2012年7月


1日●ハサミと電気
気がつくと私は、工学博士のAさんと一緒に連絡通路のような細い廊下を歩いていた。通路が終わった先には小さなコーナーがあって、そこに知人のアーティストM子さんが座っていた。その姿はちょうど、デパートの一角に出店している怪しげな占い師のようだ。私のほうからは敢えて何も話しかけなかったのだが、M子さんが突然、それこそ挨拶も抜きに本題を話しかけてきた。それが何とも奇妙な話で、テーマは「ハサミと電気の相関関係について」なのである。そういえばM子さんはハサミを使ったアートが得意だったかな、と思う。しかし彼女が力説しているのは電気に関するオカルト的なエセ科学なのだ。T大工学部で電気を専攻したAさんは、呆れ返ったようにM子さんに反論しかけた。私はあわててそれを制止し、Yさんを連れてその場から逃げ出した。ずいぶん遠く離れてからAさんが「何ですか、あのエセアーティストは?」と呆れたように言うので、私は「気にしないでください。あの人はハサミのアーティストですけど、電気に関してはド素人ですから」と答えた。
【解説】 全く藪から棒な夢であった。AさんもM子さんも実在の人物だが、実際のM子さんはハサミを使ったアーティストではない。しかし少し前に某所でM子さんと久々に会い、ずいぶん雰囲気が(悪い意味で)変わってしまったことに驚いたばかりである。その驚きが今夜の夢になったのかも知れないが、それにしても「ハサミ」と「電気」がどこから出て来たのかは謎。


2日●トンチンカンな目の男に出遭う
小さなガラスの部屋。その中は機械だらけで、たくさんのコードがかなりグチャグチャと絡み合っている。そこに、目のおかしな中年男がいた。いわゆる「トンチンカンな目」というやつだ。この男の目は宇宙を見ているのかも知れない。ガラスの部屋も謎だらけだなと思う。
【解説】 目が醒めてみるとこれしか覚えていないのだが、今夜の夢には「ガラスの部屋」が登場するまでの前段階があったような気がする。目の印象的な男が出てきたが、彼の目を見た瞬間に私が連想した「トンチンカンな目」とは、1979年にマナが歌った『イエロー・マジック・カーニバル』に登場する歌詞である(こんな曲です)。確かあの歌は「トンチンカンな目見たらダメよ、イエロー・マジック、二度と帰れぬ」と言っていたような……。


3日●不潔な感じのする母娘
見知らぬ母と娘が見える。ひと目見て私は嫌悪感を禁じ得ない。なんだろう、この不潔な感じ。彼らの人生には何か汚い嘘に満ちている。そんな気がする。特に母親のほうには秘密がありそうだ。関わりたくない相手だなと思う。
【解説】 今夜の夢にはもう少し具体的なストーリーがあったと思う。あとひとり、ヘンな男が登場したような気もするのだが、あるいは気のせいかも知れない。


4日●暖かな手
大きく暖かな手につかまって歩いている。暗がりで何も見えないが、私は何も怖れていない。安心感。
【解説】 目が醒めてから、はて、今夜の夢はこんなに漠然とした内容だっただろうか、もう少し具体的な物語があったはずなのだが……と暫く考えてみたが、どうしても思い出せなかった。暗がりで何も見えないが怖くない気持ちは、善光寺の「戒壇めぐり」。あの感覚に近かった。ということは、ひょっとしてあれはお釈迦様の手だったとか(笑)


