2012年3月


1日●庭爺(にわじい)から龍の赤ちゃんをもらう
目の前にやさしい風景が広がっている。右側に低い山があり、左側の少し低くなったところには町、その間の広々としたスペースは、庭爺の持ち物らしい。俳優の山崎努さんによく似たおじいさんが、いかにも上等そうなオーバーを着て、中折れ帽をかぶり、両手を後ろで組んでゆっくりと歩いている。ステッキを持っていたような気もするが、気のせいかも知れない。この人が庭爺だ。私は、あたりが黄金色に輝いているような気がしてならない。ふと神社のあるほうに目をやると、鳥居が前よりも大きくなっていた。蜜柑の木も、モアイ像も、何もかもが前より立派だ。庭爺が「実は龍が来て、子を産んだんですよ。見ますか」と言った。私は少し驚きながら「見ます!」と答えていた。そのあと、手のひらに載るほどの小さな龍の子を見せてもらった。全部で何匹生まれたのかは知らないが、そのうちの1匹をもらった。その子は黄金色で、気性が優しそうだった。
【解説】 なんとも懐かしい庭爺の夢である。庭爺とは、かつてmixiにあったアプリ(つまり今はもう存在しない)。その庭爺に再会し、しかも龍の子をもらえるとは……夢とはいえ感激だ。ちなみに庭爺に関してはこちらを参照のこと。


2日●3冊の手帳と小学生の女の子
黒い表紙の手帳が3冊見える。やや細長い形の手帳で、3冊ともまったく同じデザインだ。それぞれの手帳を捧げ持つ3本の白い手も見えている。そこは小学校のようだ。ひとりの女の子に私は何か質問をしたのだが、どうやらそれは聞いてはいけない質問だったらしい。女の子の家庭には問題があって、私の質問はその問題領域に立ち入ってしまったようなのだ。私は校長から注意を受けている。それにしても、あの女の子は本当に小学生だろうか。(いやに老けているのでは)と一瞬思ってから、私はよくよく女の子の姿を思い出し、(やはり小学生だ)と思い直した。
【解説】 全体的に何を言いたいのかよくわからない内容の夢だった。ともあれ、小学生ぐらいの女の子を見かけても、あまり立ち入った質問をしないように心掛けることにしよう。


3日●バスルームに派手な枕
気がつくと、とてつもなく高い建物のバスルームにいた。窓から見る限り、ここは地上200〜300階のフロアだろう。地震国の日本にこんな高層ビルを建てられるはずはないので、ここはドバイあたりかも知れない。バスルームはホテルのようにおしゃれな造りで、不思議なことに枕が4つか5つほど置かれている。ラメ素材の派手な枕で、すべて色違いである。(こんなところに枕が置いてあったら邪魔じゃないの!)と最初は思ったが、そのあと(いや、待てよ)と思い直し、バスルームに枕があることには何か意味があるのかも知れないと考え出した。そこで目が醒めた。
【解説】 またしても意味のわからない夢だった。最後に私は何かもっと違うことを思いついたようにも思うのだが、詳細を思い出せない。


