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2005年7月24日号(第181号)
今週のテーマ:
奇跡の再会とゴーストタウンの一夜
オーストラリア紀行(その一)
※左の画像をクリックしてご覧ください。
カウラ事件に隠された驚愕の真相に迫るノンフィクション『ロスト・オフィサー』が、いよいよ7月末に全国発売されます(予価1890円、スパイス刊)。
■日本人は、良い意味でも悪い意味でも、集団行動の得意な民族である。このような集団は、正しいリーダーに恵まれさえすれば素晴らしい成果を上げることができる反面、ひとたびリーダーが欠落したり、間違ったリーダーが選ばれたが最後、今この瞬間にも悲劇の坂を転げ落ちて行く危険と隣り合わせていると言わねばならない。(本文より抜粋)
 一昨年から本格的にオーストラリアとの縁が復活した私ですが、奇しくも来年は日豪交流年
 日本とオーストラリアの両国で、さまざまなイベントが実施されるようです。

 来年の私は、オーストラリアが重要な舞台となる長編ミステリー小説を完成・出版させる予定でおりまして、そのための取材と夏休みを兼ね、今月は家族と一緒に2週間ほどオーストラリアの最北東部へ行って参りました。

 これを聞いた何人かの知人からは、

「いいですねえ。この時期の南半球は真冬でしょ。避暑ですか」

などと羨ましがられましたが、南半球では「北」に向かえば向かうほど「赤道」に近づくのです。

 今回私が出かけたオーストラリア最北東部は常夏の地で、真冬(=今この時期)でも日中の最高気温は30℃に達します。
 避暑とは正反対の、日焼けするほどひりひりホットでスパイシーな旅になりました。

 今回の旅の起点は、グレート・バリア・リーフへの玄関口として日本人のあいだでも人気抜群のケアンズです。
 ここで、シドニーの大学に留学中の娘のLiAと合流。そこから先はレンタカーした4WD車で2,000kmに及ぶドライブ、最終的には世界最大規模の熱帯雨林を目指しました。

 実は今回、私には是非とも「この目で見たいモノ」が3つあったのです。

 ■この目で見たいモノ、その1。
 人口100人弱、「過疎村」と言うよりむしろ「ゴーストタウン」と呼んだほうが相応しい寒村の、幽霊が出るという噂のホテル
 ほんの数十年前まで、この村には数千人からの人が暮らし、100軒近い屋台の飲み屋(パブ)が営業していたのだそうです。
 それが今では、村民わずかに100人弱。この村に一体何が起こったのか、それ自体が既にミステリー!?

 ■その2。
 15,000年以上の昔に先住民(アボリジニ)が描いたとされる、洞窟の壁画。
 これは、世界最大・最古の熱帯雨林の奥の奥のそのまた奥にある、クインカンという場所の洞窟に描かれているそうです。
 いったいどんな絵が描かれているのか……。
 なお、クインカンへと通じる道は未舗装のひどい悪路だそうで、今回の旅には4WD車が必須です。

 ■その3。
 オーストラリアの熱帯雨林に棲息するという、ユリシーズという名の幻のアゲハチョウ。
 ユリシーズは、その昔昆虫図鑑で写真を見て以来、一度はこの目で見たいと念願していた蝶々です。黒地にサファイヤ・ブルーの羽根の色は、まるで空飛ぶ宝石といった風情。

 どこかから採集して来た蝶々を入館料を取って見せている「バタフライ・ファーム」のような場所ではなく、大自然の中に生息するユリシーズが見たい!というのが、私の長年の夢だったのです。ちなみにユリシーズに関しては、次のような古い言い伝えがあるとか。
一度見ると幸福を招き、
二度見るとその幸福は消え、
三度見ると大金持ちになる。
 一度見てみたいのは山々ですが、と言って、間違って二度見てしまった場合は一発逆転負けという、かなり危険な蝶々のよう。
 つまり、万が一間違って二度見てしまった場合には、何が何でも三度目も見なくてはいけないってことでしょうね(苦笑)。

 以上、3つの目標を胸に、いよいよ旅の始まり始まり……。

ケアンズ空港でレンタカーしたこの四輪駆動車
で、冒険の旅にいざ出発!
 私達が最初に向かった先は、クイーンズランド州北部最大の街、タウンズヴィルです。

 かつてタウンズヴィルには、オーストラリアにおける日本の在外公館第1号が置かれていた由。
 つまりタウンズヴィルは、首都キャンベラより早い時期から日本との外交拠点になっていたということなんです(意外でしょう?)。

