2009年5月5日号(第333号←ゾロ目です!)
今週のテーマ:スコットランド紀行(3)忠犬伝説 |
★ 仏教エッセイ ★
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真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です。第13回のテーマは「仏のレッスン」(4月28日更新予定)。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。 |
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先日、とある読者さまから、
「あのー、失礼ですが、マミリン先生の『スコットランド紀行』は『魔女伝説』と『ネッシー伝説』のあと、『幽霊伝説』へと続くはずでしたよね? あれは、どうなったんでしょうか?」
という鋭い突っ込みを入れていただきました(大汗)。
そう言われてみれば、確かに私は2008年10月25日付の「週刊マミ自身」312号のなかで、
「この続きは『スコットランド紀行(3)幽霊伝説』へと続くはずなのですが、すみません、実は突然ですがその前にブータンへ行くことが急きょ決まりまして、スコットランド紀行を書くのは少し後になってしまいそうです」
と書いているんですネ。
しかしその後、例によって何やら忙しい日々が続き、スコットランドへ行ったことそれ自体が忘却の彼方へと消え去りつつあったのでした。皆さま、たいへん失礼いたしました。
m( _ _;;)m
今は2009年のゴールデン・ウィーク真っ只中ですが、半年も放りっぱなしだった「スコットランド紀行」の最終回を、今日こそはまとめたいと思います。
※ちなみに、これまでの「スコットランド紀行」はこちらからお読みいただけます。
……というわけで、今日も元気に朝食をもりもり食べてグラスゴーのホテルを出発!というところから話を再開しましょう。
なお、タイトルが最初の予定の「幽霊伝説」から「忠犬伝説」に変わっていますが、その理由は、単にこの半年間で私の気が変わったということです(爆)。併せてお許しくださいませ〜。 |

典型的なスコットランドの朝食です。特に、トマトソースで煮込んだ大豆料理は必須のよう。
私はベジタリアンなので、ソーセージとベーコンはまわりの人に差し上げていました(笑) |
さてさて。今日の私が目指す場所は、古都エジンバラです。
スコットランドではグラスゴーのホテルに泊まっていたのですが、グラスゴーからエジンバラまでは電車で約50分。距離にして約50km。これは東京〜大宮間の距離にほぼ匹敵しますから、完全な通勤圏内ですネ。
しかし日本との違いとしてまず挙げたいのは、電車の運賃がベラボーに高い(!)こと。
グラスゴー〜エジンバラの運賃が往復20ポンド。これは当時のレートで換算すると日本円にして約4,000円。イギリスのポンドが弱くなった現在のレートでも約2,000円ですから、毎日乗ることを考えたらかなりキビしい額ですよね。
それから、スコットランドの電車には自転車を乗せてもOKな車輛があって、自転車ごと乗車する人が多かったのも印象的でした。 |

(左)駅舎はどこもこんな感じ (右)自転車マークが描かれた車輛に自転車ごと乗車する人

(左)普通の快速電車にも車内販売がありました (右)車窓に拡がるのどかな風景 |
グラスゴーを発ってから50分後、電車はエジンバラに到着。着いてすぐに感じたのは、グラスゴーに比べて街並みが重厚だということ。これぞ歴史の重みなのでしょうね。
まずは街の雰囲気を五感で感じようと思い、地図を見ずに歩いて行くと、いきなりスコットランド出身の経済学者アダム・スミスの像に遭遇しました。
大学時代、ゼミの課題で夏休みにスミスの“An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations”(『国富論』)を原書で読まされたことを懐かしく想い出しながら、像の足元で記念撮影。 |

