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2008年10月25日号(第312号)
今週のテーマ:
スコットランド紀行(2)ネッシー伝説
★ お し ら せ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です。第7回のテーマは「お葬式の意味」(10月29日更新予定)。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
★お知らせ★
 10月26日発行の『広告』12月号(博報堂・刊、690円)は、1冊まるごと日本文化デザインフォーラム特集です。週刊マミ自身にも何度か登場していただいた故・黒川紀章先生、日比野克彦さん、榎本了壱さん、原島博先生、サエキけんぞうさん、蜷川有紀さん、千葉麗子さんなど大好きなお友達が勢ぞろい! 非常に読み応えのある1冊に仕上がりました。ぜひご高覧ください。『広告』の目次はこちらからご覧いただけます。
    
(左)表紙は日本文化デザインフォーラム初代代表で哲学者の梅原猛先生
(右)私は「地場産業としての宗教が生み出す知恵」について語っています

 ……というわけでスコットランド紀行(2)です。

 今回グラスゴーで泊まったホテルのすぐ目と鼻の先には、スコットランドが生んだ有名な建築家マッキントッシュ(1868〜1928)が設計したグラスゴー美術学校がありました。

 グラスゴー滞在中、私は毎朝この建物の前を歩いて鉄道やバスの駅に向かったのですが、あとで調べたところ、マッキントッシュは存命中にはその才能を評価されず、仕事もなく、フランスに移住して水彩画家に転向。60歳のときにロンドンで亡くなったのだそうです。

 今でこそ、スコットランドの観光ガイドなどには必ず「スコットランドが生んだ偉大な建築家マッキントッシュ」って書いてありますけどね。

 その栄光が本人には届かなかったのですし、本当にやりたかった建築の仕事をとことんまでやれずに亡くなったのですから、気の毒な話です。
 
 なおグラスゴーにはマッキントッシュが設計した「ウィロー・ティールーム」という喫茶店があって、そこの椅子は世界でいちばん座りにくい椅子ともっぱらの評判でした(苦笑)。

 私は行きませんでしたが、皆さん機会があったら座ってみてください。
  
有名な建築家のマッキントッシュが27歳のときに設計したグラスゴー美術学校
 さてさて、スコットランド3日目はネス湖に行って参りました。
 そうです。例の、ネッシー伝説で世界的にその名を知られるネス湖です。

 あ。勘違いしないでくださいよ。ネス湖に行ったからと言って、私はオカルト趣味は皆無ですし、

「もしかしたらネッシーの写真が撮れるかも〜?」

なんて期待は最初からしていませんでしたからネ(笑)。

 でも、アレです。
 せっかくスコットランドまで行ってネス湖を見ずに帰るのは、ちょっと口惜しい

 つまりこの日の私を突き動かしたものは、まさにミーハーな好奇心以外の何物でもなかったということですね。

 で、ネス湖まではバスツァーを申し込みました。
 オフシーズンだったらしく、大型バスはガラガラ。しかし、その殺風景さがなかなか良かった(笑)。

 それにしても、初日と2日目に引き続いて3日目もまた雨降り
 スコットランドって、いつもこんなに天気が悪いのかしら?
  
(左)ネス湖行きの観光バス。初老の運転手さんは"horrible weather!"と顔をしかめていました
(右)途中のサービスエリアで飲んだスーパーデラックス・ホットチョコレートは超美味♪
 ネス湖を目指してグラスゴーから一路北上を続けていると、平坦だった風景が一変。小高い丘のような低山があちらこちらに現われはじめました。

 どうやらバスは「ハイランド(High Land)」と呼ばれる地方に到達したようです。

 低山と低山のあいだを縫うようにして大地に横たわっているのは、いくつもの細長い湖
 空を見上げると、胸騒ぎがするほどドラマティックな雲

 あたり一面、人間はもちろん生き物の姿をほとんど見かけません。
 それを見ているうちに、スコットランドの北の果てが近いのだという予感が込み上げてきました。
  
ハイランド地方。たくさんの低山の間に細長い湖が点在しています


  
断層活動によって生じた窪地にできた湖(断層湖)が多いようでした
 一説によれば、UFOとネッシーは地球上に残された最後のミステリーなんですって。

 しかしそれより何より、ネッシーはスコットランドにとっての大切な観光資源ですよネ(夢のない言い方で申し訳ありませんが(笑))。

 だって、ネッシー伝説を除けば、このあたりにはいわゆる観光名所がないみたいなんですよ。
 にもかかわらずネッシーという幻想を求めて世界中から観光客が訪れるのですから、人間って本当に不思議な生き物です。

 「ネス湖にモンスターがいるらしい」という噂は6世紀頃からあったんですって。

 もちろん、その怪物が「ネッシー」という愛称で呼ばれるようになるのは近年になってからのことですが。

 同様の怪物目撃談は、道路が整備されて誰もが簡単にネス湖に近づけるようになった1930年代以降になってグンと増えたそうです。

 ちなみに、ネッシーの現地での呼び名は、"Nessie(ネッシー)"または"Loch Ness Monster(ロックネス・モンスター)"。

 "Loch"は湖または入り江を意味するスコットランド特有の言葉です。
  
ネス湖にて。長さ35キロ×幅2キロと極端に細長いため、湖と言うより河のような外観。水深は
約230メートル。後方の建物は13世紀に建造され17世紀に破壊されたアーカート城の廃墟



山のように積まれたネッシーのぬいぐるみ
(ネス湖近くのお土産物屋さんにて)
 ところでネッシーファンのかたには申し訳ないのですが、私はネッシーの存在を信じていません