 ちなみに現在のタウンズヴィルは、福島県のいわき市ならびに山口県の周東市と姉妹都市を提携しているとのことでした。
 来年の日豪交流年に関する打ち合わせもあって、まずはタウンズヴィルの市長さんとのミーティングから旅は始まりました。

タウンズヴィルのトニー・ムーニー市長と。ムー
ニー市長は35歳ぐらいのときから15年もの長き
にわたって市長の座に座り続けている人気者。
ナイスガイです



タウンズヴィルの街中には、こんな巨大な蜘蛛
のオブジェがありました。超リアルです。次回の
蜘蛛学会総会で発表しなければ(笑)!
 さて。ここタウンズヴィルで、私は「シーガル・リゾート」というホテルに2泊したのですが、滞在中、世にも不思議な出来事が発生。

 3日目の朝、特に用事はなかったのですが部屋から出てプールサイドを散歩していたところ、目の前のテーブルに座っていたのは、なんとハリー・ゴードンさんと奥様ではありませんか! 驚愕のあまり、私達はお互いに暫く声も出ない有り様でした。

 ハリー・ゴードンさんと言えば、かつてのオーストラリア新聞界の重鎮。今でこそ定年後の悠々自適の日々を楽しんでおられますが、その昔は複数の大手新聞社で編集長を務め上げ、カウラ事件やオリンピック史などユニークな取材で鳴らし、数々の著書も残された方です。

 私は縁あって今から10年前にゴードン氏の著書を邦訳、『生きて虜囚の辱めを受けず』のタイトルで出版しました。
 また、今月末に上梓の運びとなった『ロスト・オフィサー』も、もとを糾せばゴードン氏との出会いがあったからこそ書けた一冊です。

 そのゴードンさんと旅先のホテルで遭遇するとは、なんという奇遇!
 しかもこの日は、出版社との約束で私が『ロスト・オフィサー』のゲラ校正を完了することが決まっていた、まさにその当日だったのです。

 今回の旅について、私はゴードンさんに事前に話しておりませんでしたし、ゴードンさんがタウンズヴィルを旅行していることも、無論この瞬間まで知りませんでした。 

 また私達は、この出会いから30分後にはホテルをチェックアウトし、別の街に移動することになっていました。つまり、何の気なしにプールサイドに出てみなければ、この邂逅は絶対にあり得なかったのです。

 あまりにも色々なことがピッタリと重なり合った、まさに奇跡の再会でした。

ホテルのプールサイドにて、ハリー・ゴードン氏
と。手にしているのは『ロスト・オフィサー』の表
紙の色見本(中身は別の本)です
 再会の驚きから覚めやらないままゴードン夫妻と別れ、タウンズヴィルを後にした私達は、次なる目的地であるゴーストタウンへ……。

 ここはかつての金鉱で、何十年か前までは一攫千金を夢見る数千人の人々で賑わった土地ですが、今は人口も100人を大きく割り込み、限り無く減少中。
 ほうぼうに残された廃墟が、何とも言えない奇妙な雰囲気を醸しています。

ゴーストタウンの入り口でカラカラ
と音を立てて回っていた風車



ゴーストタウンの墓地。夜はゾッとするような
迫力がありました
 ひと気もまばらなゴーストタウンで、いまだにホテルが営業しているということ自体、よく考えてみると奇妙と言えば奇妙な話ですが、しかも複数の人々から聞いた噂によれば、そこにはよく幽霊が出るというのです。

 半信半疑で何百キロもドライブして行ってみると、まったくひと気のない荒野の中に、噂のホテルは確かに実在しました。

これが問題のホテル。1階がパブ&レストラン。
2階は客室になっています。この写真ではわか
りませんが、実はかなり奥行きのある建物です
 そこは一見したところ、オーストラリアのどこにでもあるような、平凡な田舎のホテル。築100年ほど経っているとは言え、いかにも幽霊など出そうにないごく普通の雰囲気ではありませんか。

 もともといわゆる「幽霊」の存在を信じていない私ではありますが、せめて建物だけでもドラキュラ城のような不気味な雰囲気を期待していたのです。
 私は密かに心の中で、(なんだ、つまらない)と落胆し、幽霊が出るという例の噂を、最初から完全にガセネタと決めてかかったのでした。
 おそらく家族もこれと同様の感想を持ったのでしょう。「これは、どう贔屓目に見ても出そうにないね」と、皆して苦笑したのでした。

 ところが、その夜遅く、おかしなことが起こりました。

 その夜は、ブリスベン(?)あたりでクリケットの試合が行なわれたらしく、階下のパブには大勢の人が集まって、遅くまでテレビ観戦をしている賑やかな声が2階まで聞こえていました。

 しかし今にして思えば、この人達が一体どこから来たのか、私はもっと不審に思うべきだったのかも知れません。
 声から察するに、この夜は少なくとも10人ほどの男女がパブでビールを飲み、テレビを観ながら騒いでいたようでしたが、そもそも彼らは一体どこから集まって来たのでしょう?

