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2009年12月14日号(第366号)
今週のテーマ:
雨の秩父夜祭
★ 仏教エッセイ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日頃に更新予定)。第20回のテーマは「年齢を隠したがる人たち」です。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 去る12月3日、京都祇園祭、飛騨高山祭とならぶ日本三大曳山祭り(ひきやままつり)のひとつである秩父夜祭(ちちぶ・よまつり)に行って参りました。

 このお祭りに関する言い伝えは色々あるようですが、一般的に知られている神話によれば、武甲山に棲む男神(蛇神・蔵王権現)と秩父神社に棲む女神(妙見菩薩)の一年に一度の逢瀬をお祝いするお祭りなのだとか。
  
(左)男神が棲むという武甲山 (右)女神が棲むという秩父神社の本殿(立派なたたずまいです)
 それだけ聞けば七夕にちょっと似たお話を想像するのですが……秩父の場合は、この逢瀬(おうせ)という言葉にどうやら深い意味があるようです。

 実は、武甲山の男神には、妙見菩薩のほかにナントお諏訪さまという正妻がいるのだそう。

 ということは、妙見菩薩との逢瀬はいわゆる密会ですね。

 屋台を曳く衆も、そのへんのことはよーく心得ているようで、正妻の住まいである諏訪社の前を通るときには、正妻に気を使ってお囃子を中断し、ひっそりと音もなく通り過ぎるんだそうですよ。

 また、祭りの前夜に諏訪本宮をお参りする諏訪渡りの神事というものも行なわれるそうです。
 やはり正妻の顔を立てるというか、物事の筋を通してから密会に至るわけでしょうねえ。

 そう聞いてしまうと、これはある意味、修羅場ギリギリのお祭りと言えるかも?
  
正妻を祀った諏訪社はこの質素さ。場所も駐車場の一角だし、なんとも気の毒です


  
屋台を曳き終えた男衆が諏訪社へお参りにやって来ました。これをしないと天罰があたりそうですね(汗)
 それはともかく、この日の秩父は天候に恵まれずまさかの雨(涙)。

 実は、今回秩父での案内役を買って出てくださったのは、「民族記録映画を見る会」でもご一緒の伊東さん(秩父育ち)だったのですが……そう言えば、伊東さんとは今年の夏の種子島日食ツアーでもご一緒でした。

 そして、日食のときも痛恨の雨降りだったんですよね〜。

 ということは、ひょっとしてひょっとすると伊東さんが隠れ雨男!?
 などという不埒(ふらち)な疑惑がむくむくと頭をもたげます(苦笑)。

 しかし伊東さんも思うことは同じだったかも知れません。私に向けられた眼差しに、

(もしやマミリンさんが隠れ雨女では?

という疑惑の念が感じられたのは……単に私の気の迷いでしょうか(笑)。
  
降りしきる雨の中、珍しいレインコート姿の屋台と笠鉾が所狭しと練り歩いていました


  
伊東さんいわく「子どもの頃からほぼ毎年この祭りを見ていますが、記憶している限り、雨に
降られたのは今年が初めて」ですって(ということは伊東さんは雨男ではありませんね(汗))


  
個人的な反省点は「黒い傘」を持って行ってしまったこと。視界のいい透明傘を
持参すべきでした!(それより更に良いのは透明のレインコートかな?)


  
屋台の曳き手も屋台に登った男衆も、雨風に負けず元気一杯。日本もまだまだ大丈夫です!


