2009年12月


1日●金澤さんによく似た人
広いホール、あるいはデパートのような場所。ピカピカに磨き上げられた白っぽい床の上を、私が足早に歩いて行くと、反対側から数人の男が歩いて来た。そのなかのひとりと目が合った瞬間、(あれ?)と思った。どこかで見たことのある懐かしい面影だったからだ。男のほうでも(おや?)という表情を浮かべている。しかし次の瞬間、男の姿は部屋の中央に設(しつら)えられた直径1〜2メートルの白大理石の円柱(大黒柱?)の陰に隠れてしまった。男の姿をしっかり見ようと思い、そのまま柱づたいに向こう側へ走って行ったが、何も見えない。どうやら男も私も、柱をはさんで同じ方向に回っているらしく、お互いの姿が柱に隠れて見えないのだ。そうやって2〜3周、柱のまわり回ったあと、ようやく男の姿が見えた。思ったとおり、カウラ戦争捕虜収容所のリーダーをしていた金澤さんだ。見違えるほど若返って50才ぐらいに見えるが、彼に違いない。金澤さんは、何かひどく言いたげな表情を浮かべてこちらを見ている。私も何か聞こうと思うのだが、声が出ない。そこで急に場面が変わってしまい、結局、私は金澤さんと言葉を交わすことが出来なかった。
【解説】 『生きて虜囚の辱めを受けず』や『ロスト・オフィサー』を読んでくださった方はご存知のとおり、金澤さんは近代史上最大の戦争捕虜脱走事件「カウラ事件」で首謀者とされた元陸軍准尉である。金澤さんとは何度かお目にかかり、文通もさせていただいたが、本当のこと(つまりカウラ事件の真相)の全部を語らぬままお墓に行ってしまった。少なくとも私はそう感じている。金澤さんが亡くなってから5年になるが、私は今も時々心のなかで、(金澤さんが隠していたことは何だったのだろう)と想いを巡らす。カウラ事件当時、金澤さんは20代。私が知っている金澤さんは80代だったが、今夜の夢のなかでは50代に若返っていた。何か言いたそうにしていらっしゃったが、何が言いたかったのだろう。とても気になる表情だった。



2日●モンテ・クリスト伯の出世
デュマの『モンテ・クリスト伯』を買おうと思い、古本屋に入った。店の主人が近づいて来て、「その人なら、少し前に侯爵に出世しましたよ」と言う。怪訝に思いながら顔をあげると、主人の手には『モンテ・クリスト侯』と印刷された本があった。
【解説】 伯爵が侯爵に格上げされるとは、ずいぶんおかしな話もあったものだ。それにしても、この夢を見たら急に『モンテ・クリスト伯』が読みたくなった。



3日●パフスリーブ
突然、パフスリーブの服(トップス)が猛烈に必要になり、街へ探しに出かけた。店に入り、鏡の前で色々と試着している。何枚かトライしたあと、細かなストライプの入ったグレーのトップスを買うことにした。その上にブルーのヴェストを着ようと思っている私。
【解説】 グレーのストライプのパフスリーブ。しかもその上にブルーのヴェストを着る? 個人的な趣味から言えば、現実にはありえない組み合わせだ。夢のなかの私はパフスリーブにこだわっていたが、どういう理由からだったのかは謎。



4日●小泉純一郎
目の細い、若い女性が近づいて来て、いきなり「小泉純一郎」と言った。何のことかわからず首を傾げていると、彼女はもう一度「小泉純一郎」と言った。私は女性の顔を見ながら(なんと表情のない、能面のような顔だろう)と思っている。
【解説】 まったく意味のわからない夢。女性の細い目が(悪い意味で)印象的だった。ちなみに私は(歴代首相の数名とは食事会などで面会させていただいたが)小泉さんには逢ったことがない。



5日●赤い曼荼羅
目の前の壁に一幅の曼荼羅が掛っている。それが不思議な曼荼羅で、中心の絵の部分がコンピュータ画面のように点滅したり、画像が自由自在に(電子的に)変化するのだ。いま、曼荼羅は全体に赤っぽい色彩に染まっている。本来、この曼荼羅は赤色でなければいけないのだ。私は心のなかで、(そうそう、いい調子!)と思っている。
【解説】 時間にして1〜2秒の短い夢。おそらく今日は何か長い夢を見て、これは夢全体のごく一部だったのに違いない。しかし「曼荼羅」「赤色」という2つの強烈なモティーフゆえか、この場面だけが印象に強く残り、他の部分はまるで思い出せない。