(左)エジンバラらしい街並み (右)世界的な経済学者アダム・スミスと記念撮影 |
さらにもう少し歩いて行くと、前方の丘の上に大きな城が見えてきました。エジンバラ城です。
以前、インド旅行のときにも書いたように、私は世界中どこへ行っても城にはまったく興味がない人間です。
とは言え、せっかくエジンバラまで来てエジンバラ最大の観光名所を見ずに帰るのも口惜しい(笑)。
ってなわけで、ちょこっとエジンバラ城にも立ち寄ってみることにしました。
(実際に入ってみると予想外に面白く、ここで数時間を過ごすことになるのですが……)
エジンバラ城の歴史を(おそろしく大雑把に)書きますと、
*現在エジンバラ城がある場所には、6〜7世紀頃には既に砦が作られていた。
*ここは歴代スコットランド王の居城だった。
有名な「悲劇の女王メアリー」が暮らした部屋が、今も残っている。
*歴代王の戴冠式に使われてきた「運命の石」(リアフェール)が、城内に安置されている。
*1707年にイングランドに敗れるまで、スコットランドは歴とした独立国だった。
イングランドとの戦いの中心となったのが、ここエジンバラ城。
*エジンバラ城を含む街全体が、ユネスコの世界遺産に登録されている。
……ということのようです。 |

(左)エジンバラ城の入り口部分の外観 (右)正午の時を告げる大砲

(左)エジンバラ城から見下ろした街の風景 (右)芝生に沿って建てられた石のプレートは、城内で
飼われていた犬たちのお墓だそうです。スコットランド人にとって、犬は不可欠な相棒のようですネ♪

(左)武具の使い方を見せるデモンストレーション (右)非常口に貼ってあった注意書きの日本語訳
(このドアは驚かされた非常口だけである)に思わず爆笑してしまいました。正しい訳は「このドアには
警報装置がついています。非常時以外には、ここからお出にならないでください」 |
エジンバラ城で思いがけず時間を費やしたせいか、お城から出る頃には目が回りそうなほどの空腹感が……。
しかし、ご心配なく。人一倍食いしん坊な私は、こんな状況を予期して、駅からお城まで歩いて来るあいだに抜け目なく路傍のレストランをチェックしておいたのです(笑)。
目を付けていたのは、落ち着いた赤い外装がお洒落なNanam'sというレストラン。なんとクルド料理と中東料理(!)の専門店ですって。
クルド料理なんて、生まれてこのかた一度も食べたことがありません。
アラビア系の料理が肉食中心なのはわかっていましたし、店の外に置かれた看板を見ても“Dolha”とか“Falafel”など聞いたこともないメニューばかりでしたが、
(そうは言っても、ベジタリアン料理は必ず置いてあるはず)
と思い、とにかく入ってみることにしました。 |

お店の外に置かれた看板 |
喉がカラカラに乾いていたので、まずはビールを頼むことに決定。
ところがメニューに載っているビールの銘柄は、Back's、Cobra、Brood Lebanese
Maltなどなど、聞いたこともないブランドばかり。
目をこすってもう一度よくリストを見ると、ビールはビールでも、なんとひとつ残らずノンアルコール・ビールじゃありませんか。
世界に冠たるアルコール大国スコットランドで営業しているにもかかわらず、アルコール禁止を貫いているとは……さすがはイスラム圏! |

クルド&中東料理のお洒落なレストラン“Nanam's”でベジタリアン用のオクラ料理に舌鼓を打っているところ

メニューにもビール瓶の下部にも「アルコール・フリー」「ノン・アルコール」の文字が(汗) |
さて、ベジタリアン料理で腹ごしらえが出来たので、いよいよ忠犬伝説の調査に出発です。
エジンバラにハチ公にも負けないほど有名な忠犬伝説があることは、日本を出発する前から知っていました。
それによれば、忠犬の名はボビーといい、彼の人生(犬生?)をもとにユニヴァーサル社が映画を製作したこともあって、そのため特にアメリカ人のあいだで有名な犬だとも聞いていました。
それにしても、一体ボビーの何がどのように忠犬なのか。
そのあたりの事情を調べようと思い、「ここぞ」と思われる方角を目指して歩いて行くと、ありました、ありました、ボビーらしき犬の銅像が! |

