2012年10月


1日
●宇野千代さんの死を看取る
私はどこか日本の北の果てのほうにある鄙びた温泉旅館にいたような気がする(但し具体的な場所はわからない)。気がつくと私の腕の中に宇野千代さんがいた。千代さんは今まさに息絶えようとしている。そのお顔から察するに、千代さんは30代半ばぐらいで、眼鏡はまだ掛けておらず、とても美しい。顎のあたりで切り揃えた髪は、裾の部分がゆっくりとカールしている。その人は間違いなく宇野千代さんなのだが、これまで雑誌などで拝見していたお顔とは微妙にどこかが違う。どこと説明するのが難しいが、しいて言えば現実の宇野千代さんに数%だけ白人の血を混ぜたような、どこか微妙によそよそしい感じである。そんなことを瞬時に思いながら、私は私の腕の中で死に絶えようとする千代さんを励まし(と言っても何という言葉で励ましたのかは思い出せない)、周囲に向かって「この人は宇野千代さんです。日本にとって、とても大切な人です。この人を死なせてはいけません」という意味の言葉を叫んでいる。叫びながら(しかし宇野千代さんは100歳近くまで生きることが歴史的に決定しているはず。今ここで亡くなることはありえないのでは?)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 夢の中で作家が亡くなる夢を、過去にも2度ほど見たことがある。過去の夢の中で亡くなったのは、2度とも三島由紀夫だった。今夜の夢に現われた宇野千代さんはどことなくバタ臭かったが、よくよく考えるとマーガレットという名の友達(オーストラリア美人!)に似ていたかも知れない。ちなみに三島と千代さんは共に私が敬愛する(そして大好きな)作家である。


2日●幸福を運ぶ生き物
犬のような、ぬいぐるみのような、宇宙生物のような、目が真ん丸な(しかも左右の目がちょっと離れていて可愛い)、鼻の低い、仔犬ぐらいの大きさの、今まで一度も見たことのない不思議な顔をした生き物を抱いている。とてつもなく幸せな気分。この生き物は幸福を運んでいるのだと思う。何か素晴らしいことが起こり、私は喜びで胸が一杯になって思わずスキップをしたいほどだ。
【解説】 今夜の夢には何か長いストーリーがあったのだ。夢から醒めた時、とんでもなく幸せな気分だった。すぐに夢の内容をそのへんの紙にメモしようと思ったのだが、例によってブースケとパンダ(犬)がやって来てトイレ(戸外)に行きたいとせがむので、彼らの世話をし、そのあとパソコンのところへ辿り着いた時には夢の内容をすっかり忘れてしまっていた。しかしその時はまだ、綿菓子のように甘い素敵な気分だけはうっすらと残っていた。今夜は何かとびきり幸福な夢を見た。それだけは間違いのないこと。ただ、残念ながら具体的なストーリーを全て忘れてしまい、残っているのは「幸せな生き物」の雰囲気だけなのだけれど。



3日●大切な物を2階へ届ける

大切なものをどこかへ届けようとしている。届け先は5〜6階ほどの高さのビルの2階にある一室だと思う。私の近くには数人の外国人がいたように思うが、彼らが誰であるかは最初から最後までわからなかった(姿がハッキリ見えなかったのだ)。彼らは古い友達のような懐かしいオーラを発していたようだ。今から届けようとしている物は、片手で簡単に持てる小型封筒だったと思うが、これまた記憶がハッキリしない。道を歩いてゆく間、とても印象的な黄金色の光が天から射していたから、時間帯は夕方だったのかも知れない。
【解説】 昨夜の「運ぶ」に引き続き、今夜も「届ける」夢である。イメージとしては昨夜の夢の続きなのかな、という気がした。
【後日談】 この夢を見た約1時間後、Facebook友達(現実世界では一度も逢ったことのないアメリカ人)が30年以上も昔の家族写真を大量にアップした。それを見て驚愕したのだが、今朝見た夢の家族は、その写真に写っていた人々だったのである。夢の中では彼らの顔を一度も見なかったはず(と私自身が思い込んでいた)にもかかわらず、Facebookの写真を見た瞬間、「あっ、夢に登場した人達だ」と確信したのも不思議なことである。ちなみに彼らは私の直接の知り合いではなく、家族の古い友達。夢の中で懐かしい感じがしたのはそのせいか?