4日●……

【解説】 前の夜にあまり寝る時間がなかったためか、今夜は爆睡したようだ。そのためか夢を見た記憶がない。


5日●世界一ハンサムな男性に逢う
前後関係を一切覚えていないのだが、私は(おそらく仕事で)見知らぬ場所を訪ねている。ほかに1人または2人程度の連れがいたかも知れないが、彼らの顔や性別はまったく思い出せない。どういう経緯だったか定かではないが、途中から案内係のような男性が登場した。その人というのが、とにかく目の醒めるようなハンサムなのである。奇妙なことに、その人のどこがどうハンサムだったのか、具体的にどういう顔だったのか少しも思い出せないのだが、とにかく一目見た途端にクラクラと眩暈がするようなハンサムぶりで、私は(こんなハンサムな人がこの世にいたのか!)と激しい衝撃を受けている。ハンサムな男性は、私(あるいは私達)を色々な場所に案内してくれた。案内されている間も私はその人の顔にばかり注目しているので、行った場所のことは覚えていない。その人の顔を見つめながら、過去に出逢ったことのあるハンサムな人達の顔を思い出してみた。しかし、目の前にいる人と比較した瞬間、これまでハンサムだと思っていた人々の顔など瞬く間に色褪せてしまった。その日は宿舎に泊まり、翌朝も同じハンサムが案内に来てくれた。その人は、とても優しく、おだやかな話し方をする。私は(今日でこの人ともお別れだな。こんなにハンサムな人には、もう二度と逢うことはないだろう)と思い、淋しいような泣きたくなるような気持ちを覚えるのだが、顔には少しも表わさず、すぐにその気持ちを封印した。
【解説】 今夜の夢で私はまさに「心臓が止まるんじゃないか」と思うほどのハンサムな男性に逢ったのだが、不思議なことには、目が醒めてみるとその人がどんな顔だったのか全く思い出せないのである。あ〜あ、もったいない(笑)。何と言うか、その美しさは「この世ではありえないレベル」だった気がする。もしかすると、私は神に逢ったのかも知れない。


6日●浴槽に白いマリモ
目の前にゆらゆらと湯気が立っている。大きな浴槽、それもおそらくは露天風呂だと思われる。お湯のなかに白いマリモのような物が5つ、クラゲのようにたたずんでいる。マリモなら白くはないはずだが、これは一体何だろう、どこか遠い場所からやって来たのだろうか。このあと何か懐かしい気持ちになる出来事があったと思うのだが、その部分は全く思い出せない。
【解説】 今夜はしっかりしたストーリーのある夢を見たような気がするのだが、なぜか白いマリモの姿しか思い出せない。起床した時の気分は「懐かしいような甘酸っぱいような」、まさにマリモのごとくゆらゆら揺蕩(たゆた)うような気持ちであった。


7日●魚をパンダに与えない
前後関係はわからないが、気がついた時には手の中に魚があった。生きている魚ではなく、調理済みの鮭だったような気がする(鮭独特のオレンジ色が見えたように思うので)。私はその魚をビニール袋に入れた。するとそこへパンダがやって来て、何かしきりに怒っている。私は心の中で(おまえに指示される謂れはない)と思いながらパンダを無視している。
【解説】 パンダはうちで飼っている8歳のメス狆だが、日頃から足癖が悪く、目の前にいる相手の顔を突然引っ掻いたりする危険な女だ。昨日はついにブースケの右目を傷つけてしまった。今夜の夢の中で私がパンダに大好物の魚をあげなかったのは、ブースケに対する彼女のDVへの報復だったのかも知れない(注:現実世界ではいつもどおり給餌しております(苦笑))。


8日●白人による子ども審査会
私は地下室にいた。そこには、“いかにも知的水準が高そう”で“やや冷たそう”な印象の白人の男女が多数おり、何らかの審査会を行なっているようだ。白人でないのは私一人だけだが、私がその場にいる理由は審査員としてではなく、審査される側だったような気がする(あるいは審査員になるための審査だったのかも知れない)。彼らが審査をする対象は「子ども」に限られるらしい。あとは「白い大きな板チョコ」が重要な意味を持っていたような気がするが、どう重要なのかはわからなかった。
【解説】 夢を見ていた時は何らかの辻褄の合った内容に思われたのだが、目が醒めてから書き出してみると、全くわけのわからない夢である。そういえば少し前に(現実世界で)或る学術アンケートを行なったところ、回答者の大多数が高学歴(大学院修了)の白人で占められた。そのイメージが今夜の夢には現われているのかも知れない。ちなみに白い板チョコは息子の大好物である。


9日●命がイ98江王子
モノレールの一番最後の駅。そこは小学校の6年生の部屋で、壁がすべて直線ではなくカーブを描いている。私は4年生なのだと思う。おばあちゃんが途中で倒れて死んでしまうかも知れないので、小4の私達を助けて欲しいと心から願う。命がイ98江王子。
【解説】 この夢を見たあと、すぐにパソコン上にメモを取っておいたのだが、寝惚けてメモしたため自分でも何を書いたのかわからない文章になってしまった。特に最後の「命がイ98江王子」は何のことやら全く理解できない。何かを書こうとして誤変換したのだろうが……さて私は何と書こうとしたのだろう?