5日●……

【解説】 今夜は早朝のおかしな時間にパンダ(8歳の狆♀)に起こされてしまい、見ていた夢を忘れてしまった。


6日●刻々と変化する山の絵
前後関係は忘れてしまったが、気がついた時には目の前に巨大な屏風絵があった。椰子が鬱蒼と茂ったジャングルの風景が描かれているのだが、ひと目見て私は「これが本当に絵?」と驚き、目を離せなくなってしまった。不思議なことに、その絵は刻々と変化してゆくのである。仄暗い早朝の風景から始まって、朝焼け、気持ちの良い晴天、小雨、雷、霧、再び晴れ……と刻々と変化する。おそらく朝から晩までの変化をすべて見たのではないかと思う。その間、私はただ息を飲んで屏風絵を見つめていた。そういえば、あの絵は紙やキャンバスに描かれていたのではなく、何かとてつもなく未来的な素材(地上では見たことのないような)の上に描写されていたように思う。
【解説】 まるで魔法を見ているような夢だった。そして、驚くほど長い夢だった気がするのだが、その間、特に事件や出来事があったわけではない。なんとも不思議な夢であった。
【後日談】 この夢を見た8日前の14日、南インドのホテルで目覚めた私は起きがけに窓の外の風景を見て驚いた。そこに広がっていた風景が、6日の夢で見た光景とそっくりだったからだ。この手の偶然(?)の一致は私の人生では割とよく起こるのだが……そして、同様の経験をしている人は他にいくらでもいるだろうが……そうだとしても興味深い現象ではある。


7日●異なるディメンションの車輛を歩く
高速で走っている電車。窓がない(あるいはトンネルの中を走っている?)ため、車輛内は薄暗い。自分が今どこにいるかも皆目わからない。私は一つの車輛から次の車輛へと歩いている。それぞれの車輛は異なるディメンションになっていて、車輛が変わるたびに私のステータス(?)も変化する。そして、全く異なる物語が繰り広げられるのだ。どこかの車輛で「母」に会った。「母」は私の生物学上の母であると同時に、あらゆるものの「マザー」でもあるようだ。私はどこか別の場所へ行かなくてはならないらしい。楽しい気分。
【解説】 車輛が変わるごとに別の物語が始まったように思うが、ある車輛で母に会ったことを除けば物語の具体的な内容を少しも思い出せない。しかしとても楽しい夢だったことは確かなようで、目が醒めたとき(ああ、もう終わってしまうのか)とガッカリする自分がいた。


8日●透明になるオジサン
私は舗道を歩いている。見たことがあるようなないような風景だ。パッと見た印象では、上野・御徒町・秋葉原エリアではないかと思うのだが、ただそんな気がするだけであって証拠はない。向い側から1台の自転車が走ってきた。濃いでいるのは50代後半と思しき吊り目のオジサンで、かなりのスピードを出して暴走している。しかも舗道の真ん中を、だ。舗道を自転車で暴走するなど言語道断、厳重注意をしようと思いきや、オジサンは自転車を走らせながら少し進路を変え、舗道の端の方によけて、そのまま「あっ」と言う間に透明になって視界から消え失せてしまった。
【解説】 今日のオジサンは、無謀かつ傲慢でありながら最終的には道から反(そ)れて消えてしまうという、強気なのか弱気なのかハッキリしないキャラの持ち主であった。某国の大統領と似たような顔立ちだった気もする。


9日●迷路電車の謎を解こうとする
一見、どこにでもあるような普通の電車。しかしその中には花畑やジャングル、細かく仕切られた無数のカラフルな部屋など、色々な物が詰め込まれているのだ。あるいは、この電車からはそれらの場所へ瞬間移動ができるとか、複数の場所と時空を超えて繋がっているというような仕掛けかも知れない。一つ分かるのは、この電車が一種の壮大な迷路だということだ。この迷路には謎がある。私はその謎を追いかけている。
【解説】 7日に引き続き、またしても電車の夢である。今夜の夢の中で見たものは、何かとてつもなくもスペクタキュラーで心躍る光景だったのだ。しかし最終的に思い出せるのは、それらの場所への旅を終えて電車の車輛に戻ってきたあとの自分の心象だけ。いずれにしても「謎解き」は私が(人生を通じて)おそらく一番大好きな分野である。この手の夢はもっと頻繁に見たい


