2013年6月


1日
●元捕虜から届いた葉書
元捕虜のIさんから葉書が届いた。そこには、「これからは私のことを六中十と呼んでください」という意味のことが書かれていた。「六中十」は「十中六」だったかも知れないが、正確には思い出せない。読み方もわからない。葉書はどうやらIさんの息子さんが代筆したもののようだ。私は(なぜこんなおかしな名前を選んだのだろう)と怪訝に思っている。
【解説】 Iさんはカウラ事件を生き残った元捕虜の1人で、カウラ会に所属せず、他の元捕虜達とも一切コンタクトを断って戦後約70年を生きてきた元零戦パイロットである。先日、ひょんなことから(いわば棚からぼた餅式に)I氏の存在を知った。カウラ事件についてインタビューしたかったが、正面切って取材を申し込んでも受けてもらえないことはわかりきっていたので、私はある日突然I氏の家の門の前に立ち、「戦争のことを話してくださいませんか」と、いわば奇襲攻撃をかけたのである。今から1か月半ほど前のことだ。私の勢いに観念したのか、I氏はカウラ事件のことを比較的素直に話してくださった。そのI氏から葉書が届いた夢。夢の中に出て来た「六中十」にも「十中六」にも心当たりはないが、なんとも奇妙な名前だ。何か意味があるのだろうか。それとも単なる戯言なのか。ちょっと考えてみようと思う。


2日●木が倒れてくる方向を占う
森の中。その中の1本の木をこれから伐り倒すらしい。木がどの方向へ倒れて来るかは全くわからないのだが、それを知る方法があるという。その方法とは、インターネットの某サイトに行って「shiXXXXXX」というパスワードを入れること。それだけで木の倒れる方向を知ることが出来るという。パスワードの最初が「shi」だったことは間違いないが、後半の「XXXXXX」に入る6文字が何だったかはどうしても思い出せない。
【解説】 何のことかよくわからない夢だが、今夜の夢には、これ以外にもいくつか「shi」というつづりが登場したような気がする。


3日●乗り物の火事を店員に知らせる
気がつくと小さなお店の中にいた。何屋さんかよくわからないが、生活臭のないオシャレな感じが漂っていたので、雑貨屋さんか化粧品店ではないかと思う。店の中には10~15人乗りの遊具がある。小型の(小さな子どもが乗っても怖くない、あまり迫力のない)ジェットコースターか、コーヒーカップのような乗り物だったと思う。私は乗り物には乗らず、店の出入り口付近に立って乗り物のほうを見ている。乗り物は満員だ。乗っているのは大人と子どもが半々ぐらいだったと思う。そのときどこかからニュースが入った。どうやら、あちらこちらの店舗に設置されたすべての乗り物が停止してしまったらしい。この店の乗り物も停まってしまった。店員が「○○(別の店の名前)の乗り物も停まったらしい」と言っている。ふと見ると、皆が乗っている乗り物の下のほうで青い炎がチョロチョロと燃えているではないか。私は驚いて、「火がついていますよ!」と店員に教えたのだが、店員は「大丈夫ですよ」と答えるばかり。炎は次第に大きくなって、乗っている人々に今にも燃え移ってしまいそうだ。私が何度も騒いだので、乗り物に乗っていた店長らしき人がようやく降りた。それを見ると、乗り物に乗っていなかった別の店員らが小声で「立場上、降りられるのね」と言っているのが私の耳に届いた。
【解説】 またしても意味のわからない夢。そういえば去年だったか、某所で小火(ぼや)を見かけた。それ以来、火を見るとちょっと怖い。今夜の夢に登場した炎は青色だったが、去年実際に見た炎は赤っぽいオレンジ色だった。今夜の夢の炎は青色だっただけ、恐怖の度合いは低かったが、いずれにしてもこの手の夢は一種の「アラーム」だと思うので、いつも以上に火の元に注意しようと思う。


4日●数学的には8.5人乗り
バスのような乗り物が見える。パッと見た感じ、40~50人は間違いなく乗れそうなスペースがある。ところが、そこへインド人(?)がやって来て、何やら短い計算式を書きだした。すると答えは8.5になり、この乗り物には8.5人(8人半)しか乗れないことが判明した。私は驚き、(こんなに広々としたスペースがあるのに、計算すると8.5人しか乗れないのか。目の錯覚って怖いモノだなあ。それにしてもインド数学は凄い)などと感心している。
【解説】 最近、本当にわけのわからない夢が多い。そういえばつい最近、「インド算数を英語で!」という講演会をした。その中でインドの数学がいかに空間認識を重要視する学問かという話をしたばかりである。今夜の夢はその話題の影響を受けているのだろう。


