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2006年10月21日号(第238号)
今週のテーマ:
どうせ阿呆なら踊らにゃ損@徳島
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 13日〜15日まで四国・徳島で開催された「第28回日本文化デザイン会議06inとくしま」に講師として参加してまいりました。

 徳島と言えば阿波踊り。阿波踊りと言えば、「踊る阿呆に見る阿呆。どうせ阿呆なら踊らにゃ損、損」という、およそ日本的でないラテン系の発想が全国的に有名です。

 阿波踊りの時期(今年の場合は8月12日〜15日)になると、脇目も振らずに踊りまくる人たちの映像がテレビニュースを通じて全国のお茶の間に流れますが、あんなふうにひとつのことに無我夢中になれる人のことを、徳島では、

「あの人は天水(てんすい)なお人やなぁ

と言うのだそうです。

 どうやら「天水」という言葉が徳島を知るためのキーワードみたいですが、何なんでしょうね、天水って?

 今回の会議のハンドブックによれば、天水とは「少しおめでたいほどに一つのことに夢中になれる人」ですって。

 あ、それって私のことだ(笑)。

 ……というわけで今回は私も、会議中は「阿呆」に徹して、踊るマハラジャのごとく踊りまくることにいたしました。

 13日の金曜日の10:30に羽田を発ったJAL便は、1時間15分で徳島に到着。同じ飛行機に乗っていた他のメンバーと空港で合流し、大型バスで市内のホテルにチェックイン。

 ランチ(徳島なのに何故か中華)を食べビールで乾杯したあと、『生バトル・トーク・リレー』(15:00〜19:00)が行なわれる会場のパシフィックハーバーへ移動。

 モデレーターのサエキけんぞうさんをはじめ、落語家の金原亭世之介さん、歌人の笹公人さん、建築家の黒川雅之さん、椎名桜子さんなどなど10数人のメンバーで4時間ぶっ続け休みなしの体力勝負のバトルトークを繰り広げて参りました。

「生バトル・トーク・リレー」の会場にて、ミュー
ジシャンのサエキけんぞうさんと
「山田さんには、ぜひともダライ・ラマ法王のことやカウラ事件のことを話して欲しい」

というモデレーターからの希望もありましたので、今回の私は、インド・チベットの死生観と、カウラ事件に見る日本人の死生観、そして自殺率が低いほうから日本一の徳島県人のメンタリティーへと結びつけて、

「何があっても生きろ!」

をテーマにバトルトークして参りました。

 今回は(講師が本音で喋るようにとの思惑から?)、4時間にわたって延々と地ビールやワインを飲みながらのトークショーだったため、途中で酔眼になる講師、座ったまま舟を漕ぎ始める講師、果ては熟睡してしまう講師もちらほら(笑)。

 上の写真は、ビールとワインを4時間飲み続けた直後の私です(正確に言うと、ビールを飲み始めたのはランチ前の乾杯をした12:00からですから、写真を撮った時点でアルコール体内残留時間は7時間に及んでいたわけですが)。

 お酒を飲んでも顔に出ない体質のため、顔色はいつもと少しも変わっていません。可愛くないですね(笑)。

 このあと19:30からは、橋東公園ボードウォークにある川沿いのテラス風レストランに場所を移して、文化デザイン会議恒例の「夜楽塾」に参加いたしました。

 夜楽塾とは、地元の参加者の皆さんと一緒にゴハンを食べお酒を酌み交わしながら語り合うイベント。

 今回、私のテーブルには、地元商工会の若手メンバー3〜4人(たぶん全員20代)が座ってくださり、インドのこと、阿波踊りのこと、お遍路さんのことetc.をお喋りしました。こうした地元の人たちとの無礼講のふれあいは、何より楽しいものです。

 ランチの中華に引き続き、ここで頂いたディナーは(徳島なのに)イタリアン。名物のたらいうどんは、今日はどこも品切れなんでしょうか(笑)。

 さて、翌14日(イベント2日目)は、朝からちょっと面白いことがありました。

 私はホテルの13階に泊まっていたのですが、朝食を食べるため階下へ行こうとしたところ、今回の会議にゲスト講師として参加していらっしゃる女性と、エレベーターで偶然ご一緒になったんです。しかもこの女性とは、そのあとも何度かエレベーターでバッタリ出会うんですね(乗るのは決まって私達ふたりだけ)。

 その後、色々と話してみたところ、彼女と私にはさまざまな共通点があることが判明しました。

 まず、ふたりは同い年である。しかも、住んでいるが一緒。まあ、ここまではありがちな話ですが、一番ビックリしたのは、「ふたりとも今年になって一念発起し、大学院の修士課程に入り直した」ことまで一緒だったんです。

 なんとも興味深い偶然! もっとも、かのアインシュタインは「神はサイコロを振らない」(「この世で起きることはすべて必然である」という意味)と言っていますから、彼女との出会いも偶然ではなく必然なのかも知れませんが……。とにかく、そんなことがあったので、この日は朝から不思議な気分でした。