街角で見かけた忠犬ボビーの銅像と、記念館への案内板 |
しかも、銅像の後ろにある赤い外装のバーの名前は、そのものズバリ“BOBBY'S BAR”。
どうやらこのあたりが、忠犬伝説発祥の地のようです。
案内に従ってテクテク歩いて行くと、一軒の教会の前にたどり着きました。
教会の前には、いかにもアメリカ人らしき観光客の一団が群がっています。
……ということは、ここがボビーゆかりの地に違いないゾ。
案の定、すぐに「Greyfriars Bobby」と書かれた立派な墓標が見つかりました。 |

スコットランド教会(The Church of Scotland)の敷地に建てられたボビーの墓(右) |
教会に置かれていたパンフレットや案内役の女性のお話によれば、1856年生まれのボビーはオス♂のスカイ・テリアで、ボビーの飼い主ジョン・グレイ氏は、ここエジンバラの警察官だったそうです。
生前のボビーは、ご主人が行く先ならどこでもついて行き、警官の相棒として犯人逮捕にも一役買っていたと言いますから、ビックリするほど賢い子ですね。
うちのどんくさブースケとはえらい違いですが(苦笑)、しかしそれ以上に驚きなのは、当時のエジンバラ警察は犬を同伴して出勤してもノープロブレムだったらしいということ。
なんとも長閑(のどか)な時代ですよね〜。
ちなみに、この「スカイ・テリア」という犬種はもともとは猟犬で、穴のなかに飛び込んで獲物を仕留めるのが得意だそう。愛らしい風貌とは裏腹に、警戒心が強く勇敢な犬のようです。
さて、ボビーのご主人であるグレイ氏は気の毒にも肺結核に冒され、1858年に45歳の若さで他界してしまいました。
残されたボビーは、このときわずか2歳。普通なら、そのまま行き場を失って野良犬になるか、新しい飼い主のところへ貰われて行くのでしょうが、ボビーの場合は、そのどちらでもありませんでした。
ボビーは1872年に16歳で死ぬまでの14年間、なんと1日も欠かさずグレイ氏の墓を守りつづけたのです。
それも、近所の人からもらった餌を食べる時間以外は片時も離れず主人の墓に寄り添っていたというのですから、尋常ではありません。
そのあまりにも一途な姿に胸を打たれた人々によって、ボビーの墓碑(上の写真)が建てられ、本が書かれ、やがて映画が作られて、今日に至るまで彼は「最高の忠誠心のシンボル」として語り継がれているわけなのでした。 |

(左)教会の奥のミュージアムでは絵葉書やカップなどオリジナルグッズも販売していました
(右)ボビーの体験を脚色して製作したという映画“The Adventures of Greyfriars
Bobby” |
ただ、どうなんでしょうね。もしも私がボビーの飼い主だったら、
「死んだ人間の墓守りなんかしなくていいから、どうか新しい飼い主のもとで幸せになっておくれ。生きている今という時を大切におし」
と願ったのではないかと、ふと思ったりもします。
もっとも、誰が何と言おうとボビーの気持ちが揺らぐことはなく、いつか再びご主人に逢えることを信じてテコでもお墓から離れなかっただろうことも、容易に想像がつくわけですが……。
それにつけても、犬は凄いですね。
主人に対するあのピュアな忠誠心には、我々人間はとても太刀打ちできません。
私はこれまで馬、猫、山羊、羊、ウサギ、カンガルー、仔ブタなど、たくさんの種類の哺乳類をペットとして飼ったことがありますが、そのなかで(あくまで私見ではありますが)犬の忠誠心がダントツ一番のような気がします。
「忠誠心」という言葉が必ずしもピッタリでなければ、「疑わない心」と言い換えて良いかも知れません。
信じる者は救われるという言葉がありますが、実は、信じることほど難しいことはありません。
食べ物も偽装、建物も偽装、愛も偽装。ニセモノだらけのこの世の中で、ボビーのように打算も疑いもなく、たったひとつの無垢の愛を貫くことができたなら、どんなに魂が救われるだろう。
多くの人がそう願い、しかし、実現することはできない。
自分では出来ないからこそ、人々はボビーのシンプルな生き方に心から感動し、憧れ、涙するのでしょうネ。
……いずれにしても、今回は忠犬ボビーの故郷にも立ち寄れたし、短い滞在ながら充実したスコットランド旅行でした。 |

