2012年1月


1日(初夢)●箱の周囲を「北」が回る
掌に乗るほど小さな箱があって、その表面には「北」という立体的な文字がぴったりと付いている。何だろうと不審に思いながら観察していると、「北」は少しずつ左のほうへ移動して、やがて箱の周囲をゆっくりと回り始めた。その姿は、どことなく蟹の横這いに似ている。まるで生き物のようだ。私は(これは一体どういうことだろう。なぜ「南」でも「東」でも「西」でもなく「北」なのか。箱の周囲を回ることの意味は?)などと考えている。その箱には光沢があって、金属的なシャープさを感じさせた。
【解説】 不思議なイメージの初夢だった。登場したのは「北」という漢字と「箱」だけ。私はもともと南方志向の人間で、方角も「南」がダントツに好きだ。しかし今夜の夢ではなぜか「北」が浮上した。示唆的というか、思わせぶりというか、年頭からいきなり気になる夢だ。


2日●無数のライトが点滅する迷路のような光景
私は暗がりの中で息をひそめている。目が慣れてくるに従い、闇の至るところで点滅する無数のライトが見えてきた。そこは幅2〜3メートルほどの通路で、両側の壁と言わず天井と言わず床と言わず、至るところに無数のライトが点滅している。まるで天の川の内側に入ってしまったような神秘的な雰囲気。その通路には(暗すぎて肉眼では見えないが)遊園地のジェットコースターのような乗り物があるようで、私はいつの間にかその乗り物に乗り、座ったままの姿勢で滑るように前進していた。何メートルか進んで壁に突き当たると、右に折れて次の通路を進み、さらに何メートルか進んで壁に突き当たると今度は左に折れて次の通路を進み……という感じで次々に角を曲がって通路を進んでゆくのだが、どの通路もあり得ないほど美しく妖しい光で満ち溢れている。まるで宇宙の果てへと通じる迷路、あるいは異次元空間への入り口のように魅力的で、少し怖く、それでいて立ち去り難い引力を秘めた光景。私はこのままどこかへ連れ去られてしまうのかも知れないが、こんな美しい光景の中にいられるならば「それでもいいかも」と思っている。

【解説】 闇の中で瞬いていた無数の妖しげな光。この世のものとも思われない恐ろしいまでの美しさ。人が見てはいけない領域に立ち入ってみたような、危ないほど惹かれる夢だった。それでふと思ったのだが、もしも死ぬ前に見る夢を選べるならば、そのときは命と引き換えにしても惜しくないほど極限まで美しい風景を見て、そのままあの世へと直行したいものだ。まあ、それはずっと先の話だけれども。



3日●スパイの胴体を切断・縫合する

前後関係はまったく思い出せないが、私はスパイ、あるいはスパイにきわめて近い人物なのだと思う。すぐ傍らには、国籍も性別もバラバラのスパイが数人いる。一人は金髪美女、もう一人はロシア人っぽい男。あとのスパイに関しては具体的な姿を思い出せない。これがどのようなミッションであるかは不明だが、スパイ達は(情報を得るために)ターゲットとなる人物を捕えたようだ。スパイとターゲットは、それぞれ麻酔で眠らせられた。どうやらここは手術室なのだと思う。まずはスパイの胴体が臍のあたりで真っ二つに切断された。次にターゲットの胴体が、大根でも切るように輪切りにされ、幅10〜15cmほどの一切れが取り出された。次に、あらかじめ二つに切っておいたスパイの上半身と下半身の間に輪切りにされたターゲットの腹部が差し込まれ、縫合された。二人のウェストサイズが全く違うため、最初はその部分がひどくチグハグなのだが、これはやがてジャストフィットするようになるそうだ。同じ手術が何組かのスパイとターゲットの間で行なわれ、すべての手術は成功した。何日か、あるいは何時間か、どのぐらいの時間が経ったのだろう、暫くしてスパイの肉体を見せてもらったところ、ウェスト部分はすっかり馴染んでおり、他人の胴体の一部が差し込まれているようには見えない。手術は大成功だ。この手術によって敵から重要な情報を得ることが可能になるらしいのだが、それがどのような内容なのかはわからない。スライスされたターゲットの肉体が然るべき処置を施されて再生したのか、あるいは二つに切られたまま捨て去られたのか、そのあたりは不明。

