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2010年4月26日号(第383号)
今週のテーマ:
カウラから吹く3度目の風
★ 仏教エッセイ ★
真言宗のお寺・金剛院さんのウェブ上で『仏教一年生』と題したエッセイを連載中です(毎月28日頃に更新)。第24回のテーマは「記憶と感情」です。左のロゴをクリックしてページに飛んでください。
 このところずっと、カウラから強い風が吹いてくるのを感じます。

 今年の私が空海の本の執筆に焦点を当てているということは既に何度もお話しましたが、おかしなことに、そのすぐ後ろから吹いてくるのはなぜかカウラからの風なのです。

 カウラとは、近代史上最大の戦争捕虜脱走事件(カウラ事件)が起こったオーストラリア内陸部にある小さな街。南忠男、高原希國、金澤彰といった人たちが起こした、あの血なまぐさい脱走劇の舞台となったところですが、そのカウラから、再び風が吹いてきたのです。

 カウラから吹く風は、これで3度目

 1度目の風は、この事件を最初に世に問うたハリー・ゴードンさんの"Voyage from Shame"を日本語に訳してほしいとゴードンさんから要請があった1993年。このとき私は苦労の末に『生きて虜囚の辱めを受けず』を出版しました。

 2度目の風は、事件から60年が過ぎ、現地で記念式典が行われた2004年。このときはNHKハイビジョン特集「カウラの大脱走〜オーストラリア日本兵捕虜・60年目の証言」の番組づくりを立案し、拙著『ロスト・オフィサー』を出版しました。

 そして2010年の今、吹いてきたのは、これまでよりさらにパワーアップし、そして吹く角度が変わった風です。

 誰がその風を吹かせているのか、それはわかりません。

 突撃ラッパを吹いて死んだ南忠男のような気もするし、昨年亡くなったばかりの高原希國のような気もします。あるいは、多くの人々が「神」と呼んでいる何か大いなる存在が、私を呼んでいるのかも知れません。

 何者なのかはわからないけれど、どこか人智を超えたところで、誰かが私にカウラ事件をさらに研究させようとしている。

 ……そうとしか思えない不思議な出来事が、このところ身辺で立て続けに起こっているのです。

 人間にはそれぞれ何か生まれてきた使命のようなものがあると思います。
 生きているあいだに済まさなければいけない宿題と言い換えてよいかも知れません。

 私にとってのカウラ事件は、まさにその「使命」または「宿題」に当たるものではないか。

 なぜ私が?……という疑問は常に付きまといますし、それに対する答えは永遠に出ないかも知れません。しかし、今は亡き高原さんから、

あとのことは、若いあんたに任せたで

と言われた以上、私がやらなければならないこともわかっています。

 私は女ですから男と男の約束という言葉は使えませんが(苦笑)、あのとき高原さんと交わした約束は、私の人生の中でいちばん重い、人間と人間をつなぐ深い信頼関係の上に成り立った決して破ることのできない約束なのです。

 別の言い方をすれば、先人から受け取ったバトンは、次へつないでゆく責任がある――。

 来年は、おそらくカウラ一色の熱い1年になることでしょう。
 今から、それに備えておかなければと思います。以上、心の近況でした。

 さて、ここからは現実的な近況です。先週も色々なイベントが大盛り状態でした(笑)。
 以下、ハイライトをお知らせします。

【インド公使ご夫妻をお稽古場に誘う】

 親しい友人で駐日インド公使のバタチャリアさんご夫妻を、お茶のお稽古にお招きしました。
 バタチャリアさんの知的好奇心は物凄く、

「そもそも茶事は何のために存在するのですか?」
「武士道との関係は? 現代における茶道の意義は?」

など、本質的な質問が飛び出す飛び出す!

