2009年1月17日号(第320号)
今週のテーマ:「みしほ」と「おかめ」 |
★ 仏教エッセイ ★
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真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日更新)。第9回のテーマは「犬に引かれて」。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。 |
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今週は、東京都板橋区にある真言宗の古刹・安養院の平井和成御住職とご一緒させていただき、京都の東寺で7日間にわたって行なわれた後七日御修法(ごしちにち・の・みしほ)の結願(最終日)を参拝して参りました。
東寺は新幹線から見える五重塔が超有名ですから、皆さん前を通ったことぐらいはおありでしょう。
ここは空海が嵯峨天皇から下賜されたお寺(いわゆる官寺)で、高野山にある金剛峯寺と双璧をなす真言密教の根本道場の一つなんですよ。
今回行なわれた「後七日御修法」は、国家安泰と国民の幸わせを祈願するために834年に空海が始めた法要で、真言密教最高の秘儀とされています。略して「みしほ」と呼ばれることが多いようです。
「みしほ」は、もとは京都御所の中にあった真言院で行なわれていましたが、1883年(明治16年)からは東寺の潅頂院で行なわれるようになり、現在に至ります。
このことからもおわかりのように、後七日御修法の大きな目的は玉体安穏(ぎょくたい・あんのん)、すなわち天皇(玉体)のご無事をお祈りすることなんですね。
7日間にわたり、100名近いお坊さまによって厳修される法要では、御衣(ぎょい=天皇のお召し物のこと)を加持祈祷する儀式などが行なわれ、そして7日目の昼過ぎには、それまで儀式が行なわれていた部屋を1時間だけ一般公開してくれるのです。
この一般公開のことを後拝み(あとおがみ)といいます。
高野山の院生としては、ぜひともこの目で見ておきたい行事ですよね。
……というわけで、例によってとるものもとりあえず、日帰りで真冬の京都へ行って参りました。 |
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儀式を終えてお帰りになる天皇の勅使(右の黒い
車の中)を見送られるお坊さま(左のおふたり)
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東寺の五重塔
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「後拝み」の順番を待つ人々の行列 |
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後拝みに来た人には、「鎮護国家教王護国寺瑜伽
道場御修法御守」(1,500個限定)が配布されました |
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ところで今回、後拝みの列に並ぶために東寺のお庭をテクテク歩いていると、いきなり前方から、
「おおっ、マミリンさん?!」
という声がかかったではありませんか。
ビックリしながら声の方を見ると、そこに立っていたのはナント高野山大学の同級生で僧侶の樂さん(仮名、28歳)。
「あ〜っ、樂ちゃん! ひさしぶり! よく私のことがわかったね」
「そんなのカンタンさ。なにしろ、いちばんキレイな人を探せばいいんだから(笑)」
「あっ、そうか。そうだよね〜(笑)。そう言う樂ちゃんも、ますますハンサムに磨きがかかっちゃって(笑)」
「あっはっは……」
「うっふっふ……」
とまあ、お互いに思ってもいないお世辞の応酬となりました(爆)。
まっ、お坊さんと作家の会話なんて、大方こんなものでしょう(笑)。
しかし、何にしても、こんな霊験あらたかな場所で年の始めに同級生に会えるのは嬉しいものです。うっふっふ……。 |
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せっかく京都に来たのですから、東寺だけで帰ってしまうのはもったいないので、このあとは平等院と千本釈迦堂(正式名称は大報恩寺)にも立ち寄ってきました。 |

平等院にて。オフシーズンで人影まばら。京都を堪
能するなら真冬に限りますネ! 防寒のためユニク
ロのヒートテックを3枚重ねて着膨れてます(笑) |
さてさて今回の京都小旅行のハイライトは、何を隠そう、このあとに行った千本釈迦堂で見た珍しいおかめコレクションでした。
千本釈迦堂は、鎌倉時代初期に創建されたお寺。本堂は国宝に指定されていますが、この本堂こそは、かの有名な「おかめ」発祥の地なんですって!
