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2019年7月2日(第626号

今週のテーマ:
インド最北東部3州訪問 ①アルナーチャル

 6月中旬、インド最北東部に位置するアルナーチャル・プラデシュ州、マニプル州、アッサム州の3州を訪ねてまいりました。

 ひとことで言うと、この一帯は地の果てのように遠い、けれども桃源郷のような魅力にあふれた場所でした。

 これから3回に分けて簡単に帰朝報告をさせていただきたいと思います。
 
インド最北東部を州ごとに表わした地図
Wikimedia Commonsよりお借りしました)
 今回、最初に訪ねたのはアルナーチャル・プラデシュ州の東シアン地域に位置するオヤン村
 言ってみればインドのほぼ最西端に位置する地域です。

 ただし、オヤン(Oyan)でネット検索してもなかなか情報が得られないかも知れません。
 私自身、日本を発つ前にこの地域の基本情報だけでも収集しようと努力しましたが、かなり苦労しましたから……。
 
 そのオヤン村に新しくヒマラヤ・グローバルスキル研究所(略称HIGS=読み方はヒッグス)という学校が開校し、あろうことかこのワタクシがそこの顧問に任命されたことは、前号の「週マ」に書きました。

 顧問に就任したからには、ただ名前を貸しているだけではいけない。実際に視察と講義を兼ねてHIGSを訪問し、学生たちと直に交流しなければ……という想いが、実は今回の旅を実現させる原動力だったわけなんですね。

 オヤン村への最寄りの空港は、お隣のアッサム州に位置するディブルガール空港

 このあたり一帯には、アジア屈指の水量と規模を誇るブラフマプトラ河が右へ左へと蛇行し、見事な水郷地帯を形成しています。

 「ブラフマー神(日本でいう梵天)の息子」を意味するこの河は、チベット(現在は中国)に端を発し、インド、バングラデシュを抜けてベンガル湾へと注ぐ大河で、全長2.900キロメートル。水深は平均38メートルで、最も深いところではなんと120メートル(!)もあるそうです。

 デリーを発った飛行機がディブルガール空港に近づくにつれて、窓の外の風景は水また水。さながらきらめく湖のまっただなかにいるようで、この世の風景ではないような幻想的な印象を得ました。

 空港からオヤン村へ行くためには、このブラフマプトラを渡河しなければなりません。

 去年までの交通手段は、2時間に1本来るか来ないかの昔ながらの渡し舟に乗る以外になかったそうですが、今からちょうど半年前の2018年12月25日に全長4.94キロメートルの近代的な橋(Bogibeel Bridge)がオープン。

 そのお蔭で今回は舟に乗る必要もなく、車で2時間ほどで無事オヤン村に到着することができました。

 私としては一度ぐらい渡し舟に乗ってみたかったような気もしないでもないのですが……しかし、地元の人の話によれば、この河は水面は穏やかそうに見えて底のほうは恐ろしく速い流れになっている。ゆえに水難事故が多く、非常に危ない河なのだとか。

 こうして近代的で安全な橋を渡れることに感謝しなくてはいけませんね。
 
オヤン村の風景と、私が泊めていただいた茅葺屋根の
ゲストハウスの様子。到着した日がちょうど村祭りの日に
当たっていたため、多くの村人と会うことが出来ました。



こちらは、出先でふと覗き見た足下の様子。川には今にも壊れそうな
吊橋が架かっています。向う岸へはこの橋を渡って行かねばならない由。
ここでの暮らしは、文字どおり「毎日が冒険」ですね。
 さて、オヤン村に今年開校したばかりのヒマラヤ・グローバルスキル研究所(HIGS)では、将来的に日本で修学または就職したいと願うヒマラヤの若者たちが学んでいます。

 年齢は概ね17歳から27歳。

 「何となく」学校に通っているのではなく、「どうしても日本語をマスターしなければならない」という気迫に満ちた学生が多く、頼もしい限りです。

 今回、私は日本史と日本文化、日本人のメンタリティなどに関する講義をさせていただきました。
 喰らいついてくるような真剣で素直な目が昭和の日本人のようで、とても印象的でした。

 顔や風貌が日本人そっくりな彼らがいずれ日本にやって来た暁には、どうぞ親切にしてやってくださいね。

ヒマラヤ・グローバルスキル研究所(HIGS)の学生たちと私。
幼少期からネットの恩恵を受けて育った彼らは、村育ちとは
思えないほど世界情勢に通じ、驚くほど英語に堪能でした!



学生たちと一緒に川遊びにも繰り出しました。
このあたり、信じられない数のホタルが田んぼの
上を舞っていました。完全に「トトロ」の世界。



河で泳ぐのなんて、私にとっては何十年ぶり。
寒くなるとキャンプファイヤで体を温めます。
BGMはラップ。「エイゴワカリセン」などが
人気のようでした(笑)。
 ちなみにオヤン村で泊めていただいたゲストハウスは、実はドニポロ・ティーガーデン(Donyi Polo Tea Garden)という名の広大なお茶園の中にあるのです。

 滞在中の一日、こちらのお茶園で特別に27種類のお茶のテイスティングをさせていただきました。

 これだけの種類のお茶を一度にテイスティングするのは初めての体験でしたが、茶道の所作でお茶を飲み、茶器を扱ったところ、

「お茶や茶器に対してこれほどまでに敬意を払ってくれる人を初めて見ました。感動しました」

と絶賛されてしまいました。

 私にしてみれば茶人の端くれとして――いや、それ以前に日本人として当たり前の態度で臨んだだけなのですが、こちらの方の目には日本的な所作が新鮮に、そして美しく映ったようでした。

 夢のように美しいヒマラヤのお茶園で香り高いお茶を一度に27種類もいただくことができて、気分は最高。至福の時でした。

ドニポロ・ティーガーデンで27種類のお茶をテイスティング。
贅沢な体験をさせていただきました!
 以下、次号へと続きます♪
 ▼・ェ・▼今週のクースケ&ピアノ∪・ω・∪


留守番が淋しかったのでしょう、クースケは
かなりの甘えん坊になってしまいました。


(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2019年7月2日
山田 真美
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