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2008年5月26日号(第296号)
今週のテーマ:
唐物點伝授畢
★ お し ら せ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイの連載をはじめました。毎月28日(不動明王の御縁日)に更新予定です。左のロゴをクリックするとページに飛んでいただけます。
●5月14日の東京新聞と15日の中日新聞(どちらも朝刊第3面)に「インドの魔法全国大会に文化大使として出席した作家 山田真美さん」という記事が掲載されました。見逃された方はこちらからご高覧ください。


 先日、茶道表千家不白流の御家元から唐物點の許状が届きました。

 唐物點は「からもの・だて」と読んで、唐物茶入を使った濃茶のお点前のこと。
 ちなみに「點」は「点」の旧字で、「お点前」の意味です。

御家元から届いた唐物點の許状
 今回いただいた許状には、「一 唐物點 右茶式 伝授畢」とあります。
 直訳すれば、

「一つ。唐物點。以上のお点前を伝授いたしました」

というような意味でしょうか。

 江戸時代の有名な茶人・稲垣休叟が著した『茶道筌蹄』という本には、「茶通箱、唐物點、臺天目、盆點、亂飾、眞臺子、右いずれも相傳物ゆへ此書に不記」と明記されています。

 つまり、茶通箱、唐物點、臺天目、盆點、亂飾、眞臺子のお点前は、それぞれ師匠から弟子に直接伝えられる相伝物なので、「万人の目にふれてしまう本書の中にその内容を書くことはできません」と休叟は言っているわけです。

 この状況は江戸時代のみならず現在も同じでして、これら「相伝物」と呼ばれるお点前は、一定の段階までお茶の勉強が進んだ弟子に対して師匠が直接教えてくださる秘伝、いわば師資相承です。

荒井先生(左)から唐物點の許状をいただいている
ところ。港区高輪のお稽古場にて(林義郎氏撮影)
 私は今年でようやく茶道歴5年になりました。

 速い人なら、唐物の相傳ぐらい2〜3年でパパパッと取ってゆかれるのかも知れませんが、私は仕事の合間にのんびり楽しみながら稽古場に通っているうちに、気がついたらここまで辿り着いていたという感じです。

 道草を食いながらゆっくりやって来た分だけ茶道が血となり肉となっているという実感があって、今のマイペースはとても気に入っています。

 私にとって茶道はケ(日常)に対するハレ(非日常)であり、修行であり、究極のリラクゼーションでもあるのですが、同時にまた(カテキンを多く摂取している・常に指先を使う・足腰が鍛えられるなどの理由から)お茶をやっている人はボケないと言いますからネ、今やっているお稽古は数十年先のボケ防止にもきっと効果があるでしょう。

 人生は何事も先手必勝
 リオのカーニバルで踊れるぐらい健脚な100歳(笑)をめざして、今から自分を磨いておきますよ〜。

 道草ばかり食っているふつつかな弟子ではありますが、荒井先生、今後とも変わらぬご指導・ご鞭撻の程を何卒よろしくお願い申し上げます。

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 ところで先々週は、何かと話題の映画「YASUKUNI」を観て参りました。
 私が「YASUKUNI」を観たいと思ったきっかけにつきましては、こちら(週刊マミ自身第292号)をご参照ください。

映画「YASUKUNI」のチケットと
パンフレット
 映画館による上映自粛に始まり、李纓(イ・リン)監督が香港系中国人であることから「反日映画なのでは?」「思想の自由はどうなる?」と話題ばかりが先行した感のあるこの映画。

 うちの近くでは渋谷のシネ・アミューズで上映中ですが、状況的に見て「いつ上映中止になってしまうかわからない」と思いまして、取るものもとりあえず行って参りました。

 席が混んでいるのか空いているのか、それすらもわからない状況でしたので、ゆとりを持って上映開始30分前には映画館に到着。月曜日の朝で、しかもその日は雨降りでしたが、ロビーにはこの時点で既に30人以上の人がいたでしょうか。

 映画館に入ってすぐの第一印象は、「お客さんのほとんどが中高年者で、若い人がほとんどいない」ということ。

 こういう社会派の映画に大学生が来ない国って、うーん、問題ですよ。
 日本の将来が心配になる瞬間です。

(いや。もしかしたら今日はたまたま大学生がいなかっただけで、昨日の日曜日は大勢来ていたのでは? でも日本の大学生は世界一自由時間に恵まれている人種なのだから、いくら月曜日とは言え、話題作を上映中の映画館に大学生が来ていないのはおかしい……)

などと思っているうちに上映開始。

 これから作品をご覧になる方もいらっしゃると思いますので詳細についてここではふれませんが、全体を観た感想としては、この映画は言われているような右でも左でもない、むしろ冷静なドキュメンタリーだと思いました。

 靖国にはこんな奇妙な人たちが集まり、こんな奇妙な出来事が繰り広げられている。21世紀でありながら、ここは昭和20年8月15日をもって時間が止まったままの場所であり、一種の治外法権なのだ。

 ……その事実を、改めてまざまざと見せつけてくれる映画です。

 ただ、観ていて一つ気になったのは、この映画は靖国刀の最後の刀匠である90歳の刈谷直治さんへの取材を軸に物語が進行するのですが、刀匠の取り上げ方が大きすぎるように思えたこと。

 そもそも、この刀匠と靖国問題は何の関係もないうえ、彼は責任者ですらない。言ってみれば市井の人なのです。

 そういう人をスクリーンという名の俎上に載せ、あたかも映画の「顔」のように大々的に使ってしまうことが許されるものか?

 もちろん、ご本人が監督の思想に共感した上で出演を快諾したのであれば話は別ですが、4月11日付の毎日新聞によれば、刈谷氏は「映画は刀作りのドキュメンタリーと聞いていた。李纓監督はもう信用できない。出演場面をカットしてほしい」と話しているとのこと。

 これが本当ならば由々しき問題です。

 映画監督と出演者のあいだで事前にどのような取り決めがあったかは別としても、この映画で本当に取材すべき相手はほかにいるように思います。たとえば靖国神社の責任者とか。しかし実際にはそちらのインタビューは全く取れていない。

 社会のタブーに触れるドキュメンタリー作品なのですから、そのあたりの関係者への取材は体当たりで、大袈裟に言えば命がけで臨んでほしかった。年老いた刀匠を前面に押し出すのではなく、あくまでも監督みずからが正々堂々と矢面に立ってほしかった。

 私自身はそのように感じました。

 とは言え、靖国神社の知られざる側面を見せてくれるという点で、やはり「YASUKUNI」は一見の価値がある作品です。全国上映映画館情報はこちらからご覧になれます。ご参考までに。

 ★ ☆ ★ ☆ ★

 さて、前号でお知らせしましたた「数字マジック付きTシャツプレゼント」には、たくさんの皆さまからご応募をいただき、誠にありがとうございました。

 抽選の結果、当選者は神奈川県在住の峰不二子のルンバさんに決定いたしました。
 おめでとうございます♪ Tシャツは既に発送済みですので、到着までしばらくお待ちください。

 それでは皆さま、今週も元気な1週間を♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


おやつの時間を待つ雨の午後

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年5月26日
山田 真美