10日●すべて「反対」にする
詳細は思い出せないが、私は「何もかも反対にしなければいけない世界」にいる。特に、峠を越えた向こう側にある場所では、細心の注意をしなければいけない。そこは雪が降り積もっている以外には何ら特徴のない、緩やかな坂道だったと思う。
【解説】 今夜の夢には非常に具体的なストーリーがあり、何をどのように「反対」にしたか、そういうことも含めて全てをハッキリと体感できていたのだ。しかし目が醒めてみると何一つ思い出せない。何か、思い出してはいけないバリアのような物が張ってあって、夢から醒めた後にはそこへ近づくことが出来ない仕掛けになっているような気がする。峠の向こう側に見えた風景は、特に特徴のない、面白味のない坂道だったと思う。


11日●旅先でゴリラと猿に遭遇する
最初にどこか外国を旅していたような気がする。すぐ隣にT美さんの姿が見えたから、ここはロサンジェルスかも知れない(T美さんはロス永住の女友達なので)。旅の最中、楽しいことがいくつもあったのだが、残念ながら具体的な内容は覚えていない。特徴的なデザインの建物の中に入ったことだけは思い出せるのだが、その中で何をしたかは忘れてしまった。気がつくと動物園のゴリラ舎にいた。そこには私の家族のほか、見知らぬ女性、飼育員らしき人など数人がいたと思う。T美さんは、このときはもういなくなっていたようだ。私達はかわるがわる1匹のゴリラの赤ちゃんを抱っこしながら、口々にその可愛さを讃えている。「次の間」のような部屋があって、皆はそちらへ移動した。私一人だけがもとの部屋にいたところ、突然どこかから1匹の猿が迷い込んできた。それが二目と見られぬ醜い猿で、目や鼻のすべてのパーツの配置がおかしい。福笑いで適当に並べた目鼻立ちという感じなのだ。私はその猿に底知れぬ不気味さを感じ、逃げるようにして隣の部屋に移った。すると猿までが隣の部屋に来てしまったではないか。たちまち悲鳴が上がり、居合わせた皆が総立ちになって、猿に向かって「あっちへ行け」という仕草を始めた。それでも猿が逃げないので、私達は(ゴリラの赤ちゃんを抱いたまま)さらに別の部屋へと逃げた。それでも猿はへこたれず、どこまでもついて来る。そのうち猿は天井に張り付いて、ササササッと這うようにして我々に近づいて来たではないか。その姿はまるで巨大なゴキブリそのもの。いや、いつの間にか猿は1メートル近いゴキブリに変形したのだ。再び人々が悲鳴を上げている。私はゾッとしながらも(ゴリラと猿では雲泥の差があるんだな。彼らの遺伝子をそれぞれ比較研究したら面白い結果が出るかも知れない)などと冷静に考えてもいる。
【解説】 なんともおかしな夢だった。ゴリラや猿が夢に登場するのは、記憶している限りこれが初めてではないだろうか(基本的に猿にはあまり興味がないのだ)。しかし、夢の中で「ゴリラ」と皆が呼んでいたその生物は、目が醒めてから冷静に考えてみるとチンパンジーの仔だったように思える。この夢にどんな意味があるのかは全くの謎。


12日●セーターの写真集を編集する
セーターの写真がたくさん並んでいる。私はそれらの写真の前身頃(袖を除いた本体の前部分のこと)だけをトリミングして、色の相性が良さそうな物同士を横に並べてみている。何十枚ものセーターの前身頃写真ばかりがずらりと並んだ。おそらく私はこれらの写真を使ってセーターの写真集を出版するのだと思う。そして私はこの本の編集長だ。
【解説】 時間にして1秒にも満たない短い夢だった。そういえば最近セーターを編んでいない。昔は一冬で10枚も編むなどという暴挙に及んだことさえあったが、今は忙しすぎて編み物どころではないのだ。編み物というものは、一度やり始めたら止まらない。徹底的にやるか、全くやらないかの"all or nothing"的な魔力を秘めた手芸なのである、少なくとも私にとっては。要はあまりにも時間がかかり過ぎる趣味だから、私はもう当分は編み物をする予定はない(だから今夜の夢の中でも、みずから編み物をすることなく、一歩引いて編集者という傍観的な立場を貫いていたではないか)。とはいえ孫が生まれた日には、嬉々としてベビードレスを編み始めるのだろうけれど(笑)。まあ、とにかく意味のわからない夢だったということだ。