10日●記憶を消された女
目の前に黒っぽいイメージの男と、髪の長い女がほぼ向かい合って立っていた。「黒っぽい」男は、服装だけでなく全体のイメージが「人生の裏街道」のような、あるいは「影」のような印象を醸し出している。彼は私に背中を向けていて、顔は見えない。女は30歳前後の、化粧気のない、地味な(くすんだ)印象の人で、表情も乏しい。ふたりが「ほぼ向かい合っていた」という意味は、男も女もそれぞれ相手を少し避けるように心なしか正面を避けるようにして立っているという意味である。不意に男が低めの声で「実は記憶を消した。貴女の」と日本語で言った。女はほとんど表情を変えないが、彼女が困り果てていることが私にはよくわかる。私は傍観者にすぎない。
【解説】 内容的にはミステリー映画のワンシーンのような夢だったのだが、いかんせん女が地味だった。しかし現実世界でスパイ(のような怪しい稼業)をやっている女性には、意外にこの手の地味なタイプが少なくないのかも……とも思う。目立っちゃマズいし。例えば先日捕まったオウムの菊池直子の地味さを見よ。


11日●……
【解説】 昨夜は論文執筆のために徹夜。当然、夢は見ていない。


12日●地震と、それに続く沼地化
目の前の風景がいきなりグニャリと曲がり、周囲の壁や屋根が傾き始めた。地震だ。足元の床が見る見るうちに沈みはじめた。どこからともなく泥水が溢れだし、あたりは一気に沼地と化していく。泥水の向こう側にブースケの姿を見つけた私は、大声で「ブースケ!」と呼んでいた。しかしブースケは足がすくんだらしく、金縛りに遭ったように一歩も動けない。このままではブースケが沼地に沈んでしまう。私は泥水の広がっている範囲を目視した。向こう側まで飛び切る自信はあまりないが、ブースケを助けるためには私が向こう側へ飛ぶ以外に方法がない。この泥水に少しでも触れると私も死んでしまうらしいが、背に腹は代えられない。私はブースケのほうに向かって思いきり飛んだ。そのあとどうなったのかは思い出せない。
【解説】 大震災(2011年3月11日)以来、ときどき思い出したように地震の夢を見るようになった。私の場合、その先の心配はもっぱら(近しい存在の中で最も弱者であるところの)愛犬ブースケの安否だ。今夜の夢もそうした一連の「ポスト大震災」系の夢だったようだ。


13日●薄茶色の塊
自分が立っている大地(あるいは床?)の上に、いきなり饅頭のような薄茶色の丸い塊が現われた。何だろうと思いながら、近眼の私は腰をかがめ、至近距離からその物体を観察しようとした。すると、その隣にも新たに薄茶色の丸い塊が現われたではないか。私は何となく近寄らないほうがよい雰囲気を感じ取り、立ち上がってその場からそそくさと立ち去ろうとしている。
【解説】 どうにも意味のわからない夢だった。ちなみに私は「お饅頭」という食べ物の触感があまり好きではない。だから、お饅頭が食べたくてこのような夢を見たという可能性は限りなくゼロに近いことを、念のために書き添えておきたい(笑)。


14日●体重が「90」と言われ驚く
初めに体重計に乗った気がする。インド人らしき人が目盛を見て、「90」と声に出して読み上げた。私は驚愕し、「そんなはずはない。90kgなんてありえない」と抗議したが、インド人は「体重計にも自分の目にも狂いはない」と言い張り、絶対に否を認めようとしない。埒が明かないのでそのまま放置しかけたところ、誰かが私に「言われた数値を2で割った答えが本当の体重だ」と教えてくれた。それを聞いてようやく私は納得した。
【解説】 何故こんな奇妙な夢を見たのか理由はわからないが、そういえば今夜泊まったホテルの部屋には綺麗っぽいデジタルの体重計が置いてあった。それが原因でこんな夢を見たのだろうか。この夢は訪問中の南インド・マイソールで見た。


