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旅に出ていない限り毎週土曜日に更新します。
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2010年2月28日号(第376号)
今週のテーマ:
小さな「まみちゃん」をさがしに
★ 仏教エッセイ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日頃に更新)。第22回のテーマは「美人病にかかる(前編)」です。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 おかげさまで、2月27日をもちまして半世紀(!)をサバイバルいたしました。

 思い起こせば、インドのジャングルで全身を蟻に噛まれて死にかけたり、
 パプアニューギニアの海で溺れて死にかけたり、
 海抜6,000メートル超のヒマラヤで道路が崩れて死にかけたり……などなど。

 実に色々あったのにこうしてピンピンしている私は、我ながらインディー・ジョーンズ並みの強運の持ち主です。

 みんな俺について来い!
 こっちの道は極楽へと続く!(爆)

 大きな区切りとなる誕生日を前にして、ふと、

「自分が子どもの頃に暮らした町を、この目でもう一度見ておきたいな」

と思いました。

 子どもの頃に住んでいた団地や毎日遊んだ公園が、既に取り壊されてどこにも残っていないことはわかっています。

 でも、自己確認とでもいうのでしょうか、まだ海の物になるとも山の物になるともわからなかった頃の私が存在した場所に、もう一度この足で立ち、2010年現在の自分が立っている場所をしっかり確かめたいと思ったのです。

 幸い長野に用事があったので、ふらりと新幹線に飛び乗って故郷に帰ってきました。

 ちなみに東京から長野までの所要時間は新幹線で約1時間半
 私が子どもだった頃のそれは、確か7時間半ぐらい

 あの頃、東京は(所要時間のみならず文化的な意味でも)メチャクチャ遠かった

50年前の2月27日、私はこの病院で産まれました
(※建物は建て替えられて新しくなっています)
 懐かしい町を歩いていると、忘れかけていた顔が次々によみがえってきました。

 真っ暗になるまで自転車の乗り方を教えてくれたトモちゃん(1つ下の男の子)。
 泳ぎ方を教えてくれた優しいチャコちゃん(4つ上の女の子)。
 クラスで一番可愛かったのに、一番早く死んでしまったマユミちゃん(小学校の同級生)。
 
 不思議なことに、イジワルだった子の顔は全く思い出しませんでした。嫌な思い出は私の中ですっかり浄化されて、きれいさっぱり消え失せてしまったようです。

今は亡き祖母に逢うために4歳の
私が走って通った懐かしい小道。
祖母との思い出は「仏教一年生」
第4回
をご高覧下さい♪
 もしもタイムマシンがあったなら、私は時をさかのぼり、子どもの頃の小さなまみちゃんに逢いに行きたい。

 あの頃のまみちゃんは、あらゆることに自信がなくて、自分のことが嫌いだったし、あまり理解者にも恵まれませんでした。

 それでもあの子は「いつか本を書きたい」という夢を投げ出すことなく、屈折することもなく、まっすぐに前を向いて生きていた。

 できることなら、私はそんなまみちゃんをギュッと抱きしめて、

「そのままあきらめずに頑張れば、その夢はいつか叶うよ!

と教えてあげたいのです。

 今の私があるのは、家族や友達や先生や近所のおじさんおばさん……たくさんの人たちのお蔭。
 でもそれ以上に、あの、小さなまみちゃんのお蔭かも知れない。

 あのとき、小さなまみちゃんが途中で夢を投げ出してしまっていたら、今の私はありませんでした。
 だから、がんばってがんばって生きていた小さなまみちゃんに、私は「ありがとう」と言いたいのです。

母校・柳町中学校
 その次に思い出したのは、中学校で習った英語のことでした。

 会った瞬間、大好きになった教科。言ってみれば一目惚れした教科。それが英語でした。

 でも、私が通っていたのはごく普通の公立の中学校(※注/長野に私立の中学校はありませんでした)。
 ただ漫然と授業に出ているだけでは、英会話ができるようになる環境ではありません。

 だから、今から36年前、中学2年生(14歳)だったあの日、たまたま通りかかった公園のお砂場で遊んでいた金髪碧眼の4〜5歳の男の子に勇気を振りしぼって英語で話しかけていなければ、おそらく今の私は存在しないのだと思います。

