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2007年6月13日号(第266号)
今週のテーマ:
日本五大弁才天の5分の3を攻略
 前号で予告したとおり、日本五大弁才天の一つが祀られている宮城県の金華山まで足を伸ばして参りました(地図はこちら)。

 金華山は島の名前で、読み方は「きんかさん」です。東京を出発する前に「きんかざんへ行って来るよ〜」と言いふらしておりましたら、宮城県石巻市出身の友人から早速、

「マミリンさん。濁点は要りません。正しくは『きんかさん』です」

と指摘されてしまいました(大汗)。

 同じ金華山でも、濁点(゛)を付けて「きんかざん」と読むと、岐阜県に在る山の名前になってしまうそうですので気をつけましょう。

 実を言いますと、私には宮城県の土地勘が全くありません。そのうえ、かなり重症な方向音痴。

 東京から仙台まで出たあと、どうやって牡鹿半島を抜けたらいいのか? 電車を乗り継ぐのも大変そうだし、いっそのことレンタカーすべき?

 どうしたものかと悩んでいたところ、そんなワタシを見かねたのでしょう、親切な友人が、

「なんなら仙台から金華山まで車で送ってあげてもいいよ

と申し出てくれたのですから、感謝感激雨霰、渡る世間に鬼はなし。

 ありがたくご厚意に甘えさせて頂くことにし、友人の車で仙台から一路、金華山へGO〜。

 途中には日本三景の一つとして名高い松島瑞巌寺(ずいがんじ)があったので、プチ観光もしたりして、それは楽しいドライブとなったわけです。

『斉太郎節』で有名な瑞巌寺にて
 金華山への道中には、このほかにもマッシュルーム型の巨大UFOのような石ノ森漫画館が姿を現わして、私をプチ驚かしてくれました。

 ……宮城路、なかなか奥が深そうかも。

ドライブしていたらいきなり目の前に出現した
石ノ森漫画館
 そうこうしているうちに、数時間後、車は牡鹿半島の南端にある鮎川港に到着。……と思う間もなく、いきなりモーターボートの客引きのお姉さんがやって来て、

「定期航路のフェリーはまだまだ出ませんよ〜。うちのボートはすぐ出発しますけどね〜」

と、にこやかに勧誘を開始するのもまた乙なもの(笑)。

 私もフェリーを待つぐらいなら一刻も早く島に渡りたかったので、目の前に停泊中の小さなモーターボートに乗ることにしました。料金は大人1人片道1,000円也。

 この日は、あいにくの曇り空で波がやや高かったのですが、10数分後、ボートは無事に目指す霊島・金華山の船着場に着岸しました。
  
(左)鮎川港。かつては太地と並ぶ日本有数の捕鯨基地だった港です (右)私達が乗ったモーターボート


  
(左)モーターボートの中には弁天さまの像+何故か賽銭箱が(笑) (右)次第に近づいてくる霊島・金華山
 金華山には黄金山神社(こがねやま・じんじゃ)というお社があって、ここに祀られている弁才天は、厳島(広島県)、竹生島(滋賀県)、江の島(神奈川県)、天河神社(奈良県)と並ぶ日本五大弁天の一つです。

 黄金山神社の祭神は、金山毘古神(かなやまひこのかみ)・金山毘賣神(かなやまひめのかみ)となっています。

 しかし、山頂の奥の院には、これらの神々とは別に市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)という神道系の女神が祀られています。これは『古事記』や『日本書紀』にも登場する由緒正しい神さまで、天照大神の弟であるスサノオの剣から生まれた水神とされています。

 で、実は何を隠そうこの女神さまこそ、ほかでもない弁才天なのですよ。

 そうです。金華山は「日本五大弁天の一つ」として世間に知られているにもかかわらず、現地では、弁才天を「市杵島姫神」と呼ぶ場合が少なくないのです。

 と言うのも、日本には土着の信仰と仏教の信仰を折衷した神仏習合という信仰形態があるため、このように一つの神仏に神道系の名前(この場合は市杵島姫神)と仏教系の名前(この場合は弁才天)の両方が付けられている場合があるわけですね。

 つまり、金華山の案内板に「市杵島姫神」と書いてあったなら、それは即ち弁才天のことなのです。
 それを知らずにいると、弁天さまをうっかり見逃してしまう危険がありますので要注意!

 なお、勘の良い方は既にお気づきかも知れませんが、金華山と同様に弁才天信仰で有名な厳島(いつくしま)の地名も、もとをただせば市杵島(いちきしま)が語源なのです。目からウロコでしょ?
  