5日●……

【解説】 夢の内容を書いておいた紙を間違えて捨ててしまったらしく、どのような夢だったか全く思い出せない。


6日●お姫さま
皇室のどなたかが微笑んでいる。モナリザのような不思議な笑み。横顔。ピンク色のふわっとしたドレスと典型的な「お姫さま」のイメージ。
【解説】 今夜の夢にはストーリーはなかったのかも知れない。思い出せるのはこの一場面だけ。ただしお顔に見覚えはなく、実在しないお姫さまだったような気がする。


7日●廊下で鉄砲水
前後関係は不明だが、気がつくと細長い廊下を歩いていた。昔の学校の廊下を思わせる木の廊下だ。ちょうど廊下が「L」の字型に曲がったあたりに差しかかった時、不意に後方から凄まじい勢いで水が押し寄せてきた。鉄砲水と言うのだろうか、命の危険を感じた私はすぐに駆け出して、廊下の先にある部屋の中に飛び込んだ。そこには数人の人がおり、何だったかわからないが驚くべき光景が広がっていた。「感電」という言葉が脳裏に浮かんだかも知れない。あるいは「核爆弾」だっただろうか。ともあれ私は無事に助かった。
【解説】 突然の「水難の相」といった趣の夢だったが、途中のキーワードとして覚えているのは「感電」と「核爆弾」である。驚くべき光景がどんな光景だったか思い出せないのは残念。


8日●X子さんの意外な素顔
X子さんが泣き喚いている。X子さんは、私がすぐ近くにいることに全く気付いていないのだろう。普段は楚々としたイメージのX子さんが、般若のような形相で髪を振り乱し泣き叫ぶ様子は、「恐ろしい」というよりもどこか「滑稽」だ。X子さんは夫になる予定のボーイフレンドを職場の先輩に盗られたらしく、先輩の名前を口にしながら恐ろしい呪いの言葉を含む罵詈雑言を並べている。私は、(X子さんって、実はこういう人だったのか)と思い、なんとなく白けた気持ちでそっとその場から立ち去った。
【解説】 非常に短い夢だったが、X子さん(実在の人物)の凄まじい表情が目に焼き付いている。なお、この夢とほぼ同じことが現実でも起こったらしいということを、少し前に別の友人から聞いたばかりなので、この夢は現実で聞いた話が単に映像化されただけのことである。


9日●静かな一軒家で何かを作る
気がつくと、見知らぬ一軒家の中にいた。雰囲気としては古い、大きな家で、周囲は広々とした原っぱらしい。私がいるのは日当たりのよい(おそらく南向きの)部屋で、目の前には気持ちの良い空間が広がり、遠くのほうには山が見え、爽やかな風が吹き抜けている。私は何かを作っている。夢の中では何を作っているかハッキリしていたのだが、今こうして文章にしてみると、何を作っていたのか皆目思い出せない。しかし大きさとしては片手で簡単に持てる程度だったと思う(具体的には、野球ボールより大きくサッカーボールより小さい感じ)。私が真剣にそれを作っていると、別に頼んだわけではないが、いつの間にか数人の男女がやって来て手伝ってくれていた。そのうちの2人はH美さんとH美さんのボーイフレンド(共に40代)だったと思う。いい感じにそれが完成に近づいて来た頃、新たに助っ人が加わった。Aさん(やはり40代の男性)だ。Aさんは世界ランキングトップのほうの大学を出ているが、一般常識はからきしダメな人である。今もまた、せっかく完成しかけたそれを前にして「明日、○○(私が知らない人の名前)に頼んだらいいよ。彼はこういうの得意だから」と言った。私は内心辟易しながら、「いやー、こんなに出来ちゃってから頼むのは逆に失礼でしょう。そういう立派な人にお願いするなら最初から頼むべきですよ」と笑いながら答えた。本心としては、私はAさんやAさんの友人と関わり合いになるのが嫌だったのだ。そのあと私は部屋の端っこまで行き(そこは縁側のようなスペースになっている)、仰向きに寝転がって空を見上げた。すると地上3メートルほどの高さのところを、吃驚するほどたくさんの羽の生えた虫たちが、静かに、ゆっくりと、一定方向に向かって飛んでいたではないか。しかもすべての虫の飛ぶ速度が一緒なのである。よく見ると誰も羽根を動かしていない。つまり、地上3メートルほどのところにまるで透明な「動く歩道」のような物があって、虫たちはそれに乗って運ばれているような感じなのである。私が「凄い! 彼ら、1匹残らず同じ高度を保って移動していますよ! あのあたりに空気の流れがあるんでしょうかねえ」と言うと、ほかの皆もやって来て、仰向けに転がりながら「本当だ! 凄い!」を連発していた。なお、この夢には全く別の何か素敵なモノが一瞬だけ登場したような気がするのだが(そして、それは結構重要な意味を持っていたと思うのだが)それが何だったかはどうしても思い出せない。
【解説】 ひと言でいうと、「孤高でありながら、ありがたい仲間がいてくれる。しかし中にはトンチンカンなアドバイスもある」というメッセージのような夢だった。作っていたのは、まあどう考えても「博士論文」であろう。虫に関して言えば、何百匹(何千匹?)の小さな羽虫が羽化して一斉に這ってくるという実にSF的な光景を、つい最近某所で目にしたばかりなのだ。そのとき虫たちは床の上を這っていたのだが、今日の夢では空を飛んでいたので、夢のほうがさらにSF的だったと言えるかも知れない。


