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2005年12月19日号(第199号)
今週のテーマ:
加速するブッダ
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 先日、六本木ヒルズの森美術館(Mori Art Museum)にて開催中の展覧会「杉本博司 時間の終わり」を見に行って参りました。

 今回は、森美術館に勤務していらっしゃるお友達からお誘いを受けて出かけた(=お誘いを受けなければ行かなかった)イベントなのですが、これが色々な意味で感慨深い展覧会でした。

 杉本博司さんと言えば、立教大学の経済学部を卒業されたあと、アメリカのアートカレッジに入り直してフォトグラフィーを学ばれた異色の写真家。
 ネアンデルタール人や動物などの剥製を生きているように撮る「ジオラマシリーズ」や、カメラのシャッターを開いたまま映画のスクリーンを撮る「劇場シリーズ」などで世界的に有名な、職人肌のアーティストです。

 「劇場シリーズ」のほうは、少し説明をしなければわかりにくいかも知れませんが、要は、1時間半なり2時間の映画の上映中、スクリーンに向かって固定したカメラのシャッターをずっと開きっぱなしにして撮った写真のシリーズ。
 つまり、結果として完成する1枚の写真には、1時間半なり2時間のあいだにカメラの前で起こったすべての出来事が映っているというわけです。

 撮影場所となる劇場やドライブシアターは、基本的には無人(お客さんが入っていない状態)ですが、2時間のあいだにはカメラの前をハエが飛ぶかも知れませんし、が横切るかも知れません。スクリーンの後方を自動車や飛行機やUFO(笑)が通ることだってあるかも。
 実際、杉本さんの作品には、いくつもの流れ星が流れた形跡などが記録されています。

 また、劇場のスクリーン上には、1時間半から2時間をかけて映画1本分のストーリーが投影されますが、それらの場面をすべて連続的にカメラでとらえて1枚の写真に凝縮すれば、結果的には単なる真っ白な写真になってしまいます(もちろん、それは単なる白ではなく、無数の映像が重なり合って結果として白く見えているだけのことですが)。

 1枚の写真のうえに、1時間半なり2時間という時間を堆積させ、その間にスクリーン上とその周辺で起こったすべての現象を重ねて見る。―これは写真ならではの面白い試みですし、またそれ以上に、「時間とは何か、光とは何か?」という本質について考えさせてくれる哲学的なテーマでもありました。

 今回の展覧会に出品された写真は、1点を除いてすべてモノクロ作品なのですが、モノクロであることによって、逆に、その向こう側に在る夥しい色彩の海を感じることが出来たのも不思議なことでした。
 世阿弥は「秘すれば花」と言いましたが、写真の場合も、あらゆる色彩をモノクロに抑えることによって、逆にそのものが持つ無限の光を感じることができるのかも知れません。

 今回の出品作でなかで、私が個人的にとりわけ「面白い!」と思ったのは、“ACCELERATED BUDDHA”(加速するブッダ)という、一種のインスタレーション的な作品でした。

 杉本さんは、京都の三十三間堂にある1,001体(※注)の仏像を十数体ずつに分けて写真に撮り、これらの写真を次々にスクリーンに投影して見せてくれるのですが、それも、ずっと同じスピードで見せるのではなく、次第に投影速度を速めて行くのです。
(※注/三十三間堂には全部で1,001体の仏像がありますが、展覧会の説明文では「1,000体の仏像」となっていました。これがどういう意味なのかは、ご本人に聞いてみなければ定かではありませんが、もしかしたら杉本さんは、1,001体のうち中央に鎮座する巨像(中尊)だけはお撮りにならなかったのかも知れません)

 この作品のいちばんの見どころは、最後のほうで無数のブッダが目にも留まらぬスピードで次々に映し出され、その結果、ブッダの形は次第に崩壊し、視覚的には単なる光としてしか目に映らなくなり、最終的には消滅してしまうかのように見えること。

 視覚的には「消滅してしまったように見える」ブッダは、実際には消滅しているのではなく、その逆に、「光となってあまねく広がって行く=普遍化して行く」ということなのでしょう。これは「ブッダ」というものの本質を非常に鋭く表わした、優れた作品だと思いました。

 普段は写真展でインスパイアされることなど滅多にない私ですが、この“ACCELERATED BUDDHA(加速するブッダ)”は、お世辞抜きに素晴らしい作品でした。
 展覧会は来年の1月9日まで開催しているとのことですので、お時間とご興味のあるかたは、年末年始のお休み中にご覧になっては如何でしょうか。「時間の終わり」の公式ホームページはこちらからご覧になれます。

 先週はこの展覧会のほか、忘年会(複数)に出かけたり、たいへん珍しいお能(観世流の「枕慈童」)を観たり、コスタリカ大使と水族館へ出かけたり、師走らしくイベントの多い週でした。

駐日コスタリカ大使と、サンシャイン
水族館にて
 コスタリカ大使の影響で、最近はスペイン語の復習にも余念のない私。なにせ来年は、いよいよコスタリカへ遊びに行く予定ですからね。それまでには、スペイン語をほぼ 完 璧 に 使えるようブラッシュアップしておかなければ……。
 スペイン語のほかにも、去年から勉強中のチベット語のレッスンも続いておりまして、私の頭の中は2つの全く異なる外国語で、やや混乱中。熱〜い年の暮れとなっております(笑)。

 さて、今年も残すところ12日。やらなければならないことは、まだまだ山ほどあります。
 今日はこれから大掃除をし、明日は年賀状の印刷と発送。明後日は年末恒例のブリタニカ年鑑の仕事(インドの政治経済記事の翻訳と執筆)。そのほかに、今週は忘年会が3つほど。
 さらに、「週刊マミ自身」第200号記念プレゼント(なんと手編みの品にしましたよ♪)も編み終えなくてはなりませんし、まさに猫の手、ブースケの手も借りたい昨今です。

創刊200号記念スペシャルプレゼン
トを製作中。今回は、世界でただ一
点の手編みの品(しかも紫色)です
 「週刊マミ自身」創刊第200号記念スペシャルプレゼントに関するお知らせは、こちらをご覧ください。締め切りは今月22日です。どうぞお忘れなく!

 全国的に寒い日々が続いています。風邪など召しませんよう、お体に気をつけてお過ごしくださいネ。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


白髭のサンタさん?
※今日12月19日は、ブースケの3歳の誕生日
です。今夜はケーキでお祝いします。その様
子は、次回「週刊マミ自身」でご報告♪

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2005年12月19日
山田 真美