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2007年3月5日号(第254号)
今週のテーマ:
雛祭りバイリンガル茶会
 2003年の暮れから表千家不白流正師範・荒井宗羅先生のもとで茶道を学んでいるということは、これまでも折に触れて書いて参りましたが、その荒井先生の主導で桃の節句の3月3日、新宿の京王プラザホテルで、ちょっと趣向の変わったお茶会が催されました。

 なんとホテルのロビーにステージを設け、ホストもゲストもその上に乗って衆人環視のもとでお点前を披露するという、いわば公開パフォーマンス型茶会です。

荒井宗羅先生(右から2人目)、私(左から2人目)と社中の皆さん
 今回は、僭越ながら私も2回にわたってお点前を披露させていただいて参りました。

 1回目(13時の部)のお正客(メインゲスト)は、アメリカ人のマジシャン(次客はマジシャンの娘さん)。
 2回目(15時の部)のお正客は、インド大使館の文化担当官(次客は奥さま)。

 東(とう=お茶を建てる人)とお正客の会話が日本語と英語のチャンポンというバイリンガルなお茶会となりました。

ロビーに設えられた野点風のステージ。左から半東(アシスタント)、
東(とう)、正客、次客。本来であれば次客は1人なのですが、今回は
可愛い姉妹に仲良く次客を務めてもらいました
 当日の京王プラザホテルは雛祭りイベント中ということで、あちらこちらに雛飾りがディスプレイされ、琴や尺八の生演奏もあって、ロビー全体がお雛祭り一色という感じ。

 お茶を建てている合間にも、遠くから琴の音色が流れてきたりして、それはそれは情緒たっぷりでしたよ。

 事前に社中の皆さんに尋ねてみたところ、今回はほぼ全員がピンク色っぽい着物を着ていらっしゃるということでしたので、私も桃の節句にちなんで薄桃色の訪問着を着てみました♪

 ちなみに、着物の絵柄は花模様の短冊で、ところどころに金彩(染めあがった生地に金粉を接着した友禅の技法)が施されたもの。お正月にでも着ようかなと思って誂えたまま一度も袖を通していなかった着物の“初下ろし”でした。

 帯は、着物よりやや濃い目の桃色(花の中に牛車が刺繍されたおめでたい柄です)。
 帯締めは、緋色に近い臙脂。帯揚げは純白を合わせてみました。

 半襟は、(濃い桃色の総花柄の半襟で遊ぼうかな?)と一瞬思ったりもしたのですが、ここはやはり清潔感を最重要視して純白にしておきました。

 お茶席ですから、もちろんノーアクセサリーです。

お正客・お次客として参加してくださったアメリカ人マジシャンSteve Marshall氏とお嬢さんたちのために
薄茶を点てる私。3月3日(土)、京王プラザホテル3Fロビー特設会場にて
 お茶会の楽しみと言えば、まず第一に美味しいお抹茶と和菓子を堪能することに決まっていますが、今回のお菓子は、ぼんぼりを象(かたど)った風雅なものでした。

 銘を「雛の宵」と言いまして、今はもう作られなくなってしまった昔のお菓子を、荒井先生が知り合いの菓子職人に頼んで特別に限定150個手づくりしていただいたという、まさに「ここだけでしか食べられない」貴重品だったんですよ。

 半透明の白っぽい表面を通して内側の桃色がぼーっと浮き出て見えるデザインは、まさに雪洞(ぼんぼり)のイメージでした。

 また、お正客にお出しした茶碗は、写真家の故・秋山庄太郎先生がお書きになった「花」の一文字入り。
 お次客にお出しした茶碗は上から見ると楕円形で、マンハッタンの摩天楼が描かれたモダンなもの。

 これらのお道具は、もちろんすべて荒井先生の個人的なコレクションです。

小さなお嬢ちゃんたちが、お行儀よく正座をしてくれました。「結構な
お服加減でございます」も上手に言えました。立派です!
 前にも一度書いたと思いますが、茶道は究極の総合芸術であると私は思います。

 美味しい抹茶と和菓子を(舌と目で)堪能したら、それを容れるための茶碗や菓子器に目を向けて愛でてみる。その次に、茶杓や茶入れを鑑賞し、床の間に飾られた掛け軸やお花の取り合わせを楽しみ、さらには吹く風の色や、季節の移ろいまでも楽しむ。

 それらを通して四季折々の美を表現し、客人との一期一会の時を楽しむ。

 この総合的なバランス感覚、一瞬の中に永遠を封じ込めるような大胆かつ繊細な行為のなかにこそ、茶道の醍醐味があると言えるかも知れません。

インド大使館文化担当官のラム・アパガニさんご夫妻をお正客・
お次客としてお招きした15:00の部
 お菓子の話が出たついでに、今回のお茶会のこぼれ話をひとつ。

 実は、15時からのお茶席でお正客を務めてくださったインド大使館文化担当官のラム・アパガニさんは、

「皆さんにインドの味覚も楽しんでいただきたいから」

とおっしゃって、インドの伝統的なお菓子“ミターイ”を山ほど持って来てくださったのです。

 概してインド人は、甘いものは甘く、辛いものは辛く、酸っぱいものは酸っぱくと、やや極端なまでにメリハリの利いた味付けを得意としていますが、そのなかでもミターイというお菓子は、かなりの劇甘。

 この甘みが、苦味のある抹茶とは意外に合うのですネ。

 ラムさんのご厚意により和菓子の隣りにインド菓子を並べてお配りするという、日印交流年にふさわしいお菓子による文化交流も行なわれたのでした(ただし15時の部のみ)♪

ラム・アパガニさんご夫妻と私。奥さまは雛祭りのコンセプトに
合わせて、わざわざピンク色のサリーでおいでくださいました
 なお、ラムさんが正客を務めてくださった15時からのお茶会の様子は、写真家の森川昇さんが写真に撮ってくださっていました。

 森川さんと私は、これまでに『和樂』の仕事でケララ取材(アーユルヴェーダ特集)、ダラムサラ取材(ダライ・ラマ法王インタビュー)、地中美術館取材(ジェームズ・タレル氏インタビュー)と、かれこれ3度も取材旅行にご一緒している旧知の仲。

 森川さん撮影の15時の茶会の写真は、私の手元に届き次第、森川さんの許可を得てもっとご紹介したいと思います。

 しばしお待ちを♪

薬缶を手に退出するところ
 それにしても今回の公開パフォーマンス型バイリンガル茶会は、前回の椿山荘茶会とは打って変わって、賑やかで華やかな雰囲気でした。

 一言で「お茶会」と言っても実にさまざまな種類があるのだなぁということを、身をもって学ばせていただいた駆け出し茶人・マミリンでありました。

 茶会を終えた私が心に刻んだ新たなる目標は、「日々、常に凛々しく在りたい」
 
 外はすっかり春めいて参りましたよ。皆さま、今週も佳き1週間をお過ごしくださいませ。
 ではでは♪

※「週刊マミ自身」の次回更新日は、3月12日(月)を予定いたしております。何卒ご了承ください。
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


午後2時50分の上野駅でもやっぱり
たそがれるブースケ

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2007年3月5日
山田 真美