10日●……

【解説】 今夜は夢を見た記憶がない。


11日●……

【解説】 今夜も昨夜に引き続き夢を見たような記憶がない。


12日●桃の表面を磨く
前後関係は全く思い出せないのだが、何か楽しい気分が沸き起こっている。私の近くには親しい友人が2~3人いて、彼らは少しも手出しをせずに黙って私を見守っている。私の手には桃が1個。大きく、綺麗な形をした桃だ。私は何らかの道具を使って、桃の表面を一生懸命磨いている。桃の表面を磨くことは、この世界では非常に重要な儀式なのだ。
【解説】 この夢には前後にも何かストーリーがあったような気がするのだが、ハッキリと内容を思い出せるのはこの場面だけ。このあと、「桃は神聖である」というような話を誰かと話した気がするが、詳細は定かではない。


13日●英国人(?)からインタビューを受ける
気がつくと誰かからインタビューを受けていた。何に関するインタビューだったか、どのような質問が出たのか、詳細は何一つ思い出せない。インタビュアーは20代後半から30歳ぐらいの西洋人男性だ。何となくイギリス人のような気がするのだが、そう思うことに特に理由があるわけではない(インタビュー時の彼の英語がいかにもブリティッシュ発音だったとか、そういう記憶があるわけでもない)。インタビュー終了後、私は「質問の仕方が上手ですね」という意味のことを相手に告げた。おそらく英語で言ったのだと思うが、それも定かではない。インタビュアーは相好を崩して「そんなふうに褒められたのは生まれて初めてです」という意味のことを(おそらく英語で)答えた。その笑顔の純朴さを目にして私は(ずいぶん初心な人だだなあ。それにしてもインタビューされるのにも技術が必要だな)などと心の中で思っている。
【解説】 私は何のインタビューを受けたのだろう。気楽に質問に答えていたのだが、その内容は全く思い出せない。インタビュアーは色で言うと「グレー」っぽい印象の、素朴で地味な感じの人だった。


14日●超優秀な男
古い重厚な建物。イメージとしては裁判所か法務省のような「法律」に関係した建物ではないかと思う。間違いないのは、そこが裏口であって、表玄関ではなかったということだ。人影もなく、そのあたりの道がやや入り組んで迷路のようになっているのが印象的だ。イギリスの古い町のような気がするが、特長のある建物などが全く見えないので、実際にそれがどこだったのかは不明。私は高級乗用車の後部座席に座っている。リンカーンコンチネンタルのような大型車だ。助手席には知った顔の男性が乗っている。高校時代からの友人、H君だ。H君と私はボードゲームをしている。囲碁と将棋とチェスを足した上にさらに何かを加味したような複雑なゲームで、ルールを知らなかった私はいちいちH君から手を教わりながら指しているのだ。H君にはどうしても歯が立たなかった。ポーカーフェイスのH君を見て、(相変わらず優秀な男だなあ)と思う。そういえばこの男には、あらゆる分野で一度も勝てたことがないし、おそらく今後も勝てないだろう。彼は超人だ。夢の最後にH君から何か一言、非常に為になるアドバイスをもらったと思うのだが、その内容は残念ながら思い出せない。
【解説】 目が醒めて第一に思ったのは、(H君ってそんなに優秀な人だったっけ?)ということ。確かに学校の勉強はよく出来たほうかも知れないが、すべての友人を見回した時にH君が最優秀ということは決してなかったし、この人に勝てないと思ったことは一度もない。大人になってから会った時も、それほど優秀というイメージはなかった。今夜の夢が何を意味しているのかはサッパリ分からないが、長いこと思い出すことのなかったH君を思い出させてくれる夢ではあった。