 だって、ネッシーに限らずどんな生物にも種の保存に必要な最低個体数(それより数が少なくなってしまうと絶滅に向かう最低ライン)があり、ネッシーの場合も例外ではありませんからね。

 最低必要な個体数は生物によって異なるようですが、一説によれば、哺乳類の場合は5,000頭が最低必要ラインだと言われています。

 ということは、仮にネッシーなる生物が実在した場合、哺乳類なら5,000頭。爬虫類だとしても、それ相応の最低個体数がいなければ、今日まで種として存続してくることは出来なかったはずです。

 たかだか長さ35キロ×幅2キロしかないネス湖に5,000頭のネッシーがいたら、それこそもう、毎日のように飽き飽きするほど目撃されていることでしょう(笑)。

 仮に何らかの未確認生物がかつてネス湖に生息したのだと仮定しても、最近は誰も目撃していないようですし遺体も上がっていないようですから、おそらく疾うの昔に絶滅してしまったのでしょうではないでしょうか。

 それにしても、昼間も薄暗いスコットランドの空と、昼間から開店しているパブ(と酔っ払いの皆さん)を見ていると、ネッシー伝説が生まれたのも当然かなという気はします。

(発見者が酔っ払っていたかどうかは知りませんが、発見者が軒並みコドモではなくオトナだという事実も、ネッシー伝説の秘密を解く大きな手がかりと言う気はしますね)

 今日の結論。ネッシー伝説はオトナのロマン。お酒は20歳を過ぎてから。

ネス湖の北東に位置するインヴァネス
の街。インヴァネスは、ネス湖の河口
(インヴァ)という意味なのだそう


  
グラスゴーへの帰路、ピトロッホリーという小さな街のレストランでスコットランド名物
「フィッシュ&チップス」をいただきました
 スコットランド4日目は、グラスゴーの衛星都市であるペイズリーを訪ねてみました。
 そうです、例のペイズリー模様の名前の由来になった街です。

 歴史的に面白いのは、そもそもペイズリー模様の発祥はイランあたりであって、生命の木になる葉っぱをデザイン化した形だったということ。

 このモティーフは北インド(カシミール地方)に紹介されてカシミヤのショールに織り込まれるようになり、やがてそれが大英帝国に紹介されます。

 1777年にはエジンバラでペイズリー模様を織り込んだショールの生産が始まるのですが、これはお金持ちを対象とした高級品だったため大量生産には至りませんでした。

 一方、ペイズリーの町工場では、同じようなデザインのショールを大量生産し廉価で販売しました。これが瞬く間に一般大衆に知られるところとなり、生命の木の模様は「ペイズリー模様」と呼ばれるようになったということなんですネ。

 ……つまり結論としては、ペイズリー模様はペイズリー発祥ではないということです。

 こういう誤解って、世の中には数多くありそうですよネ。例えば、今ではアラビア数字と呼ばれている数字(1・2・3・4・5・6・7・8・9・0)の考案者がアラブ人ではなく実はインド人だってこととか。

 しかし、この件について書き出すと長くなりそうなので割愛(笑)。
 今日のところは、ペイズリーへの旅の写真をお楽しみくださいマセ。
  
グラスゴーから乗った列車の様子


  
これがペイズリー博物館の外観と入り口部分。スコットランドの建物はどれも重厚です!


  
(左)博物館はAdmission Free(入場無料) (右)ペイズリーの発祥ではないペイズリー
柄が何故ペイズリーと呼ばれるようになったか、そのあたりの歴史も博物館で学べます


  
ペイズリーの街で。タ−タン柄のキルトスカートがさりげなく並んだ洋服店がとってもオシャレ。
ゲール語でキルトは「フェーリア(Feileadh)」と言うそうです


  
ペイズリー大僧院の外観と内部のステンドグラス



ペイズリーで見かけたニセブースケ
 さて前号でお知らせした「スコットランド読者プレゼント@タ−タン柄の被り物」には、たくさんのご応募をいただきました。誠にありがとうございました♪

 今回は抽選ではなく、第311号を読んでの感想文を送っていただき、そのなかでいちばん良く書けていたものを選ばせていただくということだったのですが、これがもう、蓋を開けてみれば長文、短文、詩形式など実にバラエティー豊かな内容となっていました。

 応募してくださった皆さま、ありがとうございました。

 熟考の末、今回のプレゼントは、「蛍の光」「石(リア・フェール)」「お菓子なふたり」などのキーワードを一編の美しい詩にまとめてくださったもちさん(21歳、学生)にお贈りしたいと思います。

 もちさん、おめでとうございます♪
 早速プレゼントをお送りしたいと思いますので、ご住所をお知らせください。

読者プレゼントその@
タ−タン柄の被り物
 さて、この続きは「スコットランド紀行(3)幽霊伝説」へと続くはずなのですが、すみません、実は突然ですがその前にブータンへ行くことが急きょ決まりまして、スコットランド紀行を書くのは少し後になってしまいそうです。

 ブータンでは、新国王ジグメ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下の戴冠式に臨席して参ります。

 そんなわけで次の「週刊マミ自身」更新は、ブータンから帰国して一段落した11月中頃になるでしょうか?
(スコットランド土産そのAは、そのときに差し上げます)

 何かとご迷惑をおかけいたしますが、そんなわけですので何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

 そんなことをしている間にも、季節は秋へ
 皆さまも、色づき移りゆく一刻一刻を味わい、楽しんでくださいね。

 ではでは♪

※この続き(スコットランド紀行〔3〕)はこちらからお読みいただけます。
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


電車に乗るため、キャリーバッグに
入ったブースケ。怪しい網タイツ犬
ではありません(笑)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2008年10月25日
山田 真美
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