2020年4月29日(第649号)
今週のテーマ:7日間ブックカバーチャレンジ~最終日 |
ここ数日「本の紹介文」ばかり書いておりますが、逆に私が書いた本を絶賛してくださっている方からご連絡がありました。
『アッチャー・インディア 読んだり聴いたり考えたり』という人気サイトを主宰していらっしゃる軽刈田凡平(かるかった・ぼんべい)さんがその方で、同サイトの4月24日号で拙著『インド大魔法団』と『マンゴーの木』を熱く紹介してくださっているんです。
出版してから20数年も経った2冊を絶賛していただくとは、まさに作家冥利に尽きますね。
題してインド魔術の神秘に迫る!山田真美さんの名著『インド大魔法団』『マンゴーの木』
こちらからお読みいただけます。 |
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Day 7 of the seven-day book challenge:
ネット上で流行中の「7日間ブックカバーチャレンジ」。
7日間ブックカバーチャレンジ
~最終日(第7日目)~
『豊饒の海』(全4巻)
三島由紀夫・著 |
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最終日の今日は、三島由紀夫の遺作をご紹介いたします。
なぜならこの作品は三島の「インド体験」が――十分とは言い難いかも知れませんが――反映された名著だと思うからです。
今から5年前の2005年7月、在日インド大使館に於いて「印日文学祭2015」が開催されました。日本とインドの関係を文学の方面から展望しようという、たいへん画期的な試みでした。
私はこの会のモデレータ(日本語と英語のバイリンガル司会進行役)を務めさせていただいたのですが、同時にパネリストとして、
「三島と私―『インド的』なるものへの渇望とその文学的アプローチ」
のテーマでスピーチもさせていただきました。
スピーチの冒頭、私は次のようなお話をしました。
★ ★ ★
私が三島由紀夫に初めて興味をひかれたのは、1990年、インド文化交流評議会(I.C.C.R.)の招きでインド全土を訪れていたときのことでした。
その日、私はこれから書こうとする本の取材のために、或る文化系団体のオフィスを訪れていました。
対応してくれたヒンドゥー教徒の老紳士は、年季の入った椅子を勧めてくれたあと、たったいま私から受け取ったばかりの ‘writer’という肩書入りの名刺をしみじみと眺め、そして何かを思い出したように言ったのです。
「そういえば、いま貴女がお座りになっているその椅子に、二、三十年前でしたか、やはり日本人のライターが座ったことがあります。名前は、たしかミシマと言いました」
それが、私が三島に興味を持った最初でした。
★ ★ ★
ハッキリ言って、それまで三島文学にはまったく興味がなかったのです。
しかし、たった一脚の椅子が私の意識を変えてしまった。
老紳士が「ミシマ」の名を口にしたあの瞬間から、私は三島由紀夫という作家に強い関心と、一種独特の親近感を持つに至ったのです。
だって、数十年の時を経て同じ椅子に座るなんて、ひどく運命的じゃありませんこと?
――彼は一体何のためにインドを訪ねたのだろう。
――彼の作品の中にインド的なエッセンスなんて含まれていたかしら。
わからないことだらけでした。
しかしその後、消息筋に当たって調べた結果、色々とわかってきたことがあります。
例えば、三島由紀夫は生涯に少なくとも二度インドを訪問していたということ。
そして、実は三度目のインド行きを計画していたが、なぜかドタキャンし、代わりに市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げたということ。
いずれも、世間ではあまり知られていないことではないでしょうか。
他にもわかったことは山ほどあるのですが、それを全て書こうとすると本を丸一冊書く位の分量が必要になりそうですので(笑)、今日はここまでにしておきます。
でも、思うんですよ私。
いずれ本当に「三島とインド」のテーマで一冊書かなくちゃいけないかも知れないなって。
それが、あの椅子に座ってしまった私の使命なのかな、と。
本当に書くことになったら、その時は最初から英語で書き下ろして世界に向けて発信しよう。
なんてことを、ふと考える昨今です。
さて、これで私のブックカバーチャレンジはおしまい。
皆さま、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
もしかしてもしかしたら、近いうちに「番外編」をアップするかも知れませんが……まあ、あまり期待しないでお待ち下さい(笑)。
ではでは皆さま、どうぞこれからもよい本を人生のお供に、健やかなGWをお過ごしくださいませ♪
※なお、5年前のインド大使館でのスピーチ全文はこちらからお読みいただけます。
お時間とご関心のある方は、どうぞゆっくりご高覧くださいね。
※今回ブックカバーチャレンジで取り上げた7冊は(ご紹介順に)以下のとおりです。
① 『古事記』
② 『旧約聖書』
③ 『マハーバーラタ』
④ 『シェイクスピア全集』 シェイクスピア・著
⑤ 『老人と海』 ヘミングウェイ・著
⑥ 『三教指帰』 空海・著
⑦ 『豊饒の海』 三島由紀夫・著 |
▼・ェ・▼今週のクースケ&ピアノ、ときどきニワトリ∪・ω・∪
だいぶ暖かくなってまいりました。
散歩の途中、池の水をごくごく。
(※前号までの写真はこちらからご覧ください) |
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