15日●……

【解説】 今夜は夢を見た記憶がない。


16日●……

【解説】 今夜も夢を見た記憶がない。


17日●カタカナ4文字の暗号
最初にカタカナ4文字の言葉が一瞬だけ登場した。全く意味をなさない4つの文字の羅列に見えるが、それは何かの暗号らしい。私はそれを瞬時に暗記し、あとは、その暗号を忘れないように努力しながら過ごしている。
【解説】 目が醒めた時には、その暗号が何であったか全く思い出せない。私は昔からこの手の夢をよく見るのだが、今夜のように起床と同時に暗号の中身を忘れてしまうことも珍しくないのだ。世間には、こういう暗号系の夢を見る人はどれぐらいいるのだろう。また、夢に現われる暗号にはどのような意味があるのだろうか(仮に意味があるとすればの話だが)。色々と興味深い。


18日●スクーターで京都へ
私はスクーターに乗って京都に向かおうとしている。白いVespaだったと思う。途中で中学生ぐらいの女の子とその母親から感謝された(ただし何に対して感謝されたのか詳細は不明)。私は京都への行き方を知らない。地図もない。するとくだんの中学生と母親が、知人に道を聞いてくれると言い出した。知人というのはラーメン屋の店主らしい。私はスクーターに乗ってラーメン屋へ行ってみた。店主は30代半ばぐらいの男性で、私に道を教えるためにわざわざ店を早退してくれた。この時、時間帯は夜の9時か10時ぐらいだったような気がする(時計を見たわけではないが)。ところがこの男は、道を教える代わりに金を要求してきた。私は男に道案内を断り、自力で京都を目指すことにした。
【解説】 そういえば私はスクーターを含む「オートバイ」というものを一度も運転したことがない。今夜の夢でも、最初のうちはどうやってスピードを出すのかわからず、手元のハンドルを回してスピードが増すことがわかって(なるほど!)と感動していた。つまり、夢の中とはいえ、今夜私は初めてオートバイを運転したわけである。そのためか、なにやら気分爽快な夢だった。京都への道がわからないという筋書きの意味は全くわからないが、夢の中の私は道に迷うことを少しも心配していなかった気がする。ちなみにラーメン屋の店主は友人の旦那さんにどことなく似ていた。


19日●YBG
私は「YBG」という名前の新聞を発行しているらしい。それ以外のことは何もわからない。
【解説】 全く意味不明の夢。「YBG」が何を意味するのかも不明。


20日●恐ろしい雰囲気のロシア軍人
最初に、広い部屋の一方の壁に沿って10人ほどの男達が並んで胡坐をかいている。そのうちの1人が知人だったことは間違いないが、残りは1人残らず外国人のようだ(ただし全員が私に背を向けているため、顔は見えない)。そこへ新たに10人ほどの男たちがやって来た。新しく来た男達は、とてつもなく恐ろしい雰囲気のロシア軍人だ。私はそれを見て最初はビビるのだが、次の瞬間には(しかし最初の男達も、なかなかどうして負けていない。これは互角の勝負になるか、あるいは親友になってしまうのではないか)と思い直している。
【解説】 このところシベリア抑留に関する記録を読み漁っている。それが、今夜の夢にロシア軍人が登場した理由だろう。


21日●視界いっぱいの原色
おびただしい原色が視界いっぱいに溢れている。数字の羅列。ターバンを巻いた老いたシーク教徒の横顔。
【解説】 今夜の夢にもストーリーがあったように記憶している。しかし思い出せるのは細かな部分だけ。


22~30日●……

【解説】 この間、夢を見た記憶がない。




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