 ホテルでわいわい朝食を済ませたあとは、大型バス2台に分乗して、11:00から開催されるオープニング・セレモニーの会場へ。バスの中ではタレントの山口もえさんとご一緒になったのですが、彼女のスタイルの良さと顔の小ささには感嘆しましたよ。

 あ、そうそう。今回の日本文化デザイン会議の講師リストを見ましたら、(50音順で)私の前が山口もえさん、その前が女優の山口智子さんとなっているではありませんか。50音順の名簿でこんな華やかなメンバーに囲まれたのは、間違いなく生まれて初めてでしょう(笑)。

 11:00から始まったオープニング・セレモニーでは、今回の議長を務められたマリ・クリスティーヌさん、代表幹事の日比野克彦さん、徳島県知事らが次々にご挨拶。

 続く基調講演では、今回のメインゲストでブータン王国から特別来日中の内務文化大臣ジグミ・ティンレー閣下が、「GNH(グロス・ナショナル・ハピネス)=国民総幸福」をテーマに素晴らしいスピーチ。

 このあと夕方まで出番がなかった私は、この自由時間を有効利用すべく、いきなりお遍路さんを開始することを思い立ちました。

 とは言え今回は、東京を出発するときに「時間的にお遍路さんはとても無理」と思ったものですから、わざわざ高野山で入手しておいた白衣(びゃくえ)も頭陀袋も輪袈裟も数珠も納め札も、すべて家に置いてきてしまったのです。

 そんなわけで今回、お遍路さん用の装備はゼロ。

 しかもこの日、私の服装はタイトスカートで足元はハイヒール。(本当にこれで何キロも歩けるの?)と自分で自分にツッコミを入れたくなるような出で立ちです。

 けれど「思い立ったが吉日」という言葉もありますし、私にとって何よりも大切なのは、スタートの切り方なんですね。これまでの人生経験からして、スタートが気持ち良く行ったことは、大抵最後までうまく行っていますから。

 お遍路さんを始めるなら、今日しかない! 思いきってイベント会場をあとにした私は、道に止まっていたタクシーを拾い、運転手さんに告げていました。

「一番札所の霊山寺(りょうぜんじ)まで、お願いします」

四国八十八ヶ所一番札所「霊山寺」の山門前にて
 ……というわけで、遂に念願のお遍路さんをスタートいたしました。

 ご存知のように、四国に八十八ヶ所ある霊場のうち、徳島県にあるお寺(二十三ヶ所)は「発心の道場」、高知県にある十六ヶ所は「修行の道場」、愛媛県にある二十六ヶ所は「菩提の道場」、香川県にある二十三ヶ所は「涅槃の道場」と呼ばれています。

 お釈迦さまの一生を、発心(出家すること)・修行・菩提(悟りを開くこと)・涅槃の4つに分け、それぞれを四国の四県になぞらえているのが面白いですね。

 お遍路さんは基本的に、八十八ヶ所霊場のどこから始めてもどこで終わらせてもいいということになっています。

 今回の日本文化デザイン会議が徳島で開催されたために、私は期せずしてスタートに最も相応しいお寺である「発心の一番札所」である霊山寺からお遍路さんを始めることが出来ました。

 「神はサイコロを振らない」の言葉どおり、こうなったのも、全ては何かのご縁なのかも知れませんネ。
  
二番札所(極楽寺)と三番札所(金泉寺)を結ぶ遍路道にて


  
歩いていると、あちこちで「お接待」を受けました。左は普通の民家で頂いたおはぎ・みかん・お茶。右は
コーヒーを飲もうと立ち寄った喫茶店でサービスして頂いたロールケーキ。どれも美味しく頂きました
 道中、私が一番意外に思ったことは、何人もの人たちから、

「ええ? 女性ひとりでお遍路さん?」


と、ひとりで歩いていることを非常に珍しがられたこと。男性ひとりのお遍路さんは結構いるようですが、女性ひとりは非常に珍しいらしいのですね。

 いや、それ以前に、最近のお遍路さんの大多数は貸切バスや自家用車を使ってやって来るそうで、今や歩いて八十八ヶ所を巡るお遍路さんは少数派なのだとのこと。

 「八十八ヶ所のすべてを徒歩で巡る」と固く決意している私としては、「え? マジで?」と拍子抜けするような話ですが、ほとんどのお遍路さんが車を使っているという話は、どうやら本当らしいですよ(時代は変わったものです)。

 今回はあまり時間がなく、一番札所(霊山)〜二番札所(極楽寺)〜三番札所(金泉寺)と3ヶ所しか行けませんでしたが、その間の道を歩いたお蔭で、どんぐりを拾ったり、青い夕顔に見惚れたり、地元の人たちから「お疲れさん」と声をかけられお接待(食べ物や休む場所を与えて頂くこと)を受けたり、本当に心の洗われる数時間でした。

 この日は、薄暗くなってから電車で徳島市内にとんぼ返り。18:00から行なわれたパーティーに出席。ここでは女優の山口智子さんとご一緒というラッキーな状態に(笑)。

パーティーにて(右から)CGアーティストで東大
教授の河口洋一郎さん、女優の山口智子さん、
建築家の鈴木エドワードさん、私
 続く第二会場では、地元の「大黒天」という有名な連の皆さんに混ざって、阿波踊りを踊りまくり