 しかも中国語に堪能のため、掛軸に書かれた弄花香満衣(はなをろうすれば・かおり・ころもにみつ)という言葉の意味もすんなり理解して、その場にいた日本人を驚嘆させていらっしゃいました。

 さすがは文明発祥の国インド。教養の深さもハンパじゃありません。
 ちなみに奥さまのラヌーさんはご覧のとおりの美女で、インド舞踊の名手でもいらっしゃいます。
  
インド公使のバタチャリアさん(オレンジのベストの男性)と奥さまのラヌーさんを迎えてのお茶の稽古。
前列左より荒井先生、バタチャリアさんご夫妻、私、後列左より林さん、高田さん(撮影/唄さん)
【お寺で櫻井よしこさんのお話を聞く】

 ウェブ上で「仏教一年生」を書かせていただいている真言宗の名刹・金剛院さん(東京都豊島区)で開かれた櫻井よしこさんの講演会を拝聴してまいりました。

 さすがは櫻井さん、たいへん率直で歯切れのよいお話でした。
 そのなかで特に心に残った言葉(要旨)を、以下にメモしておきますね。

***********以下、櫻井さんの講演より抜粋************

日本国憲法の第3章には『国民の権利と義務』について書かれている。しかし第3章をすべて読んでみると、『権利』という言葉が16回、『自由』という言葉が9回使われているのに対し、『責任』と『義務』はそれぞれ3回ずつである。『家族』は1回も登場せず、かわりに『個人』という言葉が使われる。戦後の日本の問題は、この憲法のとおり、義務や責任をほとんど無視して権利と自由をふりかざす個人が増えたことにあるのではないか」

「良い食材を数多く食べているとIQが高くなる。この両者は、おそろしいほど正比例する」

「兵庫県の山口小学校は、本屋さんも塾もないすごい田舎の小学校だが、全国学力テストをやると飛び抜けて優秀だ。この学校では朝ご飯は和食を奨励し、学校と家庭のあいだには『子どもが食べた物をすべて書いて連絡し合うノート』が存在する。食事の質を重要視しているからだ。また、この学校では早寝早起きを徹底指導。本の音読と100マス計算も奨励している」

「数年前にフジテレビが行なったテレビ番組内の実験が面白かった。若い女性をスッピンの状態でA駅に呼び出し、『電車でB駅まで行ってください。その間にフル化粧を完成させてください』と指示するのである。すると、ある女性は電車の中で人目もはばからず化粧を始めた。別のある女性は、なるべく人の目につかない電車の隅っこで恥ずかしげに化粧をした。またある女性は、どうしても電車内で化粧が出来ず、途中の駅で降りてトイレに駆け込み、化粧を済ませてから電車に乗ってB駅へ急いだ。彼女たちのバックグラウンドを調べてみたところ、人前で化粧をすることを恥ずかしいと感じる感性をもっていた女性は、全員が祖父母と同居している子たちだった」

秋篠宮家の子育てはうまくいっているようにお見受けする。時間がゆるす限り天皇皇后両陛下のお住まいやご実家(川嶋家)へお子様を連れて行っていることが、その理由のひとつではないか」

3世代家族の素晴らしさを、もっと見なおそう」

***********以上、櫻井さんの講演より***********

 ちなみに櫻井さんご自身は、100歳のお母さまと二人暮らしとのこと。
 「明治の日本人って、こんなに凄いんだ!」と感動することの多い毎日だそうです。ステキですね♪
  
(左)ジャーナリストの櫻井よしこさんと (右)左端は金剛院御住職の野々部利弘さん
 先週はこのほかにも、エジプト大使館のレセプションに出席したり、

エジプト大使館の「ファラオの間」にて
 その直後には日本文化デザインフォーラムの総会に出席したり、
  
(左写真)恒例の日比野克彦さんとのツーショット。日比野さんがシャッターを押しています (右写真)左から、
矢島美容室』監督の中島信也さん、サエキけんぞうさん、私。こちらは中島さんがシャッターを押してます
 昨年の夏、日食ツアーでお邪魔した種子島でお世話になった鹿児島県庁の尾崎重尚さん(ご用があって3日間だけ上京中)を囲む食事会を催したり。

いつものメンバーです。(左から時計回りに)吉光徹雄さん、上京中の尾崎重尚さん、私、
佃一可さんご夫妻、伊東さんの会社のデザイナーさん、藤波亜由子さん、伊東知哲さん
 ……とまぁ、今週も例によって楽しくもハードな毎日でございました(笑)。

 今日はこれから上野の寛永寺で催される蜷川有紀さんのイベントに出かけて来ます。

 すぐに出かけないと間に合わない(!)ので、尻切れトンボで申し訳ありませんが、今日はここまで。
 ではでは♪
▼・ェ・▼今週のブースケ&パンダ∪・ω・∪


散歩中いきなり3匹の可愛い子に話しかけられて
大汗のブースケ(左端)

(※前号までの写真はこちらからご覧ください)
事事如意
2010年4月26日
山田 真美
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