15日●真夜中のタクシー
ふと気づくと一人乗りの小さな車に乗っていた。一人乗りなら当然のことながら自分自身で運転をしているはずだが、この車はタクシーだという。運転手の姿は見えなかったが、ともあれこの車はタクシーで、今は真夜中らしい。「真夜中のタクシー」は重要なフレーズだと思い、私はそれを心にメモした。その車は少し前にインドで発売されたTATA社の「ナノ」によく似た雰囲気の、しかし別の車種のようだ。この車には秘密がある。車体のどこかに隠された「物」が見つからない限り、この先に進めないのだ。(人の心の闇はわからないものだ)と私は思っている。
【解説】 最初から最後まで何のことやら意味のわからない夢。なかでも特に、(人の心の闇はわからない)という最後のメッセージは意味深長だ。この夢も訪問中の南インド・マイソールで見た。


16日●ヘルメットをかぶって青の洞門観光へ
気がつくと知人とその母親がボートに乗っていた。どうやらここはイタリアのカプリ島らしい。知人とその母親はボートで青の洞門めぐりをしているのだ。しかし何故か彼らはヘルメットをかぶっている。「〇〇建設」とか「〇〇土木」と書いてあるようなヘルメットだ。私は心の中で(カプリ島とヘルメットは似合わない)と思っている。
【解説】 唐突なイメージの夢だったが、そういえば知人は近々青の洞門へ行くようなことを言っていた気がする。そのことを私は忘れていなかったのだろう。ちなみに私自身は青の洞門は未体験である。一度行ってみたい。この夢も訪問中の南インド・マイソールで見た。


17日●……

【解説】 今夜は夢を見た記憶がない。それどころか、どうやって眠ったのかさえ覚えていない。まさに「爆睡した」感じ。


18日●映画『シックス・センス』のエンディング
最初に何かあって、それが原因で私は『シックス・センス』という映画のことを思い出している。ところが、なぜか映画のエンディングの部分を思い出せない。(あの映画、一体どういう結末だったっけ。病死した女の子はビデオを残していて、そのビデオには母親が女の子に毒を盛る現場が写っていた。ここまでは確か。そのビデオによって父親は女の子の死因を初めて知ることになる。主人公は確かそのあとで自分が既に死んでいるということに気づくんだけど……主人公はどうやってそのことに気づくんだったっけ? 男の子が教えた? 自分から勝手に気がついた? 指輪が登場したような気がするのは気のせい?)などと思いながら私は悶々としている。
【後日談】 この夢を見た同じ日の午後、ホテルの部屋に戻り何気なくテレビをつけたところ、何十もあるチャンネルのうちの映画専門局のチャンネルが当たった。おそらく直前にこの部屋に泊まった客が映画を見ていたのだろう。そこまでは何の不思議もないのだが、オンエアされていたのがなんと『シックス・センス』だったのには驚いた。しかもテレビをつけた瞬間に写っていたのは「女の子が残したビデオを見た父親が初めて女の子の死因を知る」という、私が夢の中で思い出したまさにその画面だったのである。夢と現実のあまりの一致ぶりに、我ながら少し気味が悪くなった。しかし同時にとても気になったので、テレビを消さずに映画の最後まで見切ってしまったが。あまりにも不思議だ。この夢は南インドのバンガロールで見た


19日●ビートルズの4人はインド人だった
前後関係はわからないが、夢の中で私は突然(そうか、ビートルズは4人ともインド人だったんだ!)と気づいて驚いている。そのことをどうやって知ったのかは覚えていないのだが、おそらく誰かが教えてくれたのだと思う(誰が教えてくれたのかは全く思い出せない)。私は過去に読んだ週刊誌の記事などを思い出しながら、(ジョージ・ハリソンが一時期インドに住んでいたと聞いたことがあるけれど、それは彼がインド人だったからなのだ。別に驚くことではなかったのだ)と得心している。しかしそのあとで(いや、まてよ)と思い直した私は、これが単なる夢で、ビートルズはイギリス人だということを思い出しかけた。そこで目が醒めた。
【後日談】 目が醒めた直後、ニュースを見るためにテレビをつけたところ、なんといきなりビートルズの『アンド・アイ・ラブ・ハー』が流れてきたのには驚いた。昨日と今日、二夜連続で似たような雰囲気の予知夢である。こういう夢を立て続けに見るということは、やはりインドのエネルギーが私を刺激しているのだろうか。この夢も南インドで見た。


