旅に出ていない限り毎週土曜日に更新します。

バックナンバーはこちらをクリックすると御覧になれます。

2006年11月27日号(第243号)
今週のテーマ:
密教を学びに行って芸妓さんと遊んで来る

“The Monday
Monster”の表紙
(クリックで拡大)
※現在発売中の『NHK英語でしゃべらナイト』12月号に、日本人のために初めて英語で書き下ろした冒険ファンタジー“The Monday Monster”が16ページにわたり一挙掲載されています。ご高覧ください。
日豪交流年記念イベント「オーストラリアロングステイセミナー」(主催/日・豪・ニュージーランド協会)のパネリストを務めます。「オーストラリアで長期滞在も悪くないな」とお考えの皆さんにオススメのイベントです。
●日時/12月7日(木)
 第一部 13:30〜 プロ野球解説者・江本孟紀氏による基調講演
 第二部 15:00〜16:30 トークセッション(←私はここに登場します)
●会場/赤坂区民センター(東京都港区赤坂4-18-13、電話03-5413-2711)
●入場無料(ただし先着400名様限定)
●入場ご希望の方は郵便番号、住所、電話番号、氏名、年齢、職業を明記の上、ハガキまたはFAXで下記までお申し込みください。
〒171-0031東京都豊島区目白1-7-14目白久保ビル4F(社)日・豪・ニュージーランド協会「オーストラリアロングステイセミナー」係 FAX03-3590-8620
長谷寺の十一面観音を見に行きませんか?」

 知人から誘われて、紅葉がピークの奈良路を訪ねて参りました。

 長谷寺は奈良県桜井市にある密教系の古いお寺ですが、同じ密教でも、高野山とは派を異にする豊山(ぶざん)派の総本山。この夏に砂曼荼羅イベントを開催させていただいた護国寺さんの、いわば総元締めに当たるお寺です。

 そんなご縁もあって、前々から、長谷寺には一度は行ってみたいと思っていたところでしたので、知人からのお誘いは大歓迎です。

 長谷寺と言えば、冒頭にも書いたように本尊は十一面観音ですが、それも一般的なスタイルではなく、右手に錫杖を持った地蔵タイプです(※一般的な十一面観音は、右手には何も持たず下に垂らしています)。

 「観音さま」も「お地蔵さん」も、仏教上のカテゴリーとしては菩薩であることに変わりはないのですが、一般的には、観音さまは観音さま独自の持ち物を持ち、お地蔵さんはお地蔵さん独自の持ち物を持っているもの。

 長谷寺をはじめとする豊山派に見られるような観音さまがお地蔵さんの杖を持つスタイルは、かなり珍しいんですね。

 書き始めますと長くなりますからここでは割愛しますが、十一面観音がお地蔵さんの杖を持つに至るまでには、歴史的に見て「なるほど」と頷けるもっともな理由があるよう。

 でもまあ、難しく考えずとも、仏様同士で杖の貸し借りをなさるなんて仲がよろしくてステキなことじゃありませんか(笑)。

 長谷寺の本尊が十一面観音であるのに対して、高野山の金剛峯寺(こんごうぶじ)では、金堂の本尊(秘仏)は阿閃(あしゅく)如来、大塔の本尊は大日如来(胎蔵)、西塔の本尊は大日如来(金剛界)となっています。

 本尊として阿閃如来を祭っているお寺は、これまた日本では非常に珍しいのですが、金剛峯寺の場合は、阿閃如来が薬師如来と同一視されているよう。

 真言密教全体の本尊は大日如来(サンスクリット語ではマハー・ヴァイローチャナ)ですが、もともとこの如来は古代イランの宗教であるゾロアスター教の最高神、アフラ・マズダーと密接に繋がっていると考えられています。

 かつて『夜明けの晩に』のなかでも書いたように、神々や仏の世界というものは、驚くほどインターナショナルに世界史のなかでリンクしているんですね(日本のように閉ざされた文化圏にいると、残念ながら世界全体を見通す目をなかなか持てないため、その事実を体感できない場合が多いのですが)。