6日●忘れてはならない漢字一文字
誰かから、漢字一文字の言葉を託された。その言葉(つまり漢字)を、私は何が何でも覚えていなければならないのだという。ところが、忘れまいとする意志とは裏腹に、私の記憶はすぐに薄れゆき、たった一文字を覚えていられないのだ。その漢字には「田」の字が入っていたような気がする。「佃」または「宙」という字だったかも知れないが、自信はない。その漢字を覚えていなければいけない理由は何だろう。いつか誰かがやって来て、「あなたが記憶している漢字は何ですか」といきなり質問され、答えなければならなくなるのだろうか。そんなことを考えているあいだにも、私の記憶は薄れてゆく。
【解説】 私はときどき――おそらく1年か2年に一度ぐらいの割合で――漢字や言葉を覚えていなければならないという夢を見る。まるで罰ゲームのような夢だ。一体どうしてこんな夢を見るのか、理由はまるでわからない。



7日●馬に呑まれる
私は道路の端に立っている。目の前には4車線道路があり、その一部が地下トンネルのようになっている。私が立っているすぐ目の前が、トンネルの出口部分だ。ひとりの男がそちらへ近づいて行った、と思う間もなく、トンネルのなかから巨大な馬の頭が現われて、彼はあっと言う間に呑み込まれてしまった。
【解説】 そう言えば少し前に「呑馬術(どんばじゅつ)」という手妻(日本の伝統的な奇術)を見た。あの奇術では、手妻師(マジシャン)が馬を頭から丸呑みにしてしまったが……。今日の夢に出て来たものは、それとは逆バージョンの「馬に呑まれる男」だった。それにしても、夢に登場した馬の頭は大きかった!(頭頂から顎までの長さが5〜6メートルぐらい)



8日●虹色の何か
何かが上のほうでキラキラと虹色に光っている。それを見て私は忘れていた何かを思い出しかけるのだが、すんでのところで人から話しかけられたり、旅に出たり、何か別のことを始めてしまうので、思い出しかけた何かは心の奥へスッと姿を消してしまい、結局私は何も思い出せないのだった。
【解説】 今夜の夢には、もっと具体的な内容があったはずなのだ。つまり、「人から話しかけられたり」「旅に出たり」した部分にも、それぞれ長いストーリーがあったのである。ところがいざ目が醒めてみると、個別のストーリーはすべて忘却の彼方。覚えているのは虹色に光っていた何かのことだけである(「何か」が何であったかも思い出せないのだが)。残念。



9日●燃料を3分の2の価格で買う
前後関係は思い出せないが、気がつくと見知らぬ部屋で見知らぬ女性と向かい合っていた。彼女は見たところ30代半ばで、体形は太め。顔は平凡だが、どことなく剣があるというか底意地が悪そうである。彼女のすぐ隣にはアシスタントの女性がいたようだが、そちらは印象が薄く顔も覚えていない。女性はワインボトルのような形の瓶に入った液体を持っている。液体は何らかの燃料だ。ガソリン、灯油、軽油、ベンジン、シンナーなどに似ているが、そのうちのどれでもない、名前のわからない燃料だ。私はその燃料を必要としている。燃料の市場価格は瓶1本当たり3,000円するという。私は彼女に3,000円を手渡そうとした。すると彼女は意地の悪そうな表情を浮かべ、「私には特別なツテがあるから、燃料をタダで手に入れることが出来るのよ。だからアナタには少し安く譲ってあげる」と言った。私が「ありがとう。いくらお支払いすればいい?」と尋ねると、彼女は鼻先で笑いながら「自分で考えて。でも、あまり高い値段設定をしてしまうと、次回から支払いに苦労するわよ」と言う。私は心のなかで(それなら2,000円でいいかな)と思いながら、瓶の中身を半分ほど別の瓶に移し、瓶の空き部分にさらに別の液体を足す作業を始めた。この作業がどういう意味を持つのかはわからないが、この液体燃料を持ち出す場合には、そうすることが義務づけられているのだ。私が作業をしているあいだ、女性たちは腕組みをし、薄笑いをしながらこちらを見ていた。
【解説】 今夜の夢に登場した「意地悪そうな顔の女性」とよく似た顔の人を、現実世界でも知っている。しかし現実世界の彼女は、意地悪どころか非常に親切な人だ。もしや私の心のどこかに、彼女を疑う気持ちがあるのか。それとも彼女には実際、意地悪な部分が隠されているのか。あるいは、そのどちらも間違っているかも知れないが。――真実は謎。