20日●完成すると振出しに戻る
私は一生懸命に何かを完成させようとしている。ところが努力の末にようやく完成に近づくと、それがニセモノ(あるいは練習?)であったことに気づかされる。そして私は振出しに戻らねばならない。しかし、再び努力の末に完成に近づくと、またしてもそれがニセモノであったことに気づき、私はいつまでもそのことを完成することができないのだ。もどかしさ。挫折感。疲れ。
【解説】 この夢はバンガロール空港からタイのバンコク空港へと向かう飛行機の中で見た。今夜は喉風邪をひいてしまい、さらに飛行機の中の空気の乾燥と相まって喉がひどい状態になっていたのだ。そのためにこういう疲れる夢を見たのだろうと想像する。


21日●……

【解説】 日本に戻り、今夜は実によく眠った。喉もすっかり元通りになった。夢を見たという記憶はない。


22日●写真の美しい人は誰?
小さな写真が見える。縦横の比率が普通の写真とは明らかに違う。私は(なんだろう、この写真?)と思いながら、写真を手に取ってつくづく眺めた。そこに写っていたのは、とても美しい日本人女性だ。私とは似ても似つかない美女なのだが、それは私(の真実の姿?)なのだそうだ。私は半分嬉しいような、半分戸惑っているような感情でその写真を眺めている。
【解説】 話の内容よりも、写真の縦横比率が普通ではないことのほうが気になる夢だった。ちなみに、写真の美女に見覚えはない。とても綺麗な人ではあったが、その顔になりたいとは少しも思わないし、美人ではないが私は私の顔が割と好きなので、今夜の夢には違和感を覚える。


23日●フレームに収まった風景
前後関係を思い出せないのだが、すぐ目の前に縦長のフレームが置いてあって、そのなかには風景写真が収められている(しかし、それがどんな風景だったかは不思議なほど思い出せない)。そのフレームは魔法のフレームなのだという。しかし何がどう魔法なのかはわからない。(ドラえもんの「どこでもドア」のように、フレームの中に収められた風景まで一瞬で行ける装置かも知れない)と私は思っている。
【解説】 そういえば、これが「魔法のフレーム」であることを私に教えてくれたのは一体誰だったのだろう。思い出せない。昨日の「写真の夢」も今夜の夢も、フレームで切り取られた風景または人物の夢であった。心理学的には、「フレーム」に何か深い意味があるのだろうか(というか、いかにもありそう!)。


24日●フレームに収まった人物

棚の上(?)にフレームが置いてあって、そこには人物の写真が入っている。ただし近眼の私が遠目に見ただけなので、写真の人がどんな顔つきかはよくわからない。金髪の若い女性が微笑んでいた気がしないでもないが、定かではない。そのあと何かあったのかも知れないが、覚えているのはフレームのことだけ。

【解説】 なんと、これで三夜連続して「フレームの中に収められた人物または風景」の夢である。しかし私は不思議なほど、そこに登場したはずの人物なり風景を思い出せないのである。何故だろう。気になるのはフレームのほうで、なかに収められたものには重要でない感じすらする。とはいえ、ではフレームのことをどれだけ覚えているかと問われれば、実は何一つ覚えていないのだが……。何ともおかしな話ではある。


24日●白またはシルバーのフレーム
フレームが見える。色は、白またはシルバー。しかしフレームの中に写真が入っていたという記憶はない。
【解説】 驚いたことに四夜連続してフレームの夢である。一体何なのだろう。今夜は四夜目にして初めてフレームそれ自体の様子が少しわかった(といっても色だけだが)。しかしそれに反比例するようにして、中身の写真が消えてしまった。本当に、何が何やら意味がわからない。


