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2008年6月8日号(第298号)
今週のテーマ:
言葉の座敷わらし
★ お し ら せ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日更新)。第2回目は「お釈迦さまのお顔」。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 先週は信州の山小屋に行ってまいりました。

 その途中、とある疑問に一昼夜のあいだ頭を悩ませることになるのですが、事の発端は往路の車の中で娘が発した何気ない一言です。

「ねえねえ、ちょっとど忘れしたから教えて欲しいんだけど、特に頼まれなくてもお見合い話を持って来てくれる世話好きなおばさんのことを、日本語で何と言ったっけ?」

 聞かれながら心の中で、

(ああ、そういう言葉が確かにあったよね)

と思い、すぐに楽勝で答えてあげられると思ったのですが、さて答えようとすると、何故か答えが浮かんできません。

「……えーと。仲人オバサンじゃないし、お見合いオバサンでもないし……あれ? 何て言ったっけ?」

 この、ど忘れした言葉が喉のすぐ下あたりまで出かかっているくせに、すんでのところで出て来ない感覚って、すごく気持ち悪くないですか? 私はこういうのがかなり苦手。

 気持ちが悪かったので、東京に残っているN氏(高校生)に電話して聞いてみました。

「もしもし。ちょっとど忘れしちゃったんだけど、人のお見合いをセッティングするのが大好きで、頼まれなくても見合い話を持ってきてくれる親切なオバサンが昔いたじゃない? ああいう人のことを日本語で何と言うんだっけ?」

 しかし彼の答えは、
「皆目わからん。なにしろ俺、昔の人じゃないんで(笑)」

 ……う〜ん、いけず〜。

 埒が明かないので、次に、とても国語の成績が良い姪のHちゃん(京都の大学生)にメールして、まったく同じことを聞きました。しかし、速攻で届いた返事には

「うわ、なんて言ったっけ? 仲人じゃなくて媒酌人じゃなくて…。すみません! 思い出せません!」

の文字が。

 ふむ。国語テストの達人Hちゃんでもダメか。こうなると、答えがますます気になるんですけど。

 次に友人のM美(音楽家)にメールしてみました。

 一応断わっておきますと、今回この件で私がメールしたのは、日頃から携帯メールに即反応してくれる人ばかりです(なにしろこういう場合はすぐに返事が欲しいですからね)。

 M美からの返事。
「あ〜、そのタイプね。仲人のカジュアルバージョンみたいなオバサンね。う〜む、思い出せない。しばし待たれよ」

 M美からの返事を待つ間に、うちの母親(某俳句雑誌の同人で日本語には結構うるさい)、S氏(塾経営者)、Y氏(東大卒の博士)、I氏(大学勤務)、Tちゃん(大手新聞社の校閲室勤務)にも次々にメール。

 1分も待たないうちにI氏からの返事が届きました。

 I氏からの返事。
世話好きバアサン、または世話人?」

 ……いや違う。そうじゃない。

 I氏は私と同ジェネレーションだし、彼自身何度もお見合いをさせられているクチ(なのに何故か未だに独身(苦笑))だから、彼ならわかると思ったんだけどなぁ。

 次にS氏からの返事。
思い出せん。スマンです」

 S氏のメールを読んでいるあいだにTちゃんからの返事。
「ぜんぜんわかんねー。ゴメン、役立たずで。思い出せたらおせーて

 大新聞の校閲室の人にもわからないとなると、もしかして誰にもわからないのでは?
 このへんでようやく一抹の不安がよぎり始めます(苦笑)。

 母からの返事。
「思い出そうとしているんだけど、どうしてもわからない。妓楼で仲立ちをするお婆さんなら“やりて婆さん”だけど、まさかねえ」

 ほぼ同時にM美からの2回目の返事。
やり手?」

 世代の違うふたりの返事がシンクロしているのが、ちょっぴり微笑ましい感じ♪

 そうこうしているうちに、車は山小屋に到着してしまいました。

信州の山小屋でのスナップ。頭に載っているのは、天日(てんぴ)で乾かした
蓮の葉っぱです。ジャストフィットなかぶり心地でしたが、ど忘れした言葉を
思い出す手助けにはちっともなりませんねぇ(笑)
 山小屋に着いて暫くすると、Tちゃんからの2回目の返事。
に聞いてもわからなかったぞ」

 ちなみにTちゃんの旦那さまは某出版社の編集者さんです。あのご夫妻にわからないってことは、こりゃあもうダメかも(泣)。

 続いて、母からの2回目の返事。
「おとりもち、仲立ち? はるゐちゃんたちは“下仲人(したちゅうにん)”という言葉を使っていた気がする」

 はるゐちゃんというのは、母の母、つまり私の祖母の名前です。そう言えば祖母が「下仲人」という言葉を使っていたのは覚えているかも。でも、私がど忘れしているのは明らかに別の言葉なんだけど。

 ちなみに祖母が亡くなったとき私は22歳で、ちょうどオーストラリアに留学する直前だったのですが、

「真美ちゃん。外国に住むことは構わないけど、外人さんとだけは絶対に結婚しちゃダメだよ」

というのが祖母(はるゐちゃん)の私への唯一の遺言だったんですよ。時代を感じますね〜。

 ……っていうか、私はたぶん身の回りの人たちから典型的な国際結婚するタイプだと思われていたのだと思う。

 さらに母からは3回目のメールが来て、
「SちゃんやSちゃんの友達も総動員して考えてもらっているけど、思い出せない。打つ手なしという感じ」

 Sちゃんは母の妹、つまり私の叔母です。とても交友関係の広い人なので、友達みんなに聞いてくれたみたい。ううう、Sちゃんアリガトウ。

 次にY氏からのメール。
「そういう意味の言葉が確かにありましたね。でも、すみません、僕もど忘れです!」

 東大の脳ミソでも思い出せないらしい。

 さらにTちゃんから3回目のメール。
「ネットでキーワードをいくつか打ち込んで検索してみたけど、該当しそうな言葉が出てこないんだよねー」

 母からの4回目のメール。
「ほんとうに何なんだろう? 胸に閊(つか)えるね」

 さらに深夜の2時近くになって、M美から、

「思い出せなくて、すごく気になる。で、答えはわかったの?

という3回目の返事が。ううう、夜中までお騒がせしてスマン、M美(汗)。

 こうして皆さんの頭脳をフル稼働して考えてもらいましたが、結局、その言葉を思い出すことは最後まで出来ませんでした。

 それにしても奇妙ですよね。皆が「そういう言葉、確かにあったよね」と存在を認めているにもかかわらず、それが何という言葉であったかは誰も思い出せないなんて。

 そこで私はこれを「言葉の座敷わらし」と命名することにしました(笑)。

 この座敷わらしの名前をご存知の方は、ぜひメールでお知らせください。

 それにしても娘(お年頃の22歳)よ、何故その言葉について聞く?(もしやイミシン!?)
 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


ブーのお見合い写真(嘘)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年6月8日
山田 真美

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