スコットランドで出逢った犬たち。大型犬が目立ちます。寒い国のせいか、さすがにチワワは見かけません |
まだまだ書き足りないことはありますが(例えば幽霊探しのミステリーツァーに行ったことや、『マクベス』の舞台になったお城の話など)、全部書いているとキリがありませんので、最後に、グラスゴー郊外で訪ねたウィスキー蒸留所の様子をご紹介して、とりあえずスコットランド紀行を〆(し)めたいと思います。
ご存知のように、スコットランドにはグレンフィディック、ボウモア、マッカランなど世界を代表するウィスキーの蒸留所が多々あります。
今回は遠方に足を伸ばす時間がなかったため、グラスゴーから片道1時間で行けるAuchentoshan(オーシェントシャン)という小さな蒸留所の工場見学(有料)に参加してまいりました。
ブランドにこだわらないのであれば、家庭的な雰囲気が味わえるという意味で、Auchentoshanでのような小さな蒸留所はオススメです。
個人的に感動したのは、私メの誕生日の2日後に当たる1960年2月29日に製造されたウィスキーが、プレミア品として1本1,000ポンドで超限定販売されていたこと!
私とほぼ同時に生まれたウィスキーは、果たしてどんな味がするんでしょう。
きっと、熟成しきった今からが最高に美味しいんじゃないかな。
確かめたわけではありませんが……まあ、そういうことにしておきましょう(笑)。 |

グラスゴー郊外にあるウィスキー蒸留所(Auchentoshan)の工場見学に参加

ウィスキーの原料となる水と酵母とグレイン。グレインは、アメリカのウィスキーの場合はトウモロコシ
が使われるようですが、スコットランドでは麦を使っています。酵母は南アフリカからの輸入だそうです

製品販売コーナーにて。右の写真は、私より2日だけ若い1960年2月29日製造のウィスキー(1本1,000ポンド) |
さて、すっかり遅れ馳せながら(そして皆さまもすっかりお忘れだったかも知れませんが(笑))、今週は「スコットランド土産その2」をお贈りしたいと思います。
今回のプレゼントは、ギネスブックにも載っている「世界最小のスコッチウィスキー瓶3本セット」です。
(下の写真がそうですが、本当に手のひらにすっぽり納まってしまうほど小さいんですよ)
サイズは小さいけれど、中身は歴としたスコッチウィスキーです。 |

ギネスブックが認定した「世界最小の
スコッチウィスキー瓶」3本セット |
プレゼントをご希望の方は、件名を「スコットランド土産その2希望」として、
(1)ハンドルネーム
(2)性別
(3)職業
(4)山田真美へのメッセージ
を明記のうえ、5月10日までにmami@yamadamami.comまでメールでご応募ください。
抽選で1名さまに「世界最小スコッチウィスキー瓶3本セット」を差し上げます。
当選者の発表は、5月11日(月)更新予定の「週刊マミ自身 第334号」でいたします。
どうぞ奮ってご応募くださいマセ。 |

何はともあれ、スコットランドに乾杯! |
というわけでスコットランド紀行はおしまい。
それでは皆さま、引き続きゴールデン・ウィークの後半をゆっくりとお楽しみください。
私はこれから、高さ333メートルの東京タワーに今だけ飾られている333匹の鯉のぼりを見に行って参りま〜す。
(なにしろ今回の「週マ」が第333号なので。その記念に♪) |
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪

ママリンの留守中はひたすら玄関で帰りを待つ
ブースケも、間違いなく忠犬です
(※前号までの写真はこちらからご覧ください) |
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