旅に出ていない限り毎週土曜日に更新します。

バックナンバーはこちらをクリックすると御覧になれます。

2008年5月9日号(第295号)
今週のテーマ:
850人のマジシャンと過ごした4日間
★ お し ら せ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイの連載をはじめました(毎月下旬に更新予定)。ぜひブックマークしてください♪ 左のロゴをクリックするとページに飛んでいただけます
 5月1日から4日までインド最南端のケララ州で開催されたマジック大会“Vismayam 2008”(正式名称は International Magic Convention Vismayam 2008)に、日本からの文化大使として出席して参りました。

画像クリックで5月14日付けの東京
新聞の記事をお読みいただけます
 拙著『マンゴーの木』を読んでくださった方は既にご存知のことと思いますが、私は1988年に行なわれた同大会にゲスト審査員として参加したことがあるのです。

 その後、Vismayamは2000年に第2回大会が行なわれ、さらに8年のブランクがあって今回が3回目
※前号の「週刊マミ自身」の中で、Vismayamが毎年恒例の行事であると書いてしまいましたが、それは間違いでした。訂正してお詫びします。

 ちなみにVismayamはインドの言葉で吃驚仰天の意味。
 一体どんなサプライズが待っているのやら、今回も出発前から胸がドキドキ

日本からの文化大使としてマジック
大会へ(写真はあくまでもイメージで
す(笑))
 ……というわけで常夏の地ケララに行って参りました。

 今回は準備時間が短かく(なにしろギリギリになって急に参加を決めたので……)、そのうえ、
「せっかくだからムンバイとデリーにも立ち寄って来よう」
などと欲張ったため、結果として体力勝負のタイトスケジュールを組むことになってしまいました(苦笑)。

 ↓これが今回の日程です。かなり詰まってるでしょ?
4月30日(水) 10:05羽田空港 ⇒ 11:20関西空港
14:00関西空港 ⇒ 機内泊
5月1日(木) ⇒ 00:51ムンバイ空港
10:05ムンバイ空港 ⇒ 12:05トリバンドラム空港(ケララ州)
14:00〜22:45 Vismayam 2008 ホテル泊(トリバンドラム市内)
5月2日(金) 07:30〜22:45 Vismayam 2008 ホテル泊(トリバンドラム市内)
5月3日(土) 07:30〜22:45 Vismayam 2008 ホテル泊(トリバンドラム市内)
5月4日(日) マジシャン850人(大型バス19台編成)でインド最南端の地・カニャクマリへ遠足 ホテル泊(トリバンドラム市内)
5月5日(月) 03:45トリバンドラム空港 ⇒ 05:45ムンバイ空港
インド工科大学ボンベイ校(IIT Bombay)にて教授と仕事の打ち合わせ
20:00ムンバイ空港 ⇒ 22:15デリー空港 友人宅泊(ニューデリー市内)
5月6日(火) 2009年に上演が予定されるカタカリ劇に関する打ち合わせ(注/カタカリはインドを代表する古典芸能。今回、私はプロデューサー兼脚本を担当)
チベットハウスを訪問、旧知のリンポチェ(高僧のこと)にご挨拶
その他、日印関係のオフィスをいくつか回って仕事の打ち合わせ 友人宅泊(ニューデリー市内)
5月7日(水) 昨日に引き続き、カタカリ劇に関する打ち合わせ(終日)
予定より1時間40分遅れの22:30デリー空港 ⇒ 機内泊
5月8日(木) ⇒ 予定より少し遅れて09:30成田空港到着
 今回のマジック大会で、私はまたしても掘り出しもの(!)のマジシャンを見つけてきたのですが、そのことはいずれどこかで発表するとして、850人のマジシャンが朝から晩まで腕を競い合った現場は一触即発。

 まさに「オレに触ると火傷するぜ」的な熱さでした。

※前号では「1,000人のマジシャンに逢って来ます」と書きましたが(主催者からそのように聞かされていたので)、実際に集まったのは850人だったようです。再び訂正してお詫びします。
 