24日●日本語を捨てた友人を住所録から外す
気がつくと友人から届いたばかりのメールを読んでいた。友人は日本人だが、そこに書かれていたのは中国語と英語である。どうやら友人は日本語を捨てたらしい。私は、(前にも同じことで厳重注意したのに、またしても同じことをやらかすとは。残念ながらこの人は友人リストから外すしかない)と思いながら、住所録から彼の名前をすっぱりと消去した。
【解説】 もしも「日本人とは何か?」と問われたなら、私は「日本語でものを考え、日本語で感じる人」と即答するだろう。そういう意味では、日本語を捨てた友人はもはや外国人である。そして、この友人は実在する(ただし住所録からはまだ消去していないが(笑))。いずれこの人が私の住所録から消去される日はやって来るのだろうか。それとも「外国人」として付き合いを続行するのだろうか。個人的には、言葉の持つ影響力をもっと恐れたほうがいいと思う。


27日●……

【解説】 何やら喉の調子が悪く、夜中になると咳が出る(昼間はほぼ何ともないのだが……)。そのためか今夜は夢を見た記憶がない


28日●……

【解説】 ほぼ、昨夜に同じ。咳ばかりしていて夢を見た記憶がない。全身状態はすこぶる良いのだが、喉の調子だけがおかしいのだ(しかも夜間のみ)。この症状は、私の場合インドへ行くとよく現われる。インドの大気成分中に含まれる何かが私の喉を刺激するらしい。軽症ではあるが、とりあえず今日はクリニックに行って薬をもらって来ようと思う。


29日●大泉洋バージョンの『シャル・ウィ・ダンス?』
夢の始まりから終わりまで、延々と『シャル・ウィ・ダンス?』の名曲が流れている。目の前で繰り広げられているのは、映画なのか現実なのかわからないが、別れる別れないで静かに揉めている男女(ただし台詞はなく、聞こえてくるのはあくまでも音楽のみ)。男は大泉洋さん、女は天海祐希さん。ふたりは愛し合っているものの、女がニューヨークへ転勤になったため、今までの交際を続けられなくなったらしいのだ。しかし最後にふたりは別れずに生涯を共にする決心をする。私は(前に観た映画で主役を演じていたのは大泉さんじゃなく役所さんだったはず。役所さんは山本五十六になったから、ダンスをする役は辞めたのかな? でも、こうしてみると大泉さんはこの役にハマっている)などと思っている。
【解説】 今夜の夢では、『シャル・ウィ・ダンス?』の映画(あるいは舞台だったかも知れない)を丸々1本観賞したような気がする。しかし台詞が1つも入らず音楽だけなので、ストーリーはいまいち分かりづらかったが。あとで冷静に考えると、映画版と変わっていた配役は「役所→大泉」のみならず、女優も「草刈→天海」と変動があったのだ。しかし夢のなかの私はそのことに気づいていなかった。


30日●……

【解説】 今夜も夢を見たような気がするが、どんな夢だったか忘れてしまった。印象の薄い夢だったのだろう


31日●不思議な柄の浴衣
間もなく祭りが始まるようだ。私は何かとても変わった柄の浴衣を着て、急ぎ足で夜道を歩いている。浴衣の柄の何がどう変わっていたのかは思い出せない。光る文字が書いてあったような気がするのだが、それは見たこともない、つまり読むこともできない文字だったように思う。近くに誰か人がいたような気がするが、その姿はぼんやりしており、誰なのかもわからない。その人と話した記憶もない。歩くにつれて浴衣の柄が消滅し、最後には無地の浴衣になってしまったのかも知れないが、そのあたりの経緯も定かではない。
【解説】 全体にぼんやりした印象の、「夢のような夢」だった。浴衣の柄がとても変わっていたのだが、目が醒めてみるとそれすらもハッキリとは思い出せない。そういえば明日から8月。そろそろ浴衣を着なければ。




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