4日●2歳の息子を心配する

私は幼い息子と2人で見知らぬ街の見知らぬアパートに住んでいるらしい。その場所は、しいて言えば長野市の鶴賀町というところに少し似ている(と、少なくともそのときは思った)のだが、冷静に考えると全く似ていない。息子と私は楽しそうに何か話している。内容は忘れてしまったが、その中身から、息子が2歳であるらしいことがわかった。2歳であるにもかかわらず、息子はまるで完全な大人のように話す。大変高度な会話を、ごく自然な態度で、対等に話すのだ(但し姿かたちは完全な2歳児)。話の途中で、不意に息子が「ちょっと車を動かしてくる」とか「ちょっと車を運転してくる」とか、そのような意味合いの言葉を口にし、壁にかけてあった車の鍵を持ってふらりと家を出て行った。私はそのとき何か仕事をしており(料理?)、非常に忙しかったのだ。それで、息子の言葉を受け流してしまったのだが、約3秒後に「え?」と思い、窓の外に目をやると、息子らしき人の運転する車が他の車の流れの中に混ざって走って来て、あっという間に道を曲がって視界から消えてゆくところだった。私は焦って表に飛び出した。息子が車の運転をできるとは知らなかったし、まさか本当に運転してしまうとは夢にも思っていなかったのだ。そのあたりを走り回って必死で息子(が運転する車)を探すも、見つからない。これは大変なことになった。どこかで事故でも起こしたらどうしよう。事故を起こさないまでも、あんな幼い子が自動車を運転していたら早晩大騒ぎになるだろう。しかし、息子は恐ろしく頭のいい子だから、何事もなかったようにそのうち家に帰って来るかも知れない。さまざまな想いが頭の中で交差し、私は心臓が止まりそうなほど心配だ。そんな状態で走り回るうち、道の傍らに素敵なお店を発見した。飲食店だったような気がするが、看板に何か非常に面白い言葉が書かれていた(その詳細な内容は残念ながら思い出せないが、「外国人」に関するユーモラスな一言だったと思う)。こんなお店があったのかと心を惹かれながらも、私は最後まで徹底的に息子の心配をしながら走り回っている。
【解説】 目が醒めると、そこは山小屋だった。ああ、今のは夢だったのか、それでは息子が車に乗って出て行ったのは夢だったんだ、と思って非常に安堵し、その次に1秒ほど置いて、そういえば息子は2歳ではなく、21歳の大人であるということに気づき、二重に安堵した。よく「親にとって子どもはいくつになっても子どもだ」というが、その通りだなと思う。息子はいくつになっても2〜3歳の姿に戻って私の夢の中に表われ続けることだろう。これが親心というものなのだ、きっと。ちなみに現実世界では息子は車を運転しない。


5日●キッチンの隅っこ

キッチンの隅っこにある、正方形のカウンターのような場所。鍋や食器がチラッと見えたかも知れない。全体にウッディーな部屋のようで、茶色い印象が残っている。私は何かを取りに来たのだと思う。部屋にはほかにも誰かいたようなイメージがあるが、誰だったかは思い出せない。場面が変わり、私はスケジュール帳に何かを書き込んでいる。改行しようとしたところ、すぐ左隣りにいた人が紙の上を指差しながら、「ページの右端のほうにまだ余白があるのに、なぜそこで改行するの?」と指摘してきた。私は心の中で(改行することには理由があるんですよ)と思いながらも、説明が面倒くさいので黙っている。
【解説】 今夜の夢はもっとずっと長かったと思う。しかし思い出せるのはここに書いた2つの場面だけ。カウンターが正方形だったことだけが妙に記憶に焼き付いている。


6日●白い盥(たらい)

気がつくと白い盥(たらい)を持って昇りエスカレーターに乗るところだった。盥には少しだけ水が張ってあり、水に浮かぶような形で、ビニールに入った玉ねぎが2〜3個入っている。私はビニール袋から玉ねぎを取り出してじかに水に入れるのだが、そのあとすぐに(こんなことをすると玉ねぎを無駄に捨てていると誤解されてしまうかな)と思い直し、左後方にいた見知らぬ女性の目を気にしている。女性の顔はよく見えなかったが、年の頃なら30〜40歳ぐらいで、髪はストレートのセミロングヘア。地味で大人しそうな印象の人だった。
【解説】 何のことやら意味のわからない夢。そもそも盥は一般に木の色だろう。白い盥自体が珍しいのではないか。しかも玉ねぎ。謎だ。