(左)今回マジック大会が行なわれた3つのステージのうちの1つ (右)首から名札をさげている人は、マジシャン
またはマジック用品のディーラーです。他のマジシャンのパフォーマンスを見つめるまなざしは真剣そのもの



Vismayam1998のグランドチャンピョン、クドゥローリ・
ガネーシュ氏と
 嬉しいことに、今回の大会にはストリートマジシャンも多数参加していました。
 私がインドマジックにのめり込むきっかけとなったマンゴーの木の魔法も演じられましたよ♪

 伝統的にストリートマジックはイスラム教徒のマジシャンによって演じられることが多いのですが、技術を身につけるのに時間がかかる上にお金にならないことから、後継者が育たず、今や絶滅の危機にさらされている分野です。

 彼らが今回のようなマジック大会に出場することによって、一般世間やマスコミが彼らの素晴らしいストリートアートに少しでも関心を持ってくれるのは本当に大切なこと。

 ストリートマジックが大好きな私としましては、今回、彼らの元気な姿を見ることが出来てちょっとだけ安心したような次第です。
  
口から何百本も楊枝を吐き出すストリートマジック


  
(左)網の中に子どもを入れ、その場から消してしまうストリートマジック
(右)何もない地面からマンゴーの木を取り出して見せる見事なストリートマジック
 ところで今回のVismayam 2008のテーマは、「世界平和」と「環境問題」でした。

 「マジックを通して世界に平和を」という趣旨は素晴らしいと思うし、世界平和の象徴としての白い鳩を皆で一斉に空に放つという趣向にも全く異存はないのですが、セレモニーで鳩と一緒に風船まで飛ばしたのは感心できませんでしたねえ。

 「風船飛ばし」は、しばしば海洋生物への大きな脅威になりますからね。
 海に落ちた風船を食べてしまったイルカや魚たちが、最悪の場合、死に至っているのは周知の事実。

 しかもケララは海に面しているわけですし……。

 計画を事前に知っていたら抗議してやめさせたところですが、知った時には既に風船が空に舞い上がっており、後の祭りでした。

 イルカや魚の胃に入っても無害な風船という物が、一部の先進国では手に入るようですが、インドでそれを期待するのは無理なこと。

 次回は「風船飛ばし」自体をやめるよう、主催者には強く言っておきます。

大勢のマジシャンが「世界平和」のために放った白い
鳩と、インド国旗の3色をあらわした風船。ちなみに私
もこの群衆の中にいます
 3日間にわたって行なわれた今回のマジック大会の結果、グランドチャンピョンに輝いたのは、若き男性マジシャンでした。

 タキシードを纏い西洋式のマジック(Conjuringと呼ばれる部門)を披露した彼には、名誉と、賞金の10万ルピー(約30万円)が贈られました。

 インドの物価に比すると、これはかなり大きなプレゼントと言えます。

 ただし、私自身が「この人こそチャンピョン!」と確信していたのは、ハッシムという名の別のマジシャンだったのですが……。

 ちなみに、私と同じ想いだった人は少なくなかったようで、グランドチャンピョンの名前が読み上げられる直前、観客席からは

「ハッシム! ハッシム!」

という掛け声があちこちで上がり、別の人の名前が読み上げられた途端、会場内は一瞬騒然となりましたからねぇ。

 審査員の個人的な好みがハッキリと反映される(=審査員が変わればおそらく優勝者も変わる)という点が、芸術系コンテストの厄介なところです。

表彰式にて。左の方で合掌しているタキシードの
男性が今回のグランドチャンピョン。右から5人目
の赤いシャツに黒いタキシードの人がハッシム
 コンテストがすべて終了した翌日(5月4日)は、なんと850人のマジシャン全員が19台の大型バスに分乗し、カニャクマリという観光名所に行って参りました。
 
(左)大型バス19台がズラリ (右)私が乗った9号車にて。小さな子どもたちも1人残らず恐るべきマジシャンです
 850人のマジシャンが19台の大型バスに分乗して同じ場所を目指す。