 そのなかでも密教は特に、そうしたダイナミックでインターナショナルな宗教のリンクをまざまざと感じさせる歴史を背負っていると言えるかも知れません。

 ちなみに、上に記したそれぞれの仏の真言(マントラ)は以下のとおりです。

大日如来 「オンアビラウンケンバザラダトバン」
阿閃如来 「オンアキシュビヤウン」
薬師如来 「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」
観音菩薩 「オンアロリキャソワカ」
地蔵菩薩 「オンカカカビサンマエイソワカ」

 え? 舌を噛みそうですか?
 では、舌を噛んでしまう前にこの話はおしまいにして、紅葉の話題に移りましょう(笑)。

これが長谷寺の御本堂です。長谷寺は「花の
お寺」の異名をとり、季節ごとの花でも有名
 今回は長谷寺を見学したあと、京都に出てお寺をいくつか回ったのですが、紅葉ピークの週末とあってどこも人出が半端じゃありませんでした。

 2日目の土曜日に行った東福寺(紅葉で有名な禅宗のお寺)などは、この日だけで30,000人の入場者をマークしたそうで、朝の8時30分に門前に辿り着いたときには、チケット売り場の前には既に夏休み中のディズニーランドを思わせる長蛇の列ができていました。

 東福寺のほかにも真如堂、毘沙門堂、大覚寺など、紅葉の名所として知られるお寺を次々に詣でましたが、どこへ行っても、それは見事な秋風景でした。

 率直な感想を言えば、京都のお庭は人工的に手が加えられ過ぎていると言いますか、計算が行き届き過ぎていて疲れる嫌いがないわけではないのですが、そう思うのは、きっと私が野蛮人だからでしょう(笑)。

 そうした人工的な部分も、ひとたび好きになってしまえば京都の魅力なのかも知れません。

 さて、今回の旅には、実はもうひとつ取って置きのお楽しみがありました。
 ほかでもありません。京都を代表する高級料亭「吉兆」でのお夕食。しかも、舞妓さんと芸妓さんを上げての贅沢なディナーです。

 日頃からテレビのグルメ番組を観ない(但し友達の滝田栄さんが司会をなさる番組は別(笑))、質素な食生活を良しとするベジタリアンな私

 みずから進んで高級料亭に行くことは滅多にないのですが、今回はお大尽の友達が声をかけてくださいましたので、お言葉に甘え、ありがたくお呼ばれして参りました。

※ 「吉兆」本店の公式ウェブサイトはこちらからご覧になれます。

京都の「料亭御三家」の中でもナン
バーワンと目される「吉兆」本店。嵐
山の渡月橋のすぐ先です



盛付けもご馳走のうち。右下のランプは、大根の
皮を薄く剥いて丸めた中に小さなロウソクを仕込
んだ珍しいもの



お座敷を彩ってくださった舞妓さんと芸妓さん。
この季節に相応しく、皆さん紅葉柄のお着物や
帯をお召しでした



芸妓さんの真なみちゃんとは、名前が似ているこ
とから意気投合(笑)



吉兆さんからのお土産は、“お香の栞”。早速、
名刺入れと日記帳のなかに忍ばせてみました
 写真に写っている芸妓さんの真なみちゃんの話によれば、彼女が入った置屋さんでは全員が「真」ではじまる源氏名を付ける決まりだったのですって。

(本当は、真なみちゃんのお名前の「な」の字は「奈」の崩し字なのですが、パソコンでは表記できない字ですのでご勘弁を)

 源氏名というと、銀座のバーにお勤めするお姉さんたちの「ナオミ」とか「ユリ」とか「アケミ」といった名前ばかりを思い出してしまう私の耳に、芸妓さんの源氏名は実に優雅に響きました。

 それでちょっと思ったのですが、日本人の芸名に対する感覚って面白いですね。

 舞妓さんや芸妓さんの源氏名をはじめ、俳人の呼び名である俳号、文人・画家・書家の雅号など、芸事を極めた人に対してもうひとつの名前が与えられる。そして、その習慣が広く普及している文化って、私の知る限り日本だけではないかと思います。

 歴史上の人物のなかには、雅号ばかりが有名になってしまい、本名はほとんど知られていない人もいるんですよ。

 例えば、「勝安房守義邦」という本名の有名人、誰だかわかります?
 彼の雅号は「勝海舟」。本名を知っている人なんて、ほとんどいないのでは?