【解説】 文章に書いてみると随分エグい夢である。しかし実際に夢を見ているときは、少しも気持ち悪いとは感じなかったのだ。そもそもこの夢には血が1滴も登場しなかったし。今夜の夢にはもっと長大なストーリーがあったような気もするが、目が醒めてみると思い出せるのはこれだけ。



4日●アンバランスなプロポーション

目の前にパソコンが開かれていて、画面上には2枚の画像が並んでいる。ひとりの人間の顔と全身(あるいは上半身と下半身だったかも知れない)が別々に写っているのだが、そのプロポーションが明らかにおかしい。体に対して顔が(あるいは下半身に対して上半身が?)大きすぎるのだ。私はその画像を編集しようとしているのかも知れない。

【解説】 夢から醒めてふと思ったのだが、今夜の夢は昨夜の夢とどこか似ていてようだ。昨夜の夢のなかでも、2人のスパイの胴体がつなぎ合わされ、その部分のサイズがちぐはぐになっていた。これはどういう意味なのだろう。自分の肉体にも関係のあることなのだろうか。例えば最近感じるのは、加齢による肉体の変化には、人間は意外にアジャストできるということだ。つまり変化に「合わせる」ことができるのだ。若い頃はそのことがよくわからなかったが、自分自身そろそろ老化が始まっているのであろう年齢になってみると、「それに見合った肉体の使い方・考え方」がちゃんと現われるものなのだ。昨夜の夢でも、最初はちぐはぐだったスパイの体が、やがてぴったりと辻褄が合っていたではないか。人生も、要は辻褄なのだと思う。そのあたりの心身のフレキシビリティーを持つことがとても大切で、それがないと中年期に入ってからみずからを否定し、自殺を考えたりするのかも知れない。要するに「いい加減」に生きることがとても大切なのだ。……というようなことを考えさせてくれる今夜の夢であった(A型の長野県人なので、いちいち理屈っぽくてスミマセン(爆))。



5日●印象的な目をした人

印象に強く残る人(おそらく男性)。とりわけ、その目が印象的だ。彼が敵なのか味方なのかはわからない。

【解説】 今夜の夢には何か長大なストーリーがあって、「印象的な目をした人」が登場したのはその中の一瞬だったと思う。本当はもっと大切な内容が含まれている夢だったのだ(事実、眠っている最中に「これは重要な夢だから忘れてはならない」と強く思った記憶もある)。しかし残念なことに目が醒めてみると何一つストーリーを覚えていない。



6日●スパイの写真

私はひとりの男の写真を見つめている。この男は某国のスパイなのだと思う。見た目はロシア系あるいは北欧系だ。色素が薄く、全体に白っぽい感じ。髪は綺麗な金髪。その柔らかな色合いの中で不似合いなほど力強い「射るような眼力」がこの男の特徴だ。

【解説】 今夜の夢にも何らかの具体的なストーリーがあった気がする。ところが山小屋の屋根に積もった大量の雪が恐ろしい音を立てて下ちたため、その音で飛び起き、拍子に夢の内容をすべて忘れてしまった。それでも男の姿だけは忘れなかったのだから、こいつ、かなりしぶとい男である。ところで今月3日・4日・5日・6日に見た夢をこうして並べてみると、もしやそれぞれの夢は同じ一つの夢の断片に過ぎないのではないかという感じがする。登場人物はスパイで、私は彼を観察する役回りだ。私の日常は(日本にいても)おびただしい数の外国人に囲まれている。しかしそのなかには、夢に現われた男は今のところ見当たらない。あるいは、これから現われるのだろうか。ちょっと楽しみ。



