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2014年10月19日号(第521号)
今週のテーマ:
癒しの秋(編み物・村上さん・猿の温泉)
論文「捕虜を生きる身体:第二次世界大戦期・カウラ第十二戦争捕虜収容所に於ける日本兵の日々」
『人間文化創成科学論叢第16巻』に掲載されました。こちらから全文をご覧いただけます。
キーワード: カウラ, 戦争捕虜, 身体, 男子同衾, ホモソーシャル 
 
 博士号を授与されてから3週間近くが経過しました。

 この間、前の仕事の片づけ(大学院の事務処理など)と次の仕事(主としてインド関係)への取り組みが重なって「ヒマ」とは程遠い毎日でしたが、それでも夕方、西の空に日が沈む頃に山小屋の庭に立ちますと、

「ああ、もう博士論文を書かなくてもいいんだ。今夜は温泉に入ってワインを飲んで、明日の朝は好きなだけ眠っていてもいいんだ。バンザイ!」

という喜びが沸沸と湧き起ってまいりまして、口もとには自然に微笑みが浮かぶのでした。知らない人がご覧になったら不気味かも知れませんが、こんな山奥には誰も来ないのでセーフってことで(笑)。

 こうして振り返ってみますと、博士課程での3年半は、やはり超人的激務の積み重ねだったのだなと思います。目覚まし時計なしでも早朝4時にはパッと目が醒めていましたから、相当な精神的ストレスがかかっていたのでしょうね。

 肩凝りも最高潮に達していましたし、あの生活をさらに何年も続けていたら、さぞや体に悪かったはず。ほぼ最短の年月で無事に退院できたことを心底から嬉しく思うのでした。

※大学院博士課程に入ることを業界用語(?)で「入院する」と申します。言い得て妙(笑)。

 その反動でしょうか、この3週間は、過去3年半分の心身の傷を癒すかのように、もっぱら癒し系の趣味に走っております。そうです、編み物です。

 100%ピュアオーガニックコットン糸に触れているだけでも、何とも言えない幸せを感じるのですよねえ……。3年半、この趣味は完全に「封印」していましたからね。この冬は思う存分編みまくりたいと思います。

大量の糸を買い込んで、さて、いったい私は何を編んでいるのでしょうか?
 編み物以外でも、身の回りのごく小さなことにことごとく癒されるのは、やはりこの3年半が戦場だったことの証しでしょうね。

 例えば家庭菜園から野菜を摘み取るだけで、しみじみと幸福を感じます。

 ちなみに10月に入ってからも、けっこうな量のトマト・ピーマン・茄子が採れました。
 カボチャは今が絶好調。う~ん、幸せ。
 
完全無農薬野栽培。トマトは10月下旬まで採れそうです♪



カボチャは蒸しただけでケーキのような甘さに。何の味付けも要りません!
 そして忘れてならないのが、裏庭には2羽、庭には2羽……どころか、いつの間にか12羽に増えたニワトリたちと、同じく庭に住むたくさんのカマキリたち。

 犬と違って、ニワトリやカマキリとは一緒に散歩ができるわけでもないのですが(笑)……なぜか彼らの存在にも無性に癒されております。
 
昼間は放し飼い状態の12羽のニワトリたち。かなり野生化が進んでおりますが(笑)



こちらは6月にオバサン(母鳥の姉妹に当たるニワトリ)に嘴で突かれて後頭部に大怪我を
負った「男子中学生」という名の若鳥。もう毛は生えて来ないようですが傷は癒えました。



こちらは産卵期を迎えたカマキリたち(右の個体はお地蔵さんの頭の上に乗っています)
 我が家のお犬さまたちに癒されることは今さら言うまでもなく。
 
見てください、花のにおいなんか嗅いじゃって、ブースケさんったら人間みたい(笑)。
なお、パンダの写真は撮り忘れました。あしからずお許しください。m(_ _)m
  このほか、長野市の実家へも頻繁に顔を出せるようになり、しばしば母の手づくり料理を楽しんでいます。

 そういえば、私が博士号を取ったことを一番喜んでいるのは、実は母なのかも知れません。

 母は幼い頃に家が没落(母の父、つまり私の祖父が経営していた会社が倒産したため)、上の学校に進むことができなかったという人。学校の成績が良かったようですので、進学できなかったことは(親孝行な人なので口には一切出さなかったでしょうが)断腸の思いだったことでしょう。

 私が高校生だった頃、長野市程度の地方都市では「女子は短大で十分」という考えの人が多かったのですが、うちの両親、とりわけ母は、

「勉強して四大へ行きなさい

と言い続けていましたしね。まさか50 overの娘が博士課程まで進むとは思わなかったでしょうが(笑)、とにかく今は手放しで喜んでおり、どうやら私は人生最大級の親孝行ができたようなのです。


母の手作り夕食は素朴な美味しさ(それにしてもハーゲンダッツに桜味が出ていたとは!)
  ……というような日々を送っている中、10月14日には鳥取から村上輝夫さんが上京なさり、一日過ごしました。

 ご存知のとおり、村上さんは元陸軍一等兵でカウラ事件のサバイバーでいらっしゃいます。

 94歳という年齢が信じられないほどアクティブな村上さんは、旅先でもその日の気分で適当に行き先を決めるのが常。今回は、本当は登戸の陸軍第九研究所跡をご一緒に訪ねたかったのですが、あいにく休館日に当たってしまったため、このプランは没に。

 すると村上さんからすかさず、

「山田さんが教えていらっしゃる大学へ行ってみたいです。どうしても今日行きたいです」

という強いリクエストがありまして、急きょ、港区白金台の明治学院大学にお連れしました。

突然の展開により明治学院大学のチャペル前に立つ村上さんと私



学院の創始者であるジェームス・カーティス・ヘボン博士の胸像前にて



私がいつも教えている教室にて。ここでの村上さんはひときわ嬉しそうでした。ふざけて
「村上輝夫君」と呼ぶと「はい!」と返事をしてくれました。ひょっとして尋常小学校時代を
想い出していらっしゃったのでしょうか?



カフェテリアで一休み中、「さすがは白金台の私立大学ですなあ。
どこもかしこも綺麗ですわ」と盛んに仰っていました♪
 この日、村上さんと撮ったすべての写真のうちのベストショットは、温泉に入る猿の顔ハメです。明治学院大学へ行く前に立ち寄った都内某所で撮りました。

 こういうことに即座に乗ってくださるお茶目な好奇心が、村上さんの若さの素なのかもしれませんネ!

温泉に入る猿の顔ハメ(都内某所にて)
  しかも、その数日後に仕事で実際に渋の地獄谷野猿公苑へ行き、温泉に入る猿たちを目の当たりにすることになろうとは。

 ……何というか、ご縁ですね(笑)。



仕事のために訪れた長野県北部の地獄谷野猿公苑にて。
(右下の写真、私の頭上に見えるのは噴泉にかかる虹です)
  ……というような次第で、大学院から退院後のリハビリ(笑)は順調に進んでおり、この分ですと10月末までには人生の次のステージに移行することができそうです。

 一つ山を越えたと思えば、さらなる山。こうして人生のチャレンジは続くのでありました。
 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


初めての道をお散歩中♪

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2014年10月19日
山田 真美
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