「おかめ」と言えば、今日ではおかめ&ひょっとこコンビの片割れ(女性のほう)としてつとに有名ですよね。
下膨れの顔と、垂れた目、ふくよかな体型などから、めでたさの象徴として半分神様のような扱いを受けていますが、実は、おかめにはモデルとなった女性がいたのですって。その名も阿亀(おかめ)さん。
阿亀さんは、鎌倉時代に京都で活躍した棟梁・長井飛弾守高次の妻でした。
で、千本釈迦堂の本堂を建立するときも、高次が棟梁に選ばれたわけです。
名工と謳われた高次でしたが、「弘法も筆の誤り」と言うべきでしょう、4本与えられていた柱のうちの1本を、何を間違えたか短く切り過ぎてしまったのでした。
私は鎌倉時代にはまだ生まれていなかったので(爆)、詳しいことはわかりませんが、本堂の建立を請願したのが藤原秀衡の孫だったそうですから、ケアレスミスで柱を短く切ってしまった高次には、本来ならば厳しい刑罰(死罪とか島流しとか……)が待っていたのでしょう、きっと。
ところが、この様子を見ていた妻の阿亀さんがポツンと漏らした一言は、
「いっそ斗○をほどこせば」 (○は「木へん」に「共」)
斗○(ときょう)とは、斗(ます)と肘木(ひじき)を組み合わせて軒の荷重を支える建築様式で、柱の上部の装飾にもなります。
阿亀の言葉に助けられて、夫の高次は無事に大仕事を完成させることが出来ました。
ところが、これで「メデタシメデタシ」と行かないのが男尊女卑の時代の悲しいところ。
妻の阿亀は、出しゃばったことをしたと自分を責め、「棟梁は女から提言をされてやっとのことで仕事を終えることが出来た」という噂が立っては夫に申し訳ないとの想いから、上棟式も済まないうちに自刃してしまったというのです。
その当時は、阿亀さんのように夫のために生き夫のために死ぬ女性こそが女の鑑だったのでしょうが、なんとも悲しい話ではあります。
それにしても、後年の「おかめ」から発散される、あの幸福そのもののキャラクターとは裏腹に、本物の阿亀(おかめ)さんの人生は決して平穏なものではなかったということですねえ。
なお、全国で祀られている「おかめ」には、次のような効能効果があると考えられているそうですよ♪
○建築成就工事安全
○女一代厄難消滅
○商売繁盛 |
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おかめのモデルとなった元祖「阿亀」の
坐像(京都市上京区の千本釈迦堂)
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千本釈迦堂で開催中の「おかめ人形
展」を覗いてみると……
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この細長い和室が展示場の全景です
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いきなり大迫力!
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「招き猫」ならぬ「招きおかめ」さん。福耳です!
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おかめさんがいっぱい……
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右のおかめさん、父の姉(故人)にそっくり(驚)!
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この人形は知人にそっくり(驚×2)!
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上半身裸で魚(クジラ?)に乗るおかめさん。
このデザインなら五月人形として使えるかも?
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右の3体は、おっぱい全開。おおらかですね〜♪
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なぜか大事そうに××××を持つおか
めさん。(注/松茸ではありません)
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こちらはさらに豪快。このおかめさんは
一種の子授け観音なのでしょうか
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奥のふたりが抱えている物も、上のふたりに同じ
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それを見て「きゃ〜、エッチ」と笑っているわけでは
ないのでしょうが…… |
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せっかくなので、おかめさんと並んで記念撮影。
誰でもスッキリ「小顔」に撮れます(笑) |
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おびただしい数の「おかめさん人形」の内でも
いちばん迫力があったのはこの1体でした。
(しかも、手にはしっかり××××) |
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いやはや、大迫力のコレクションでした!
それにしてもちょっと不思議だったのは、効能の第一に「建築成就工事安全」と謳われている割に、ここに置かれたおかめ像には見るからに子宝祈願のものが多かったこと。
前出の阿亀さんが子沢山だったというような話はどこにも書かれていないので、「子宝に恵まれる」という効能は、後の世の人たちが幸せを求めて新しく付け加えた事柄なのかも知れません(多くの女性にとってこれは第一の悲願でしょうから……)。
ちなみに京都では今でも、上棟式を行なう際にはおかめのお面を御幣に付けるのがしきたりだそうです。
それにしてもワタクシ、今年は早くも七福神+吉祥天+おかめさんの合計九福神をお参り済みですよ♪
その御利益が早くも現われたのか、なんだか今年は去年よりパワーアップしている感じ。
このページを読んでくださっている皆さまも、どうぞご自由にパワーをお持ち帰りくださいネ!
そして、どうかますます元気いっぱいな毎日をお過ごしください。
ではでは♪ |
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪

結局このふたりは“寝正月”でした
(※前号までの写真はこちらからご覧ください) |
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