7日●子ども達の力でゲームに圧勝する

昭和30年代後半のようなイメージの街。闇のなかを移動している私達。一緒にいるのは家族だと思うが、なにしろ鼻をつままれてもわからないような暗闇だ。辛うじて姿が見えているのは息子のNASAだけ。見知らぬ建物にたどり着き、理科の実験室のようなUFOの内部のような不思議な部屋に入った私達は、まず直径5センチほどの球を集め始めた。球はベージュ色で、おそらく木製だったと思う。球を早くたくさん集め、縦5個×横5個の台の上に先に載せることができたチームから先攻となるらしいのだが、そのあたりの細かな決まりは私にはよくわからない。息子達が理解しているようだから、私は彼らに従うだけである。「今回のゲームでは黒服禁止ね」と私が言い、息子達も頷いた。息子とハイタッチし、ゲーム開始となったようだ。夜闇のなかを随分歩いた。30分は歩いただろう。そのあとどのような経緯があったかは全く思い出せないのだが(何か面白いことがたくさんあったような気がする)、私達のチームは2位に大差をつけてぶっちぎりで優勝したようだ。祝杯を挙げ、1杯飲んだところで猛烈に眠くなって意識がなくなってしまった。気がつくと自宅(と言っても見知らぬ家なのだが)で寝ており、周囲に家族がいる気配がした。誰かが「あれ、マミちゃん寝てるんだ」と言い、息子が「うん、祝杯を挙げたきり寝ちゃったよ(笑)」と答える声が聞こえた。私は安心して眠り続けることにした。

【解説】 「夢の中でまた眠る」という、一種の「劇中劇」のような構成になった夢だった(あるいは映画『インセプション』のように眠りが何層にもなっているというか……)。今夜の夢を簡単にまとめれば、「ゲームでぶっちぎりの圧勝」「子ども達が頼りになる」「彼らに任せておけば大丈夫」。これに尽きると思う。そろそろ世代交代。私は隠居(爆)……というのは気が早すぎるにしても、もう少ししたらすべて彼らに任せて私は好き勝手やって暮らしていけばいいや、と思わせてくれるステキな夢だった。あ、今もさんざん好き勝手してましたか? こりゃ失礼しました(笑)。唯一気になったのは「黒服禁止令」。うちの家族は黒服(特に黒のタートルネック)が大好きで、全員がバラバラの場所でバラバラに着替えても、いざ集合してみると一人残らず黒のタートルネックで集まってくる。今夜の夢で私はわざわざ「黒服禁止」と言っていたから、次回このメンバーで集まるときは、私だけでもちょっと色を外してみようかなと思う。



8日●……
【解説】 今夜は何やら細かな夢をゴチャゴチャたくさん見たような気がするのだが、どれ一つ覚えていない。平凡な夢ばかりだったようだ。


9日●馬を見に行く

私は馬を見に行った。どこへ行ったのかは不明。同行者がいたのかどうかも不明。そこは競馬場かも知れない。落ち着いた暗い部屋。毛並みの良い、大人しいサラブレッドを撫でてやると、少し汗ばんでいた。栗毛色の首がとても美しいと思う。

【解説】 今夜みた夢のうち、覚えているのは馬の場面だけ。あとは忘れてしまった。そういえば昨年の暮れに生まれて初めてご招待で競馬を見に行った。中山競馬場の貴賓席である。そのときのイメージが今夜の夢に現われたのだろうか。



10日●隣人は前科二犯

隣の家に誰か越してきたようだ。ここは昭和の残像のようなイメージのアパートで、私が住んでいるのは3階から5階ぐらいの高さのフロアだと思う。「隣人は前科二犯らしいよ」と誰かが教えてくれた。あるいは誰から教わったのでもなく、それは単に私の直感だったかも知れない)。「そんな物騒な人が越して来るのなら、私がよそに引っ越そう」と思ったところで目が醒めた。

【後日談】 この夢を見た数日後、電車(指定席)に乗った。詳細はここには書かないことにするが、同じ車輛に少し様子の変わった男性が乗っていて、降車するまでずっと床を踏み鳴らしながら「俺は前科二犯だ」と周囲に聞こえるような大声で独り言を言い続けていた。夢はこのことを予言していたのだろうか。



11日●発展途上国で「イチ!」と声をかけられる

私はどこか発展途上国に赴いて仕事をしているようだ。ほかにも日本人の仲間がいたかも知れない。現地の人は皆、日本語の「1(いち)」という言葉を知っているらしく、私を見るや、すぐに人差し指を立てて満面の笑みを浮かべ、「イチ!」と声をあげるのだ。デコボコの未舗装の道の向こうから、もうもうと砂埃をあげて大型バスがやって来た。乗っているのは現地の人々だ。黒人が多いが、ほかにも有色人種が何人かいて、日本人も2〜3人混ざっていたようだ。全員が私のほうを向き、歯を見せてニッコリ笑いながら「イチ!」と叫んでいる。これは最高の挨拶なのだと思う。あと何日ぐらいここに滞在するのかは自分にもわからないが、おそらく長期滞在になるだろう。私はここの生活が気に入っている。

