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2008年2月21日号(第288号)
今週のテーマ:
天下の奇祭「だだおし」を見に行く
【 講 演 会 の お 知 ら せ 】
日印交流年公式事業
『山田真美文化講演会 目覚めた巨象インドの躍進
〜英語・数学・道徳教育に見るインド繁栄のこれだけの理由
(主催:上田市国際交流評議会、共催:信濃毎日新聞社他、後援:駐日インド大使館他)
3月16日(日)13:30より長野県上田市の「市民プラザゆう」にて開催いたします。
入場無料です。奮ってご参加ください。詳細はチラシが届き次第、お知らせいたします。

 梅の花が全開となり、春の匂いが庭いっぱいに立ちこめている今日この頃。
 
 先週は、板橋七福神の弁天様で知られる安養院の平井和成御住職からお誘いを受け、天下の奇祭「だだおし」を見るために奈良の長谷寺まで行って参りました。

 「だだおし」は、真言宗豊山派(ぶざんは)の総本山・長谷寺で7日間にわたって行なわれる修二会(しゅにえ)法要の最終日、すなわち結願(けちがん)の日に行なわれる悪魔退治の祭事で、毎年2月14日に行なわれています。

 簡単に言えば、鬼を追い出して心清らかに新春を迎えるというのが、このお祭りの趣旨のようです。

 東大寺二月堂のお水取りと並び称される、大和に春を呼ぶ二大火祭りの一つとしても、つとに有名ですね。
(左)長谷寺の本堂から見た五重塔の風景 (右)今年の「だだおし」のポスター 
 ところで「だだおし」という奇妙な言葉の由来に関しては、

閻魔大王の杖の名前が“ダダ”というので、そこからこの祭りを“だだおし”と呼ぶようになった」
「(お坊さん達たちが)鬼を押して走り回るときの“ダダダ…”という音から“だだおし”と呼ばれる」

など諸説があるようですが、私としては、「魔除けのしるしに額に押してもらう檀荼印(だんだいん)が訛ってだだになった」説に一票を投じます。

 なお、檀荼印には、大威徳明王の印契(両手の手指のポーズ)という意味もあります。

 大威徳明王は、恐ろしい顔つき(憤怒相)で水牛に乗った六面六臂六脚の明王で、神話的なルーツをたどればヒンドゥー最強の女神・ドゥルガーによって征伐されたヒンドゥー最強の悪魔・マヒシャスラと繋がっているのですが、その話を始めると長くなりそうので本日は省略。

 西ベンガル州(コルカタとその周辺)では、ドゥルガーによるマヒシャスラ征伐(平たく言うと鬼退治)を祝って毎年10月頃にドゥルガー・プージャと呼ばれるお祭りが行なわれているんですよ。
(ドゥルガー・プージャの雰囲気をご覧になりたい方はこちらから昨年10月18日付のインド日記をご参照ください)

ドゥルガー(中央)によって倒されたマヒシ
ャスラ(右)と水牛(下)
 さて、2月中旬の奈良の山中はさすがに冷え込みが激しく、ダウンのロングジャケットを着て臨んでも次第に手足の感覚がなくなってくるほどでしたが、建物の中と言わず外と言わず境内は人、人、人でいっぱい

 本堂にぎっしり並んだ座布団に座っていると、前後左右の人たちとおしくらまんじゅうをしているようで、その温もりゆえに寒さをしのげたのは幸いなことでした。
(左)本堂の中で今か今かと法要の開始を待つ人々(右)外でも大勢の人が鬼を待ち構えています


本堂の中では護摩炊き法要が始まり(左)、外では万が一の事態に備えて消防車がスタンバイしています(右)
 さあ、いよいよ「だだおし」の始まりです。

 大導師の先導で七種の秘宝が入った唐櫃が本堂に運ばれて来ると、続いて声明散華(さんげ=仏を供養するために蓮の花びら等を撒き散らすこと)、鬼の面の祈祷と、静かな雰囲気の中で儀式は進行してゆきます。

 やがて鬼役の3人が赤・青・緑の鬼の面を付け、本尊(重文の十一面観音像)のまわりを3周。
 さらに、本堂の周りを狂ったように走ります。

来た! 緑鬼だ!!!

長谷寺では赤鬼が最古株で、緑鬼と青鬼はあとから加わった由。そのため赤鬼は面
のサイズも大きく、迫力たっぷり(しかし残念ながら赤鬼の写真は撮れませんでした)
 その後、いったん鬼が退くと、今度は参詣者が牛玉宝印(ごおう・ほういん)をいただく番です。

 伝説によれば、長谷寺の開基である徳道上人(とくどうしょうにん)があるとき病に倒れ、生死の境をさまよっていたところ、夢の中に閻魔大王が現われて次のように言ったそうです。

「おまえにはこの世ですべき仕事があるから、まだ死んではならぬ。最近、地獄へ来る人間が多過ぎる。おまえは人間たちを極楽へと導くために西国三十三ヶ所観音霊場を開くべし」