13日●スパイ対スパイ
下を向いて一心に仕事をしている私。おそらく机に向かって原稿を書いているのだと思う。ときどき顔を上げると、目の前に置かれたテレビの画面に一人の同じ白人男性が映っている。私は仕事の合間にときどき顔をあげ、その人物をさりげなく観察している。男は手を真横に大きく伸ばし、喜劇俳優のように笑っているが、彼の正体はスパイ、あるいはそれに準ずる何かだ。彼はその場でじっと私を監視していなければならない役回りなのだ。私と目が合いそうになると、男はさっと目をそらし、何事もなかったように喜劇を続ける。(逆に私に捕まってしまったら気の毒だな)とは思うが、私には私の仕事があり、それを中止することは出来ない。私は無表情を装ったまま、男を一撃で捕える算段をしている。
【解説】 スパイ大作戦のような夢だった。とはいえ、そこに派手な大立ち回りがあったわけではなく、ごく静かな夢だったのだが。いや、正しくは「嵐の前の静けさの夢」と言ったほうがニュアンスが近いか。相手が何者なのかは謎だが、負ける気がしなかった(笑)。


14日●……
【解説】 今夜は仕事でほぼ徹夜(実際には90分ほど寝たが、その間は爆睡していたようだ)。夢はおそらく見ていない。


15日●映画『ファウル・プレー』の世界に入り込む
気がつくと映画『ファウル・プレー』の場面に入り込んでいた。チェビー・チェイス演じる甘いマスクの刑事や、バージェス・メレディス演じる空手道黒帯のヘンテコな家主、全身真っ白のアルビノの男、コビトと呼ばれる小さなセールスマン、変態音楽家のダドリー・ムーア(最高にキュート♪)らが次々に現われて、映画の中と同じような事件(あるいは、それより凄かったかも知れない)が絶え間なく繰り広げられる。私はどうやら映画の中に入り込んでいるらしく、走ったり、追いかけたり、追いかけられたり、隠れたりと、目まぐるしく動き回っている。主人公のゴールディー・ホーンの姿が見えなかったから、私はゴールディーになりきっているのかも知れない。
【解説】 最初から最後までわくわく感が続く最高に楽しい夢だった。『ファウル・プレー』は私が大好きな映画トップ5のうちの一つ(こんな映画です)。これまでにかれこれ30回は繰り返し観ただろうか。何度観ても飽きない理由は、最高に面白いストーリー構成と、演技力抜群の俳優陣、そしてゴールディー・ホーンが私の一番好きな女優さんだから。そういえば私はほんの数日前に調布FMのラジオ番組に出演したのだが、その際にディレクターから「真美さんの好きな音楽をご紹介したいので、5曲選んでください」と言われた。そうやって選んだ5曲のうちの1曲が『ファイル・プレー』の挿入歌「コパカバーナ」(バリー・マニロウ)だったのだ。その印象が今夜の夢を引き起こしたのだろう。


16日●豆を育てる
豆を育てている(と言っても、誰が育てているのかはわからない)。大きく育つ豆の木。その背後には巨大な男が両手を大きく上げている影。
【解説】 今夜は、何やらとてつもなく長い夢を見た記憶がある。途中一瞬軽く目が醒め、(これは大変だ、ちゃんと覚えておかなければ)と思ったのだが、睡魔に負けてそのまま再び寝てしまった。朝起きた瞬間には内容の一部を覚えており、それはとにかく不思議で奇想天外で面白くて重要なストーリーだったのだ。しかしブースケを抱いて2階から1階へ降り、ブースケに目薬をさしているうちに全部忘れてしまった。なんてこったい! 覚えているのは豆の木のイメージだけ。とほほ。


