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2007年5月19日号(第264号)
今週のテーマ:
推古天皇祭遥拝式と舞楽鑑賞
 真言宗豊山派の名刹で、板橋七福神の一「弁才天」をお祀りしている安養院の平井和成ご住職からお誘いを受け、お寺の関係者の皆さんとご一緒に岡山・広島・山口方面へ研修旅行に行って参りました。

 今回は、岡山後楽園、倉敷の大原美術館、尾道、国分寺、西国寺、浄土寺、岩国の錦帯橋などなど、見どころ満載の旅だったのですが―
  
国分寺にて (左)奉納された体高2mほどの木製の馬 (右)桃太郎おみくじ
 ―なかでも特に楽しみにしていたのは、瀬戸内海に浮かぶ安芸の宮島の厳島神社(いつくしま・じんじゃ)で執り行なわれる舞楽の鑑賞でした。

 厳島神社と言えば、海の中に建つ大鳥居が世界的に有名ですが、ここ宮島はかつて神々の住む島として人間の居住が許されなかったところなんですね。

 瀬戸内海に無数に点在する島々のなかで、何故この島が特に神々の島と呼ばれたのか、本当の理由は定かではありません。

 しかし古事記や万葉集といった古い書物をひもといてみると、当時の日本語では「心身の穢れを取り除いて神々にお使えする」ことを斎(いつ)くと言ったよう。

 「厳島」の語源は、どうやらこの「斎く」という言葉にあるようなんです。

 ……というわけで、本州側からフェリーに乗り、生まれて初めての厳島に行って参りました。
  
厳島では老舗の岩惣本店に泊めていただきました。厳島神社から徒歩3分もかからないロケーションです
 実は、今回行ってみるまで知らなかったのですが、厳島神社の大鳥居は夜になるとライトアップされ、しかも小さな舟に乗って鳥居の柱の間をくぐるツァーまで出ているそうではありませんか。

 そう言えば以前ナイアガラの滝で「滝の裏側を通るクルーズ」というものに参加したことがありましたが、今回は、あのとき以来の珍しいクルーズになりそう……。

 旅館で早めの夕食をいただいたあと、バスで船着場まで送ってもらい、60人乗りの屋形舟に乗ることができました。

 乗船料はひとり1,500円。座席がすぐに埋まってしまったため、私は甲板部分に座りました。
 夜風がたいへん気持ち良く、屋根がない分、かえって快適でしたよ。

乗り合い屋形舟(定員60名)の内部の様子
 実はクルーズが始まる直前に、広島市出身の友人に宛てて「これから屋形舟で鳥居の柱の間を通るよ〜」と携帯からメールしてみたのですが、それに対して友人から返ってきたメールは、

「そんな舟の存在すら知らなかった!

 ……ということはこのクルーズ、広島出身者の間でもそれほど知られていないのかも知れませんね。

 そうこうしているうちに舟は沖へと進み、刻一刻と近づいてくる大鳥居。
 船上の60人は、「二礼・二拍手・一礼」の準備をしながら「そのとき」を待ちます……。
  
 (左)近づいて来る大鳥居。左下に写っているのは屋形船の天井部分です (右)柱の間をくぐり抜ける瞬間
 柱の間を潜り抜けた瞬間、あたりには、一斉に大きな拍手(かしわで)が響き渡りました。

 間近で見る大鳥居は、思ったよりもずっと大きく、柱は驚くほど太くごっつく、かなり男性的で力強い建造物でした。

 ガイドさんの説明によれば、鳥居の2本柱は地中深く埋まっているわけではなく、ただそこに置いてあるだけ(!)なのですって。

 かわりに、白い玉砂利6トンを使って浮力を抑えているという話でしたが、よくもまあ、海の中に鳥居を建てるなどという大胆素敵(※不敵ではない)なことを考え付いた人がいたものです。
  
(左)たった今くぐり抜けたばかりの大鳥居を振り返って見れば、ライトアップされた明るい側が姿を
あらわしました (右)私たちの次に大鳥居の柱の間をくぐり抜けようとしている観光船が見えます
 屋形舟を堪能した翌朝は、再び厳島神社へ戻って、推古天皇祭遥拝式と、それに続く舞楽を見学して参りました。

 そもそも、大陸から日本に舞楽が伝えられたのは推古天皇の御世(592年〜628年)のこと。

 そして、ここ宮島に舞楽が伝えられたのは1146年と言われます。安芸守としてこの地に着任した平清盛が京の都からもたらしたのだそうです。

 厳島神社では、舞楽が執り行なわれるのは国宝に指定された高舞台の上。

 プログラムは、振鉾(えんぶ)、万歳楽(まんざいらく)、延喜楽(えんぎらく)、陵王(りょうおう)、納曽利(なそり)、長慶子(ちょうけいし)の六部構成で、毎年5月18日には、これと全く同じプログラムが行なわれているようでした。

 いわゆるエンターテインメントとしての舞踊ではなく、あくまでも神への奉納の舞ですから、舞う人・楽器を弾く人は全員が神官です。
  
推古天皇祭遥拝式に引き続き、高舞台(国宝)にて行なわれた舞楽の様子


  
(左)メインの舞である舞楽『陵王』 (右)舞楽『納曽利』
 六部構成で行なわれた舞楽のメインは、何と言っても『陵王』です。

 陵王は、正しくは蘭陵王と言い、姓は高、名は粛、字は長恭。南北朝時代の中国の北斉に実在したとされる有名な武将です。

 この王様は、武術の腕は超一流でしたが、不幸(?)にも大変な美男子であったため、すっぴんのまま戦場に出ると、いかんせん迫力不足だったらしいのですね(苦笑)。

 そこで、一計を案じた陵王は、戦場においては恐ろしげな龍の面をかぶることを思いつきます。

 このアイデアが功を奏して、周の軍勢と金煽城で戦った陵王は、みごと戦に大勝。そのときの様子をあらわした舞楽が、『陵王』の一番なのだそうです。

 『陵王』は、走舞(わしりまい)と呼ばれるアップテンポでアクティブな舞いで、かなり見応えがありました。

 神社側が特に宣伝をしていなかったせいでしょうか、この日、舞楽が執り行なわれている高舞台の周囲にいたのは、たまたま居合わせた100人前後の観光客のみ(うち70人が我々のグループ)。