【解説】 「イチ!」という元気な声がとても印象的な夢だった。夢から醒めた瞬間、これは「1番」を意味しているのだろうと不意に思った。今更だが、蓮舫さんの発言「2番じゃダメなんですか」への返歌(笑)ということで、「はい、2番じゃダメなんです」と夢は主張していたのだ、きっと。



12日●女子高の同窓会

女子高時代の友人たちと一緒に、長野県北部の野尻湖近くに来ているようだ。私の近くには数人の女友達がいて、とても楽しい気分。しかし不思議なことに彼女たちの顔を見た記憶はない。私自身は15〜16歳ぐらいの肉体に戻っていた気がする。

【解説】 先週、明治学院大学時代の同期の女の子から電話がかかってきて、勢いで「3月にプチ同窓会をやろう」という話になった。卒業から30周年。ちょうど良い区切りだ。それとは別に来週は、息子が卒業したアメリカンスクールのPTAのママ達と一緒にマジックショーを見ながらお食事する予定もある(この学校は子ども同士も仲良し、ママ同士も仲良し、家族のようなつきあいなのだ)。それらのワクワクするような気持ちを、今夜の夢は先取りしていたのだろう。折角だから夢に登場した「女子高時代の友達」との同窓会も、そろそろ実現しなくては……。



13日●男性社員の静脈を調べる

広いフロアに、デスクが50〜60ほど並んでいる。ここは会社らしい。明るい活気に満ちている。大勢の人の中にK(むかし仕事で付き合いのあった最悪の男)の姿が見えたときは、正直、驚いた。あんなヤツも同じ職場にいたとは、まったく心外だ。ほかにも数人の古い知り合いの姿が見えたのだが、Kの姿が印象的すぎて、あとの顔ぶれは忘れてしまった。私はなぜか数人の男性社員を選び、彼らの右腕(下腕部)の静脈の状態を調べている。そして、いちいち声をあげては「うわー、血管、太いですねー!」などとコメントしているのである。Kのところへ行って「すみませんが右腕を見せてください。静脈を調べているので」と頼んだところ、Kは嬉しそうに笑ってシャツの袖をめくって見せた。私は心の中で(コイツの近くに来るだけでもイヤ!)と悪態をついている。静脈の調査結果を何に使ったのかは不明。

【解説】 夢を見ているときは結構楽しかったのだが、目が醒めてみるとおかしな内容である。全体に明るいイメージの中に、一人だけイヤなヤツが混ざっているという取り合わせも理解に苦しむ。ちなみに私は静脈フェチではない(笑)。



14日●継承

昭和初期の日本の家族を思わせる人々が、私のほうを向いて笑いながら千切れるほど手を振っている。赤ちゃんを背負った母親を中心に、6〜7人の子どもたちがいただろうか。あふれる笑顔。質素ながらも清潔できちんとした身なり。おかっぱ頭。学生帽。後方に見えているのは田んぼと土手のような風景だ。その風景には色がなく、モノクロだったような気がする。「継承」という漢字2文字の言葉が私の頭の中をぐるぐるとまわっている。そうか、この人たちは私の先祖かも知れない。そう思ったところで夢から醒めた。

【解説】 今夜はこのエピソード以外にもたくさんの短い夢を見たような気がする。そして、それらすべてのテーマは「継承」だったと思う。今夜の夢には懐かしさと訓戒―つまり過去を優しく懐かしむ気持ちと、現在の日本人に対して「今のままで良いのか」と問う気持ち―の両方が込められていたかも知れない。