10日●一直線に並んだ駒
見知らぬ部屋。外界の様子は見えないが、時間帯はおそらく夜だろう。すぐ近くに知人のT美さんの姿が見える。目の前の小さな机の上には、直径2〜3cmじきのような駒が25〜30個ほど、一直線に並んでいる。駒の3分の2ほどは白く、3分の1ほどは赤い。赤い駒は、すべて列の中央にまとまっている。どうやら全ての駒を赤くすることが重要らしい。私は黙ったまま駒を眺めている
【解説】 一瞬の夢だった。この前後にも夢の続きがあったのかも知れないが、思い出せない。おはじきにも見覚えはない。
【後日談】 夢を見た翌朝メールをチェックしたところ、なんとT美さんから連絡が入っていた。T美さんからメールをもらうなど滅多にないことなので、夢とのシンクロが少なからず興味深い。


11日●父から囲碁の指導を受ける
気がつくと父から囲碁の指導を受けていた。しかし碁盤は一般的な物ではなく、テレビの囲碁番組で解説者が使うような、大きな立て型のものだ。父は私に「なかなか筋が良いな。しかし、この場合は白と黒を逆に打った方がいい」と言いながら、盤上の黒石を1つ摘み上げて裏返しにした。すると裏側は白石ではないか。私は(あれ? これって普通の碁石じゃないや)と思い、(そう言えば父はもう亡くなったはずだが)と怪訝に思った。目の前の父は60歳ぐらいで、元気いっぱいだった。
【解説】 現実世界の父は、5年前に脳梗塞のため77歳で亡くなった。生前は関西棋院の長野支部長を務め、アマ囲碁7段(アマチュア最高位)だったが、残念ながら私は囲碁を習ったことがない。そのことが少し心残りだったので、今夜のような夢を見たのではないかと思う。しかし面白いことに、父の子どもたち(つまり私と弟)がまったく興味を示さなかった囲碁に、何故かうちの息子は小学生のときに忽然と目覚め、やがて日本棋院の藤沢一就先生の教室に通うほどになった。今はロンドンの大学でも囲碁部に所属している。よく「隔世遺伝」というが……遺伝子って面白いなと思う。



12日●有吉佐和子さんの文章に圧倒される
有吉佐和子さんの小説を読んでいる。ところが、そこに書かれた日本語が極めて難解で、ほとんど一言も意味を理解できない。まるで古代の日本語か宇宙語を読んでいるようだ。さすがは大作家の文章だと思うと同時に、自分の読解力のなさに呆然とする。傍らに息子がいたので、「この本、難解すぎて全然理解できないんだけど、何が書いてあるんだろう」と本を渡したところ、息子は涼しい顔で「どこが難解だって? ごく普通の日本語じゃないか」と言った。えっと驚いたところで目が醒めた。

【解説】 有吉佐和子さんは大好きな作家だ。高校時代にほとんどの作品を読んだ記憶があるが、実に凛々しい文章で、哲学と構成力があり、さすがと感嘆したものである。こんな夢を見たことだし、もう一度有吉作品を読み直してみよう。



13日●……
【解説】 今夜も間違いなく夢を見たのだが、朝の起床の仕方が悪かったというか(笑)、首をひねった瞬間に記憶がすっぽり抜け落ちてしまったような感じで、夢の中身を忘れてしまった。こういうことは、さほど珍しくない。しかし何かの拍子にまた思い出すこともあるので、思い出したら夢日記に付けることにしよう。



