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2009年11月14日号(第362号)
今週のテーマ:
一日消防長、いざ出動!
★ 仏教エッセイ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日頃に更新予定)。第19回のテーマは「若い時の苦労は買ってでもしろ」です。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 秋の火災予防運動初日の11月9日、故郷の長野市において一日消防長を務めさせていただきました。

 この日は、奇しくも父の5回目の命日です。
 いつもより長く仏壇の前で手を合わせてから、特別な1日をスタートしました。

「お父さん、しっかり見守っててネ♪」
 まずはお迎えの車に乗り、目指すは長野中央消防署

 予定どおり8時15分ドンピシャリに署に到着したのは、「さすが!」と言うほかありません。

 なにしろ私は「作家」という世界一自由な職業についていますし、そのうえ約束より1〜2時間は遅れて来るのがあたりまえというインド文化にも慣れ親しんでいます(苦笑)。

 そんな私にとって、消防署の皆さんの時間厳守ぶりは、驚きであると同時に実に爽快でした。

消防署に到着、拍手で温かく迎えられました。皆さん外で待っていてくださったんですね。
ありがとうございます!


  
エスコート役を務めてくださった峰村博消防局長と
 このあと、すでに局長室で待機してくださっていた鷲澤正一長野市長から「依嘱書」を交付され、いよいよ一日消防長としての1日のスタートです!
  
鷲澤市長から委嘱書を受けて
 一日消防長としての最初の仕事は、一般のかたがたの中から選ばれた8名の一日消防士さんたちに委嘱書をお渡しすることから始まりました。

 一日消防士さんは、全員女性

 聞けば彼女たち、普段は保育士さんや銀行員さんなど、まったくフィールドの異なる世界で生きていらっしゃるとのことでしたが、皆さん、消防士の制服がよくお似合いでしたよ♪

 このあとさらに一日消防長からの訓示、記念撮影と続きました。
  
(左写真)一日消防士任命式 (右写真)左から長野県消防協会の千野長重理事、鷲澤市長、私、峰村局長



任命式を終えて記念撮影。後列の8名が一日消防士さんです
 次いで行なわれたのは、消防車輛特別点検の視察です。

はしご車のはしごは、どれぐらいの頻度で点検しているのですか?」

と尋ねたところ、少なくとも2〜3日に1度ははしごを伸ばしてチェックなさっているとのことでした。

 火災は発生しないほうがいいに決まっています。
 でも、その「まさかの時」のために、日々地道な点検が行なわれている。

 これぞまさに「備えあれば憂いなし」ですね♪

救急車輛の前でも記念撮影
 このあとは、子どもたちの憧れのひとつ、はしご車に試乗させていただきました。

 それも最長45メートルまではしごが伸びるという、一番すごいヤツです。

 きっと、小さな子どもたちから羨ましがられるだろうな(笑)。



  
人生初の「はしご車」搭乗!
 実は私、昔から高いところが大好きなんです。
 どれぐらい好きかと申しますと、

「もしも植物に生まれるなら、ジャックを天空に連れて行った伝説の豆の木になりたい

と日頃から公言しているほど。

 今回の試乗では、はしごが地上20メートルと30メートルに達した段階で消防士さんが、

「(高所は)大丈夫ですか?

とご親切に気づかってくださったのですが、私はと言えば絶好調

「大丈夫です。出来ればもっと高く上げてください。それにしても、高いところから見る長野の街はキレイですねえ。あれは飯縄山、その奥は戸隠山ですね?」

能天気そのものな受け答えをしていたのでした(苦笑)。

 で結局は、特別サービス(?)で地上45メートルまで上げてもらいました。

 できることなら暫くそのままはしご車のてっぺんにとどまりたいほどの気持ち良さでしたよ。
  
はしごを伸ばし切って、ついに地上45メートルに到達した瞬間(右写真)。
まさに「ジャックと豆の木」状態。写真ではわかりませんが、実は私もニコ
ニコ笑いながら手を振っています



写真提供/長野市民新聞社
 とは言え、こうして私がはしごの上でニコニコしていられたのは、これがあくまでも試乗であって生命の危険を伴うことはないとわかっていたから。

 本物の消防士さんの場合は、時にはご自分の生命を危険にさらしながら、燃え盛るや有毒なの中に突入して他人の命を救出してくださるわけですから、本当に頭が下がります。

 単なる「職業」という言葉では表現できない特別なお仕事だと痛感しました。
★地上45メートルまで「はしご」で登ってみての率直な感想:
 「損得勘定抜きで、自分を犠牲にして人のために働いている。
消防士さんは偉大だなあ
 「はしご」から降りたあとは、通信指令室の見学です。

 私たちが見学している最中に、長野市内で実際に火災が発生
 現場付近から送られてくる動画をリアルタイムで見るという緊迫した空気も体験しました。

 今回は幸いすみやかに鎮火され、不幸中の幸いでケガ人はいなかった模様です。
  
通信指令室にて
 そのあとは長野駅近くのメルパルク長野に場所を移し、「震度7の地震が発生し、ホテルの5階から火災が発生」との想定のもと、消防演習が行なわれました。

 ここでは本日2回目の訓示もさせていただきました。

 避難訓練を見ていて思い出したのですが、お恥ずかしいことに、私はまだAED(自動対外式除細動器=Automated External Defibrillator)の講習会を受講したことがありません!

