2011年2月4日号(第412号)
今週のテーマ:インパール作戦を知っていますか |
★ 仏教エッセイ ★
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今年の私が優先順位第1位に挙げている仕事は、元軍人を中心にひとりでも多くの第二次世界大戦体験者にお目にかかることです。
昭和は遠くなりにけり。大戦も遠くなりにけり。
戦争体験者は、もう数えるほどしか残っていらっしゃいません。調べるなら今がラスト・チャンスです。
というわけで私、今年から2〜3年計画でカウラ事件を博士論文にまとめ、世界に発信することに決めました。この広い世界の中で、これは私にしかできない仕事だと確信しています。絶対にやり遂げます。
その関係でこの1月はイタリア人の元捕虜を探す作業に明け暮れておりました。
イタリア語がほとんどできない私にとって、これはなかなかの試練ですよ(大汗)。
そして一昨日は――カウラ事件と直接の関係はありませんが――かの有名なインパール作戦にお詳しい三角佐一郎さん(94歳)をインタビューしてまいりました。 |

94歳にして頭脳明晰な三角佐一郎さんと |
皆さんは「インパール作戦」をご存知でしょうか。
インパールとはインド北東部にある都市の名前で、現在はマニプール州に属します。
第二次世界大戦中は、インドに駐留するイギリス軍の主要拠点となっていたところです。
「インパール作戦」とは、第二次大戦中の1944年3月〜7月にかけて日本軍が行なった作戦の名称で、その目的は援蒋ルート(米・英・ソ連が中華民国を支援するために物資を運んでいたルート)を破壊することにありました。
この目的を果たすため、日本軍はビルマ(現在のミャンマー)からインパールを目指したわけですが、いかんせん食料や武器弾薬などの補給路を確保せずに進軍するという無謀な作戦だったため大敗を喫します。戦死者より餓死者・病死者が多いという、無残きわまる負け方でした。
今では無謀な作戦の代名詞として使われることも少なくない、言ってみれば史上稀にみる悪名高き作戦、それが「インパール作戦」です(率いるは牟田口廉也指揮官)。
当時、ビルマからインドへと通じるルートは3つありました。どのルートも険しい山道。一帯は人家もまばらで、人々の暮らしぶりは豊かではなかった。そこへ手ぶらに近い日本兵が大挙して訪れたところで、そもそも食料を調達できないことは火を見るよりも明らかだったといいます。
実は、陸軍参謀本部からの命令を受けて行軍可能な全てのルートを歩いて調べた人が、他でもない三角佐一郎さんでした。
三角さんは軍人ではなく、日印協会に勤務するインドのエキスパートです。
青山学院で英文学を学ばれたそうですから、軍国主義とは正反対の教育を受けられた方と言って良いでしょう。
その三角さんがビルマからインドへの3つのルートを歩き尽くし、出した結論は、
「このルートは物資の補給面で無理である。ゆえにインパール作戦には反対です」。
しかし三角さんの勇気ある提言は、軍上層部の強硬派によって潰されてしまったそうです。
当時、軍には三角さんと同じく作戦に反対する人が多く、むしろ反対多数であった。
にもかかわらず一部の強硬派が作戦を声高に推し進め、その声で反対派の声がかき消されてしまった。
……ということなんですが、この構図って実はカウラ事件とそっくりですよね。
カウラでも、多くの人が暴動に乗り気ではなかったけれど一部の強硬派の意見に押されてしまったと言われています。最初は反対した人々も強硬派の前で次第に黙りこみ、最後は完全に沈黙したと。
2つの事件に共通しているのは、
「自分ひとりが反対したところで、どうせ事態は変えられないだろう」
という、一種の諦観が支配していたということなんですね。
内心では反対。けれども強い者には追従する。
そして負けたあとになって、「自分は本当は反対だった」と自身のクリーンさを主張しはじめる。
この曖昧な日本人メンタリティー、今も恐ろしいほど当時と変わっていないような気がしてならないのですが、皆さんはどう思われますか。
余談ながら、戦争当時、インド国内にはイギリスからの独立を推し進める人々がいました。スバス・チャンドラ・ボースを中心とするインド国民軍(Indian National Army)がそれです。日本軍のインパール作戦には、実はインド国民軍の兵士が6,000人も参加しているんですよ。
三角さんはボースと親しかったそうで、ボースに関する興味深いお話も聞かせていただきました。
本当に、聞けば聞くほど、第二次世界大戦に関してはまだまだ語られていないことが多すぎる。
今のうちに可能な限りお話を聞いておかなければ、と強く思います。
来週は元陸軍少佐とお目にかかってきます。
ではでは♪ |
――今週のおまけ写真@お茶のお稽古中――

袱紗(ふくさ)を畳んで即興でウサギを折ってみました。その先にはなんとカメの置物が! |
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪

節分の豆まきで鬼に扮している
姉さんを不思議そうに眺める妹
(※前号までの写真はこちらからご覧ください) |
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