 同様に、「吉田寅次郎矩方」って誰かわかります?
 この人の雅号は「吉田松陰」。本名を聞いても、やっぱり誰のことかわかりません。

 このほか茶道などの芸道でも、師範資格を取ると師範名(師範位とも言います)を頂くことになります。

 師範名はお家元から頂くという形になっており、私も真面目に研鑽を積めば、いずれは宗○という師範名を頂けるはず。

 私と同じお教室に通う兄弟子の皆さんも、宗吼、宗聴、宗観、宗虹などの立派な師範名をお持ちです。
 それぞれのお名前にはもちろん由来があって、例えば宗吼さんの場合はライオンズクラブの会長さんということで、「獅子吼」から取って宗吼なんですって。

 このほかにも、歌舞伎役者さんをはじめとする伝統的な職業では、先代の名前を引き継いでゆく襲名の制度があります。その場合の歌舞伎役者さんの名前は俳名(はいみょう)と言います。

 また芸以外の世界でも、古い商家などでは、代々の主人が名前を世襲してゆきます。

 私の夫の家も、江戸時代には幕府の御殿医、その後は手広く漢方薬局を営んでいた古い家のため、長男は代々薬剤師になって「山田清兵衛」を襲名していたんです、はい。

 現在の長男(つまり夫の兄)は、江戸時代から続く山田家の伝統にのっとって薬剤師になりましたが、その息子が選んだ職業は、今風にコンピューター技師(笑)。

 山田清兵衛という古めかしい名前が絶えるのは少々淋しいことですが、まあ、それは時代の趨勢ですから仕方がありません。

 ……とまあ、芸妓さんの源氏名からとんでもなく話が逸れてしまいましたが(笑)、いずれにしても、京都に今もしっかりと残るこうした雅(みやび)な文化は、いつまでも絶えることなく継承して頂きたいもの。

 そのことをしみじみ想った「吉兆」の一夜なのでした♪
  
真如堂のお庭にて。左の写真は、お釈迦さまの涅槃の姿と、それを見守る弟子たちを石で表わしたところ
だそう。左端の石をお釈迦さまの頭に見立てると全体図が見えてきますよ



紅葉をバックに、しばし瞑想タイム…



こちらは毘沙門堂の紅葉。どこもかし
こも、見事な秋色に染まっていました
 さて、最後になりましたが、今週はプレゼントがございます。
 と言っても、京都名物の生八橋ではありませんよ(笑)。

 この夏、私がチベット舞台芸術団(TIPA)東京公演2006の司会をさせて頂いたことはご記憶に新しいと思いますが、このたび、その東京公演をまとめたDVDが早くも完成いたしました(詳細はこちらからご覧いただけます)。

 そこで今回は特別に、「週刊マミ自身」読者の方のなかから抽選で3名様に、このDVDをプレゼントいたします。

「チベット舞台芸術団東京公演2006」
(105分、片面1層ディスク、日本語字
幕付き、定価3,000円)
 ご希望の方は、件名に「チベット舞台芸術団東京公演2006DVDプレゼント」とお書きになって、

@お名前(ご本名)
Aハンドルネーム(ウェブサイト上で公開しても構わないもの)
B郵便番号とご住所(抽選に当たった場合の発送先となりますので、マンションやアパートの方は部屋番号まで明記してください)
CこのDVDを希望する理由(任意)
D山田真美へのメッセージなど(任意)

 以上を明記の上、boosuke@badboy.co.jp までお申し込みください。締め切りは12月8日、当選者の発表は12月9日更新の「週刊マミ自身」とさせて頂きます。奮ってご応募ください。

 このところ風邪が流行しているようです。
 手洗い励行、早寝早起き、しっかり食べて元気な1週間を過ごしましょう。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


カメラを意識するブースケ

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2006年11月27日
山田 真美