 閻魔大王が「地獄へ来る人間が多過ぎる」と嘆くのもおかしな話ですが、それはさておき、このとき徳道上人は閻魔大王から33個の牛玉宝印を授かってきたと伝説は続きます。

 ちなみに牛玉と書いて「ごおう」と読む理由は、サンスクリット語で牛は「ゴー」だから。
 つまり「ごおう」は「ごーおう」の音が詰まったものなんですネ。

 この牛玉宝印は悪魔除けに効果があるとされ、「だだおし」の日には宰堂役のお坊さんがオデコにギュッと牛玉の印を押してくださるんですよ(事前予約要)。

 たいへん人気があるようで、大勢の人が列をなして宝印を受けていました。
 え、私ですか? もちろん受けて来ましたとも。

 その後、鬼たちは再び狂ったように本堂のまわり(回廊)を走り回ります。

 鬼のうしろには松明。その後ろには消火活動のために走り回る人々(火の粉が飛び散りきわめて危険なので……)が続き、あたりは騒然。

 鬼を間近に見ようと身を乗り出す信者さんや観光客の頭上には火の粉がパラパラと降りかかり、ナイロン製のジャンパーに小さなこげ跡を作っている人もちらほら。なかなか危険な火祭りなのです。

 まあ、世界中どこへ行っても、祭りというものは得てして狂気と紙一重であることが多いのですが、それにしても火祭りを国宝の中で行なってしまうとは……。
(※長谷寺の本堂は国宝、その中に安置される十一面観音像は重要文化財)

 日本は本当に不思議な国です。
(左)鬼のあとを松明が走り抜けて行ったあとを、(右)さらに消火班の人々が追いかけて回ります


日がとっぷりと暮れてからも、3匹の鬼と松明と消火班の鬼ごっこは延々と続きました……
 ちなみに、長谷寺の長い歴史の中で、お寺が落雷で全焼したことは八回(!!!!!)あるけれど、「だだおし」の松明で焼けたことは一度もないのだとか。色々な意味で凄まじい話ですネ。

 というわけで、生まれて初めて見る「だだおし」は非常に印象深いものでした。

 一言で「鬼退治」と言っても、インドと日本ではずいぶん様子が違いますが、昨年の「ドゥルガー・プージャ」に引き続き、今年は珍しい「だだおし」を見て、アジア文化の粋に触れることが出来たのはラッキーなことでした。

 翌2月15日は少し遠出をして伊勢神宮にも立ち寄り、5年後に行なわれる第六十二回式年遷宮の御敷地を見学して参りました。

伊勢神宮(内宮)の式年遷宮御敷地にて
 ご存知のように、伊勢神宮では20年に一度、神々のお住まいであるお宮を全て新しく建て替えます。これを遷宮(せんぐう)と申します。

 「20年ごとに建て替える」と聞くと、反射的に「なんて勿体ない!」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、それは違います。なにしろ日本の伝統的な宮大工の工法は、20年ごとに遷宮(=建て替え)をすることによってようやく今日まで連綿と継承し得たわけですから。

 それに、取り壊した古いお宮の廃材はすべて全国の神社に払い下げられ、ありがたく再利用されていますから、これは古代から続く究極のリサイクルでもあるんですよね。

 ……こう考えてみると、日本とはなんと奥の深い国でしょうか。

 それから今回は伊勢神宮のご近所にある「足神さん」にも詣で、足の健康も祈願してきましたよ。
伊勢神宮近くの「足神さん」。鳥居が驚くほど小さいので、まるでガリヴァーになったような気分
 ……というわけで先週は千手観音と天照大神にお参りし、日本ならではの神仏混淆文化を心ゆくまで堪能することが出来ました。

 春の大和路散策には、実に味わい深いものがありましたので、この次は母を連れて行ってみたいと思います。

 ところで、来る2月27日は私の18歳(笑)の誕生日です。
 そこで今年も、恒例の逆バースデー・プレゼントを差し上げたいと思います。

 何を差し上げるかは当日まで未定ですが、最近の私の趣味の傾向から推察して七福神グッズになるかも知れないし、あるいはまるで違う何かになるかも知れません(なにしろ気まぐれですからゴメンナサイ)。

「何でもいいから記念にプレゼントが欲しい」と思われた方は、

@ハンドルネーム(「週刊マミ自身」で公開しても構わないもの)
Aご本名(ネット上では公開しません)
B年齢(ネット上では公開しません)
Cご職業(ネット上では公開しません)
D山田真美へのメッセージ(「週刊マミ自身」で公開しても構わないもの)

を明記の上、mami@yamadamami.com宛てにご応募ください。

 締切は2月27日(誕生日当日)。プレゼント当選者の発表は「週刊マミ自身」第290号(3月1日更新)でいたします。奮ってご応募ください。

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


ブースケを撮ろうとしていたら、パンダ
が凄い勢いで割り込んできました(笑)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年2月21日
山田 真美