7日●……

【解説】 目下、母と娘と3人で北海道を旅行中。長時間の運転で疲れたせいか、夢を見た記憶はない。


8日●A先輩

見知らぬ部屋で数十人の人々が集会を持っている。A先輩(学生時代の先輩)が例によって無邪気な様子で辛辣な言葉を口にした。私はそれに対して静かに、しかしバッサリと斬り捨てるように辛辣な言葉を返した。これによってA先輩は二度と近づいて来なくなるだろうと私は予測した。しかし意に反してA先輩はその後もニコニコしながらやって来ると、何か気の利いたことを言った(何を言ったのかは思い出せない)。
【解説】 そういえばA先輩は毒舌家だった。私も何度か彼女からひどいことを言われたことがあり、その内容は今も忘れていない。しかしそのことを実際に想い出すことはもう稀なのだ。こうして唐突に夢に見るということは、私は今でも彼女の毒舌によって傷ついた過去の傷を抱えているかも知れない。この夢も北海道旅行中に見た。


9日●好きな人に「二度と来るな」と言う

私は何人かの人たちと一緒に歩いている(それが誰であるかは全くわからない)。私は何かに深く傷ついている。気にしていることを好きな人から言われた、という設定らしいのだが、誰から何を言われたのかは不明。あまりに深く傷ついたので、相手に「もう二度と来ないでほしい」と心にもないことを言ってしまった。そのあと私は半地下になったカフェのような店に入った。半地下なので路上の様子が窓越しに少し見える。店に入った私は、その人にはもう二度を逢うことはないだろうと感じている。だが以外にもその人は半地下の店に入って来た。この時初めてその人の顔が見えたのだが、意外にもそれは見知らぬ白人男性だった。私は本当は嬉しいのだが、「何しに来たの?」と冷たい一言を言い放ってしまう。その言葉を聞くと相手は悲しげにうつむいた。気がつくと私はテーブル席に座っていた。同じテーブルに私、その白人男性、もう一人の関係者(誰なのか全く不明)が並んで座っていると、それを見たもう一人の関係者が、「皆さんはなぜ、生まれ月の順番に座っているのですか」と無邪気な様子で質問してきた。(えっ?)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 夢の中では「好きな人」と言う設定だったが、その姿は見たこともなく、また少しも魅力のない人だった(苦笑)。昨夜そして今夜と2夜連続して「相手に冷たいことを言って斬り捨てようとしたのに、意外にも相手は付いて来る」という内容だったようだ。これが何を意味しているのかは全く分からない。この夢も北海道旅行の最中に見た。


10日●島〇さん親子の来訪

マンションの一室らしき場所。そこはおそらく「私の家」という設定なのだと思う(ただし現実世界では見たことのない部屋)。島〇さん親子(母君と息子さん)がソファに座っていた。私は少し驚き、そして、かなり嬉しく思う。というのも、母君はともかく息子さんにお目にかかるのは約20年ぶりだからだ。今、この家の中には島〇さん親子と私しかいないのだろうか。ずいぶんと静かだ。私は何か(食事?)を準備するために部屋を出て、螺旋階段を下りキッチンへ向ったと思う(しかしその様子をはっきりと覚えているわけではない)。食事の仕度に手間取ったので島〇さん親子はもう帰ってしまったかも知れないと想い、私は少しばかり淋しい気持ちで螺旋階段を昇って行ったのだが、部屋に戻ってみると意外にもおふたりは帰ろうとする様子もなく寛いでいた。それを見て私はとても幸せな気持ちになる。そのあと、何か心が温かくなるような幸福そのものの出来事が起こったのだが、その詳細は全く覚えていない。
【解説】 「吉祥」が溢れだすような幸福なイメージの夢だった。ちなみに島〇家は日本の古い家系。


11日●……

【解説】 今夜は、夢を見たような気が少しもしない(私には珍しいことである)。


12日●予知能力が花瓶を救う

流し台の左奥に置かれた花瓶が見える。流し台はごく小さく質素なもので、おそらくステンレス製。花瓶は透明のガラスで、そこに挿された花々は、色の薄い、インパクトの弱い、やさしい野の花だったような気がする。全体の風景は学校の理科室を思わせる。この風景を目にした瞬間、私は(この花瓶は落ちる!)と思い、咄嗟に駆け寄っていた。花瓶がぐらりと揺れた時には既に私の手が届いていたので、間一髪で花瓶が落下することはなかった。私は花瓶が落ちることのないように、万一に備えて床の上に置いた。
【解説】 全体にどことなく昭和を思わせる懐かしい色合いの夢だったと思う。この夢を見て想い出したが、そういえば昔はよく落下物を予知したものだ。飛行機事故を直前に予知したこともあるし、シャンデリアが落下する約10秒前にそのことを直感して居場所を変え、まさに間一髪のところで命拾いしたこともある。最近はとりたてて何かを「予知した」という意識はないが、あるいは、最近はいちいち「予知」などと意識するまでもなく、物事に於いてより好ましいほうの道を本能的に選択してしているのかも知れない。いずれにしても、ちょっと気になる夢ではある。


