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2009年7月30日号(第345号)
今週のテーマ:
皆既日食【2】リベンジを誓う
★ 仏教エッセイ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です。第16回のテーマは「不老不死のお酒」です(毎月28日頃に更新予定)。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 7月22日。今日はいよいよ皆既日食当日です。
 
 まだ薄暗いうちに元気に飛び起きましたが、窓の外はなんと小雨!
 空を見あげても肝心の太陽が見えないという、かなりヤバいスタートになってしまいました。

 と言って、こればっかりはどうすることもできません。どのみち降るときは降るんだし、晴れるときは晴れるんですからね。心配しても仕方がない。

 インドの太陽神(スーリヤ)が印刷されたTシャツを、てるてる坊主の代わりに着て出発です。
  
途中、コンビニで美味しそうなシークヮーサーソフトクリームを発見したので、
おなかの太陽神さまにお供えしました(爆)
 さて、種子島は今回の皆既日食ゾーンの北限に当たります。

 しかも、皆既日食が起こるのは種子島の南端に限られ、同じ島内でも北部と中部では部分日食しか見られないのです(注/種子島は南北に細長いのダ!)。

 泊まったホテルは島の北のほう。
 そこで、われわれは、マイクロバスでひたすら島の南端へと向かいました。

 2時間ほど車を走らせ、やがて到着したところはお茶畑のど真ん中。当然、われわれ以外に人影はありません。

 予定ではここで日食観察をし、そのあと優雅にお茶会と川柳大会を開催するはずだったんです。
 ……が、あたりは雨でずぶ濡れ。とてもお茶会ができるような状態ではありません。しかも太陽は雲の向こう側にお隠れになったままだし(汗)。

 皆既日直の開始(10時58分)まで、残り2時間。太陽ガンバレ!!!
  
お茶畑に集まってくれた地元の皆さん。皆既日食の開始が近づいていますが、雨がぽつりぽつり……
 しかし、太陽はその後も一向に姿を現わしません。この状況でお茶畑の中にいても仕方がないので、とりあえず公民館へ移動することに。

 公民館では、佃一可さんによるちょっと変わったお茶会が催されました。
 テーマは「種子島のお茶を美味しく飲む方法」。

 種子島で取れる茶葉は、いったいどんな成分の水と相性が良いのか?
 適切なお湯の温度や、抽出に要する時間は?

 ……といった科学の実験のようなお茶会(笑)。これは面白かったし、かなり勉強になりました。

 それから、地元の人が持って来てくださった餡こが入っていないヨモギ餅の美味しかったこと!

 ほっぺたが2つとも落ちてしまいましたよ〜(笑)。
  
天気が悪いので公民館に場所を移し、種子島産の茶葉を使った科学の実験的お茶会をスタート


  
しかし、この天気です。少年のTシャツに印刷された「完全燃焼」の文字が、ちょっぴり空しい
 そうこうするうち、皆既日食の開始時刻がすぐそこまで迫ってきました。

「ここでじっとしているよりは、少しでも雲が切れていそうな場所を探したほうがいい」

 そう判断したわれわれは、太陽をもとめて流浪の民と化したのでありました(ひゅるる〜)。

 この頃になって、種子島以外の場所で日食観測をしている友人からも、次々に実況中継風のメールが入ってきました。

 奄美大島にいる友達からは、
「雲が厚くなってきた。ヤバイ

 上海にいる友達からも、
「皆既直前に集中豪雨が降りだしました」

 前評判では、上海はかなり観測条件が良いはずだったんだけどなあ。どうやら上海も撃沈の様子。

 日本国内で最も観測条件が良かったはずの悪石島に至っては、豪雨のためテントからの退避勧告まで出ていたと、あとでニュースを見て知りました。南無〜(涙)。
  
予報によれば種子島はこれから晴れるはず。しかし雲が立ち去る気配はなし。天気予報のバカバカ!


  
7月22日午前10時52分、皆既日食開始まであと6分。見えない太陽をバックに記念撮影
 東京・京都・横浜にいる友達からはそれぞれ、

「今、部分日食が見えてますよ♪」

の報告が。種子島より東京のほうがよく見えてるらしい……!?

 東京に残っているサエキけんぞうさん(日本文化デザイン会議のお仲間)からは、

「誰か強力な晴れ女はおらんのか? 真美さん、そうですよね?」

のメール。

 うーん。言われてみれば確かにそう。強力な晴れ男・晴れ女(私を含む)がいるにもかかわらず曇り空ということは、もしやどこかにトンデモナイ雨男・雨女が紛れこんでいるのでは。

 犯人は誰だ!?
 ……と思った瞬間、映像機材を抱えて隣に立っていた大森康宏先生がポツンと一言。

「そう言えば僕、筋金入りの雨男なんだよね」

 ちょちょちょちょっと先生!!! そういうことは早く言ってくださいよ!!!
 知っていたら、先生の全身に雨よけのお札を貼っておいたのに(爆)。

 しかし、時すでに遅し。このとき一天にわかにかき曇り、胸騒ぎのするような冷たい風が吹いて、辺りはあれよあれよと言う間に漆黒の闇のなかへ飲み込まれてゆきました。
≪ 皆既日食の空@種子島 2009年7月22日 ≫
 皆既日食開始180秒前(10時55分00秒)

