2014年1月18日号(第502号)
今週のテーマ:小野田寛郎さん逝去
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★ 仏教エッセイ ★
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『仏教一年生』は、『仏教二年生』と改題して近々新スタートの予定です。暫くお待ちくださいませ。
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一昨日(1月16日)、元陸軍予備少尉の小野田寛郎さんがお亡くなりになりました。
そのことで、いま胸に去来していることをそのまま記しておきたいと思います。
私は2012年に一度だけ小野田さんをインタビューさせていただきました。「捕虜というものをどうお考えになりますか」というストレートな質問をしに伺ったのです。お忙しい小野田さんにご無理を言い、友人で編集者の臼井雅観さんにお骨折りいただいた末に実現した会見でしたが、
「あのとき無理をしてでもインタビューさせていただいておいて、本当によかった」
と、今、しみじみと思っています。 |

小野田さんをインタビューする私(2012年、都内の喫茶店にて。撮影:臼井雅観さん) |
ところで小野田さんが亡くなった1月16日、私は東京近郊でひとりの元陸軍中尉(92歳)をインタビューしておりました。その方は、10代の頃から小野田さんの大親友だった人物です。
元陸軍中尉はこの日、インタビューされることをそれは楽しみにしてくださっていたようで、実に10時間45分にわたりノンストップでご自身の体験をお話しくださいました。
その熱意たるや、心配になった私が「少しお休みになってください」とお願いしても聞き入れてくださらない程で、一旦話し始めたお話を、おそらくご自身でも止めることができなかったのでしょう。
「戦後誰にも一度も話していないことばかり、今日は喋ってしまいました」
「普段は無口なほうなんだけど」
と言いながら、おかしそうに笑っていらっしゃいました。
インタビューの途中、元陸軍中尉と私のあいだで小野田さんのことが話題に上りました。障子の向こうに陽が陰りかけていましたから、夕方の4時過ぎであったと思います。
20歳の元陸軍中尉と19歳の小野田さんの水着姿のツーショットも見せていただきました。
水着と言っても、元陸軍中尉は白い越中ふんどし。これに対し小野田さんは意外にも洋風の海水パンツを履いておられ、その様子からは、ガチガチの愛国青年といった印象はまるで受けませんでした。その写真の中で、小野田さんはあどけない丸顔の少年でした。
「最近お会いしていないけど、どうしているかなあ」
今にして思えば、元陸軍中尉と私が写真を見ながらそんな会話をしていたまさにその頃、小野田さんは息を引き取られたことになります。
人間と人間のあいだに張り巡らされた、目には見えない不思議な「えにし」というものについて、今しみじみと想っています。
小野田寛郎さまのご冥福を心よりお祈り申し上げます。 |
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪

静かな冬の一日
(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
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