 私達はクリケットにはまるで興味がなく、夕食を済ませた後はすぐに2階の寝室に戻っていました。

 この夜のことで奇妙だったのは、8時を過ぎた頃には早くも家族が睡魔に襲われて、ひとり眠り、ふたり眠り、9時を過ぎても起きていたのは息子と私だけになってしまったこと。

 2階の寝室には、ベッドと鏡台以外にはテレビも何も置いてありません。しかし、家族が眠っている室内で電気をつけるわけにもゆかず、息子と私は仕方なくそれぞれのベッドに転がったまま、闇の中で小声で話をしていたのでした。

 11時を少し過ぎた頃にはテレビ番組も終わったらしく、暫くして階下は静かになりました。

 それからさらに30分も経った頃でしょうか。それまで「今夜は眠れそうにない」、「寝付けない」と言っていた息子が、「なんだか急に眠くなった」と言い出し、あっと言う間に眠りこけてしまったのです。

 それは何というか、不自然なほど急激な睡魔に襲われたという感じでした。
 ひとり残された私は、(今夜はみんな付き合いが悪いなぁ)などと思いながら、相変わらず寝付けないまま、闇の中でさらに5分ほどが経過したのではないかと思います。

 不意に、誰もいなくなったはずの階下で物音がしたかと思うと、誰かがゆっくりと階段を登って来る足音がしました。
 時計を見ていませんからハッキリしたことは言えませんが、それは午前0時よりも少し前だったのではないかと思います。

 ミシッ、ミシッと軋む階段の音。ぼそぼそと低い声で話しながら、誰かが2階に向かって来ます。
 その声から、登って来るのはあまり若くない女性ふたりであることがわかりました。

夜中にミシッ、ミシッという足音の聞こえた階段
 ……もっと書きたいところですが、ゴメンナサイ。今日はこれから用事があって外出しますので、この話は「週刊マミ自身」182号に続く。
 果たして階段を登って来たふたりの正体は? この続きは次号で楽しみください。

 さて、今回のオーストラリアからの読者プレゼントは、今週号(第181号)と来週号(第182号)の2度に分けて実施いたします。今週号のプレゼントは、下の写真に写っているクロコダイルのぬいぐるみです。頭から足までの高さが約30cm。これを1名様に差し上げます。

 ご希望の方は、件名に「クロコダイル希望」と書いて、

 @ハンドルネーム
 A住所氏名
 B性別
 C年齢
 D山田真美へのメッセージ

を明記の上、boosuke@badboy.co.jp までメールでご応募ください。
 締め切りは7月29日。当選者の発表は、7月30日更新予定の「週刊マミ自身」でいたします。

 なお、今週号のプレゼントに当選なさった方は来週号のプレゼントにはご応募になれませんのでご注意ください。来週号のプレゼントは、実用的な品物(女性向き)を予定しています。
 
【左写真】向かって右側は私の「私物」。読者プレゼントは左側のクロコダ
イルです。 【右写真】クロコダイルの後ろ姿。背中には“TOUR GUIDE.
FOLLOW ME.(ツアーガイド。俺について来い)”の文字が……(笑)
 『ロスト・オフィサー』も、間もなく書店の店頭に並ぶ予定です。
 皆さま、どうぞ書店さんへのご予約をお忘れなく(ちなみにアマゾン書店でも予約受け付けを開始したようです)。

 猛暑に加え、昨日は関東地方で最大震度5弱の地震と、色々ありそうなこの夏ですが、どんなときでも明るい気持ちで元気に乗り切りましょうネ。

 ではでは、また来週♪
※元捕虜達の証言で綴る 「カウラの大脱走」 が次の日程で放送される予定です。
  
NHKハイビジョン 8月4日(木)20:00〜21:50(110分)
  NHKBS-1 8月12日(金)22:10〜23:00(予定、50分ダイジェスト版)

 この番組には、私もスタッフの一員(資料提供)の形で参加していますが、番組制作そのものには一切タッチしていません。つまり、出来上がった番組自体は私もまだ見ていないのです(さて、どんな作品に仕上がったでしょう)。お時間とご興味のある方は、ぜひご高覧ください。
★★★今週のブースケ&パンダ★★★


旅先から帰ったご主人様を見た途端、安心
しきったのか2匹とも爆睡してしまいました

※前号までの写真はこちらからご覧ください
事事如意
2005年7月24日
山田 真美