皆既日食開始120秒前(10時56分00秒)

皆既日食開始60秒前(10時57分00秒)

皆既日食開始(10時58分00秒)

皆既日食開始60秒後(10時59分00秒)

皆既日食終了(11時00分00秒)

皆既日食終了60秒後(11時01分00秒) 皆既日食終了120秒後(11時02分00秒)
 皆既日食。それは、これまで知らなかった種類のドラマティックな体験でした。

 そこがまったく電気製品のない畑の中だったせいもあって、皆既日食が起こっているあいだ、あたりはほぼ完全な漆黒の闇のなかに(光っているのは自分たちのカメラだけ)。

 同時に、エレベーターが急降下するように気温がすーっと下がり、背筋がぞくぞくっ

 長袖シャツの上にレインコートを重ね着していましたが、それでも瞬間的に肌寒いと感じたほどでしたよ。

 この間、私はずっと実況中継風に自分の声を入れながら動画を撮り続けていたのですが(注/上の8枚の写真は動画からキャプチャしたものです)、あとになって動画を見直してみたところ、冥くなってゆく空を前にして、自分の口を突いて出るのは、

凄い凄い凄い凄い

という単純な言葉のみ。あまりの迫力に、「凄い」以外の言葉が脳裏に浮かばなかったんでしょうね。

 その後も太陽はなかなか顔を見せず、次に雲の合間から姿をあらわしたのは皆既日食が終わってから53分が経過した11時53分のこと。

 この時点では太陽の左下がわずかに欠けているのが肉眼で見えるだけでしたが、それでも、何も見えないよりはずっと嬉しかったですよ。
  
皆既日食終了から53分後(11時53分)、太陽が再び姿をあらわしました(左下が少し欠けています)
 さて本日いちばんのショックは、インド人の友達から届いた次のメールでしょう。

「インド北部では完璧な皆既日食が見えました」

 さすがにこれはくやしかったですね〜(笑)。
 こうなることがわかっていたら、インドヒマラヤかブータンへ行ったのに(遠い遠い目)。

 でもまあ、それも人生、これも人生です。
 かくなるうえは笑うしかないので、ニコニコ笑いながら空を仰いでまた一句。

「リベンジは 二〇一〇年 イースター」 by マミリン

 次の皆既日食は2010年7月11日ですってね。これはもう、イースター島へ行くっきゃないでしょう。
 ふふふふふ。モアイ君、雁首を並べて楽しみに待っていらっしゃいね(笑)。

 ……というわけで日食は終わり。
 私たちは気分も新たに種子島観光へと繰り出しました。

 強風や海水の浸食によって不思議な形に削られた岩や、砂浜に深く埋もれてしまった鳥居がならぶ海岸を歩いたり、
  


  


  
 お約束の種子島宇宙センターへ行ったり、
  


  
また顔を入れてしまいました(笑)。ちなみに今回の旅行中、自分のために
購入したお土産はこの宇宙飛行士キューピーだけ♪
 さらには種子島茶を生産している工場を見学させていただいたり。
  
予想していたより遥かに大きな工場でした。種子島産のお茶は、とても美味しかったです!
 途中、マイクロバスの目の前を、どこかで見たことがあるような船を乗せたトラックが2台走って行きました。

 近づいてよく見たら、あ〜っ、日比野克彦さんの段ボール作品だっ!

 今回のツアーに参加しているメンバーの多くは、日本文化デザイン会議で日比野さんとご一緒です。
 段ボールの船を見るなり、なんだか急に嬉しいような懐かしいような気分になって、

「わ〜い、日比野さんの船だ〜!」

と、みんな子どものように大ハシャギ
  
日比野克彦さんの船を乗せた2台のトラック
 このあとは、バーチャルリアリティー学会の講演会を聴きに行き、さらにそのあとホテルに戻って夕食
  
(左)バーチャルリアリティー学会の講演会における原島博先生。学術的な発表に先がけて、先刻
詠んだばかりの川柳を発表なさり、会場の笑いをとっていらっしゃいました(笑) (右)ホテルの夕食
 夕食のあとは、魚が美味しいと評判の居酒屋さんに場所を移し、滞在中すっかりお世話になった島の皆さんとの懇親会です。

 今回は、種子島茶生産組合の皆さんをはじめ、多くの地元の方々に本当に親切にしていただきました。

 太陽こそ見えなかったものの、あのなんともいえない神秘的な闇の時間を共有できたことに、心から感謝しています。

 種子島の皆さん、このたびは本当にありがとうござりもうしたなあ。(Thank you very much.)
 ぜひ近いうちに再訪したいと思いますので、まためっかりもうそう!(See you again!)

今回の旅ですっかりお世話になった種子島の皆さんと
 翌朝、私は後ろ髪を引かれる想いで楽しかった種子島にお別れをし、一路、鹿児島港へ。

 そこから先は仲間とも別れ、ひとり桜島へとコマを進めたのでした。(以下、次号へつづく)
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


入浴後のターバン

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2009年7月30日
山田 真美
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