14日●楽しそうに別れ話をする一家
広々として風通しの良い風景。時間帯は夜だったと思うが、景色がハッキリ見えていたということは、昼間の場面が混ざっていたのかも知れない。1台の車が走って来る。乗っているのはSさん一家だ。夫妻は離婚について話し合っているらしい。離婚を切りだしたのは夫人のほうだ。ハンドルを握ったS氏が「まあ、とりあえず別居しようよ。正式な離婚については、追い追い考えればいいんだし」と言うと、助手席のS夫人も納得したようだ。後部座席では、20歳ぐらいのキレイな娘さんがにこにこ笑っている。要するに、そこにいる家族全員が幸せそうなのだ。私は(なんて変わった一家だろう!)と呆れ果てている。

【解説】 Sさんは現実世界における知人。プライベートなことは全く知らないが、少なくとも見た目はすこぶる仲の良さそうなご一家である。夢の最後に何かオチ(?)があったような気がするのだが、具体的な内容はどうしても思い出せない。



15日●カビルンルン
前後関係はよくわからないのだが、緑色一色の何かがあって、最初は単純に「キレイな色だ」と思っている。しかし、やがてそれがカビルンルンの色であると知り、少し意外に思う。そのあとで抹茶とカビが混ざってしまう騒動があり、抹茶を安全なところへ移動させるために着物にタスキ掛けで一仕事したような気がするが、その詳細は思い出せない。

【解説】 タイトルが「カビ」ではなく「カビルンルン」である理由は、夢のなかでカビを見た私が「あ、カビルンルンだ」と思ったから(笑)。つまり、少なくとも夢のなかの私はカビを敵対視していなかったようなのだ。何故こんな夢を見たのか、理由は謎。

【後日談】 夢を見た翌日の朝、柚子(ゆず)湯に入ろうと思い、柚子が入った段ボール箱を1週間ぶりに開けたところ、なんと中身が全部カビていた。この柚子は知人が庭で育てたもので、庭で収穫されたのは今から約10日前。それなのに早くも完璧なカビルンルン。柚子がこんなに早くカビてしまうものだとは知らなかった。さすがは無農薬栽培。そのへんで売っている商品には大量の農薬(含・ポストハーヴェスト)が施されているのだろう。ちなみに、現実世界でカビを見るのは久しぶり。カビの夢を見るのも、「夢日記」をつけ始めてから初めてだと思う。


16日●美人ストーカー
気がつくと私は道を歩いていた。背後に気配を感じハッと振り返ると、数メートル後ろをとても美しい女性が歩いていた。彼女の歩調は私と同じ。足を出すタイミングも、私が右足を出せば彼女も右足を、左足を出せば左足を出すといった具合にシンクロしている。私が止まると彼女も止まる。どうやら彼女はストーカーらしいのだ。しかし、なぜ私を追って来るのかは謎。彼女は黒のミニスカートを履き、白い上着を羽織って、髪を不思議なデザインに巻き上げている。満面の笑みを浮かべた彼女を見て、私は心のなかで(いよいよ美人ストーカーの時代到来か)と思っている。

【解説】 何ともおかしな夢だった。そう言えば昨日は面白い出来事がいくつかあったのだ。まず、夕方美容室へ行ったところ、担当美容師の高澤さんから「昼間に、マミリン先生のファンだという○○さんという女性がヘッドスパをしに来てくれましたよ。なんでも山田さんのホームページを読んで『マミリン先生と同じ美容室へ行きたい!』と思って来てくださったんだそうです」と言われた。それは光栄なことだと嬉しく思いながら髪をセットしてもらい、そのあとバーレーン王国の建国記念パーティーに出席したところ、今度はそこで出会った可愛らしい女の子(名門女子大生)から「きゃあ〜、キレイ〜。すごくキレイ〜」と褒めちぎられ(まあお世辞でしょうが(笑))、最後に行った銀座のバーでは、26年前から知っているママから「今夜のマミちゃんったら、すっごく綺麗だわ〜(ハァト)」と10回ぐらい言われた(爆)。ママは普段そういうことを言わない人なのに、昨日に限ってどうしたんだろう。というわけで、昨日はどうやら女性から好かれる日だったらしい。きっとそれでこんな夢まで見たのだろう。何というか、ムフフな夢である(再び笑)。ちなみに「黒いミニスカート+白い上着+不思議なデザインに巻き上げた髪」と言えば、バーレーン王国のパーティーでお目にかかったデヴィ夫人のファッションそのものだ。