 つまり、ほとんど貸切状態だったというわけです。

 それもこれも、皆の日頃の行ないが良かったせいでしょう(笑)。
 そんなわけで、駆け足ながらも有意義で楽しい旅となりました♪

 では最後に、今回の旅行中に目にした面白い風景をいくつかご紹介いたしましょう。

 まずは動物編です。

 宮島と言えば鹿。あちこちにいて、かなり人間に慣れています。

 タヌキも町の真ん中にいましたが、よほど人間社会に慣れているのでしょう。道路を横切るときは、右見て左見て右見て、ちゃんと横断歩道を渡っていたのには驚愕しました(爆)。
  
横断歩道を渡っていたタヌキ。鹿は島内の至るところにいて、イタズラ者というかチョイ悪です
 次に、特産物編です。

 宮島の特産と言えば、もみじまんじゅうしゃもじが双璧ですが、商店街には世界最大の「しゃもじ」が展示されておりました。

 並んでみると、確かに大きい。
 風景全体を写真に撮ろうとすると、人物がひどく小さくなってしまいます(笑)。

 厳島で「しゃもじ」が作られるようになったきっかけは、その昔、誓真(せいしん)という名のお坊さんの枕元に弁天さまが立って、ご自分の持物である琵琶(楽器の名前)と同形のしゃもじを作るよう啓示を与えたからだとか。

 面白い話もあったものですネ。

 ちなみに弁才天は、もともとはヒンドゥー教の女神さま(インドでの名前はサラスヴァティー)で、手に持っている楽器はヴィーナと申します。日本語の「琵琶」は、「ヴィーナ」が訛ったものと思われます。

世界一大きな「しゃもじ」。商店街の真ん中に
置いてあります
 続きましては、おみくじ編です。

 厳島神社のすぐ近くにある由緒ある仏教寺の境内には、なんと「血液型別おみくじ」なるモノが置いてありました。

 この世に占い数々あれど、血液型おみくじというシロモノを見たのは生まれて初めてでした。

 早速、自分の血液型であるA型のおみくじを引いてみましたが……アルファベットの「A」と亀の姿が絡み合った世にも珍しいデザイン(笑)のペンダントトップが付いて、おみくじ1回200円也。

 ちなみに中身は中吉でした。
  
血液型別おみくじ販売機。こんなの見たことあります?
 最後はレトロ編です。

 実はこの写真だけ厳島ではなく、尾道市内の某所で撮影したものなのですが、道を歩いていたらこんな懐かしい乗り物を発見しました!

 若い読者さんも、コイツのことはいくらなんでもご存知ですよね。オバケのQ太郎です。
 ……と思いながら、今、高校生の息子に聞いたところ、

「名前は知ってるけど顔はわからないなあ」

と言われてしまいました(汗)。

 ……というわけで皆さん、改めまして。コイツが昭和40年代の大ヒット漫画『オバケのQ太郎』の主人公、Q太郎(愛称は「オバQ」または「Qちゃん」)です。

 Q太郎は、本来ならば頭に毛が3本生えているはずなのですが、何故かコイツの頭はつるつるでした。
 
 ひょっとすると、もうトシなのかも。台の部分もかなり錆びているし(涙)。
 かわいそうなので、そっと指を3本立てて即席の毛を作ってやりました。
  
 尾道市内の某所で、なんと10円で動く『オバケのQ太郎』を発見! 懐かしさの
あまり、人目もはばからずに乗ってしまいました。壊してしまったら大変なの
で、体重はほとんど掛けておりませぬ(笑)
 ほかにもまだまだ面白いことづくめの旅だったのですが、全部書くとひどく長くなりそうですので、今日はとりあえずこの辺で。

 それにしても、神道の神々の島を密教のお坊さまと訪ねるなんて、ちょっと不思議な組み合わせでしょ(笑)。

 それもこれも、神仏が平和共存する日本だからこそ出来ることですよネ。

 安養院の平井ご住職、今回は色々とありがとうございました。
 この場をお借りいたしまして、心より御礼申し上げます。

巫女リカちゃん。ドールコレクターには
たまらない一品です。迷わずゲット♪
 さて、最後になりましたが、読者プレゼント当選者の発表です。

* * * 当選者発表 * * *
 『週刊マミ自身』第262号・第263号でお知らせしました
『THE ART TIMES』プレゼントには、たくさんの皆様からご応募を頂きありがとうございました。

 厳正なる抽選の結果、当選者はコスミックMさま、貴子さま、ブースケLOVEさま、菜穂子さま、南真紀さまに決定いたしました。

 
お当選者の皆さま、おめでとうございます。賞品の到着まで暫くお待ちくださいネ。

 なお、来週末は東京を留守にいたします。
 そのため、次回の『週刊マミ自身』更新は6月3日(日)を予定しております。悪しからずご了承ください。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪

  
今週はブースケ&パンダの写真を撮れなかったので、旅行中に倉敷市内で見つけたこの犬達がピンチ
ヒッターで登場です(笑)!

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2007年5月19日
山田 真美