17日●カード情報に注意!
「カードを出した隙に情報は抜き取られているから気をつけて」という娘の声。それならどうやってカードを取り出せばいいのだろう。悩む私。
【解説】 毎朝、目が醒めたら真っ先にパソコンに夢を記録することにしている。そのタイミングが少しでも遅れると、夢の内容を忘れてしまう。今夜の場合、寝惚けまなこでどうにかパソコンに記録しておいたから良いものの、そうでなければ完全に忘れてしまったであろうインパクトの弱い夢だった。カードとは銀行カードのことだろうか。夢とはいえ折角の娘からの警告だから気をつけることにしよう。


18日●ガラスが三重になった車窓
電車。進行方向に向かって左側の窓際の座席。三重になったガラス。(これで安全だ)と思う。
【解説】 今日は一体どんな夢を見たのだろう。長い夢だった気がするのだが、思い出せるのはこれだけ。ガラスが三重になった電車の窓なんて聞いたこともないが……何のことだろう。


19日●……
【解説】 今夜は論文執筆のため完全に徹夜。ゆえに夢は見ていない。。


20日●コンサート会場で懐かしい人に逢う
目の前に1枚の名刺が見える。そこに印刷されているのは男性の名前だ。「○○○(苗字が2文字で名前が1文字の氏名)」。そういえば昔、こんな名前の知人がいたなと急に思い出す。次の瞬間、私はコンサート会場のような場所にいて、ひとりの女性と一緒にコンサートを聴いていた。いや、そうではない。今はまだコンサートのリハーサル中で、私達は関係者として会場のあちこちを歩き回りながら(何か不都合がないかを調べるために)音をチェックしているのだと思う。この女性は、さきほどの名刺に名前が印刷されていた男性の奥さんだ。専業主婦でご自分の名刺がないので、旦那様の名刺を私にくれたのだと思う。リハーサルを聴く彼女の横顔が美しい。私は心の中で(このジャンルの音楽を、最近はすっかり聞かなくなったなあ)と思っている。おそらくこれは私にとって禁断の音楽なのだと思う。(長く生きていると人生色々あるな)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 今夜の夢を見るまでこのご夫妻のことはすっかり忘れていたが、そういえば昔、そんな知り合いがいた。1度しか逢ったことのないカップルで、当然ほとんど話をしたこともないのだが、「地味派手」(ジミだけどハデ)とでも言うのだろうか、妙に印象に残る人達だった気がする。そういえば旦那さんのほうは音楽家であった。禁断の音楽とは大袈裟だが、私は最近そのジャンルの音楽をまったく聴いていない。一時期はよく聞いたのだが、なぜだろう、もう聞く気がしないのだ。長く生きていると、人生にも色々な「季節」があるということだろう。「時分の花」という言葉をふと思い出した。


21日●……

【解説】 今夜は一晩中乗り物で移動。ゆえに夢は見ていない。


22日●錆びついたラッパ
草の陰に錆びついた古ぼけたラッパが見える。私の周囲には元捕虜と、若い日本人男性が2〜3人いる。ラッパはカウラ事件の発生時に南忠男が吹き鳴らしたものだろう。私は悲しいような懐かしいような気持ちでラッパを見つめてながら1944年8月5日のカウラに思いを馳せている。
【解説】 今、カウラ事件(1944年8月5日にオーストラリアの戦争捕虜収容所で発生した1,000名を超す日本人捕虜による集団暴動)を博士論文にまとめ始めている。また6月には元捕虜の方を伴ってカウラへ行ってくる予定だ。おそらくそのことが今夜の夢になったのだろう。