 最近では、空港や駅、ホテルなど大勢の人が集まるところにかなりの台数が設置されていますよね、AED。

 いったん作動させれば、使い方は機械自身が指示してくれるらしい……とは言え、やはり事前に使い方をマスターしておかないと、いきなりでは焦ってしまうことでしょう。

 他人事と思わず、みんなが一度は研修を受けられるようなシステムになるといいですね。
※消防演習を見て決意したこと:
 
そうだ 日本赤十字社の救急法基礎講習会行こう。
 (JR東海の「そうだ 京都、行こう」のパロディーで)

 日本赤十字社講習リンク先(全国の支部別)は こちら からご覧いただけます。
  
メルパルク長野での消防訓練


  
一日消防長からの訓示、というよりは個人的な感想を述べさせていただきました
 さらに、ながの東急百貨店における非常口などの査察

 休む間もなく火災予防イベントが続きます。
  
ながの東急百貨店にて
 最後は「火の用心」と染め抜かれた桃太郎旗を手に、長野駅周辺を行進しました。



  
 ところで、今回私が着させていただいた制服は、本来は式典用で、自分自身の結婚式や宮中での行事などとびきりの慶事のときに着る礼服なのだそうです。

 私の体格には、ちょっとばかり肩幅が広すぎ、袖も長すぎたのですが、それもそのはず、これは男性用のSサイズ

 と言うのも、長野ではこれまで女性署長さんが誕生していないため、この手の女性用礼服は作っていないのですって。

 さて、そうこうしているうちにランチタイムとなりました。
 なにしろ朝早くから活動していますから、お腹が空いたの何の(笑)。

 食事の合間には全員が自己紹介をし合い、和気藹藹ムードへ……。
 ランチが終わったあとは消防本部に戻り、ここで私は1時間の記念講演をさせていただきました。

 演題は「人生が180度変わる瞬間―そのとき男達は何を決断したか(第二次世界大戦の教訓より)」。
 私のライフワークのひとつである近代史上最大の戦争捕虜脱走事件、カウラ事件に関する講演です。

 この日は100人ほどの聴講者が集まってくださったのですが、そのうち、オーストラリアに行ったことのある人は3人。カウラ事件について知っていた人はゼロ

 しかし、日頃から生死に関わるお仕事に従事していらっしゃる消防士の皆さんのことですから、カウラ事件の本質を的確に理解してくださったのではないかと思います。

 話を進めてゆくうちに皆さんの身体が次第に前のめりになり、部屋が白熱してくるのが強く感じられましたから。

「自分が○と書いても、ほかの人たちは×と書いてくれるだろう」という日本人の
メンタリティーについて再考していただくため、カウラ事件について講演しました
 講演の終了をもって、一日消防長の仕事はすべておしまい

 振り返れば「あっ」と言う間の1日でしたが、今回いちばん強く感じたのは、「火災予防は地域が一丸となって当たらなければダメ」という、あたりまえのことです。

 なにしろ、たとえ100人のうちの99人が用心をしても、たったひとりの慢心によって町が焼かれ、99人の努力は水の泡となってしまいますからネ。

 そうならないためにも、日頃からご近所づき合いをし、声に出して挨拶をかけ合うことがとても大切なのだと感じた秋の1日でした。
※今日のまとめ:
 火災予防のためには、
人と人とのコミュニケーションが何よりも大切!
 ところで私、20歳の頃に某劇団でアルバイトをしていた時期があります。
 この劇団に対して、あるとき埼玉県の東松山消防署から、

一日消防署長としてアラレちゃんを派遣してください」

という依頼が舞いこんだのです。

 このときDr.スランプアラレちゃんの着ぐるみに入ったのは、何を隠そうワタクシ。
 着ぐるみの上からでは制服が着られないので「一日署長」のたすきを斜め掛けにし、

んちゃ!

と手を挙げながら街を練り歩き、火災予防を呼びかけんですよ、ハイ(笑)。

 ……あの着ぐるみはずっしりと重かったなぁ。
 長野市一日消防長を務めながら、そんな青春の1ページまでを想い出していた私なのでした。
 
拙著20冊にサインを入れて消防署の皆さんに献本。多くのかたに読んでいただけると嬉しいな♪


 
お別れの時がやってきました。ひとりひとりと言葉を交わし、固い握手



「皆さん、今日は本当にお世話になりました!」


 
「さようなら! 近いうちにまた逢いましょうネ!」
 なお当日の様子は、テレビ各局と新聞各紙で報道されたそうです。

 新聞記事(なんと全部カラー写真入り!)を下に貼っておきますので、なにとぞご高覧くださいませ。

信濃毎日新聞(2009年11月10日朝刊)



産経新聞(2009年11月10日長野版)



長野市民新聞(2009年11月10日)
 なお、今日の写真はすべて娘のLiAが撮影してくれました。
 働く母の背中を娘に見せる(?)という意味においても、お蔭さまで意義深い1日となりました。

 消防署の皆さま、このたびは本当にお世話になりました。
 この貴重な体験を、ぜひとも日々の生活のなかに活かして参りたいと思います。

 敬礼!
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


風に吹きさらされて顔が変形しているブー
(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2009年11月14日
山田 真美
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