15日●修学旅行

見知らぬ場所。それがどこかは全くわからないが、私は修学旅行に来ているのだと思う。懐かしい感情。セピア色の風景。

【解説】 今夜の夢には、きっと具体的なストーリーがあったのだと思う。しかし思い出せない。誰かそばにいたのだろうか、いたとしたら誰だったのか、それも思い出せない。



16日●「共同学」の一環として数学の授業を受ける

「共同学」という新しい学問ができたようだ。ここでは異なる分野を幅広く学ぶのだという。(それは「学際的」という意味とは違うのかな)と思いながら私は講義を受けている。それは高等数学の授業だったと思う。

【解説】 「共同学」などという学問分野は聞いたこともないし、実在しないと思われる。それにしても、夢の中とはいえ数学の授業を受けていた自分自身に「やれやれ、ご苦労さまでした」と声をかけてあげたい(苦笑)。



17日●何もかもがペアの世界

気がつくと至るところに「ペア」のイメージがあふれていた。恋人。夫婦。2個で1セットになるもの(イヤリング、手袋、靴、箸など)。一組のご夫妻が困り果てたような瞳で私を見ている。まるで助けを求めているようだ。どうやら彼らは隣の夫妻と近所づきあいが上手くいっていないようなのだ。彼らは60代と思われる白人で、ふわふわとなびく金髪が妙に印象的である。私は遠い風景を見るような気持ちで彼らを見ている。

【解説】 何のことか意味のわからない夢。登場したご夫妻にも見覚えはない。



18日●消えない霧

パソコンの画面に「霧」という文字があらわれた。消そうとするのだが消えない。deleteキーを押しても、ウィンドウを新しくしても、再起動しても、何をやっても「霧」は消えない。こうして「霧」という字を長く見続けているうちに、私は何か心がぞっとするような静かな恐ろしさをこの文字の字面の中に感じた。

【解説】 夢から醒めてつくづく見たら、気のせいか「霧」がなんとなく恐ろしい文字に見えた。いや、「きり」という音が恐ろしいのかも知れない。それで急に思い出したが、子どもの頃、私は花札の「桐の二十」をなぜか「霧の二十」だと信じ込み、そこに描かれた鳥と黒っぽい風景を不気味に感じていた。あの鳥が神々しい鳳凰であったことを後年になって知ったが、いま見ると「不気味」と言うよりはむしろ「コメディータッチ」な鳥に見えなくもない。夢になぜ霧があらわれたのかは謎。


19日●哲学的かつ魔術的なメモを発見する

パソコンを開いたところ、そこに見慣れぬメモを発見した。どうやら自分が書いたものらしいのだが、いつ書いたのやら全く記憶がない。そこには、何か非常に不思議な、意味をなさない、それでいて哲学的に見える不思議な長文が綴られていた。狂人が書いた文章にも見える。あるいは強力な魔力を秘めた真言(マントラ)か。絵文字や顔文字も混ざっていたような感じだが、それらも含めて何もかもが意味深長なのだ。これは覚えておかなければと思い、私は瞼を瞬(またた)いてシャッターを、目の奥にあるカメラにそれを記憶させた。

【解説】 またしてもパソコンの夢である。夢の中で、何か不可思議な長文を目にしたことは確かなのだが、その内容を何一つ思い出せない。あるいは私の脳のどこかには記憶されているのだろうか。まあ、どちらでもいい。必要なときが来れば思い出すだろうから(笑)。



20日●内輪揉めする愚かな姉弟

私は10人乗りぐらいのバンに乗っていた。運転しているのはA子さんの弟のT男。近くの席にはA子さんがおり、憤慨したような口調でいきなり私に向かって「T男はひどい人だよ、私とS子のことを裏切ってこんなこともした、あんなこともした」と愚痴をこぼし始めた。T男とS子はそれぞれA子さんの弟と妹である。A子さんはと言えば、もう孫が何人もいるような年齢の女性である。T男がひどい人間であることは私も昔から知っていたので、特に驚きもせず「ああ、そう。大変でしたね」と形だけ相槌を打ちながら、心の中では(A子さんに「T男はひどい人間だ」と前に教えてあげたのに、そのとき私の言葉を無視したじゃないの。自業自得よ)と思う。車が停まり、そこへA子さんの息子のH男さんが乗車してきた。私は今の話をH男さんに伝えようとした。するとA子さんはすぐに「やめてちょうだい。H男にはこの話はしないで」と言う。私は(おかしな女だ)と思い、A子さんとはこれ以上深く係わらないことにした。