13日●……

【解説】 今夜は何か夢を見たのだが、非常に印象が薄く、形としては残っていない。


14日●流氷と不思議なホテル

私は大量の荷物を抱えており、すぐにはその場から動けない。友人のTさんとSさんは次々に駅へ行ってしまい、私は1人で北海道に残ることになった(このとき初めてTさんとSさんが近くにいたこと、及び自分が北海道にいることに気づく)。目の前に広がっているのは、薄暗くミステリアスな海。流氷が恐ろしいほど美しい。私は魔法にかかったように、身じろぎもせず流氷に見惚れている。この風景を写真に撮っておこうと思い、カメラを取り出すのだが、その短い時の間にあっと言う間に日が暮れて、写真撮影は出来なくなってしまった。見知らぬ女性がどこからともなく現われ、「貴女の部屋はここです」と言った(女性の年齢や顔などは一切不明)。言われたままに入ったホテルの部屋の窓からは、辛夷(こぶし)の花は見えるが流氷は全く見えない(但しここで「辛夷」だと思っている花は、実は「辛夷」ではなく、何か全く別の花なのだが)。海に面した1階の角部屋に入ったというのに、窓から海が見えないとは一体どういうことか。全くわけがわからない。次に気がつくと私は全裸だった(入浴しようとしたのだと思うが、風呂を準備した記憶はない)。しかも風呂の場所を間違えたのか、気がつくと庭に出てしまっていた。そこもハーブのたくさん植わった素敵な庭なのだが、いつ誰が現われるかわからない。服を着るためにあわてて部屋に戻ろうとしたところで目が醒めた。
【解説】 全体に幻想的で、おとぎ話の世界に入り込んだような、魔法にかかったようなイメージの夢だった。その中でも流氷の美しさが際立っていたように思う。出来ればもう少しこの夢を見続けて、あの世界観の中にそっと身を置いていたかったほど、今夜の夢は魅力的だった。


15日●時をかける少女

大昔に流行した映画の主題歌『時をかける少女』が流れている。最初はユーミンの声、そのあとは原田知世さんの声だったように思う。見えているのは花瓶に挿された花。どこかで見覚えのある花だな、と私はぼんやり思っている。
【解説】 目が醒めてすぐ、(このところ立て続けに花瓶に挿した花の夢ばかり見ているのでは)と気づいた。そもそも花瓶に挿した花が私はあまり好きではなく、自然に野に咲いている花が好きなので、夢の中とはいえ花瓶が何度も登場することには違和感を覚える。『時をかける少女』という映画を私は一度も見ていないのだが、筒井康隆さん原作のタイムトラベル物だということは知識として知っていた。なんとなく気になったのでYoutubeでチェックしたところ、3日前の夢に登場した風景(教室らしき空間)と映画の雰囲気が実によく似ている上に、花(映画ではラベンダー)がタイムトラベルのきっかけになる物語だと知って偶然の一致に少々驚いた。ちなみに今、私のデスクの上には北海道旅行で買い求めたラベンダーの入浴剤が山積みになっている。偶然の重なり過ぎ?


16日●……

【解説】 今夜も夢の中で花瓶を見たような気がするのだが、具体的なイメージは何も残っていない。


17日●面倒なIT機器

携帯電話のような形をした何らかのIT機器の上に、白っぽい細長いシールを貼ろうとしている私。しかしそのシールを貼るためには、あちこちに紐をぐるぐる掛けたり、人間業ではちょっと不可能なほど複雑なやり方で手を交差させたりしなければならない規則になっていて、実に面倒くさい。私は(こんなの人間には無理。千手観音仕様か?)と思っている。
【解説】 一体どういう理由でこのような夢を見たのか……と考えてみたものの、一向に思い当たる節がない。しいて言えば、5年前から使っているガラパゴス携帯の蓋が壊れかかり(注:壊したのは携帯ショップの店員さん。しかもゴメンナサイと言うばかりで直してもくれなかった。というか直せなかった)、仕方がないのでその部分を自分で修理した……という最近の出来事が今夜の夢の背景にあるのかも知れない。