17日●巨大な「おかめ」の面
最初に何かドラマティックでわくわくするような夢を見たのだが、残念ながらその部分は思い出せない。次にあらわれたのは、おびただしい数の「人間の顔」だった。それが生身の人間の顔なのか、絵画や写真なのか、彫刻なのか、お面なのかは謎。たくさんの「顔」のなかに、たったひとつ、ひときわ目立つ顔が混じっていた。それは「おかめ」の面である。縦横それぞれ2〜3メートルもある、大迫力の顔だ。「これこそ顔だ!」と思ったところで目が醒めた。

【解説】 そう言えば今年の正月は、京都の千本釈迦堂で「おかめ人形展」を見た(当日の日記はこちらからお読みいただけます)。新しい年が「おかめ」と共に始まって、年の瀬にもう一度「おかめ」の夢を見るのは、なんだかとっても縁起が良い。

【後日談】 この「夢日記」を書き終えてからmixiページに行き、昨日から始めたばかりの「mixi Xmas」というアプリにアクセスしたところ、最初に目に飛び込んできたのがナント「おかめの面が付いたクリスマスブーツ」だったのには意表を突かれた。クリスマスのアプリで「おかめ」の面を見るなんて、なんというミスマッチ、なんという意外性。ダブルで(正月の分も加えるとトリプルで)縁起が良い感じがする。


18日●……
【解説】 今夜は仕事でほぼ徹夜をしたため、夢は見ていない。


19日●頭が伸びる
私は乗用車に乗っているようだ。車内には別の人たちもいたようだが、誰だったのかは思い出せない。ふと気がつくと私の頭がグングン伸びて、自動車の天井に閊(つか)えてしまった。あわてて鏡に映してみたところ、七福神の寿老人(あるいは福禄寿)のような長い頭になっているではないか。そのあと自動車から降りたあとも、鏡を覗いて見るたびに私の頭は縦に伸びている。面白いこともあったものだと思い、その姿をデジカメに収めようとしているところで目が醒めた。

【解説】 現実に頭が延びたら大事件だが、夢のなかの私は少しも騒がず、むしろ淡々とこの出来事を楽しんでいるようにすら見えた。なんともおかしな夢である。



20日●娘の恥を言いふらす父親
知人のXさんの姿が見える。彼は娘さんのことを話している。「うちの娘は今、○○をしているんですよ」とXさんは言った。○○が何だったかは思い出せないのだが、それは普通ならば他人に話すことを憚(はばか)られるような、ひどく恥ずかしいことだった気がする(例えば「娘は売春をしています」といった類いの)。私は露骨に眉をひそめてXさんを見たが、彼はお構いなしに、そのあとも次々に娘さんの恥ずかしい素行についてあっけらかんとした顔で言いふらすのだ。私は心のなかで(この父親は自分の娘が憎いのか、それともただのバカなのか)と思っている。

【解説】 Xさんは知人のひとり。割とNGワードを口にしてしまうことの多い人だが、さすがに娘さんの不利になるようなことは現実世界では話さないだろう。こんな夢を見た理由は不明。



21日●生き倒れのお爺さん
いきなりお爺さんがあらわれて、苦しそうにもがきながら前のめりに倒れてしまった。私は驚いて「大丈夫ですか!」と言ったような気がするが、あるいはそれは私ではなく、誰か別の人だったのかも知れない。お爺さんを助けたのはひとりではなく、数人のグループだった気もする。おじいさんはハーフらしく、半分懐かしく半分エキゾティックな顔立ちをしている。眼鏡をかけていたかも知れない。頭は半分以上禿げていたと思う。知的で教養のある顔立ちだが、生活に困窮しているのか苦労が顔に深く刻まれていた。場面が変わり、私たちはお爺さんを見舞うためにお爺さんの仲間がいるという場所へ行ってみた。そこは工事人夫たちが休憩する飯場(はんば)のようなところで、ビックリするほど粗野な感じのする若い男が「ああ、爺さんならもうピンピンしてらあ」と威勢よく教えてくれた。私は心のなかで(ここはお爺さんのイメージに合わない場所だ)と思っている。
【解説】 一体なぜこんな夢を見たのだろう。考えられることその1は、最近ハマっている「庭爺」というmixiアプリ。その2は、少し前に友人の見舞いに行ったこと。その3は、最近連絡が取れなくなってしまった90歳の知人を心配する気持ち。そんな諸々のことが睡眠中に混じり合っておかしな夢になったのかも知れないが、もしかすると他にも原因があるのかも知れない。



