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2008年7月16日号(第302号)
今週のテーマ:
第30回日本文化デザイン会議
★ お し ら せ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日更新)。第3回目は「ありがとうの輪」。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 去る7月14日、第30回日本文化デザイン会議のメインイベントであるスピーチ漫荼羅(リレートーク)に出演して参りました(※当日の詳しい日程をご覧になりたい方はこちらをご覧ください)。

 今回の会議の全体テーマは「スピーチバルーン」、すなわち漫画の「吹き出し」です。
 その趣旨は、「自分の頭の中で考えていることをとにかく話してみよう」。

 とにかく話してみよう、ということで今回の「リレートーク」となったわけです。

 トークの形式は鼎談(ていだん=3人で話し合うこと)。与えられたテーマに沿って3人でトークをし、20分という短い持ち時間(=1人あたり6分40秒)が終わるまでにはテーマに対する結論のようなモノまで叩き出しなさい、というのが今回のルール。

 で、3人のトークが終わるやいなや、すぐに次の3人がステージに現われて別のテーマで20分激論を戦わせる。その3人が終わったらまた次の3人、さらに次の3人……という調子で20分単位の真剣なトークが延々と続く、日本文化デザイン会議お得意(?)の知の格闘技(バトルトーク)なのでした。

 今回はまず「日本」というテーマで松岡正剛さんのグループが談論風発なさったあと、2番目には「生き物」のテーマで赤池学さんたちが、3番目は「自然」のテーマで私たちが、4番目には「」のテーマで手塚貴晴さんたち、5番目には「感性」のテーマで榎本了壱さんたち、6番目には「身体」のテーマで稲越功一さんたち、7番目には「ものづくり」のテーマで坂井直樹さんたち、8番目は「東京」のテーマで日比野克彦さんたちがリレートーク。そして最後の最後に今回の議長である漫画家のしりあがり寿さんが全体を「総括」するということで、休み時間を入れると、はじまりからおしまいまでの所要時間は3時間強

 講師以上に、聴講に来てくださっているお客さまの体力勝負(笑)という、実にまったくハードコアな企画でありました。

 ……というわけで我々のグループに与えられたテーマは「自然」。
 メンバーは林業家の速水亨さん、建築家の若林広幸さん、そしてです。

今回の会場は出来たてほやほやの赤坂ブリッツ

  
「自然」というテーマは間口が広いだけに、切り取り方はそれこそ無限にあり得ます。
その中から核心部分を選びだし、瞬時に「話し言葉」にまとめてゆくのが今回のテーマ
 リレートークの中身はいずれ冊子にまとまると思いますが、おそらくそれはダイジェスト版だと思いますので(笑)、せっかくですから一昨日の私がお話しした大まかな内容を↓ここ↓に書いておきたいと思います。

 *  *  *  *  *  *  *  *  *

(1)ヒマラヤの氷河と温暖化

 私はヒマラヤが大好きでこれまで何度も訪ねており、標高6,180メートルまで登ったこともあります。氷河を見るのも好きで、ヒマラヤへ行くたびに氷河見学に行きますが、ここ何年かのあいだに、いわゆる温暖化の影響で氷河が急速に後退しているのが非常に心配です。

 ヒマラヤはアジア全体の水源ですから、ここの水が枯渇した場合の人類への影響は計り知れません。しかし、その兆候は既に確実に現われている。その事実に今すぐ目を向けなくてはいけないと切に思います。

(2)自然の中のエコ生物

 最近「エコ」という言葉が至るところで聞かれるようになりましたが、自然界にもエコな生き物とそうでない生き物がいるんですね。私は日本蜘蛛学会の会員ですが、私の知る限り蜘蛛は地球上で最もエコな生き物のひとつです。

 一説によれば彼らは4億年もの昔から現在の姿で地球上に生息しているそうで、ほとんど陸上のシーラカンスと呼びたいほど古い生き物なのです。では蜘蛛たちはなぜ今までずっと存続できたのか。その大きな理由は、彼らが無駄な動きを一切しないことにあると言われます。一部の種類を除けば、おおかたの蜘蛛は巣を張ったあとは餌となる生き物の到来をじっと待つだけ(笑)。自分から餌を取りに行くことさえしないんです。

(このとき、隣の席に座っていた建築家の若林さんから「エコじゃないのは人間だけでしょ。人間以外の生き物は全部エコなんじゃないの? 例えばゴキブリだってエコじゃないの?」というツッコミが入りました)

 いやいや、とんでもない。ゴキブリなんて人間の目の前をサササ……と歩いたり不必要に空を飛んだり、実に無駄な動きが多い生き物ですよ(笑)。蜘蛛はそういう無駄をしないんです。不必要な動きは極力ひかえる。生きてゆくために最小限必要なハンティングにすら出かけない。これって凄いことでしょ?