 ……言葉で言うと何でもないことのようですが、いやはや、これは本当に凄いことですよ。
 なにしろ彼らは普通の人ではなくて、マジシャンなのですからね、マ、ジ、シャ、ン

 誰も彼もポケットや袖口の中にハトやらトランプやら紙吹雪やらを隠し持っているのですから、行く先々で歓声と悲鳴があがっていたことは言うまでもありません。
 
 日本文化に例えると、さながら忍者が850人で修学旅行に行くようなものでしょうか(笑)。

 しかもこの忍者たち、もとい、マジシャンたちと来たら、往復5時間のドライブの最中、ひと時も休まずに歌って踊ってドンチャン騒ぎをしているし。お酒は1適も入っていないというのに。

 恐るべし、インドのマジシャン!
 
シラフでこれだけ盛り上がれるこの人たちって一体!? 右のオジサンに至っては人の膝の上に座ってるし
 ところでこの日、私は朝から晩までずっとアシュレー君という名の9歳のマジシャンと行動を共にしていました。

 アシュレー君は誰よりもよく笑う男の子ですが、実は、生まれつき低ガンマグロブリン血症(遺伝的にBリンパ球が欠乏しているために引き起こされる血液の病気)を患っているため、4週間に1度の頻度で1日がかりの特別治療を受けなくてはなりません。

 その治療を受けるためには1回に64,000ルピー(約19万2,000円)のお金がかかるらしいのですが、ごく普通の中流階級のご両親には、それを捻出するだけの財力がありません。

アシュレー君と
 アシュレー君のスゴイところは、自分自身の治療費をつくるために、5歳の時からアマチュアのマジシャンとして学校のない週末や長期休みなどにマジックショー、TVコマーシャル、映画などに出演してお金を稼いでいること。

 そればかりか今年の夏には、同じ病気で苦しむ子らを助けるための“アシュレー基金”を設立すると言います。

 アシュレー君と出逢って、私はつくづく思いました。

「こんなにも前向きで明るい人間と、かつて逢ったことがあるだろうか?
 この出逢いには、きっと何か深い意味があるはず。私はそのために何をすべきなのか?」と。

 ただ単にマジック大会を見に行ったはずでしたが、どうやら私はそれ以上の課題を与えられて帰って来たようです。

本日のお宝画像 ― 帰国便の機長席にて
 さてさて、今回のインドでは、850人のマジシャンと丸4日間も一緒に行動するうちに、ついに私も1つだけマジックを覚えて来ましたよ。

 で、誰か人と逢うたびごとに、

「ねえねえ、マジックを見たくない?

と、相手の迷惑かえりみず、無理やりマジックの押し売りをしているわけですが(笑)……幸いなことに、見た人たちの評判はこれまでのところすこぶる上々。

 もしかしたら私にもマジシャンの素質があったりして(再び笑)。

 どこかで私を見かけたら、「例のマジックを見せて」とおねだりしてください。
 いつでもどこでも、喜んでご披露しますから♪

 そんなわけですから、今回の読者プレゼントは当然マジック用品です。

今回の読者プレゼント
 とても簡単な数字マジックの付いた黄色いTシャツ(Lサイズ)を1名様に差し上げます。
 ゆったりサイズなので、やや大柄な男性でも十分にお召しいただけそう。女性なら室内着に如何でしょうか。

 Tシャツを使ったマジックのやり方は、当選者の方に直接お教えいたしますネ。
 Tシャツご希望の方は、件名を「Tシャツプレゼント応募」とし、

@ハンドルネーム(ウェブ上で公開して構わないもの)、A性別、Bご職業、C年齢、D山田真美へのメッセージ

をご記入の上、までご応募ください(ご住所は当選された方に改めて伺いますので、ご応募の際には記入なさらなくて結構です)。

 ご応募の締め切りは5月23日、当選者の発表は5月24日更新予定の「週刊マミ自身」で。
 
 たくさんのご応募をお待ちしています。
 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


インドから帰って来たママリンに1日中くっついてます

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年5月9日
山田 真美