件の関係がずっと気になっていました。
 小生は終戦の年生まれですので、戦後60年と言うフレーズは人事には思えません。60年前の知られざる事件の真相を追って徹底的な調査を根気よく続ける真美さんのご努力には敬意を表します。ノンフィクションでありながら、探偵小説を読むような物語の構成は、さすが真美さんのストーリーテラーとしてのたぐい稀な才能が遺憾なく発揮されていると感じました。お蔭様で、あっという間に読破することが出来ました。また、淡々とした語り口は、世代を越えて移り変わる人生の無常を映し出すようで、久しぶりに味のある歴史小説を読んだような清々しさを覚えました。
 埋もれた戦争の一面史に光を当てて世に知らしめた意義は大変大きいと思います。日本人の取った不可解な行動にも、それなりの筋道があり、またその背景となった教育があったことが分かります。いつ何時と言えども、冷静に、理性に基づいた判断に従って行動したいものと思っていますが、どうすればそのような行動が取れるのかを日頃から考えることが大切であると思います。本書の中にも海軍士官のリベラルなことについての言及がありましたが、日本だけでなく広く世界の文化に目を向けて他民族への理解を深めることが、平和の道への第一歩ではないかと改めて感じました。



〔No.006〕 投稿日:2005年8月30日 投稿者:西澤利明様 (52歳、公務員、男性)

 冒頭から一種のミステリーのような感じで、これがストーリーテラー山田ワールドなのかとぐいぐいと引き込まれて行きました。確かに過去の事実を立証する困難さは人間の記憶自体が曖昧というより、「歴史上の事実は純粋な形式において存在しない。あくまでも記録者の心を通して屈折してくる」と言い切った歴史学者の観点が頷けるようにも思えました。
 『ロスト・オフィサー』は考えてみるに戦後の日本そのものかも知れませんね。私たちが失ったものが何であるのかと……。読み終わった後、暫くじっと考えこんでしまいました。良い作品はその作品を通して自らの人生に様々な「ヒントや気づき」を与えてくれるようです。改めて有難うございました。



〔No.007〕 投稿日:2005年9月7日 投稿者:やっぴ様 (31歳、会社員&主婦、女性)

 正直(なんで?)って思ってしまいました。まみりん先生ならハッピーエンドとまではいかなくても納得のいく結果を出してくれる!と勝手に思っていたからです。きっと何も知らずにあの本を手にしていたら、また違ったことでしょう。ですが、戦記等をなるべく避けて来た私としては、まみりん先生と出会わなければ、まず手にする事も、あのような本が執筆されたという事も知らずにいたと思います。
 戦争に関する本…。ましてや捕虜に関する…。(こわい)という気持ちが先立って、実はなかなか購入出来ませんでした。ですが、読み始めてみるとまるでミステリー小説のような感覚で先が知りたい!と強く想い、どんどんページを捲っている自分がいました。過去を知ることの大切さ。人と人との繋がり、絆についても多くのことを感じました。そして、失った時間を取り戻すのはとても難しいということも改めて実感しました。
 近所の優しいおじいちゃん、きちんと怒ってくれるおじいちゃんが過去に想像を絶する体験をしていたというような身近な感じで読めたことが心に強い余韻をのこしているのだと思います。登場された方々が長生きして健やかに過ごせるように願っています。上手く言葉に出来ませんが、このような事実を知る機会を与えてくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。どうもありがとうございました。



〔No.008〕 投稿日:2005年9月21日 投稿者:朱麗葉様 (32歳、クリエイター、女性)

 先日、『ロスト・オフィサー』及び『生きて虜囚の辱めを受けず』の2冊を読み終わり、その事実に対する重大さ、そして山田様自身のご意見やお考えに共鳴し、メールを送らせて頂きました。実は、上記の2冊以外にも山田様のお書きになった作品は読ませていただいており、第一作目から「嗚呼、やっと私の心に様々なことを訴えかけてくれる作品に巡りあえた!!」と喜び一杯でした。 その中でも特に、『ロスト・オフィサー』は、戦争という悲惨な出来事を事実に沿ってかかれているだけでなく、私自身も常々感じている「日本、日本人に対する見解」が書かれており、共鳴でき、更に自分自身も「日本人としての生き方を再確認」できたような気がします。
 生憎、私の母は視力がかなり低下している状況ですので、山田様の作品を自ら読むということは、ちょっと困難なため、私がおおまかなあらすじを話してあげたところ、大変関心を持ち、「是非とも読みたい!!」と言っております。以前から一度メールにて作品の感想を送ろうと考えていたことが、今回の『ロスト・オフィサー』を読んで、やっと実現することができました。今後も、山田様の作品を楽しみにしております。



〔No.009〕 投稿日:2005年9月21日 投稿者:尚子様 (30代、女性)

 一気に読んでしまいました。とても色々なことを改めて考えさせられました。ちょうどあの後、沖縄戦のNHKの特集番組を見たり、考えるところが色々ありました。真美さんが実際に取材されて書かれているだけにその人物の苦悩だとか、佇まいが伝わる一冊で、圧倒的な躍動感と文章でありながら様々な事を考えさせられる読後感でした。
 外国で最初の教育を受けて帰国した時の違和感というのは私には常に自覚的にあるのですが、その中でも歴史では日本の教科書がとても浅薄で特につい先日の歴史である戦争、戦後について何も書かれていないというのは今でも印象が強く、それも今の若い人たちの歴史認識、日本という国の認識の幼稚さに繋がっているような気がしてなりません。何だかちょっと話がそれてしまいましたが、そんなことも改めて考えるきっかけになりました。本当に素敵な刺激的な御本、ありがとうございました。



〔No.010〕 投稿日:2005年10月1日 投稿者:大塩武様 (62歳、明治学院大学学長、男性)

 文字通りのご労作でした。一気に読ませていただきました。 就中25章は圧巻でした。決定的な資料を見出せなかったという事情もあって、山田様は断定を避けていますが、及川氏についての空白部分は実質的に見通せたように思います。及川氏をはじめとする将校たちはマーチソンを戦後も思うことで、自らの人生の暗澹たる闇の部分に光明を見出せたのかもしれません。25章を読めば、彼らがマーチソンをなぜ大切にしたか、その理由が見事に剔出されていることに気づきます。
 本書は、山田様のお人柄と、バランス感覚、そして丹念な資料探索に基づく構想力の賜物であると思います。
 話しは変わりますが、16章で明治学院出身の松原俊二氏に関わる記述は大いに関心を持って読ませていただきました。本学がこのような方を育てることができたとするなら、私たちは大いに誇りたいと思います。機会があれば私もその方の著書を読みたいと思いました。