黄金山神社本殿(左)と六角堂(右)。これらの建物は金華山の船着場からほんの少し
上がったところにありますので、お年寄りやお子さんでも十分に登れます
 ……さて、薀蓄はこれぐらいにして、問題は奥の院への山登りです。

 ここ金華山は、これまでに攻略した厳島や江の島に比べ、奥の院へのアクセスが圧倒的に困難な道のりでした。

 なにしろ奥の院の所在地は、ボートを降りた地点(海抜0メートル)から道なき道を標高444.9メートルまで登りきったところ。

 しかも、道を聞こうにも途中に人はいないし(オフシーズンのせい?)。
 ところどころに立っている標識はひどくわかりづらいし。
 オマケに足元は岩だらけでつるつる滑るし。
  
奥の院へと通じる道は、どこもかしこも登り坂ばかり……


  
 写真ではわかりにくいですが、山道は岩だらけで非常に滑りやすい(歩きにくい)



しかも、この山の標識は正直わかりづらいです。
そのうえ「弁才天」「市杵島姫神」の文字は標識の
どこにも見当たらないし……


  
(左)黄金山の頂上(標高444.9メートル)にある奥の院(正式名称は大海祇神社) (右)奥の院からの風景
 金華山の奥の院はアクセスが難しいと書きましたが、実際、私が登山したときにも、途中の路傍には志半ばにして挫折したご婦人方が倒れていましたから(ホント)。

 ご婦人方から、

「先に鈴木さんって男の人が登ってるから、私達は疲れちゃってもう行けないって伝えといて」

と頼まれてヒーコラサッサと山を登って行ったところ、山頂を極めて下山して来たらしい男性とバッタリ。

「鈴木さんですか?」と声をかけたところ「そうです」とのお返事だったので、ようやくご婦人方からの伝言を伝えることが出来ました。

 せっかくなので、ここで鈴木さんと暫く立ち話をしたのですが、驚いたことに鈴木さんはここが弁天神社であることを全く知らぬまま登って来たのですって。

「ここは日本五大弁才天の一つなんですよ」

とお教えしたところ、

「へーえ、そうなんですかー」

と、ほとんど興味なさげに相槌を打っておられた鈴木さん。
 それを見て、世の中には色々な人がいるものだなあと、つくづく感心した私なのでした(苦笑)。

金華山から鮎川港への復路に使ったフェリー
 さて、金華山から鮎川港までの復路は、モーターボートではなくフェリーを利用しました。

 往路より時間は10分ほど余計にかかりましたが、さすがにフェリーは大きい分だけ揺れが少なく、乗り心地はmuch betterでしたよ。

 そしてこの夜は、鮎川の民宿に一泊。

 基本料金が1泊2食付で6,500円というだけでも驚きの安さなのですが、ここへ1,000円プラスしただけでウニ7個+お刺身などが付くというので二度ビックリ。
  
基本セット(左上)+ウニ7個(写真右上)+お刺身(写真左下)。夕食はまさに海の幸三昧


  
そしてこれが朝食(写真右下)。こんなに食事がついて1泊7,500円は、東京では考えられない価格です
 ところで金華山には、

「3年続けてお詣りすれば、金に不自由はさせますまい」

という言い伝え(と言うかキャッチフレーズ?)があるんですって。

 これはなかなか面白いコトバですね。普通なら「一度お詣りしただけで一生お金に困りませんよ」と言ってくれそうなものなのに、わざわざ「3年続ければ」と具体的な条件を挙げているところが面白い。

 だって、考えてもみてください。先程から書いているように、金華山はなかなかアクセス困難な場所なのです。

 東京から行くとすれば、新幹線などに乗って仙台へ出て、そこからなら数時間、さらにフェリーに乗り、奥の院へ行くとなると岩だらけの道を登山。帰路も同じだけの時間と費用が必要です。

 関西や九州方面から行こうとすれば、これより遥かに多くの時間と費用がかかるでしょう。当然、宿泊費や食費も嵩みます。

 つまり、もしも3年も続けて金華山へ行くことが出来るとすれば、その人は少なくとも交通費と宿泊費と時間を捻出することが出来る人だということですよね?

 と言うことは、その人はその時点で既にまあまあのお金持ちだと言えるのでは?

「3年続けてお詣りすれば、金に不自由はさせますまい」というコトバの裏には、実はそういう極めてロジカルな意味が含まれているのではないかと思うのでありました。

オマケ画像。鮎川港の鯨博物館にて。
ナントこれがクジラのペ○○です
 さあ、これで日本五大弁才天のうち5分の3を攻略。それぞれの社における弁才天の神格や歴史などが、だいぶわかって参りましたよ。

 残る竹生島と天河神社も、この夏のあいだに攻略する予定です。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


そよ風とブー

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2007年6月13日
山田 真美