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2013年1月19日号(第472号
今週のテーマ:
国立ハンセン病療養所への3度目の旅
★ 仏教エッセイ ★
言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中。第37回のテーマは「『智の器』としてのお寺の面白さ」です。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 
 西日本の某所にある国立ハンセン病療養所に行ってまいりました。

 3度目の旅。かつてカウラ戦争捕虜収容所に収容されていた元捕虜のAさんを訪ね、カウラ事件についてお聞きすることが旅の目的です。

 それにしても、いつ行ってみてもここのゲストハウスの宿泊客は私だけ。ついぞ他の人に会ったことがありません。毎回、孤島にでも来たような錯覚を覚えます。

 窓の外から24時間聞こえてくるのは盲導鈴(もうどうれい)。目の不自由な方が道に迷わないためのBGMです。最初に来た時に流れていたのはベートーベンの『歓喜の歌』でしたが、ここ半年は『恋は水色』に変わっています。

 しかしそれは、なんと短調でしんみりした『歓喜の歌』『恋は水色』だったことでしょうか。
 折しも慰霊搭の鐘が鳴り出し、また雨のせいもあって、この日の静けさは格別でした。この世の果てに来たような静寂ぶりでした。

 2日目の朝、Aさんがお抹茶を点ててくださいました。実に美味しく、勧められるまま2服目をおかわり。
 1服目と2服目ではお茶碗も違います。どちらもお正月らしい誂えで、たいへん豊かな気持ちになりました。

 ご実家ではお父さまもお兄さまも毎日のように抹茶を点て、花を活けることがあたりまえだったというAさんには、教養といいましょうか、どこか優雅な雰囲気が備わっています。

 午後からは、カウラの話を聞きながら将棋を指しました。これはAさんと私が始めた新しい愉しみです。将棋を指しながら、正確にいえば四段のAさんから将棋を指導していただきながら、カウラ事件についてしみじみと語る。

 これは素晴らしい体験でした。
 こんなふうに時を過ごせることを、言葉に出来ないほど幸せに思います。

Aさんと将棋を指しながらカウラ事件を語るひととき
 Aさんとあと何度こうしてお会いできるかはわかりません。Aさんご自身も、

「真美さんに会えるのは今回で最後かな

と、別れ際にはいつも思っていらっしゃるそうです。
 一期一会。一度きりの人生、一度きりの出会いを大切にしたいと想います。

 2日間の取材を終えて信州の山小屋に戻ると、雪がことのほか美しく私の目には映りました。

 雪の上には動物の足跡が点々とつづいています。イノシシ? カモシカ? タヌキ? ウサギ? 誰の足跡かはわかりませんが、とりあえず餌場を作ってみました。遠慮せずに利用してくれるとよいのですが。

動物は誰でも自由に利用してもらおうと作った餌場。
……とはいえパンダさんが来ることは想定外(苦笑)



バルコニーにやって来る小鳥(写真左下)のための餌場も作りました



冬季はこの雪上車で山小屋と下の村を往復しています
 今月末からしばらくは取材のためにオーストラリアを訪ねる予定ですので、その前にまずは机の上に山積する仕事を片づけなくてはいけません。

 そのほかにも大学院のゼミでの発表やパーティー(インド共和国記念日のレセプションなど)があり、相変わらず山小屋と東京を新幹線で往復する日々は続くよどこまでも……なのでありました。

 それにしても、「日常が旅である」というこの感覚、私にはたいへん向いているような気がします。
 人は旅人、人生は旅そのもの、ですね。

 ではでは、皆さまもお健やかにお過ごしください♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


寒い日に毛布にくるまりヌクヌクするシアワセ

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2013年1月19日
山田 真美
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