22日●おかしなストックの持ち方
最初に坂本龍一さんの姿が見えた、と思った途端に場面が変わり、私はスキー・ゲレンデらしき一面真っ白な坂の上に立っていた。腹部(胃のあたり)にストックの持ち手部分が当たっていて、なんだか気になる。ストックは2本ではなく1本のみ使い、しかも手では持たずに腹部で支えて滑るのが、最近のスキーの流行なのだという。スキーもずいぶん雑技団っぽくなったものだ、と思ったところで再び場面が変わり別の夢を見たようだが、そのあとのことは何も覚えていない。
【解説】 実は、夢の最初に坂本龍一さんが登場したことを、起床した時点ではすっかり忘れていたのだ。しかし半日ほど経ってから、息子のブログに友人から寄せられたコメントを読んで突然この部分を思い出した。というのも、コメントには「(息子の)前髪が伸びて坂本龍一氏みたいですね」と書かれていたから。こんなふうに、ど忘れしてしまった夢の内容をあとからヒョイと思い出すことは少なくない。ストック云々の部分に関しては、何のことやら意味がわからない。



23日●ゴキブリの大群に大騒ぎする日本人
前後関係はわからないが、ドアの向こうに夥しい数のゴキブリ(あるいはそれに似た生物)がいる気がする。私はじっと息を潜めている。近くにいた数人の日本人がドアを開けてしまった。彼らは野生の勘を失っているので、ゴキブリがいる気配に気づかなかったのだ。ドアが開くや、たくさんの虫が恐ろしいスピードで這い出て来た。彼らも生きるのに必死なのだから仕方ない。それを見た日本人はギャアギャア叫びながら逃げ回っている。そのたびに彼らの靴の下で虫が踏み潰され、グチャッと潰れる音がする。彼らが逃げ惑えば逃げ惑うほど、靴の上に虫が這いあがり、彼らをさらに恐怖の底に陥れている。私は微動だにせず立ちすくんだまま、(こういうときは騒がないのが鉄則なんだよ)と思っている。それにしても、ゴキブリと見えたものは、よくよく見るとベージュ、黄色、グリーンなどさまざまな色の虫で、ゴキブリではないのかも知れない。これはもっとよく調査してみなければ、と思ったところで目が醒めた。
【解説】 ゴキブリの夢とは実に不気味だが、これは間違いなく、昨夜見た映画『アヴァター』からの影響であると思われる。夢のなかの私はゴキブリに襲われても冷静だったが、現実世界でこんな事態になったら、おそらく真っ先に猛ダッシュで逃げ出すだろう(昔から足だけは速いので(苦笑))。



24日●……
【解説】 起床するタイミングでパンダ(犬の名前)が私の顔面に飛び乗ってきて、その拍子に、見ていた夢の内容を全部忘れてしまった。よくあるパターン。夢をしっかり思い出せるかどうかは、起床時のシチュエーションによるところが大きいのだ。



25日●mixiアプリ運営委員会
気がつくと会議をしていた。ここはどうやらmixi運営委員会で、私たちは新しいアプリを作る検討会をしているようだ。眼鏡をかけ、髪を肩までのワンレンに伸ばし、グレーっぽいスーツ(スカートはマイクロミニ)を着た、現実とは似ても似つかぬ姿の自分が見える。脚を組み、ペンで何かを指しながら熱心に発言している自分と、それを見ているもうひとりの自分。
【解説】 (21日の日記にも書いたが)最近「庭爺(にわじい)」というmixiアプリにハマっている。そのコンセプトをごく簡単に説明すれば、「アイテム(植物や装飾品など)を増やし、庭を作りながらお爺さんの幸福度をあげてゆく」ことが全ての超マッタリ系ゲーム。そのアプリにハマりながら、「ここはああしたほうがいい」「ここはこう改善すべき」などなど、思うことは多いのだ。そのような気持ちが、「みずからmixi運営委員になる」という形で夢の中で開花したのだろうか(笑)。



