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2006年10月1日号(第236号)
今週のテーマ:
お袈裟と般若心経の入学式
※ただいま発売中のムック本『よちよちえいご2007』(アルク)にインタビュー記事が掲載されています。お子様への早期英語教育を考えていらっしゃる方は、ぜひご高覧ください。
※ただいま発売中のムック本『できる子は10歳までに作られる』(アスコム)にインタビュー記事が掲載されています。早期英才教育に関心のある方にオススメの1冊です。
※ただいま発売中の隔週刊誌
『サピオ』(小学館)に独占インタビュー「極秘来日中のダライ・ラマ法王に聞く 人類が核と共存する知恵」が3ページにわたって掲載されています。お見逃しなく!
※10月3日(火)23:10〜23:50まで、LOVE FMのラジオ番組「ELAN VITAL」にゲスト出演いたします(パーソナリティーはモーリー・ロバートソン氏)。詳細はこちらからご覧ください。
※10月13日〜15日の3日間、四国の徳島県で「第28回日本文化デザイン会議」が開催されます。私は13日の「カフェトーク」でサエキけんぞうさんとモデレーターを、15日には「黒川紀章氏×日比野克彦氏対談」の司会を務める予定です。この秋は徳島へGO!
 本題に入る前に、今日はまず嬉しいご報告が……。

 このたび、『死との対話』の中国語(繁体字)版が完成し、権威ある台湾の出版社である先覺出版から出版されました。

 『死との対話』を中国語に翻訳したいというお話はかなり前から頂いていたのですが、その間、私がいちばん楽しみにしていたことが何だったかと言えば、何を隠そう、

(中国語版には、一体何というタイトルが付くのかしら?

ということでした。なにしろ本のタイトルというものは、必ずしもそのまま直訳されるとは限りませんからね。

 例えば、かの有名な『十五少年漂流記』の原題は“Two Year Vacation(二年間の休暇)”。
 『若草物語』の原題は“Little Women(小さな女性たち)”。
 かつて私が翻訳し『生きて虜囚の辱めを受けず』のタイトルで出版したノンフィクションも、原題は“Voyage from Shame(恥からの旅路)”でした。

 『死との対話』の中国語タイトルはどうなるのか? 直訳すればおそらく『死的対話』とでもなるのでしょうが……。

 興味津々で待っていたところ、ついに完成した中国語版のタイトルは『印度生死筆記』となっていました。
   
表 紙             裏表紙
 日本語の感覚とは一味違ったダイナミックなタイトルですね。「印度」「生死」と、漢字を見ただけで意味も一目瞭然だし。

 ちなみに私の肩書きは「日本印度達人」となっていました(笑)。

 しかも、プロフィールの“主な作品”のところには『豬太郎與○熊的英文間諜大作戦』(○は豸へんに苗)と書いてあるし。

 これって言うまでもなく、『ブースケとパンダの英語でスパイ大作戦』のことですよ。「豬太郎」は中国のブースケって感じなのでしょうネ(笑)。

 章タイトルの「棺桶と行く列車の旅」は、「與棺財同行的火車之旅」(笑)。漢字を眺めているだけでも、現場の臨場感がひしひしと押し寄せてくるようです。

 『印度生死筆記』に関する詳細情報はこちらからご覧いただけます。中国語(繁体字)がお読みになれる方は、是非この機会にご一読くださいませ。以上、冒頭のお知らせでした。

 さてさて、ここからようやく今日の本題です。

 先週の9月24日(日曜日)、高野山大学大学院後期セメスター入学式に出席するため、9月2日の面接試験に訪れて以来、約3週間ぶりで高野山へ行って参りました。

 たった3週間ぶりの訪問だったにもかかわらず、町には、前回はなかったものが出現しておりましたよ。

 9月6日に秋篠宮家にご誕生になった第三子、悠仁親王殿下のおしるしが高野山ゆかりの高野槙(こうやまき)に決まったことを受けて町役場の前庭に植えられた、記念樹の高野槙です。

9月21日に植えられたばかりの記念
樹。慶事用リボンやスコップもそこに
置かれたままの、まさに植えたての
ほやほや
 高野槙は日本古来の常緑針葉樹で、成木になると高さ30メートル、直径1メートルほどに達するとのこと。
 関東地方では見かけませんが、西日本では割と広く分布するようですね。岩場などの貧しい土地でも大きく育つ、生命力の強い樹木だということです。

 高野山では霊木とされていて、町のあちこちに「高野まき」の看板が掲げたフラワーショップ(と言ってもいわゆる“花”はほとんど売っておらず、商品は高野槙だけのようでしたが……)が並んでいます。

 「槙」の字が難しいためか、地元のお店では漢字ではなく平仮名表記にすることが多いよう。

 私はこの9月1日に生まれて初めて高野山へ行ったのですが、「高野まき」という看板を最初に見たときは、「たかの・まき」さんという人の選挙事務所かな?と、一瞬ですが真剣に思ってしまいました(爆)。