 彼らは一切の危険を冒さない。そうやって4億年も生き続けてきたんです。それじゃ一体何のために生きているのか、という哲学的な疑問は残りますが(笑)、とにかくこんなに長いこと種の保存に成功しているのですから、蜘蛛から人間が学べることは多々あると思いますよ。

(3)宗教と自然

 日本は八百万(やおよろず)の神々が住む多神教の国ですが、それは日本の森羅万象・自然環境に因(よ)るところが大きいですね。

 自然環境は人を変えます。私は砂漠で3か月ほど暮らしたことがあるんですが、3か月が経つ頃には、ほとんど別人になっていました(笑)。砂漠では、水のある場所が善で水のない場所は悪。それだけなんです。白と黒、善と悪だけが存在して、それ以外の価値観はあり得ない。つまり一神教以外の宗教が絶対に成立しない世界なんです。

 ところが日本のように曖昧でぼんやりした「霞か雲か」的な自然環境の中では、人の心は白と黒のあいだのグレー部分がほとんどです。日本人が八百万の神々を許容できる理由も、グレー部分の曖昧さを良しとすることが出来るからでしょう。

(このとき、林業家の速水さんから山田さん(のハッキリした性格)は砂漠的だよね(笑)」というツッコミがまたまた入りました)

 すみません。私まだ砂漠生活を引きずってますよね(笑)。

 これは私の持論ですが、宗教というものは地場産業以外の何物でもないんです。宗教は地場産業である。その土地の自然環境や諸々の条件があって初めて宗教が成立するんです。

 友達にバリバリのイスラム教徒がいますが、この人は仕事で日本に暮らすことになり、3年が経つ頃にはなんと八百万の世界を理解できるようになってしまった。「まずい。これじゃ故郷に帰れない!」と言いながら、最近はクリスマスカードなんか送って来るんですから。

 人は誰でも変わることができる。そして、自然環境には人を変える力がある。
 そこにひとつの救いがあるし、自然の凄さがあるのではないでしょうか。

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 ……というわけで、リレートークは無事に終了。
 下の写真は会議終了後に東京ミッドタウンに場所を移して行なわれた打ち上げパーティーの様子です。

打ち上げパーティーの会場入り口には、なぜか
可愛いメイドさんたちが待機していました(笑)。
私のアクタガワ(執事)はどこ〜?! ※アクタ
ガワの正体を知りたい方はこちらを読んでね♪


 
会議のあとのパーティー会場で日比野克彦さん・サエキけんぞうさんと記念写真を撮るのは
今や私の恒例イベント(笑)。おふたりとも私より2or3歳上。本当に楽しい兄貴分でございまする



「パーティーに面白い友達をひとり連れて来ること」
という命令が出ましたので、アメリカ人マジシャン
Steve Marshall氏を半強制的に連行しました(笑)
※ちなみに、Steveのウェブサイトはこちら、Steveが「手品の得意な会社員役」で出演したSONYのCMこちらからご覧になれます。

 第30回日本文化デザイン会議の様子は8月2日(土)18:30〜19:00、BS-i(TBS系のデジタル放送局)でオンエアされるそうです。お時間がありましたらご高覧くださいませ。

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 さて、これはまだ先の話ですが、下記のとおり一般公開の講演会を2つ開催します。
@豪州ワインとカウラ秘話の夕べ(募集定員:40名)
 8月23日(土)12:00より、神楽坂のレストラン「s.l.o」(スロ)にて
 主催:ヴァイアンドカンパニー
 参加費(アミューズ+前菜+メイン+デザートから成るお食事と4種類のワイン代込み):
  お1人さま5,000円

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A第10回図書館総合展「Library of the Year」基調講演会(定員:340名)
 2008年11月26日(水)13:00〜15:00、パシフィコ横浜にて
 主催:NPO知的資源イニシアティブ
 パネラー:
  片山善博さん(慶應義塾大学教授・元鳥取県知事)
  赤池学さん(ユニバーサルデザイン総合研究所代表)
  山田真美(作家・日印芸術研究所言語センター長)
 コーディネーター: 高山正也さん(国立公文書館理事・慶應義塾大学名誉教授)
 @では近代史上最大の戦争捕虜脱走事件であるカウラ事件の知られざるダークサイドを、 Aでは図書分類学のパイオニアであるS.R.ランガナタン(南インド出身の数学者・図書館学者)についてお話しする予定です。

 参加ご希望の方は、お早めに山田真美までメールでお知らせください。
 

 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


トマトがこんなに成長しました。
もうすぐ赤く熟し始めるかな?

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年7月16日
山田 真美

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