 阿波踊りって、「えーらやっちゃ えーらやっちゃ よいよいよいよい」というユーモラスな台詞から、ゆったり大らかなリズムを想像していたんですが、実際に間近で見ると、実は物凄く激しいノリなんですね。一年中踊っているというお姉さん達のおみ足は、まさに筋肉の塊でした。

 このあとは、地元の有名な料亭「青柳」にメンバー全員が集結。お料理が美味しかったことは言うまでもありませんが、ここでも「たらいうどん」は食べられずじまい。

 せっかく徳島まで来たというのに、もしや私は名物のうどんを食べずに帰ることになるのでしょうか。一抹の不安がよぎります。

 翌15日はイベント最終日。私は12:00〜13:45まで、黒川紀章先生と日比野克彦さんの対談の司会を務めました。題して「天水特別対談〜ありがとう徳島、ありがとう四国」

 対談の直前になって日比野さんが、手作りの着られるLEDなるシロモノを持っていらっしゃり、「みんなでこれを着て対談をしよう」と言い出したため、急遽、3人で電飾を身にまとって登壇することに(苦笑)。

 下の写真をご覧になって頂ければお分かりのとおり、日比野さんが身に着けていらっしゃるLEDネクタイと私の頭の上に立っているLED一本角は、まあ地味ですが、黒川先生のLEDトンボ眼鏡はかなり目立ってました。

 この格好のまま、1時間45分の超マジメな対談に突入した私たちって一体(しかも、最後まで誰ひとりとしてそれを取り外そうとしないし(笑))。
  
会場の電気を消すと、講師席はこんな感じ


  
(左から)日比野克彦さん、黒川紀章先生、私。この格好のまま、真剣な議論をしている私たち。風体との
ギャップが素敵です(と自分で言う(笑))
 そんなこんなで、すべてのイベントは大成功のうちに終わり、あっという間に3日間のフィナーレを飾るファイナル・プレミアム・セッション(いわゆる閉会式)がやって来ました。

 閉会式のステージには、今年の日本文化デザイン大賞を受賞なさった横尾忠則さんが登場。
 続いて、日本文化デザインフォーラムのメンバーである千住明さんのピアノ演奏や、同じくメンバーのジュディ・オングさんによる『魅せられて』の熱唱と、ステージ上はまさに豪華絢爛、ほとんど紅白歌合戦状態。

 しかも最後は、会場に居合わせた全員で阿波踊り(笑)と、今年の日本文化デザイン会議は、最後の最後まで最強でした!

(左から)建築家の山崎泰孝さん、(1人置いて)舞
踊研究家の芳賀直子さん、茶道家の佃一可さん、
国立民族学博物館教授の大森康宏さん、クリーム
代表の石坂邦子さん、東大教授の原島博さん、国
連ハビタット大使のマリ・クリスティーヌさん、CGア
ーティストで東大教授の河口洋一郎さん、私
 しかもですね、実は、この話にはオチがあります。

 3日間のイベントを終え、東京に戻るために他のメンバーと一緒に徳島空港に向かった私。
 遂に一度もうどんを食べなかったことが、心残りと言えば心残りでしたが、まあ、それは次回の楽しみに取っておこうと思いつつ。

 飛行機が飛ぶまでにはまだ時間があったため、空港2階の小さなレストランで休憩することになったのですが、私は14日に霊山寺で買った金剛杖の機内持ち込み手続きにやや手間取ってしまい、皆より遅れて2階に上がったときには、空いている席は1席しかありませんでした。

 しかもそれが、ジュディ・オングさんの前の席。

 しかもジュディさんは、なんとうどんを召し上がっていたではありませんか。それを見て思わず、「私もうどん!」と叫んでいました(爆)。

 そのあとは飛行機が出発する間際まで、うどんの湯気が立ちのぼるテーブルをはさんで、初めてジュディ・オングさんとお話をさせて頂きましたが、とびきりの才色兼備でありながら少しも気取らないお人柄が、本当に素敵な女性でした。

 色々話しているうちに、ジュディさんがうちの子どもの学校の先輩であることが判明。
 また、台湾のご出身であることから、先日出版された拙著『印度生死筆記』にも話が及び、楽しくお喋りをさせて頂きました(ジュディさん、その節はありがとうございました)。

 というわけで、遂に念願のうどんをジュディ・オングさんと食べた私(笑)。これは忘れられない旅の想い出になりそうです

 こうして、怒涛のごとく熱く文化を語り、踊りまくり、歩きまくった天水な3日間は幕を閉じました。

 徳島の皆さん、ラテン系の激しい情熱と、温かなお接待のこころをありがとうございました。
 この次は、四番札所(大日寺)あたりでお目にかかりたいと思います。その日まで、元気に踊り続けていてくださいネ。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


女王様の足もとに跪くブースケ

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2006年10月21日
山田 真美