 漢字で書いてくださったほうが、むしろ誤解がないような気がします(笑)。
  
高野槙の専門店。決して「たかの・まき」さんの選挙事務所ではありません
(って、そんなことを思うのは私だけですかそうですか)。右が商品の高野
槙。地方発送してくださるお店もあるようです
 さて、今回の旅程は一泊二日。前回行ったときは土地勘がまるでなく、「とにかく大学に近い宿坊を紹介してください」と観光協会にお願いし、大学の敷地から徒歩3分の宿坊に泊めていただいたのでした。

 今回は、町全体の様子がかなりわかっていますので、単に大学に近いという条件を満たしているだけでなく、こだわりの宿(笑)とでも申しますか、同じ宿坊でも特典のついた場所に泊まってみることにしました。

 で、今回選んだ宿坊はこちら。

 高野山唯一の天然温泉完備、しかも24時間いつでも自由に入湯可能という、まさに今どきの巡礼者の我儘なニーズに応えてくれた宿坊「福智院」です。

福智院の入り口


  
800年以上の歴史を持つ福智院は、5,000坪もの敷地に70のお部屋を備えた高野山最大の宿坊です


  
女性用の浴場「天女の湯」は、内風呂・露天風呂・サウナを完備。食事の内容も含め、普通の温泉宿
と比べて少しも遜色がありません。館内には“般若湯”の自動販売機もあります(笑)
 なお福智院さんでは、朝6時からのお勤め(宿泊客がご本堂に集まって一緒にお経を唱え、ご本尊にお参りすること)は、強制ではなく自由参加。

 このほかお数珠づくり教室阿字観瞑想など、さまざまな教室も開いていらっしゃいましたが、私は写経教室に参加。お土産(ブレスレット型のお数珠)付きで参加費用は1,500円と、まあお手頃でした。

 さて、一夜明けて9月24日は入学式当日。

 実は今回、大学側からは事前に半袈裟(はんげさ)というものを頂いていました。
 この半袈裟というもの、首から掛けることによって、普通の服装でも一応は正装らしくなるのだそうです。言ってみればビジネスマンがネクタイを締める感覚と似ているかも知れません。

 半袈裟に関しては、こちらのサイトにわかりやすい解説(写真付き)が載っていますので、ご興味のある方はどうぞ。

 いずれにしても、今後大学の重要行事に出席する際は、必ずこの半袈裟を首に掛けるということのようです。

入学を記念して高野山大学から送
られてきた半袈裟。「大学」の文字
が入っています
 今回の入学式は、9月開始の後期セメスター入学者だけが対象ということで、出席者はたった4名(男女それぞれ2名ずつ)。
 それを迎えてくださる先生方や職員の皆さんは、学長・副学長・文学部長など合わせて10名以上と、生徒にとってみればこれ以上ないほどの“光栄の至り”状態でした。

 大学院は入学者が少ないからでしょうか、入学式が挙行された場所は講堂ではなく学長室です。
 式次第は、

 一、開会の辞
 一、御法楽
 一、新入生紹介
 一、学長訓示
 一、閉式の辞

という感じでしたが、部屋に入ってから退室するまでに要した時間は、10分、あるいはそれ以下だったかも知れません。

 ……保育園の入園式以来、こんなに短時間で済んだ入学式はおそらく初めてだったのでは(笑)。

 しかし、余計なことが一切行なわれなかっただけに、大事なことだけが深く心に刻まれた素晴らしい式典であったと思います。

 プログラムの2番目にある「御法楽(ごほうらく)」とは、主にお経を誦したり芸能を披露して神仏に捧げること。
 今回の場合は「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」いわゆる「般若心経」を全員で唱えました。

 高野山大学は真言宗の大学ですから、皆で「般若心経」を誦することは基本中の基本なのでしょう。

 学長先生以下、これから私の恩師となってくださる予定の先生方とご一緒に「般若心経」を唱えながら、心のなかで、

(そう言えば18歳で明治学院に入ったときは、入学式が挙行されたのはキャンパスの中にあるチャペルで、学長先生の祝辞は確か新約聖書の言葉だったし、そのあと全員で賛美歌を歌った記憶があるわ。賛美歌から般若心経まで、長く生きていると人生って本当に色々あるものねえ)

と、しみじみ想っていた私なのでした。

 基督教系の大学と仏教系の大学(しかもそれぞれ日本を代表する古い歴史と伝統を持った学校)の双方に学んだ人は、そう多くないのでは(笑)。我ながら不思議な人生です。

入学式とそれに続く昼食会・オリエンテーションの
風景(高野山大学発行の機関紙「飛行」より)
 高野山大学のことは、今後も折にふれてこのページでご紹介してゆきたいと思います。

 それでは皆さま、今週も好い1週間をお過ごしくださいませ♪

※「週刊マミ自身」第208号(「簡単な英単語でファンタジーを編む」)でお知らせいたしました、「日本の平均的な中学生が3年間で習う948単語だけで読める、書き下ろし短編ファンタジー」が、11月14日発売の『NHK英語でしゃべらナイト』12月号に12ページにわたって一挙掲載される運びとなりました。タイトルなど詳細は次号の「週マ」でお知らせいたします。どうぞお見逃しなく。
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


緑の中でかくれんぼ?

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2006年10月1日
山田 真美