23日●不気味なロケット
小さな動物園の奥のほうにあるロケット型の遊具。10円か20円でチケットを買うと、係のオジサンがボタンを押して動かしてくれるのだ。ロケットには子どもが5〜6人乗れるのだと思う。大人は乗せてもらえない。私は最初からこのロケットが嫌いだ。ほかの遊具は好きだが、このロケットにだけは乗りたくない。えもいわれぬほど不気味なロケットなのだ。私は今、ロケットに乗るための列に並んでいる。隣にはクラスメートの男の子(てつや君?)がいる。私はロケットに乗りたくない。突然おかしな気配がして、そこにいた皆が騒ぎ始めた。見るとロケットの下に真っ黒な穴が開いている。ブラックホールという言葉を思い出す私。どうやらロケットの真下の空間で何かおかしなことが起こり、遠い宇宙とつながってしまったらしいのだ。今までロケットに乗っていた数人が、その闇の中へ落ちて消えて行った。私は(やっぱり、このロケットは恐ろしい)と思っている。
【解説】 今夜の夢に登場した「ロケット」は、長野市の山手に存在した小さな動物園の中に置いてあった小型の乗り物だ。この夢を見るまですっかり忘れていたが、そういえば私はこのロケットがあまり好きではなかった。なぜ嫌いだったのか、理由はよくわからない。今頃になって思い出した理由は、さらにわからない。


24日●611
講演会の会場らしき部屋。「9.11の次が3.11だったのですから、次に危ないのは6.11と12.11ですよ」と話す私自身の声が室内に響いている。それを聞いて、ざわめく人々。私は(数字が持つ意味って本当に恐ろしいな)と思っている。
【後日談】 この夢を見たちょうど半日後、長距離バスに乗った。急ぎの用事があったのだが、バスは行く先々で想定外の渋滞に巻き込まれてしまい、さんざんな遅延。そのバスのナンバーがなんと「611」であった。遅延だけで済んだ(=事故に遭わなかった)だけ、まだマシだったのかも知れないが……。さて、夢の中で「警告」のあった6.11と12.11はどうやって過ごそうか。万が一の事態に備えて、とりあえず人混みだけは避けることにしようか。


25日●……

【解説】 今夜も一晩中乗り物で移動。ゆえに夢は見ていない。


26日●バッグのベルト通しをハサミで切って後悔する
前後関係は全く思い出せないのだが、私はハサミを手にしており、他人のバッグにそっと近づいて行って、バッグに付いている「ベルト通し」の部分をハサミで切っている。バッグの持ち主は、一人はスキージャンプのアスリート(男性)、もう一人は女性美容師だったと思う(あるいは、もっとたくさんの人のバッグを狙ったかも知れない)。いずれにしても知らない相手だ。アスリートのほうは、左右のスキー板を完全な平行状態に保ったままジャンプすることで有名な人だという。彼らのバッグのベルト通しをハサミで切ってしまった直後、私は(なぜこんなことをしてしまったんだろう。切らなきゃよかった)と猛烈な後悔をしている。良心の呵責に耐えきれなくなった私は、アスリートと美容師にそれぞれ電話をかけて自分の非を詫びた。アスリートは明るくにこやかに、美容師は静かに真面目な調子で、快く許してくれたようだ。私はようやく安堵している。
【解説】 何のことやら全く意味不明な夢。「バッグのベルト通し」という非常にピンポイントな部分(そもそもベルト通しの付いたバッグなんて、そうそうないのでは?)をハサミで切るとか、一体何を意味しているのだろう。しかも、その後にやって来た、あの救いようのない罪悪感。何とも疲れる夢だった。アスリートも美容師も実在しない人物である。


27日●「神」と呼ばれる人
皆から「神」と呼ばれている人がいて、その人は「お湯」に関係のある場所に住んでいるらしい。「なにしろ神様だから何でもできるけど、球技だけが苦手なんですわ」という声が聞こえた。その声には聴き覚えがある。誰の声だったかな、と考えている私。
【解説】 何のことやら意味のわからない夢。しかも今夜の夢はヴィジュアル面での記憶がない。音しか思い出せない。それにしてもあれは誰の声だったのだろう。確かに聞き覚えのある声だったのだが。そう思っていたのに、目が醒めてみたらその声さえ忘れてしまった。