 あのとき、生まれて初めて外国人に向かって"Hi! What's your name?"と英語で(ちょっと恥ずかしそうに)話しかけた私に対して、その男の子は大人びた冷静な顔を向け、憎らしいほど流暢な日本語で、

「あなたの"what"の発音は少しおかしいよ」

と答えたのです(右手にはシャベルを持って、お砂場の土を掘り返しながら)。

 あのときの稲妻のような衝撃を、誰かわかってくださるでしょうか。
 それはまさに人生始まって以来の完敗でした。ただただ、天晴(あっぱれ)なほどの完全な負け。

 5歳のバイリンガル児に無条件降伏したその瞬間、私は、ほかの誰でもない、私自身に誓ったのです。
 「こうなったら何が何でもバイリンガルになってみせる!」と。

 私のネバー・ギブアップ人生が始まったのは、まさにこの瞬間だったかも知れません。

 それまでの私は(自分で言うのもヘンですが)いつでも人の目を気にして、先生たちからは「良い子」と呼ばれ、失敗する前から失敗を恐れる、毒にも薬にもならない女の子でしたから。

 もしも私が現在のように英語を自由自在に話し、読み書きし、英語で思考することができなかったら……そう思うとゾッとします。私から英語を差し引いたら、それはもはや山田真美ではない、全くの別人だと思いますから。

 だから、あの日、あのお砂場で、私のくだらない自尊心を見事にへし折ってくれた青い目の男の子に、私は心の底からお礼を言いたいのです。

"Thank you for giving me a crushing blow. It was obviously one of the greatest moments in my life!"(痛烈な一撃をありがとう。あれは間違いなく私の人生の中で最高の瞬間の一つだったよ!)

※お砂場での出来事をつづった英語のエッセイはASIJ(アメリカン・スクール・イン・ジャパン)の公式サイトからお読みいただけます。
   When I turned 14, I saw a foreigner at close range in my hometown for the first time in my life. It was a very young American child playing in the sandbox in a park. I walked up to him with hesitation and spoke in a halting way, “Hi, what’s your name?”
   Then immediately, an answer came back in a very fluent Japanese; “Anata no ‘what’ no hatsuon wa, sukoshi okashiiyo. (Your pronunciation of “what” is somewhat funny).”
   Can you imagine how shocking it was to be criticized by a smart bilingual kindergartener? His straightforward words hit me like a bomb. Thanks to him, at that very moment, I swore to myself that I would become bilingual in the future, at any cost.
※山田真美「Planting the Seeds of Bilingualism(バイリンガルの種をまく)」
ASIJ(アメリカン・スクール・イン・ジャパン)の公式サイトより一部抜粋。
  
生まれて初めて外国人に話しかけた記念すべき公園。当時、私は14歳(中学2年生)でした



金髪碧眼の男の子に英語で話しかけたお砂場(今なお、この公園が存在することに感激!)
 人生50年。

 色々ありましたが、これからも私は私の道を行きますよ。
 まず、今年は「空海」を完成することが私の使命と心得ております。

 ……というわけで、これまでの50年間、本当にありがとうございました!
 次の50年も、どうぞ末永くよろしくお願いいたします♪
≪2月27日の夜は大好きなお友達が集まって私の50th birthdayを祝ってくださいました≫
(左から)林義郎さん、荒井宗羅先生、佐藤達生さん、藤波亜由子さん、高田由梨さん、
唄淳二さん、(私)、吉光徹雄さん、素敵な夜をありがとうございました♪




  



  


お祝いしてくれた7人のお友達を七福神に見立て、用意して行った7つのストラップ
(弁天、大黒天、毘沙門天、恵比寿、布袋、福禄寿、寿老人)を「くじ」替わりに引いて
もらいました。10年後の2月27日には、それぞれの七福神ストラップを持って私の
誕生日に集まってくださるという約束です。南総里見八犬伝の玉みたいでしょ(笑)
(@グランド・セントラル・オイスターバー&レストランin品川)


▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


ママ、これからもおやつとお散歩を
よろしくお願いします(by ブー)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2010年2月28日
山田 真美
★ Thank you so much for the lovely birthday presents! I really appreciate your sweeeeet thoughts! ★



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