  
本来ならば神社の本殿で歌舞伎公演が行なわれたのだそうです(う〜ん無念)
 ところで――これは秩父に限ったことではありませんが――古くから続くお祭りには、往々にしてよくわからない部分が付き物。

 秩父夜祭の内容に関しても、「ん?」と首を傾げたくなる素朴な疑問が残りました。

 先ほども書いたように、このお祭りは男神と女神の一年に一度の逢瀬を祝うもので、男神は蛇神の蔵王権現であるといいます。

 蔵王権現といえば、釈迦如来と観音菩薩と弥勒菩薩が合体した「ほとけの化身」とされ、修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ、634年生?〜706年没?)が体感または遭遇したという伝説で知られています。

 ……ということは、男神はあきらかに山岳信仰や修験道に関係した神格であると言えるわけですが、ただ、その蔵王権現が蛇の姿であらわされるという意味がわかりません。

 何よりも私が驚愕したのは、この日、秩父神社に奉納された神楽(かぐら)のテーマが、あろうことか「大蛇退治」だったという事実。

 はい。スサノオがヤマタノオロチを退治してクシナダヒメを救うという、お馴染みのお話が上演されたわけです(下の写真参照)。

 えーとですね、お祭りの主役が蛇神なのに大蛇退治の演目など上演してよろしかったんでしょうか(汗)。

 これでは蛇が悪者・敗者の役回りになってしまうように思うのですけれど……。
 それとも、そこには何か特別な曰く謂われでもあるのでしょうか……。

 そこらへんの説明がなかったものですから、秩父ビギナーとしてはイマイチ(というかイマ三かイマ四ぐらい)腑に落ちませんでした、正直なところ。

 もしもそのあたりの事情をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひとも mami@yamadamami.com までお知らせくださいマセ。伏してお願いいたします。

 m(_ _)m
  
2009年12月3日、秩父神社に奉納された神楽「大蛇退治」。左は楽師の皆さん、右は老父とクシナダヒメ


  
左は大蛇、右はスサノオ(※私は雨に濡れながら舞台に「かぶりつき」でシャッターを切っています)


  
大蛇が強い酒(八塩折之酒)を飲まされ酩酊する場面(スサノオたちは物陰に隠れているという設定)


  
スサノオに十拳剣(とつかのつるぎ)で斬られ、退治される大蛇


  
スサノオの前にひれ伏すクシナダヒメの一家(神話では、このあとスサノオはクシナダヒメと結婚します)
 さて話は変わりますが、ここ秩父神社のシンボルは北辰の梟と呼ばれるフクロウだそうです。

 そのことから、ここ秩父市は、同じくフクロウをシンボルにかかげる東京都豊島区とフクロウ協定を結んで友好都市関係を提携しているんですって。

 ちなみに豊島区の池袋では、地名の読み方が池フクロウに通じることからフクロウをマスコットに使っているんですよ。面白いですネ。

秩父神社に奉納されたフクロウの絵馬が可愛い
 肝腎のお祭りのほうは、夜が近づくにしたがって更に雨脚が激しくなり、装備の悪かった私は既に全身びしょ濡れ

 本来ならばこのお祭りは(その名のとおり)深夜がクライマックスらしいのですが、

「このまま残ったところで、今年は良い写真が撮れそうにないし……来年に期待しましょう」

ということになり、われわれは道半ばで断念することに。

 近所の温泉(お約束♪)で温まってから東京に戻ることにしました。


【↓本日のおまけ画像↓】
  
他に類例を見ないほど(?)巨大な道路標識。秩父ではこのサイズが普通と聞いてビックリ!


  
(左)顔ハメ看板がなかったので、代わりに路傍でたそがれていたパンダと
記念撮影 (右)秩父観音霊場の案内板を持つ小坊主くん(四萬部寺にて)
 というわけで今回は残念ながら雨に祟られてしまいましたが、とは言え、秩父の自然の豊かさと、屋台や笠鉾のスケールの大きさ(+数の多さ)、そして何より、住民が進んで参加している熱狂ぶりには心底から圧倒されました。

 この次はピーカンの空の下で秩父夜祭を堪能したいなあと切に思います。

 案内してくださった伊東さん、お忙しいなか本当にありがとうございました。
 出来ましたら来年も、何卒よろしくお願いいたします(笑)。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


毛布と敷物にサンドウィッチされるブースケ
(これが本当のホットドッグ?)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2009年12月14日
山田 真美
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