28日●魔の山とMさんの死
最初に何かドラマティックなストーリーがあったのだが、その部分は思い出せない。次に気がついたとき、私は高い山の頂上にいた。すぐ近くには幼い姿に戻ってしまった子ども達の姿が見える。娘は小学校4年生ぐらい、息子は幼稚園児ぐらい。それにしても、この山はおかしな形をしている。ほぼ長方体に近い。頂上は平地になっており、4つの側面は地面とほぼ垂直だ。高さは……おそらく数百メートルはあるだろうか。あたりには鬱蒼と霧が立ち込めており、山の頂上にも側面にもすべて苔のような丈の短い植物が繁茂している。今にも神が現われそうな神秘的な雰囲気。土壌の状態には「地球の歴史」のようなものを感じる。要は、地質学的にとても古い層のように見えるということだ。どうやらここはオーストラリアらしい。娘がシドニー大学卒業であることを想いだし、「ここってオーストラリアだよね。ということは、ここなら地震は起こらないわけだ」と聞くと、せいぜい小学4年生にしか見えない娘は首をかしげ、「さあ?」と答えた。私は心の中で(ここなら地震は起こらないから高地にいても大丈夫だ)と思う。場面が変わり、見知らぬ家にいた。私は部屋に籠っている。知人のMさんが亡くなったらしい。隣の部屋には娘、さらにその隣の部屋には息子が、それぞれ別々に滞在しているようだ。Mさんの死を知って、私は少し陰鬱な気分になっている。ところでここはインド人のAさん(女性)の家らしい。Aさんが心配そうに「Mさんが亡くなって真美は気の毒だ」と(英語またはヒンディー語で)言っている姿が見える。するとここはオーストラリアではなくインドなのか?と思ったところで目が醒めた。
【解説】 オーストラリアのようなインドのような、しかし決してそのどちらでもない風景の広がる夢であった。特にあの山は何とも不思議だった。神話に登場するような、現実ではありえない形状と、霧が立ち込めてぼんやりした視界。名前を付けるなら「魔の山」だろう。Mさんは親しい知人。死んだことになっていたが、あの山から滑落したのだろうか。あるいは突き落とされたのだろうか。詳細はわからないが、あまり良い気持ちのしない目覚めだった。Aさんはインド人の女性で、少し前に25歳ぐらいの息子さんを亡くしている。全体に「死」のイメージが濃厚な夢だった。ちなみに、夢の中では幼くなっていた娘と息子は、現実世界ではそれぞれ「26歳の人妻」と「20歳の慶応ボーイ」である(笑)。


29日●左から5冊目はカウラ本
娘の部屋。本棚の前に立っている。真横から男の声で、「左から5冊目の本はカウラ事件に関する本ですね」と言われた。左から5冊目を手に取ろうとしたところで目が醒めた。
【後日談】 夢から醒めてから、少し気になったのですぐに娘の部屋へ行き(注/本人は現在シドニー在住)、本棚の左から5冊目の本を手に取ってみたところ、『ましろのあさ』(いもとようこ著, 1983, 金の星社刊)という絵本だった。全然カウラ事件に関係ないじゃないかと思いながらページを開いたところ、そこに書かれていた内容はナント、「網の中」で「十分な食糧を与えられて」暮らしていた白兎が、その暮らしが嫌になって「満月の夜」に「網を破って脱走する」話だったではないか(「 」で括った部分はカウラ事件との共通項である)。偶然とはいえ、あまりにも酷似した設定に驚くと同時に、なぜこんな夢を見たのかと不思議でならない。ちなみに、娘の部屋の本棚の左から5冊目にどんな本が置いてあるかなんて知る由もない。


30日●移動する四角いモノ
何か白っぽい四角いモノ。過去から現在(そして未来?)へと続く。左から右への移動。
【解説】 私は時々こういうわけのわからない「瞬時の夢」を見る。意味があるのかないのか、あるとしたらどんな意味なのか、まるでわからない。


31日●……

【解説】 今夜は爆睡しすぎたのか、見たはずの夢を忘れてしまった。。




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