【解説】 グチャグチャした人間関係が果てしなく広がってゆくような夢だった。今夜の夢に一言でテーマを付けるとすれば「愚か」。ちなみにA子さん一家は実在。悪い人たちではないのかも知れないが、「物事の真実を見ようとしない浅い人たち」というのが私の感想だ。なぜ夢に現われたのかは不明。



21日●実験成功を願う科学者を勇気づける

カプセルホテルあるいは宇宙船の中のようなイメージの場所。通路を歩いているとカプセルの中から「この次の実験はきっと成功する」という男性の声が聞こえた。小窓から中を覗いたところ、知り合いの科学者が眠っていた。寝言を言ったらしいのだ。私は即座に「博士、次の実験はきっと成功しますよ!」と声をかけた。科学者は眠ったまま笑みを浮かべて嬉しそうに「はい」と答えた。

【解説】 今夜の夢に登場した科学者は、現実世界でも何やら手の込んだ実験をしているようだ。その話を聞いていたので、応援したい気持ちが夢になった現われたのだろう。


22日●偽物っぽい板チョコ

前後関係がよくわからなのだが、最初に何かが見えて、私は(これは違う。却下)と思う。そのあとに現われたのはほぼ正方形(正確には縦4×横5ぐらいの比率)の黒い板チョコだった。とてもリアルだが、これはプラスティックか何かで出来た偽物だと思う。私は(前にもこれと同じものを見たな)と思っている。

【解説】 またまた意味不明な夢。私はチョコ中毒と言っても良いほどのチョコ好きで、毎日1枚は板チョコを食べる(しかも朝の起き抜けに)。しかし今夜の夢が何を言いたいのかはサッパリわからない。


23日●講演旅行先で私について来る飛行物体

私は誰かに招かれて旅をしている。講演旅行かも知れない。アカデミックな雰囲気。行った先で感想を聞かれ、「アレがいいですね」と答えた。「アレ」とは、先刻から私の頭の後ろの中空をふわふわと彷徨いながらついて来る2個の飛行物体(UFOまたは風船?)のことである。それらは直径30〜40cmほどの縦方向にやや潰れた球形で、色は1つは赤、もう1つは青だったと思う。しかし、それらが何を意味しているかは全くわからない。

【解説】 今夜の夢には、もう少し具体的な内容があったのかも知れない。しかし思い出せるのは上記の部分だけ。


24日●青い宝石の付いた綺麗な入れ物

名刺よりも一回りほど大きい入れ物が見える。黒地に、青い宝石が7〜8個あしらわれていて、それが言葉では言い表せないような喜び・神々しさ・神秘さ・希望を体現している。夢はこの入れ物から始まり、やがて家族がテーマの壮大かつ感動的な物語に発展していったのだが、なぜかストーリーは思い出せない。

【解説】 今夜の夢は何やら感動的で、目が醒めてゆく瞬間に(これは今年に入ってから見た夢の中で最高だ)とさえ思ったのだ。ところが残念なことに後半の内容をすべて忘れてしまった。最初に登場した青い宝石が何しろ強く印象に残っている。起床してから画像検索したところ、どうやらあれは瑠璃(ラピスラズリ)だったようだ。そういえば私のデスクの上には何年も前から小さな瑠璃が載っている。これを今年の守護石にしよう。


25日●公衆浴場で変わった人たちを見る

公衆浴場のような場所。大きな湯船がたくさん見える。寝ている人など変わった人がたくさんいる。面白くて不思議なイメージ。

【解説】 変わった人がたくさんいたように思うのだが、どのように変わっていたのかを想い出せない。自分が入浴していたのかどうかもわからない。


26日●島田陽子さんのニュースに驚く

テレビでニュースを見ていたら、女優の島田陽子さんが後期高齢者だという。「えっ、あんなにお綺麗なのに、もうそんなお年なの?」と驚きながら、歳月は流れたとしみじみ想っている私。そこにインド人の嫌な男がチラチラと介在していたような気もするのだが、何がどう嫌な男なのかはわからない。