18日●
……
【解説】 今夜は博士ゼミで配布するレジュメを作るために徹夜。夢は見ていない。


19日●障子から十字架

前後関係はわからないが、不意に目の前に巨大な障子が現われた。反対側から日の光がさしており、そのために障子全体がステンドグラスのように美しく、神々しく見える。自分の視線が障子の左上の隅の部分にフォーカスされた。縦横の桟(さん)がクロスしたところが飛び出してきて、見る見るうちに十字架になった。(ああ、なるほど。ここに○○の秘密が隠されていたのか!)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 最後の○○が何だったかをハッキリと思い出せないのだが、「ダ・ヴィンチ」とか「フリーメイソン」とか、そのあたりの怪しい言葉を頭に想い浮かべていたような気がする。


20日●4つに分類された何か

何かが「1番」から「4番」に分類されている何か。1番と3番は仲間だが、私にはあまり関係がない。2番と4番は要注意だ。私はそれら4つを表に書いてまとめようとしている。
【解説】 何のことやら全くわからない夢。しかし目が醒めて暫く経ってから、(もしやこれはカウラ収容所に関係がある夢かも知れない)と思った。その場合は、1番と3番はイタリア人捕虜が入っていたAコンパウンド・Cコンパウンド。2番は日本人下士官兵がいたBコンパウンド。4番は日本人士官捕虜がいたDコンパウンドを示しているのではないか。あまりにマニアックすぎて自分でも呆れるが、今日の夢に解説を付けるとすれば、それ以外には考えられない。


21〜26日●……

【解説】 この6日間というもの、何一つ夢を見た記憶がない。これは私にとって非常に稀な事態である。6日も続けて夢を見なかったのは、覚えている限り人生初の事態ではないだろうか。


27日●蝶々の写真集を出版する

私は旅をしている。オーストラリアが95%にインドが5%だけ混ざったような雰囲気の、どことなく懐かしい、しかし実際には一度も見たことのない風景。家族が一緒だった気がするが、その姿を見た記憶はない。私が旅をしている場所は、いわゆる「普通の場所」ではないようだ。場がまとっている空気が違う。何がどう違うかを説明するのが難しいが、簡単に言ってしまえば現実感に乏しい。それこそ「夢の中のぼんやりとした風景」のような場所なのだ。イギリス風の古い家とガーデン。年輩の女性に案内されて、私はそのお宅の部屋やガーデンを隈なく見学して歩いている。そのうちに少しずつ分かってきたことは、昔ここで少し悲しい出来事があったらしいこと。それは何十年、あるいは百年以上昔のことのようだ。年輩の女性は、まるでつい昨日のことを話すような口調で当時の想い出を語っている。そのうちに私は、今がその「大昔」なのだということに薄々気づき始めた。そしてこの女性も、現在生きている人ではなく、当時この屋敷で暮らしていた誰かなのだ。私は時をさかのぼって100年前の世界に来ているのだろうか。私がぼんやりとそんなことを考えた頃、女性の姿がふーっと消えて、代わりに1匹の蝶々が舞っていた。私は手持ちの一眼レフカメラで蝶々を撮影した。われながら素晴らしい1枚が撮れたと思う。そこへ誰かがやって来て、私に「蝶の写真集を出版したらどうですか」と勧めてくれたような気がする。その言葉を聞いて、私はこの家に来るまでにも旅先でたくさん蝶々の写真を撮ったことを思い出していた。次の瞬間、場面が飛んで、私の前には立派な写真集が見えていた。表紙には蝶が飛び、著者名は「山田真美」と印刷してある。どうやら本当に私は写真集を出版したらしい。(薔薇の写真集なんか出しちゃって、みんなから冷やかされるだろうな)と思ったところで目が醒めた。
【解説】 「蝶々」の写真集を出版するという話も唐突だが、最後に自分がそれを「薔薇」の写真集だと勘違いしているのもおかしな話だ。そういえば今月は何度も「花瓶」や「タイムトラベル」の夢を見たが、今夜の夢もそれに関係しているのだろうか。実は、この夢を見る前の6日間は何一つ夢を見た記憶がない。これは「毎日夢を見て、それを克明に覚えているのが普通」な私にとっては、極めて異例というか「ほとんど異常」な出来事である。そういえば昔の人から「蝶々はあの世からのメッセンジャーだ」とか「死んだ人が何か伝えに来ているのだ」と聞いたことがある。そんな迷信があるぐらいだから、蝶は何らかのスピリチュアルな意味を(深層心理学的には)持っているのかも知れない。いずれにしても明日以降の夢が気になるところだ。


28日〜31日●……

【解説】 結局、今月は夢を見ない日が驚くほど多かった。一体何だったのだろう。




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