26日●醜いけど可愛い
何かとてつもなく醜く、同時にとてつもなく可愛い生物が見える。私は「可愛い、可愛い」と言葉に出して、心の底から“そいつ”を絶賛している。“そいつ”は醜いからこそ可愛いのだ。醜くなければ、こんなに可愛いはずがない。しかし“そいつ”が何者なのかはわからない。
【解説】 夢のなかでは「可愛い」と連発していた私だが、目が醒めてみると、一体何を可愛いと思ったのか思い出せない。両手で抱えられる程度の大きさの(つまり仔犬大の)生物で、しかも仔犬以外の何者かだった気がするのだが……。



27日●庭爺のアイテム拾い
私は道を歩いている。鳥居があったので、肩に担いで家まで運びはじめた。どうやら私は庭爺になったらしいのだ。モアイ像を探していると、まったく予期せぬマリア像を発見した。私はマリア像も担いで家路を急いでいる。
【解説】 21日と25日にも書いたように、最近は「庭爺(にわじい)」というmixiアプリに凝っているのだが……まさか、夢の中で自分が庭爺になってしまうとは意外だった(しかも「婆」ではなく「爺」なのだから大笑い)。ちなみに、実際のアプリに「マリア像」というアイテムは存在しない(モアイ像は存在する)。25日の夢の解説に書いたように、私はこのアプリに対していくつか不満を感じていることがあり、そのうちのひとつが「アイテムの種類が少なすぎること」なのだ。実際には存在しないマリア像のアイテムが夢に現われたのは、そのような不満のあらわれかも知れない。



28日●数値が違うと文句を言う
前後関係はわからないが、1枚の紙があって、私はそこに数値を書き込んだ。5桁か6桁の数だったように覚えているが、詳細は不明。その紙を見知らぬ男性に手渡した。彼はプロジェクトのマネジャー(?)らしいのだが、彼は会議場のような場所でその数を読み上げる際に、私が実際に書いた数とはまったく異なるインチキの値を発表したではないか。私は憤慨して抗議している。男は涼しい顔で嘘をつき続けている。これは悪質だと思い、私も諦めずに抗議を続けている。
【解説】 今夜の夢の中で、私は久々に怒っていた。とはいえ、その怒りはさほど激しいものではなく、冷静に抗議しているという感じだったが。問題になっていたのが何の数値だったのかは謎。現実世界で数にまつわるトラブルは抱えていない。



29日●河童の川流れ
ガラスの内側に、昭和30年代そのままの商店街がある。私はガラスの外側におり、商店街を観察して何かを調べている。不意に「河童の川流れ」という言葉が脳裏に浮かんだ。(これだ!)と思いながらパソコンに向かったところで目が醒めた。
【解説】 何のことやらまったく意味のわからない夢。内容的には「ガラス越しに商店街を観察する」ことが夢のテーマなのだろうが、インパクトとしては「河童の川流れ」という言葉のほうがよほど大きかったので、そちらをタイトルにしておく。ちなみにこの言葉の意味は「猿も木から落ちる」とほぼ同じ。



30日●風船の中の無数の針
最初に極貧のインドの母子が見えた。ヨレヨレのサリーをまとった痩せ細った母親と、3歳ぐらいの裸の男の子。母親が赤い風船を差し出した。見ると、大きく膨らんだ風船の中には無数の縫い針が入っているではないか。私の傍らには2歳ぐらいの姿に戻った娘(LiA)がいる。私は娘に「風船には絶対に触れてはダメよ」と告げた。
【解説】 危険なのものに触れないよう、娘に忠告する夢。実際には24才の娘が2歳に戻っていたのが不思議だ。ちなみに『夢の事典』(日本文芸社)によれば「風船」の意味は「夢や別世界への憧れ/現実離れした考え方」、「針」の意味は「チクチクいたむ心の傷」とのことである。



31日●車窓の風景
美しい海外の街を旅している。ヨーロッパだろうか。目の前で風景が静かに流れている。と思った瞬間、ガラスに少女の姿が反射し、それが電車の窓だったことにようやく気づいた。何かドラマがあったように思うが、具体的な内容は思い出せない。
【解説】 しっとりと懐かしい気持ちになるような夢だった。旅をしている夢をよく見る私だが、今日の場合は「旅をしていた」というイメージだけが心に深く残り、窓に映った少女の姿以外には具体的なことは思い出せない。





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