【解説】 藪から棒な夢だった。今、島田陽子さんについて調べたところ、1953年生まれの58歳だそうだ。後期高齢者にはまだまだ遠い。夢とはいえ大変失礼いたしました。インド人云々は何のことやら意味がわからない。


27日●子ども達の母校の情報を知ろうとする

AES(インド時代にうちの娘と息子が学んだインターナショナルスクール)の卒業生だけが読むことのできるサイトがあって、そこに何やら非常に面白いインフォメーションが掲載されているという。私はその情報を見たいと思い、"I'm the mother of AES alumni...(私はAES卒業生の母親で……)"とメールを書きかけた。しかしすぐに別の言葉に書き換えようと思い、いま書いたばかりの文字を消した(それが現実にはあり得ないハイテクな消し方だったのだ。具体的にどんな消し方かは忘れてしまったが)。それから私は新たに"I'm an alumna of AES.(私はAESの卒業生です)"と書き直した。

【解説】 そういえばこの夢を見る数日前、AES時代にPTAでご一緒だった女友達(香港系中国人で現在はアメリカ在住)と13年ぶりに(ネット上で)再会した。おそらくそのことが今夜の夢につながっているのだろう。しかしなぜ自分自身が卒業生であるかのごとく振舞おうとしたのか、理由が理解できない。


28日●「母性」と「移動」のイメージ

ピンクとオレンジと黄色のイメージが並んでいる。横方向に並んだ四角の連続。右へ行けば行くほど未来に近づく。私(たち)は移動し続ける。ホテルまたは仮の宿のイメージ。女性のグループ(母親の集団)。暖かさ・明るさ・安心。

【解説】 今夜の夢にはかなり具体的なストーリーがあったように思うのだが、思い出せない。何か楽しい夢だったことは間違いないのだが。


29日●……

【解説】 今夜も夢は見たはず(というか見た記憶がある)。しかし、なぜか内容を思い出せない。


30日●近未来に不可能になる「それ」

近未来のいつか、「それ」は不可能になるらしい。「それ」がダメになったときのための対処方法を今から考えておく必要がある。しかしほかの人達は未来において「それ」が不可能になることを少しも知らないようだ。のんきなものだ。未来に関する情報を他者に与えることは禁じられているため、私は黙したまま準備を進めている。ただ、具体的に未来のどの時点で何が起こり、何が不可能になるのかは(感覚としてはわかるのだが)言葉にできない。「一辺が1メートル前後の箱(立方体)のようなもの」がこの件に深く関わっていると思う。このあとも長い夢を見て、それはとても幸せな気持ちになる内容だったのだが、そちらのストーリーは全く覚えていない。
【解説】 ぼんやりとした未来予知の夢だったような気がする。未来において不可能になる「それ」が何なのかは、よくわからない。しかしその答えは、現実世界において「私が今していること」の中にあるような気がする。つまり、私は本能的に「それ」が不可能になることを知っていて、既に着々と準備を進め、自衛策を講じている気がするのだ(例えば娘夫妻が国外に住んでいること、私自身が博士課程で学んでいること、息子がITを学んでいること、都会から遠く離れた場所に山小屋を持っていること、インドに太いパイプを持っていること等が、すべて「それ」に直結しているように思えてならない)。おかしな話だが、今夜の夢は人類の未来に深く係わっている気がする。単なる直感だけどね。


31日●突然の上昇気流

ユーミンの『ブリザード』が遠くのほうから風に乗って聞こえてくる。誰かが何かを言った、その途端、大地の底からいきなり上昇気流が起こって、私は凄まじい勢いで上空に飛ばされていた。とはいえ風の冷たさはなく、髪が乱れたような感じもしない。先ほどの声の主が今度は私のすぐ耳元で「これはエルニーニョ現象の真逆のフェノミナンです。長い目で見ればやはり地球は温暖化に向かいます」と言った。私は(なるほど)と思いながらさらに上空へと飛ばされている。
【解説】 あの上昇気流、今にも龍が出てきそうな夢だった。出て来なかったのは実に惜しい。いや、実際すぐ近くに龍はいたのかも知れない。そういう「予感」がする夢だったのだ。そういえば「エルニーニョ現象の真逆のフェノミナン」とやらについて質問するのを忘れてしまった。一体何という現象なのだろう?




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