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2006年11月5日号(第240号)
今週のテーマ:
阿字観瞑想とお寺で聴くモーツァルト
※11月14日発売予定の隔月刊誌『NHK英語でしゃべらナイト』12月号(アスコム・刊)に、私が日本人のために初めて英語で書き下ろした冒険ファンタジー“The Monday Monster”が16ページにわたり一挙掲載されます。小さな子どもたちから英語を復習中の大人の方まで、すべての年齢層の方に楽しんで頂けるのではないかと思います。お楽しみに♪
日豪交流年(Australia-Japan Year of Exchange)を記念して開催されるシンポジウム「オーストラリアでの楽しい過ごし方」において、パネリストを務めます。日時は12月7日(木)15:00〜16:30、場所は赤坂区民センター(東京都港区赤坂4-18-13)です。詳細が決まり次第このページでご紹介いたしますので、ご興味がおありの方は是非ともご参加ください。
 先週は、珍しく1週間のうちに3回もお寺に行ったりお坊さんに会ったりの仏教ウィークでございました。

 ……まあ、高野山大学の院生としては、この生活は極めてノーマルなものと言えるかも知れませんが(笑)。

 まず先週末は、高野山東京別院で行なわれた阿字観瞑想に参加して参りました。

 禅宗に座禅があるように、真言密教には「阿字観瞑想」という名の伝統的な瞑想方法があるのです。

 インドでは古来、サンスクリット語の「ア」の音および文字に深遠な意味が秘められていると考えられていますが、真言密教ではこの考え方をさらに進め、独自の瞑想方法を編み出しました。

 具体的には、サンスクリットの「ア」の文字が書かれた掛け軸の前にゆっくりと座し、独特の呼吸法を実践しながら、イメージの中で文字を宇宙大にまで広げたり、さらにミクロの世界まで縮めたりします。その意味では、ひとつのイメージ・トレーニング法と呼ぶべきかも知れません。

 興味深いのは、阿字観瞑想の際に行なわれる呼吸法が、「吸う」ことよりも「吐く」ことに圧倒的な重要性を見出している点でしょう。

 ここでは、息を吸うことは自然に任せ、息を吐くことに意識を集中するのです。
 
 これは現代人にとって、非常に大切な呼吸法だと言えます。

 知識の詰め込み、情報過多、激化する競争、拡がる格差。そうしたストレスに常に身をさらされ続けている現代人に必要なものは、これ以上覚えることではなく、むしろ、覚えたことを忘れる方法を学ぶことではないでしょうか。

 忘れることさえ出来れば、どんなにハードな生活を送っていても、実は精神的なストレスって溜まらないものです。

 日頃かなり忙しい生活を送っている私がストレス・フリーなのも、まさに忘れることの天才だから(単に「物忘れがひどいだけ」とも言いますが(笑))。

 「吸う息」よりも「吐く息」に重きを置く阿字観瞑想の呼吸法は、まさに「忘れることを学ぶための呼吸法」と言えるかも知れません。

 忘れたいけれど忘れられないことが多くて困るという方は、こうした瞑想を続けることで楽になれる可能性があると思いますよ。

 ただし、阿字観瞑想は、まずはきちんとした指導者のもとで学ぶことが最重要とされていますので、最初はやはり伝統あるお寺で指導を受けることをお勧めします(東京なら高野山別院が最適でしょう)。

 怪しげな新興宗教の勉強会などには足をお向けになりませんよう、どうぞくれぐれもご注意くださいネ。

 先週はまた、「森のお寺の音楽会」と題したクラシック・コンサートへのご招待を受けて出かけて参りました。

 会場となったのは、都内にある安養院さん。歴史ある真言宗のお寺です。

 ここはユニークなお寺でして、かれこれ30年も前からご本堂を開放し、毎年のように本格的なコンサートを開いていらっしゃるとのことでした(しかも入場無料)。

 今年は新しい供養塔の落成一周年記念コンサートということで、モーツァルトの作品3曲が演奏されました。
 3曲のうちのメインは、モーツァルトが亡くなる直前まで書き続けた未完の葬送曲「レクイエム」です。
  
(左)安養院さんの納骨堂。なかなか宇宙的なイメージのデザインです (右)コンサートが
行なわれているご本堂の様子。遠くの人にも演奏者の表情がよく見えるよう、大スクリーン
も駆使しての迫力あるステージでした
 お寺で聴くレクイエム
 
 うーん。これ以上の先祖供養は、ちょっとあり得ないかも知れません(笑)。

 「レクイエム」という選曲だけでも迫力満点なのですが、約50人のオーケストラのまわりにはたくさんの仏像がずらり建ち並び、特に、4人のソリスト(ソプラノ、アルト、テナー、バス)の後方には、孔雀明王弘法大師の像、それに巨大な蓮の花のオブジェが鎮座ましまして、至るところが黄金色。普通のコンサートホールでは決して味わえない不思議な迫力に溢れていました。

 モーツァルトも、草葉の陰でさぞや驚いていたことでありましょう(笑)。

 先週はさらに、2004年11月に亡くなった父の三回忌もありましたので、バッグの中には常にお数珠と半袈裟が入っているような仏教カラー一色の1週間でした。
  
父の三回忌法要のあとでお坊さんや親戚と一緒に行った料亭の庭。小鳥達の
ために用意され、既に半分ついばまれた柿が、深まり行く秋の風情をひしひし
と感じさせてくれました
 先週はこのほかにも、お友達で礼法小笠原流宗家の小笠原敬承齊さん(とても若くて美しい女性です)とふたりでハロウィーンのディナーに出かけたり、お茶のお稽古をしたりと、楽しいイベントも多々あったのですが、今日はこれから高野山大学に提出する論文を執筆しなくてはなりませんので、このへんで失礼いたします。

 今週はサエキけんぞうさんとご一緒にラジオ番組を収録したり、ボサ・ノヴァの巨匠ジョアン・ジルベルトの日本公演を聴きに行ったりと、イベントの多い週になりそう。

 ちなみにジルベルトはボサ・ノヴァの創始者であり、「イパネマの娘」をはじめとする数々の名曲のシンガーであり、世界のポピュラー・ミュージックのシーンを一変させてしまったスゴイ男。と言うか、ほとんど神。私は大学時代から彼の大大大大ファンなのです。

 1931年6月生まれと言いますから、ジルベルトも75歳になりましたか。ご高齢のため、おそらく最後の来日になるだろうと言われている今回のコンサートには、滂沱の涙を拭くためのハンカチーフを3枚ぐらい持参で臨みたいと思います。

 なお私、今月12日に椿山荘で行なわれる予定の非常に格の高いお茶会で「長板二飾」というお点前を披露させて頂くことになりましたので、次号の「週刊マミ自身」ではその様子をレポートさせてくださいマセ。

 ではでは、今週も楽しい1週間を♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


笑ってチョンマゲ(笑)

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2006年11月5日
山田 真美